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未知の生命体との遭遇

157第二の約束の地

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 鹿島とパトラは、接収した屋敷の居間でくつろぎながら、
円盤型のドローンが燃える鳥になったことで、
子ども達の能力に喜びよりも不安の方が強くなっていた。

「闇の樹海老樹霊が言っていた、邪悪な神属が現れるとの話は、
真実味が出てきましたですね。」
と、パトラは不安げにミントティーを口に運んだ。

「で、流浪の民の約束の地の場所は、決まっているのですか?」
と、鹿島はパトラを見つめた。

「キズナちゃんの話では、この大陸を三等分にはするが、
原住民であるインデアンエルフも、
流浪の民も、
移民も基本的にはどこの土地でも自由に住むことができるらし~い。
北側の土地は、
個人の所有を認めない場所に指定して、
狩猟専業地と定めた方がいいとのことです。
そうする事で、狩猟インデアンエルフは自由に移動ができるし、
中央部分は、農耕地と牧畜場所に分けて、
住民は共同開発を条件に、
流浪の民の約束の地中心聖地と決めたらしいです。
南側は種族を問わない、農耕者の移民を受け入れるのが良い様です。」
と、パトラは投げやりな様子で冷たく答えた。

 「詰まり、子ども達の言い方だと、
この大陸は、亜人協力国で管理しろとの事なんだな。」

「どの種族も、この大陸では種族同士の国としての観念を、なくさなければならないらしいです。」
「ここの場所が一番差別を露にした、
グループが存在しているからな~。」

「選挙とやらを、、、ここで行うと、、、差別主義者が指導者に選ばれるらしいです。」
「さもあらん。」
と二人は歯切れの悪い、消化不良の気持ちのまま、沈み込んだ。

 これからの北新大陸の対応に苦慮している鹿島とパトラに、
マーガレットから連絡が入り、
パトラには神降臨街への帰国要請があり、
入れ替わりにマーガレットとテテサ教皇が、
北新大陸へ向かうとの連絡が入った。

 パトラは身支度を整えてランボーイの遺骨とともに、
ナナの姉ミチルと兄のチルチルを伴い神降臨街に向かった。

 北新大陸では、
エゲレス国と北新大陸軍正規軍の戦闘が激しくなりだしていた。
鹿島等にたたかれた五十万の正規軍を壊滅させられた為に、
北新大陸軍正規軍は、
東海岸から次第に押され始め出して、内陸部へと移動しだしていた。

 鹿島は北新大陸の正規軍を避けながら、
毎日浄化法執行軍だけを求めて、北新大陸中を駆けずり回っていた。

 鹿島の元に、
エゲレス国アーサー将軍と北新大陸ジョージ将軍から書簡が届き、
両方の陣営から同盟の提案をなされたが、
鹿島は、マーガレットが北新大陸に到着するまでは
、同盟提案の返事を引き延ばしていた。

 マーガレットは到着すぐに、二つの陣営代表と数度の会合後、北新大陸ジョージ将軍との合意がなされた。

 鹿島とジョージ将軍は、
亜人協力国の国是を尊重するとの合意内容で同盟関係となった。

 ジョージ将軍は直ちに農奴解放を宣言すると、
多くのインデアンエルフも北新大陸軍に編入され出した。

 多くのインデアンエルフの参入に反対している浄化法執行軍は、
当然のようにエゲレス国アーサー将軍と同盟を結び、
北新大陸軍は分裂してしまった。

 分裂した北新大陸軍においては、
多くの資金提供者は当然のように浄化法執行軍側に味方した。

 マーガレットはジョージ将軍との裏条約で合意すると、
武器弾薬と資金援助に取り掛かった。

 ジョージ将軍は、
亜人協力国軍の廃棄処分であった三八式歩兵銃等と共に、
多くの武器弾薬と金貨と銀貨の援助を受けた。

 分裂前よりも多くの軍勢を揃える事が出来た事で、
勢力を伸ばす事が出来たが、ジョージ将軍はしかしながら、
首根っこをマーガレットに握られてしまった。

 鹿島は、マーガレットの先見の明である戦略行動に改めて感動した。

 ジョージ軍は、分裂後の勢力範囲陣地は飛び石で劣勢であったが、贅沢な武器と資金源を得ると、
たちまちに地図上に表された勢力図には、
逆に浄化法執行軍とエゲレス国軍の勢力場所は、
飛び石状態となって勢力範囲は逆転してしまった。

 この事も正にマーガレットの予想通りであった。

 テテサ教皇はロッキーカナダ山脈の麓に大きなゲルを設置していた。

 テテサ教皇は、
大きなゲルの中に流浪の民代表団を招き会合していた。

「この場所を、我らの新しい約束の土地だと、言われるのですか?」
「そうです。ここに神殿を建てて、初代老樹霊を祭ってください。
それがガイア女神様の希望です。」

「ガイア女神様を御廟するのではなくて、初代老樹霊様を尊べと?」
「当然です。あなた達も、約束の地に導いたのは、
ガイア女神様の眷属であったと認識しているはずです。
その眷属は初代老樹霊であったのです。」

隠れ啓示を公表しろと?」
「隠れ啓示などない!真実だ!」
と、テテサ教皇は怒鳴った。

 怒りを飲み込んだテテサ教皇は、静かに流浪の民代表団を見回して、両手をゆっくりと肩の少し上まで挙げると、
周りで浮遊していた赤い微粒子はテテサ教皇を包み込み始めた。

 テテサ教皇の髪は赤く染まり、燃えてるように揺らめくと、
身体中も燃えてのではと思えるほど赤く眩しく輝きだした、

「後ろの丘の頂上へ向かえ。
戒めを溶き、石板に彫り込んだ新たなる天啓を与える。」
と、ゲルの周り中からステレオ音的に、
発声場所を特定できない声が響いた。

 二十人の流浪の民代表団は、意識無い様子みたいな感じの無表情もまま、ゆっくりと風に押されるように丘を登り始めた。

 二十人の流浪の民代表団が丘の頂上に着くと、
神殿街の中央丘の天空に現れた炎に包まれている燃える鳥は、
一段と鋭い嘴(くちばし)に石板を咥えて、
燃え盛る翅(はね)で飛行輝く粉を飛散させながら、
射殺すような金色の眼光で二十人の流浪の民代表団を睨み付けて、
一人一人を品定めするように、
ゆっくりと円を描いて旋回しだした。

 監視衛星から届いてる気迫ある映像に、
戦略作戦室のパトラとマティーレや、
七つの屋敷砦にいる鹿島とマーガレット達は、
握りしめた手の中に汗を絞り、
恐怖とは違うひれ伏させられる威厳ある脅威の鋭い眼光に見入っていた。

 二十人の流浪の民代表団は、
恐怖の為に全員が失禁状態の様子だとも感じていた。

 燃える鳥は、威厳ある脅威の鋭い眼光のまま、
ゆっくりと丘の頂上に降りると、
咥えていた石板を丘の頂上に押し込めながら真っ直ぐに立てた。

 石板の上部には、闇の樹海老樹霊とよく似た顔が彫り込まれていて、顔の下には横一列に九つの徳の文字が並べられていた。

 天上から、
「初代老樹霊より預かった、種を植えよ!」
との声が天上に響きこだました。
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