本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる

第1章

8 殿下は滅多に訪れません

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殿下に屋敷に連れてこられてから数日が過ぎた。

殿下はあれ以来、一度も訪れていない。
「また来るよ」と言ったきり。
いつ来るともわからない。

会いたいわけではない。けれど、まったく会わないのも落ちつかない。
私には、殿下以外に知っている人などこの屋敷にはいないから。
私は、知り合いもいないこの屋敷で一人きり。
この大きな屋敷で一人きり。
ここから出ることもできないのに。

いきなり奉仕する側から奉仕される側になったせいで、毎日やることがなくて落ちつかない。
つい癖で掃除をしていたら、メイドに無言で布巾を取り上げられお茶を用意されてしまった。


屋敷の使用人たちは、奉仕する相手として私に接してくれるけれど、私が彼らにどう接したらいいのか分からない。
結果、彼らとのやりとりは、ぎこちない、最小限のものになってしまう。

朝起きて、身支度を整えられて、ご飯を食べてお茶をしてお風呂に入れられて眠る。
ただおとなしく、奉仕されるままに。

そんな日々が続いていたのだけれど、しばらくして本を読むことと、日記をつけることを始めた。それと、産まれてくる子どもの為に細々とした物を作ることも。

子どもの為、という名目なら、ある程度は自由にさせてもらえるようなので、昔、街に買い物に出た時に見かけた子ども用のオモチャなどを、曖昧な記憶を頼りに作ってみた。
あまり上手にはできなかったけれど、何か意味のあることをしている、それだけで心が和らいだ。