69 / 153
第2章
13 病
しおりを挟む
父上…陛下は数年前から病を発症していた。その病状が、最近かなり悪化している。
回復はしない。そういう病気だ。
薬師も周囲もわかっている。
もちろん本人も。
先王が没した際、早すぎると散々ぼやいていた癖に。同じ病気になるなんて全然笑えない。
父上が死ねば、次の国王は私だ。
王宮に住み、ほとんどそこから出ない日々を過ごすことになる。
そうなる前に、リーシャをどうにかしなければならなかった。
私の母上として、王宮に入れることは可能だろう。実際、王太子である私の母上として王宮に、との声も昔上がったことがあった。
その時は「王宮暮らしが務まる女ではない」と父上が切り捨て、新たな勢力が出現するのを貴族達が歓迎しなかったのもあり、そのまま忘れ去られていった。
今回、改めてその立場で迎え入れることは可能だろう。
けれど、そんなのは私が嫌だった。
再び取り戻した彼女の心をそんな風に扱うなんて、またそんな関係に戻るなんて、とても耐えられなかった。
きっと滅多に会えず、会えてもろくに触れられなくなってしまう。
そうなっても、きっと彼女は笑うだろう。「仕方がない」と寂しそうに。
けれどそんなのは私が絶対に嫌だった。そんなのは許せなかった。
だから…
私は母上を…リーシャを、私の正妃として迎えることにした。
もちろん、そのままでは貴族どころか誰の賛成も得られるわけがない。だから、他国の貴族を巻き込むことにした。
貴族が平民を娶るために、一旦他の貴族の養子にして体裁を整えるのは、割とよくあることだ。
その手を利用することにした。
幸い、友人と言えるような貴族が遠い国にいた。見聞を広めるためにと我が国に滞在した際、私が案内役としてついた男だ。彼はその国の王家の血を引く貴族で、今でもたまに連絡を取り合っていた。
詳細は伏せ「どうしても結婚したい平民の女性がいる」とだけ伝えた。それでも彼は快諾してくれた。
気のいい男なのだ。昔から。
「次期国王に恩を売っておくのも悪くない」なんてうそぶいていたけれど、彼の国は遠くてそれほど便宜を図れる訳でもない。そう言って相手の心を軽くしてくれる男なのだ。彼のそういうところには何度も助けられた。
こうして彼女は、屋敷に居ながらにして、書類上は他国の貴族の遠縁の女性、ということになった。
彼女の本来の素性は消えた。
本人も知らぬ間に。
父上は彼女に関する情報を徹底して表に出さなかったし、リーシャはほとんど屋敷から出なかったので、彼女は陛下が王太子時代に囲っていた謎の女性、として知られている程度だった。
だから細工をするのは簡単だった。
回復はしない。そういう病気だ。
薬師も周囲もわかっている。
もちろん本人も。
先王が没した際、早すぎると散々ぼやいていた癖に。同じ病気になるなんて全然笑えない。
父上が死ねば、次の国王は私だ。
王宮に住み、ほとんどそこから出ない日々を過ごすことになる。
そうなる前に、リーシャをどうにかしなければならなかった。
私の母上として、王宮に入れることは可能だろう。実際、王太子である私の母上として王宮に、との声も昔上がったことがあった。
その時は「王宮暮らしが務まる女ではない」と父上が切り捨て、新たな勢力が出現するのを貴族達が歓迎しなかったのもあり、そのまま忘れ去られていった。
今回、改めてその立場で迎え入れることは可能だろう。
けれど、そんなのは私が嫌だった。
再び取り戻した彼女の心をそんな風に扱うなんて、またそんな関係に戻るなんて、とても耐えられなかった。
きっと滅多に会えず、会えてもろくに触れられなくなってしまう。
そうなっても、きっと彼女は笑うだろう。「仕方がない」と寂しそうに。
けれどそんなのは私が絶対に嫌だった。そんなのは許せなかった。
だから…
私は母上を…リーシャを、私の正妃として迎えることにした。
もちろん、そのままでは貴族どころか誰の賛成も得られるわけがない。だから、他国の貴族を巻き込むことにした。
貴族が平民を娶るために、一旦他の貴族の養子にして体裁を整えるのは、割とよくあることだ。
その手を利用することにした。
幸い、友人と言えるような貴族が遠い国にいた。見聞を広めるためにと我が国に滞在した際、私が案内役としてついた男だ。彼はその国の王家の血を引く貴族で、今でもたまに連絡を取り合っていた。
詳細は伏せ「どうしても結婚したい平民の女性がいる」とだけ伝えた。それでも彼は快諾してくれた。
気のいい男なのだ。昔から。
「次期国王に恩を売っておくのも悪くない」なんてうそぶいていたけれど、彼の国は遠くてそれほど便宜を図れる訳でもない。そう言って相手の心を軽くしてくれる男なのだ。彼のそういうところには何度も助けられた。
こうして彼女は、屋敷に居ながらにして、書類上は他国の貴族の遠縁の女性、ということになった。
彼女の本来の素性は消えた。
本人も知らぬ間に。
父上は彼女に関する情報を徹底して表に出さなかったし、リーシャはほとんど屋敷から出なかったので、彼女は陛下が王太子時代に囲っていた謎の女性、として知られている程度だった。
だから細工をするのは簡単だった。
1
お気に入りに追加
3,583
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる