【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン

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第1章

あれ?番は!??

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その日、私はデートしていた。
大好きなアレウスと。
腕を組んで人混みを歩いていた時、彼がスンと鼻を鳴らした。次いで微妙な顔を。

「どうかしたの?」

急に足を止めた彼を見上げると、背の高い彼は私を見下ろし

「いや、つがいの匂いがしただけだ」

と、なんて事も無いような調子で言った。けれど私は、彼の言葉に蒼白になった。


       つがい


心を焦がす衝動。
魂の伴侶。

そう言われている。
出会える確率はかなり低いけれど、ひとたび出会ったなら二度と離れず生涯を共に過ごすのだと。
そんな相手と、アレウスが出会ってしまった………


足元から力が抜け、地面に崩れ落ちそうになったところを、アレウスにヒョイと抱き上げられた。


………あれ?


今すぐ番の匂いを追わないのかと首を傾げる。

…ああ、そうか。近くのベンチに座らせるくらいは、してくれるのか。
…アレウスは優しいから……

すぐに悲しみと共に納得しかけて

「具合が悪そうだな。今日は帰るか」

まるきりいつもの調子のアレウスに目を瞬く。

「あの…アレウス…?」

「ん?」

声をかけると、首を傾げて私を見下ろすアレウス。

ああ、やっぱり今日も格好いい。
好き。

…じゃなかった。

「あの…番は……?」

恐る恐る訊いた。
本当は確認なんてしたくないけど、訊かないでいるには気になり過ぎる。
アレウスは、なんて事無さそうに肩をすくめた。

「ああ、まだ遠いようだし、この距離なら逃げきれるだろう。早く家に帰ろう」

…逃げきる?

予想外の発言に固まる私を抱き上げたまま、アレウスは颯爽と歩き出した。
脚の長い彼は、歩みが早い。
どんどん景色が変わっていく。
けれど、家の方にかなりの速さで向かっていた彼が、不意に立ち止まった。

…やっぱり本能には逆らえなくて、番のところに行くのだろうか。
でも、それならここで下ろして欲しい。
彼と番が出会うところなんて、私は見たくなーー

「しまったな。相手は家の近くにいるようだ。……今日はホテルに泊まるか」

え…?
…え…??
……えええ???

目を丸くする私の返事は待たずに、クルリと行き先を変えるアレウス。
そして言った通り、ホテルに着いた。
この街に家があるから泊まった事はなかったけど、結構高級な部類に入るホテル。

……きっとここでお別れ。
私をホテルに置いて、アレウスは番のところへーー

「たまにはいい部屋に泊まるか」

「………へ?」

スタスタと建物に入り

「今日は彼女との記念日なので、少しいい部屋を頼む。それとずっと二人きりでいたいのでルームサービスを」

「かしこまりました」

私を抱き上げたままチェックインを済ませるアレウス。ポカンと固まる私はアレウスに抱き上げられたままだというのに、顔色一つ変えずに先導するホテルのスタッフ。

「こちらでございます」

案内された先は、大きくて綺麗な部屋だった。当然のようにベッドも大きい。

「扉は二重になっております。一つ目の扉と二つ目の扉の間にお食事をご用意いたしますので、いつでもお好きな時にお召し上がりください。
また、防音がしっかりしているのが当ホテルの売りですので、ご安心してお過ごしください」

獣人のエッチは激しい人が多いので、部屋の防音は大事なポイントだ。

「ああ、助かる」

ソファーに私を下ろし、スタッフにチップを渡すアレウス。
丁寧に頭を下げ出て行くスタッフ。

「他に御用がございましたら、なんなりとお申し付けください」

パタンと扉が閉まると、アレウスが当然の顔をして私に覆い被さってきた。

「え?え?ちょっと待って!?」

状況についていけずに慌てる。

「なんだ?風呂が先か?」

眉を上げるアレウス。
 
「あ…や…その…」

「却下だ。たまにはおまえの匂いを堪能させろ」

実に獣人的な発言をして、私の服を脱がしにかかるアレウス。

「え…ちょ…ここソファー……」

さっき止めようとした理由はそれじゃないけど、反射的に言ったら

「…そうだな。折角いい部屋をとったんだ。ベッドを使うか」

アレウスは頷いて、再度私を抱き上げた。
…私の意見が取り入れられたのは、そこだけだった……


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