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第2章

3 王の見る夢

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ときたま…ほんのときたま、彼女の夢を見る。

政務に疲れ果て、心が参っているときに。
心の隙間に滑り込むように。開いてしまって一生塞がりそうにない大きな穴を満たすかのように。
彼女が夢に現れる。


僕と彼女と子どもたちで、あの屋敷の庭で日の光を浴びて、幸せそうに笑っている。
そんな夢。

見始めてすぐに、夢だと気づく。
決して現実になることのない夢。
だって、僕がそんな空間を作れるわけがないから。あんな屈託なく皆で笑い合えるような、そんな空間。

そんな真似ができるものなら、とっくにしていた。きっとリーシャが喜ぶだろう、幸福の詰まった空間。

…いや、やっぱりしていないかな?僕は今でも、一番好きなリーシャの表情は、辛そうな、苦しそうな泣き顔だから。

ふふっ…

夢だと分かりきった景色を眺める。夢だと分かっているから、安心して眺められる。
うっかり泣いてしまいそうなほどの幸せを。

ああ、あんなに幸せそうにリーシャが笑っている。

僕は芝生の上に座ったリーシャの膝に寝転んで、彼女に悪戯をしている。リーシャはそんな僕に、少し困ったような顔を向けている。
レオンとサイラスは、なんとかリーシャの側に場所を確保しようとしていて。僕は彼らに見せつけるようにリーシャの膝を撫でながら、面白半分で片手間にそれを阻止していて。

リネルとレトラは、こっちには興味を持たず、すぐ側で二人で楽しそうに遊んでいる。


決して、実現し得ない光景だけど。もし現実になったら、きっと幸せすぎて僕には耐えられない光景だけど。
でもこれは夢だと分かっているから。

だからうっとりと微笑む。
夢の中のリーシャに。

リーシャ。愛しているよ。僕の唯一の奥さん



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