本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる

第2章

6 変わっていきます

殿下が…陛下のことが、心から消えていく。
ほっとするような、少しだけ寂しいような、そんな気持ち。

心を縛っていたものが解けて、楽になっていく。なのにそれを少しだけ惜しんでしまう。
不思議な気持ち。

そんな私の変化に気づいたのは、やはりレオンとサイラスだった。

サイラスはちょっと「しまった」って顔をしていた。小さく「父上に知られたらヤバいな」なんて呟いてもいた。
よく分からないけれど、サイラスと陛下は思考が似ているらしいので、分かり合える何かがあるのだろう。

レオンは…こちらがどんな顔をしたらいいのか分からなくなるくらいに嬉しそうな顔をするようになった。
最近、レオンに笑顔を向けられるたびに、彼が今までどれだけ無理をして、自分を抑えて、私の側に居てくれたのかに気づかされる。

こんなに大きな感情を抑え込んで、私を支えてくれていたの…

ただの笑顔なのに。
ただ、私に向けて笑っているだけなのに。
胸が詰まって目眩を起こしそうなほどの。

私にそんな価値があるとは、とても思えない。
レオンの強い想い。

嬉しくない訳ではない。
けれど同時に怯えてしまう。

私の何を、そこまで想ってくれているのか分からなくて。
その想いに見合うだけの感情を返せるか、自信がなくて。

…そう。私はレオンに気持ちを返したいと思ってしまっている。
迷いながらも。
彼の手をもう一度取りたいと、思い始めてしまっている…。