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第2章

婚姻立会い

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(婚姻届を書くときホテルに来たお役所の人視点)
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ある夜遅くに、知り合いのアレウスという男から連絡がきた。学園に通っていた頃に、同じサークルの一年先輩だった人だ。何事かと思ったら、婚姻の立会いをして欲しいと言う。
何やらワケありらしい。

「……役所に来れば5分で済みますよ」

そう言って、最初は断ろうとした。
面倒くさいし、厄介ごとの匂いがしたから。
本来、出張サービスは、病気や怪我で庁舎に来られない人や、超多忙なエグゼクティブなどの為のものだ。
前者は無料、後者は結構高額なサービスとなっていて、誰でも使える訳ではない。

けれどそこそこの謝礼をチラつかされ、先輩だった事実を持ちだされて、敢え無くオーケーした。

…割とグレーゾーンだこれ。
卒業後も体育会系は辛い。


翌日、書類を持って指定されたホテルへと向かった。
言われた通りにフロントに書類を預けてしばらく待つと、先輩が下りてきた。耳の可愛い女性を連れて。

へぇ、あの先輩が……

学園にいた頃の先輩は硬派で通っていたので、いかにも女性的な身体つきの人といるのは少し意外だった。

先輩は女性を待たせてフロントで何かに記入し始めた。多分俺が持ってきた書類だろう。
そしてチョイチョイと女性を手招いた。
素直にペンを握る女性。

よかった。
無理矢理結婚とか、そういう犯罪系の話ではなかったようだ。

と思ったのも束の間、ホテルのスタッフに祝われて目をパチクリさせる女性。
確信犯的な笑みを浮かべる先輩。
嫌な予感は当たった。

先輩、婚姻の書類だとは知らせずにサインさせたな。

驚いている女性にキスする先輩。
……舌入ってる。
女性は軽くジタバタしていたけど、すぐに静かになった。
グタッとなった女性を腕に抱いた先輩の視線が俺に向けられる。

早くしろ

無言で命じられて、内心の迷いは隠して近づいた。

「では、こちらは私が責任を持ってお預かりいたしますので」

さも当然という顔をして、記入済の用紙を鞄にしまう。
「先輩の命令は絶対」の呪縛から、俺は逃れられなかった。
先輩は満足気に頷くと、女性を担いで悠々とホテルから出て行った。


………一緒のホテルに泊まるくらいだし、二人は親密そうだった。
相手の女性も、驚いただけで満更でもないのだろう。
…きっと…おそらく…是非ともそうであって欲しい……

……………もし本当に嫌なら、離婚の手続きは簡単にできるのだ。
片方の申し立てで離婚が成立する今のシステムは、気が短い種族の獣人が同じ相手と結婚と離婚を繰り返すのが多少問題となってはいるが、概ね好評だ。

でもできれば離婚しないといいなぁ、と思いつつ俺もホテルを出た。

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