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おまけ2

うたた寝 (サイラス)

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(成人前の次男とリーシャ)
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ノブをひねると、スッとサロンのドアが開いた。きちんと手入れのされているドアは音を立てない。

サロンの中には母上がいた。ソファに座って俯いている。本を読んでいるみたいだ。
集中しているのか、入ってきた僕には気づかない。

兄上はいない。

母上の邪魔をしないように、そっと近づいていく。
…近くで授業の復習でもしようかなって。
だから手の中には、今日の授業で使った本がある。国内の地形やそこを治める領主、歴史なんかが書かれた厚い本。
難しくはないけれど、覚えることがたくさんあって面倒くさい。暗記は苦ではないから別にいいんだけど。

母上の横の1人掛けのソファに座ろうと思ったんだけど、ここまで近づいても反応しない母上が不思議になって、本をテーブルに置いて顔を覗き込んでみた。

そしたら目を閉じて眠っていた。
スゥスゥと穏やかな寝息が、少し開いた口から聞こえる。呼吸に合わせて微かに上下する頭。
なんとなくじっと見入る。
見ているうちに、無意識に母上の呼吸に自分の呼吸を合わせていた。そしたらなんだか僕まで少し眠くなってきた。

しっかりと閉じたまぶた。
ゆったりとした呼吸。
呼吸に合わせて小さく動く口。

不意に、母上の身体がカクンと揺れた。咄嗟に手を伸ばして肩を支える。母上の頭が、僕の首すじに軽くぶつかって止まった。微かに香る柔らかな匂い。それに気をとられた瞬間、ぎゅっと袖をつかまれた。

「っ…母上…?」

起きたのかと思って小さな声で呼んだけど返事はなくて、聞こえるのは相変わらず穏やかな寝息だけ。もぞもぞと動く細い腕に引き寄せられて、母上を支えるようにして隣に座ってしまう。

戸惑っている間に、腕が背中に回された。僕のより小さな手のひらが、存在を確かめるように僕の頭や背中を撫でる。やがて落ちついたのか、今度は宥めるようにポンポンとゆっくり背中を叩き始めた。
繰り返される穏やかな振動に、眠さが募っていく。

少し…疲れているのかもしれない…

そんなことを思う。
だって眠気に抗えない。
まぶたが下がってくる。

たまには…いいかも…。
こういうのも…たまになら…。

そう思って、それ以上眠気に逆らわずに目を閉じた。
温かな腕に包まれる。
とても温かな腕。まるで守られているような…

サイラス…

意識が眠りに消える前、母上が嬉しそうに僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。




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