149 / 181
145加護持ち子供達
しおりを挟む
鹿島達元陸戦隊と運営委員会の四人は、
スクリーンに映し出された二つの映像に見入っていた。
二つの映像には、日出州都上空からの風景と、
虎種族集落広場が映し出されていた。
日出州都の風景は、
上空風景から徐々に街並みの通路へ降りていった。
「以前の面影は無いですね。」
と、マーガレットはショーセツの風貌に見入っていた。
「サクラさんも、以前と比べて、随分と砕けた感じに思えます。」
と、テテサは安心したように微笑んだ。
「サスケの奴も、踊り子たちの相手をした後のやつれはなくて、
生き生きとしてやがる。」
と、鹿島が揶揄すると、
三人の批判のこもった眼光を感じたときに、
アーマートがせわしなく動き回っている姿が映ると話題を変えた。
「アーマートも元気そうだな。」
「アーマートも恋人ができたようで、
恋人を連れて近々帰ってくるようです。」
「日にちが決まったら、連絡をくれ。
兄の威厳で、嫁の心得を、将来の義理の妹に伝えてやる。」
「反対」
と、批判のこもった眼光のまま、
テテサを除いて運営委員会三人はハモった。
「閣下がしゃべると、威厳は無くなります。無口でいてください。」
と、パトラは遠慮なしに批判すると、
ほかの二人と共にマティーレも頷いた。
「恋人を連れて帰ってくるということは、相手はトラ顔?」
「何かを感じさせる言葉だけれど。」
と、ドヤ顔でマティーレは見つめた。
「そそ、そ~な意味ではない。ただ、俺みたいに、、、、、、。いや、かかあ天下、、。いや、アーマート達は、上手くいく良い夫婦になるだろう。」
「今の言葉は本心でしょう。」
「不満があるなら言いなさい。」
と、お腹の大きなマーガレットと不満顔のパトラは鹿島に詰め寄った。
「うほん。それは、ほかの場所でお願いしたい。」
と、トーマスは助け舟を出した。
鹿島は下を向いたまま、トーマスの言葉に頷いている。
映像は、
集落から虎種族の住んでいる虎森と呼ばれている方向へ展開していた。
虎森周りではコンクリートの壁工事が進められている。
「ドドンパ国は、ホントに森への道を遮断するつもりだろうか?」
「毒ガスを用意すると、
コーA.Iから、いや、使徒様からの攻撃を受けると、
被害は自軍だけが受けるので、
さすがに何度も同じ過ちはしなくなったが、
隔離壁を作らなければならない、内政的事情があるのだろう。」
「何のための壁だ?」
「自国民がベルリン村を経由して、虎森に逃げ込めるとの噂に、
多くの人々が、生活の豊かな亜人協力国へ逃げるために、
ベルリン村へ集まってくるので、それを阻止したいのだろう。」
「ベルリン村では総出で、逃げ出す人々の道案内料金を、
主な収入源としての生活の糧としていた様です。」
「ベルリン村では、ベルリンの壁と呼んでいるようです。」
「指導者は常に反抗を恐れているものだ。」
「閣下も恐れているのですか?」
「俺は、歓迎する。」
皆は白けた目をして、
「ここだけの話とするならば、聞き流せるが、
二度とあんな事件を起こすきっかけだけはやめて欲しい。」
「他所では、二度と冗談でも言わないでほしい。」
と、マーガレットとパトラは睨み付けた。
「内戦のあとかたづけは、辛い。」
と、トーマスは何かを思い出したように、周りを見渡した。
「虎種族は、友好を阻害する壁は邪魔だと抗議しているようですが?」
「彼らの歴史的友好は、永いらしいからね~。」
「心情的には、虎種族はドドンパ国側でしょうか?」
「今ではアーマートが指導者だし、彼ら虎種族を仲間と信じましょう。」
「ガイア様に誓って、忠誠を宣言したのです。信じるべきです。」
「そうだな!俺が信じてやらないと、彼らに不安を与えるだろう。」
と、トーマスは元帥顔になった。
「少し俺も師団に気合い入れに行くか。」
と、ようやく立ち直った鹿島は叫んだ。
最弱装備の近衛師団にも無反動砲や、
機関銃を取り付けた装甲車両も配備されていて、
少しは見栄えの良い師団に変貌していた。
「師団長閣下。お帰りなさい。」
とシュワルル連隊長の歓迎を受けて、
鹿島は朝礼台と呼ばれる木製の台に上がると、
大きな歓声で迎えられた。
「前科一犯未遂の師団長である。この国では、やり直しができる。
昨日の恥は明日取り返せる。命を第一と思い、挑戦してほしい。」
と、相変わらず短い訓示であったが、歓声は響き渡った。
鹿島は明日の朝、コオル街に出発にあたり、
パトラの子ども達、レイ (礼)とヨイ(義)会う為にパトラの家に向かった。
「あ、お父様だ。剣術やろう。」
「やりましょう。やりましょう。」
と言って、
脇に置いていた木刀をレイとヨイは握りしめて玄関部屋に駆け込んできた。
「まず、お父さんに手を洗ってもらい、
ゆっくりとコーヒーを進めるのが礼儀でしょう。」
と、満面笑顔のパトラは優しく諭した。
「いいよ、いいだろう。では庭に行こう。」
と、鹿島もまんざらでもない態度である。
「まず私が先。」
とレイが正眼に構えた。
「ガッテン。」
と気勢を上げて、レイは頭上から木刀を振り下ろした。
「う。」
と鹿島は三才の子供とは思えない木刀を受けた。
「随分と上達したな。」
「この前お母様と、豚似コヨーテを倒しました。」
「なに!パトラ!どういう事だ!」
「僕は一人で、倒したよ。」
と、ヨイも自慢げに話しだした。
「だって!私はもうヨイには、勝てないのだもの。」
と、やはり満面の笑顔で答えるパトラであった。
「それはそれでいいが、まだ三歳だぞ。魔獣相手はやばいだろう。」
「大丈夫よ。鱗甲冑と尾刃剣も買ってあげたから。」
「いや、まだ三歳だぞ。」
「レイ。ヨイと交代。」
と、パトラは鼻高々にレイに声掛けした。
「やだ!一手当てるまでヤダ!」
とまぶたに涙をためてレイは叫んだ。
「お母様。レイおね~が、あの目をしたら、止まらないよ。
この前、朝からお昼まで、あの顔で、俺に打ち込み続けたのだから。キズナちゃんが止めなかったら、夕方まで、続いていたよ。」
それを聞いていた鹿島は受け止めをやめて力を抜くと、
思いっきりの打ち込みを肩に受けた。
「やったー!勝った!」
と、レイは喜びまわった。
鹿島はトーマス程からの衝撃はないが、かなりの激痛が走った。
「次、僕。」
と、ヨイが撃ち込んできた。
レイから受けた肩の痛さによる左腕にしびれを感じながらも、
何とか一撃はかわせたが、トカゲモドキより強いと鹿島は感じた。
「おい。いつの間にかこんなに強くなった。」
「老樹霊の加護をいただいた時からよ。」
「守るとの加護か?」
「そうみたいですね」
鹿島は寸止めで止めようと思って、思い切り打ちこんでみた。
三十センチ手前で、何かに打ち込んだ木刀を握り絞められた。
鹿島は容赦のないヨイからの打ち込みで、横腹を抑え込んだ。
「大丈夫ですか?」
と、ベッドに寝かされている鹿島に、
パトラの顔が顔面前に置かれていた。
「凄い加護持ちだ。」
「でしょう。
だから今は、剣術の型と、仮想マシーンで練習しています。」
「分かった。四人とも同じ加護持ちか?」
「木刀を持ちたがるのは、レイとヨイだけ。
サトイちゃんとキズナちゃんは嫌がるわ。」
「ヨイはどんだけ強くなるのだろう。」
「あなたよりも、強くなるでしょう。」
「ま、子供に抜かれるのはしょうがないが、末恐ろしい。」
「感情的知性を持ったレイと、体感運動能力性を持ったヨイなのだから、期待できるわ。」
「サトイとキズナも変化が現れているのでしょうか?」
「もちろん、サトイちゃんの記憶力には、あのコーA.Iも驚いているわ。
テテサはキズナちゃんの予知に振り回されているようよ。
でも、いろんな情報の真偽は、的確に教えてくれるらしいわ。」
「まだ二歳の子供がか?」
「子供達は既に十七、八歳のしゃべり方だわ。もう痛みは取れた?」
「ああ~。大丈夫だ。」
「では、手と顔を洗ってきて。食事にしましょう。」
「しかしながら、エルフの万能薬は大したものだ。」
「何言っているの、閣下の体が特別なのよ。
万能薬だけでは、こんなに早く回復しないわよ。」
鹿島は顔と手を洗って食堂に入ると、
レイとヨイはすぐに椅子から立ち上がり、
「お父様ごめんなさい。」
と、お辞儀をしだした。
「強いことはいいことだが、弱い者いじめだけはするなよ。」
「弱い者には興味がない。」
と、レイは横を向いた。
「俺もレイだけを相手にしているが、
サトイちゃんとキズナちゃんは弱いけれど好き。」
「あたしよりも。」
「レイおね~は、お姉さまだ。好きだよ。
でもしつこいからいやだ。いつも俺が負ける。」
「それはあたしが本当に強いからだよ。」
「はい、はい。レイおね~が一番です。」
と、ここでも女が強いようである。
夜のとばりが落ちて、レイとヨイも寝静まり、
イヤホンを耳にエキサイトしたパトラは、
やばい場所で曲に合わせて腰を振っている。
「随分と上手になったようだね。」
「毎日練習していますから。」
「あの踊り子たちのCD踊りが、気に入ったようだね。」
「あまりにも卑猥だけれど、閣下が喜ぶならと練習しました。
が、今では私の好みです。」
「皆に進めたのは、パトラだろう。」
「最初はマーガレットとCDを見ていて、卑猥と言い合ったが、
美魔女さえ負けるほど男が夢中になっていると聞いて、
二人で練習していたら、
みんなに気づかれて、踊り愛好会を立ち上げただけです。」
と言いながら、
一瞬苦し顔になったが、すぐに微笑んで目を浮かせだした。
踊りをやめて体を硬直させたのちに、息を吐きながら、
「あたしだけが楽しんでしまい、ごめんなさい。」
「俺もすごくいい。」
と、鹿島が応えると、
子供が笑って返事するような顔で、また腰振りだけの踊りが始まった。
パトラの二度目の絶頂中に部屋が真っ赤になり、
ガイア女神が現れた。
パトラは恍惚状態のまま、下目線で、
「今日は私専用よ。」
と言うと、目を伏せた。
子供体系と幼顔で覗かれているのに気が付いた鹿島は、
パトラのおもちゃと化した逸物から強さが引いていった。
「ちょっとまだもう少し。」
と鹿島をにらみつけた。
「ガイア様に覗かれている。」
「いつものことでしょう。」
「しかしながら、あの目はやばい。」
と、言うと、パトラも不思議そうに女神様を見ていた。
「女神様。今日は変です。」
「私も印が欲しくなった。」
と、これまで見せたことのない苦悩を顔に表した。
鹿島とパトラは互いに顔を見合わせて、互いに首を横に曲げた。
ガイア女神様は、
パトラからイヤホンを取り上げて、踊り子諜報員の踊りを始めた。
「下手。」
と言って、パトラはドヤ顔になった。
二人は鹿島をほったらかしにして、
床に枕を置いてステージ代わりに踊りの練習を始めた。
朝の小鳥のさえずりで、鹿島は目を覚ますと、
両手に花状態に気が付いた。
「皆さんおはようございます。」
と、鹿島は寝入っている二人に、遠慮気味に声をかけた。
女神様はぱっちりと目を開けるなり、
「肝心のことを頼みに来たのに、大変だ。」
と言って、パトラを揺り起こした。
「パトラ半身よ、わが伴侶よ、頼みがある。
インデアンエルフを救援してくれ。
彼等は絶滅の淵に立たされそうなのだ。」
「インデアンエルフ?聞いたことがない。」
とパトラは怪訝そうに答えた。
「貴方達が、新大陸と呼んでいる土地にいる耳長種族だ。」
「遠すぎでしょう。」
「あなた方なら、たやすいでしょう。」
戦略作戦室では、
トーマスはガイア様をじっと見ているだけで、声を出せずにいた。
「ここが新大陸上空です。コーA.I、人型生命反応を調べてくれ。」
と、マーガレットはコーA.Iに声がけした。
「広範囲に集落が点在していますが、
せいぜい多くても、千五百人以下だけの集落です。
「アップしてくれ。」
と、パトラは声を上げた。
スクリーンに映し出された耳長種族の体は二メートルの巨漢で、
髪の毛は黒く、目は金色の猫目である。
「彼等は夜の闇夜でも、周りの景色を見ることが出来ます。」
その話を女神様が言っている間に、
スクリーンの画面が変わり、見たことのない銃を人種は持っていた。
「銃をアップしてくれ!」
と、鹿島は叫んだ。
「新しいタイプの銃ですね。」
「作りもしっかりしているようだ。」
と、トーマスと鹿島は銃の評価をしだした。
トーマスと鹿島が、
本題から離れだしていることに気が付いたパトラは、
「今は、銃の話題ではないです。」
と、二人の会話に蓋をした。
新大陸の地図が映し出されて、
インデアンエルフの集落が、人口の多さに合わせた丸点で表された。
「余りにも広範囲すぎるな。」
と鹿島がつぶやくと、
「土地の半分は移民入植者の住む場所として仕方がないが、
せめて、一億人が住める土地を確保してやってほしい。」
と女神様は鹿島を見つめた
スクリーンに映し出された二つの映像に見入っていた。
二つの映像には、日出州都上空からの風景と、
虎種族集落広場が映し出されていた。
日出州都の風景は、
上空風景から徐々に街並みの通路へ降りていった。
「以前の面影は無いですね。」
と、マーガレットはショーセツの風貌に見入っていた。
「サクラさんも、以前と比べて、随分と砕けた感じに思えます。」
と、テテサは安心したように微笑んだ。
「サスケの奴も、踊り子たちの相手をした後のやつれはなくて、
生き生きとしてやがる。」
と、鹿島が揶揄すると、
三人の批判のこもった眼光を感じたときに、
アーマートがせわしなく動き回っている姿が映ると話題を変えた。
「アーマートも元気そうだな。」
「アーマートも恋人ができたようで、
恋人を連れて近々帰ってくるようです。」
「日にちが決まったら、連絡をくれ。
兄の威厳で、嫁の心得を、将来の義理の妹に伝えてやる。」
「反対」
と、批判のこもった眼光のまま、
テテサを除いて運営委員会三人はハモった。
「閣下がしゃべると、威厳は無くなります。無口でいてください。」
と、パトラは遠慮なしに批判すると、
ほかの二人と共にマティーレも頷いた。
「恋人を連れて帰ってくるということは、相手はトラ顔?」
「何かを感じさせる言葉だけれど。」
と、ドヤ顔でマティーレは見つめた。
「そそ、そ~な意味ではない。ただ、俺みたいに、、、、、、。いや、かかあ天下、、。いや、アーマート達は、上手くいく良い夫婦になるだろう。」
「今の言葉は本心でしょう。」
「不満があるなら言いなさい。」
と、お腹の大きなマーガレットと不満顔のパトラは鹿島に詰め寄った。
「うほん。それは、ほかの場所でお願いしたい。」
と、トーマスは助け舟を出した。
鹿島は下を向いたまま、トーマスの言葉に頷いている。
映像は、
集落から虎種族の住んでいる虎森と呼ばれている方向へ展開していた。
虎森周りではコンクリートの壁工事が進められている。
「ドドンパ国は、ホントに森への道を遮断するつもりだろうか?」
「毒ガスを用意すると、
コーA.Iから、いや、使徒様からの攻撃を受けると、
被害は自軍だけが受けるので、
さすがに何度も同じ過ちはしなくなったが、
隔離壁を作らなければならない、内政的事情があるのだろう。」
「何のための壁だ?」
「自国民がベルリン村を経由して、虎森に逃げ込めるとの噂に、
多くの人々が、生活の豊かな亜人協力国へ逃げるために、
ベルリン村へ集まってくるので、それを阻止したいのだろう。」
「ベルリン村では総出で、逃げ出す人々の道案内料金を、
主な収入源としての生活の糧としていた様です。」
「ベルリン村では、ベルリンの壁と呼んでいるようです。」
「指導者は常に反抗を恐れているものだ。」
「閣下も恐れているのですか?」
「俺は、歓迎する。」
皆は白けた目をして、
「ここだけの話とするならば、聞き流せるが、
二度とあんな事件を起こすきっかけだけはやめて欲しい。」
「他所では、二度と冗談でも言わないでほしい。」
と、マーガレットとパトラは睨み付けた。
「内戦のあとかたづけは、辛い。」
と、トーマスは何かを思い出したように、周りを見渡した。
「虎種族は、友好を阻害する壁は邪魔だと抗議しているようですが?」
「彼らの歴史的友好は、永いらしいからね~。」
「心情的には、虎種族はドドンパ国側でしょうか?」
「今ではアーマートが指導者だし、彼ら虎種族を仲間と信じましょう。」
「ガイア様に誓って、忠誠を宣言したのです。信じるべきです。」
「そうだな!俺が信じてやらないと、彼らに不安を与えるだろう。」
と、トーマスは元帥顔になった。
「少し俺も師団に気合い入れに行くか。」
と、ようやく立ち直った鹿島は叫んだ。
最弱装備の近衛師団にも無反動砲や、
機関銃を取り付けた装甲車両も配備されていて、
少しは見栄えの良い師団に変貌していた。
「師団長閣下。お帰りなさい。」
とシュワルル連隊長の歓迎を受けて、
鹿島は朝礼台と呼ばれる木製の台に上がると、
大きな歓声で迎えられた。
「前科一犯未遂の師団長である。この国では、やり直しができる。
昨日の恥は明日取り返せる。命を第一と思い、挑戦してほしい。」
と、相変わらず短い訓示であったが、歓声は響き渡った。
鹿島は明日の朝、コオル街に出発にあたり、
パトラの子ども達、レイ (礼)とヨイ(義)会う為にパトラの家に向かった。
「あ、お父様だ。剣術やろう。」
「やりましょう。やりましょう。」
と言って、
脇に置いていた木刀をレイとヨイは握りしめて玄関部屋に駆け込んできた。
「まず、お父さんに手を洗ってもらい、
ゆっくりとコーヒーを進めるのが礼儀でしょう。」
と、満面笑顔のパトラは優しく諭した。
「いいよ、いいだろう。では庭に行こう。」
と、鹿島もまんざらでもない態度である。
「まず私が先。」
とレイが正眼に構えた。
「ガッテン。」
と気勢を上げて、レイは頭上から木刀を振り下ろした。
「う。」
と鹿島は三才の子供とは思えない木刀を受けた。
「随分と上達したな。」
「この前お母様と、豚似コヨーテを倒しました。」
「なに!パトラ!どういう事だ!」
「僕は一人で、倒したよ。」
と、ヨイも自慢げに話しだした。
「だって!私はもうヨイには、勝てないのだもの。」
と、やはり満面の笑顔で答えるパトラであった。
「それはそれでいいが、まだ三歳だぞ。魔獣相手はやばいだろう。」
「大丈夫よ。鱗甲冑と尾刃剣も買ってあげたから。」
「いや、まだ三歳だぞ。」
「レイ。ヨイと交代。」
と、パトラは鼻高々にレイに声掛けした。
「やだ!一手当てるまでヤダ!」
とまぶたに涙をためてレイは叫んだ。
「お母様。レイおね~が、あの目をしたら、止まらないよ。
この前、朝からお昼まで、あの顔で、俺に打ち込み続けたのだから。キズナちゃんが止めなかったら、夕方まで、続いていたよ。」
それを聞いていた鹿島は受け止めをやめて力を抜くと、
思いっきりの打ち込みを肩に受けた。
「やったー!勝った!」
と、レイは喜びまわった。
鹿島はトーマス程からの衝撃はないが、かなりの激痛が走った。
「次、僕。」
と、ヨイが撃ち込んできた。
レイから受けた肩の痛さによる左腕にしびれを感じながらも、
何とか一撃はかわせたが、トカゲモドキより強いと鹿島は感じた。
「おい。いつの間にかこんなに強くなった。」
「老樹霊の加護をいただいた時からよ。」
「守るとの加護か?」
「そうみたいですね」
鹿島は寸止めで止めようと思って、思い切り打ちこんでみた。
三十センチ手前で、何かに打ち込んだ木刀を握り絞められた。
鹿島は容赦のないヨイからの打ち込みで、横腹を抑え込んだ。
「大丈夫ですか?」
と、ベッドに寝かされている鹿島に、
パトラの顔が顔面前に置かれていた。
「凄い加護持ちだ。」
「でしょう。
だから今は、剣術の型と、仮想マシーンで練習しています。」
「分かった。四人とも同じ加護持ちか?」
「木刀を持ちたがるのは、レイとヨイだけ。
サトイちゃんとキズナちゃんは嫌がるわ。」
「ヨイはどんだけ強くなるのだろう。」
「あなたよりも、強くなるでしょう。」
「ま、子供に抜かれるのはしょうがないが、末恐ろしい。」
「感情的知性を持ったレイと、体感運動能力性を持ったヨイなのだから、期待できるわ。」
「サトイとキズナも変化が現れているのでしょうか?」
「もちろん、サトイちゃんの記憶力には、あのコーA.Iも驚いているわ。
テテサはキズナちゃんの予知に振り回されているようよ。
でも、いろんな情報の真偽は、的確に教えてくれるらしいわ。」
「まだ二歳の子供がか?」
「子供達は既に十七、八歳のしゃべり方だわ。もう痛みは取れた?」
「ああ~。大丈夫だ。」
「では、手と顔を洗ってきて。食事にしましょう。」
「しかしながら、エルフの万能薬は大したものだ。」
「何言っているの、閣下の体が特別なのよ。
万能薬だけでは、こんなに早く回復しないわよ。」
鹿島は顔と手を洗って食堂に入ると、
レイとヨイはすぐに椅子から立ち上がり、
「お父様ごめんなさい。」
と、お辞儀をしだした。
「強いことはいいことだが、弱い者いじめだけはするなよ。」
「弱い者には興味がない。」
と、レイは横を向いた。
「俺もレイだけを相手にしているが、
サトイちゃんとキズナちゃんは弱いけれど好き。」
「あたしよりも。」
「レイおね~は、お姉さまだ。好きだよ。
でもしつこいからいやだ。いつも俺が負ける。」
「それはあたしが本当に強いからだよ。」
「はい、はい。レイおね~が一番です。」
と、ここでも女が強いようである。
夜のとばりが落ちて、レイとヨイも寝静まり、
イヤホンを耳にエキサイトしたパトラは、
やばい場所で曲に合わせて腰を振っている。
「随分と上手になったようだね。」
「毎日練習していますから。」
「あの踊り子たちのCD踊りが、気に入ったようだね。」
「あまりにも卑猥だけれど、閣下が喜ぶならと練習しました。
が、今では私の好みです。」
「皆に進めたのは、パトラだろう。」
「最初はマーガレットとCDを見ていて、卑猥と言い合ったが、
美魔女さえ負けるほど男が夢中になっていると聞いて、
二人で練習していたら、
みんなに気づかれて、踊り愛好会を立ち上げただけです。」
と言いながら、
一瞬苦し顔になったが、すぐに微笑んで目を浮かせだした。
踊りをやめて体を硬直させたのちに、息を吐きながら、
「あたしだけが楽しんでしまい、ごめんなさい。」
「俺もすごくいい。」
と、鹿島が応えると、
子供が笑って返事するような顔で、また腰振りだけの踊りが始まった。
パトラの二度目の絶頂中に部屋が真っ赤になり、
ガイア女神が現れた。
パトラは恍惚状態のまま、下目線で、
「今日は私専用よ。」
と言うと、目を伏せた。
子供体系と幼顔で覗かれているのに気が付いた鹿島は、
パトラのおもちゃと化した逸物から強さが引いていった。
「ちょっとまだもう少し。」
と鹿島をにらみつけた。
「ガイア様に覗かれている。」
「いつものことでしょう。」
「しかしながら、あの目はやばい。」
と、言うと、パトラも不思議そうに女神様を見ていた。
「女神様。今日は変です。」
「私も印が欲しくなった。」
と、これまで見せたことのない苦悩を顔に表した。
鹿島とパトラは互いに顔を見合わせて、互いに首を横に曲げた。
ガイア女神様は、
パトラからイヤホンを取り上げて、踊り子諜報員の踊りを始めた。
「下手。」
と言って、パトラはドヤ顔になった。
二人は鹿島をほったらかしにして、
床に枕を置いてステージ代わりに踊りの練習を始めた。
朝の小鳥のさえずりで、鹿島は目を覚ますと、
両手に花状態に気が付いた。
「皆さんおはようございます。」
と、鹿島は寝入っている二人に、遠慮気味に声をかけた。
女神様はぱっちりと目を開けるなり、
「肝心のことを頼みに来たのに、大変だ。」
と言って、パトラを揺り起こした。
「パトラ半身よ、わが伴侶よ、頼みがある。
インデアンエルフを救援してくれ。
彼等は絶滅の淵に立たされそうなのだ。」
「インデアンエルフ?聞いたことがない。」
とパトラは怪訝そうに答えた。
「貴方達が、新大陸と呼んでいる土地にいる耳長種族だ。」
「遠すぎでしょう。」
「あなた方なら、たやすいでしょう。」
戦略作戦室では、
トーマスはガイア様をじっと見ているだけで、声を出せずにいた。
「ここが新大陸上空です。コーA.I、人型生命反応を調べてくれ。」
と、マーガレットはコーA.Iに声がけした。
「広範囲に集落が点在していますが、
せいぜい多くても、千五百人以下だけの集落です。
「アップしてくれ。」
と、パトラは声を上げた。
スクリーンに映し出された耳長種族の体は二メートルの巨漢で、
髪の毛は黒く、目は金色の猫目である。
「彼等は夜の闇夜でも、周りの景色を見ることが出来ます。」
その話を女神様が言っている間に、
スクリーンの画面が変わり、見たことのない銃を人種は持っていた。
「銃をアップしてくれ!」
と、鹿島は叫んだ。
「新しいタイプの銃ですね。」
「作りもしっかりしているようだ。」
と、トーマスと鹿島は銃の評価をしだした。
トーマスと鹿島が、
本題から離れだしていることに気が付いたパトラは、
「今は、銃の話題ではないです。」
と、二人の会話に蓋をした。
新大陸の地図が映し出されて、
インデアンエルフの集落が、人口の多さに合わせた丸点で表された。
「余りにも広範囲すぎるな。」
と鹿島がつぶやくと、
「土地の半分は移民入植者の住む場所として仕方がないが、
せめて、一億人が住める土地を確保してやってほしい。」
と女神様は鹿島を見つめた
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※タイトルを『人間の中身はバグだらけ。 ~俺依存症な引きこもり少女と、セカイ系恋愛ファンタジー~』から変更しました。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる