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第1章

クッキー

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午後もしっかり働いて、終業時刻になった。今日もほぼ定時退勤だ。
今やってる研究は締切りが厳しくないので、割とのんびり進めている。

たまに学会の発表に間に合わせたりとか、予算を勝ち取らねば!とかで泊まり込みになる研究もあって大変だけど、それはそれで楽しい。
でも帰れる時はみんなさっさと帰る。
私も待ち合わせ場所にしている休憩スペースでアレウスと落ち合った。

「……今日も別の建物から帰るか」

「そうだね」

今日はよその省庁に用事がある訳ではないけれど、個人的な理由により地下の省庁連結通路を使うことにした。
非常時用に、結構幅広に作られている階段を地下へと下りる。

「文化省の近くの菓子屋に寄りたいんだが」

あそこか。
ピンクと水色がアクセントカラーの可愛いお店が頭に浮かんだ。

「いいね」

行き先が決まった。



文化省近くのお菓子屋さんは、アレウスとたまに行く持ち帰り専門のお店だ。
ドアを開けると、一気に焼き菓子の香りがした。カランカランと鳴る少しボケたベルの音が耳に楽しい。

このお店はデニッシュが充実している。サクサクの生地の上に色鮮やかなフルーツが載っていて、いつもながら目移りしてしまう。
私が悩んでいる間に、アレウスは量り売りのクッキーを数種類選び終えていた。

「新作出てた?」

「ああ」

嬉しそうに頷くアレウス。
このお店では、数ヶ月に1種類くらい新しいクッキーが出ていて、そっちも人気が高い。クッキー好きのアレウスは、それを楽しみにしている。今も無意識に尻尾がパタパタと揺れている。可愛い。

よし、今日はベリー系にしよう

私も買うものを決めて、お会計を済ませた。

お店を出たら、早速紙袋を開けてサクサクのクッキーを齧りながらのんびり家へと向かう。
定番のも新作のも、どっちも美味しい。アレウスの尻尾が、上機嫌に揺れている。

文化省は家を挟んで魔法省とほぼ真逆だからか、アレウスの番には会わずに家へ帰れた。


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