本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる

第2章

10 幸せです

その夜は、レトラを授かったあの夜よりも、更に幸福に満ちていた。

…幸福とは少し違うのかもしれない。


すべて、だった。
彼が世界のすべてだった。
他のものは、全部消えてしまった。

私の世界には、彼しかいない

そんな夜だった。
彼の声だけが聞こえて。
彼の存在だけを感じていた。
私を呼ぶ声を。
私を抱きしめる腕を。
私に触れる彼の存在だけが、私の世界を形作っていた。



光を感じて意識が覚醒する。
すぐ耳元で聞こえる穏やかな寝息。
体に回された腕の重み。
肌と肌が触れ合って伝わる、安心してしまう体温。
少しだけ、レオンに体を寄せた。
無意識なのか、レオンの腕に少し力がこもって、更にもう少しだけ体が近づいた。

額がレオンの胸に当たる。

幸福のため息が漏れた。