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140ストリップ.パブ

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 赤トンボ複葉機二十機は、
コーA.Iのシミュレーションで学んだ空気力学応用の編成を組んでパンパ草原上空を飛行している。

 編成に飽きると、
思い思いの方向へ飛んでいき、空の散歩を楽しんでいるようである。

「ミルちゃん。楽しいですか?」
「すごく寒いですが、楽しい。
今度は、あの森の真ん中にある木の上に花が咲いている上空に行って欲しい。」

 一回り大きな赤トンボの搭乗座席は前後に二つあった、

 操縦席にはイアラがいて、
後部座席には母親ツルに抱かれたミルちゃんがいた。

「了解。花の咲いてる木を目指します。」
と、イアラは自慢げにミルちゃんの下僕を演じている。

 イアラ操縦の赤トンボは、
最悪の樹海にある美魔女老樹霊の七千樹齢老木上空に来ると、
ひときわ大きく茂った枝場の間からはピンク色の花が咲き誇っていた。

「五月蠅いハエだな。」
と、枝葉の腕でねそべっていた美魔女はまなこをこすりながら、
起き出してピンク色の赤トンボを睨んだ。

「チョット。これは何?」
と、美魔女はイアラの操縦席前エンジン上部カバーに立った。

「キャー。」
と、母親ツルに抱かれていたミルちゃんは驚いて、
身体を向き直して母親に抱き着いた。

「チョット、美魔女さん。
かわいいあたしの姪を脅かすと、承知しないよ!」
と、イアラは怒鳴った。

「あら。誰かと思ったら、入管管理者じゃない。
変なメガネで顔を隠してたので、わからなかったわ。」
と、驚いた。

「これはゴーグル。そして今は、航空隊隊長だよ。」
「人間が空を飛べるなんて、面白い道具ね。」

「何の用?」
「うるさいので、寝られないから、文句を言いに来たんだけど~。
あなたに会ったら、別の用事を思い出したわ。」
「別の用事?」

「あたしにも、貴方達にも深刻な問題。」
「私たち?」
「あ、あなたではなくて。亜人協力国かな?」

「亜人協力国のことなら、マーガレットかパトラでしょう。」
「あの二人は、私の事が嫌いだから~。
あたしの問題だと解決してくれないでしょう。」

「嫌われることをするからでしょう。」
「だけど、時々、裏の世界の情報が入る場所ですよ。」

「何か大きな問題を知り得たの?」
「亜人協力国にとっては、きっと大問題。」

「どんな情報?」
「大掛かりな情報活動。」
「分かった。作戦室で聞きましょう。」
と、イアラは滑走路に向かった。

 滑走路に着くと、二人の航空隊員がかけてきて、
トンボの座席下に梯子を用意した。

「あの方はもしかして、、、もしかしたら霊魂ですか?」
と、ツルはおびえながらイアラに問いかけた。

「そうです。老樹霊です。」
「老樹霊!あの老樹霊様ですか?
イアラ様は老樹霊様とお知り合いですか?」
「逮捕したことがあります。」

「老樹霊様を逮捕!」
と、ツルは驚きの声を上げた。

「しかしながら、証拠不十分で、直ぐに釈放しました。」
ツルはイアラの顔を見ながら唖然としだした。

「ミルちゃんごめんね。今日はこれでおしまい。また誘いに来ますね。」
「おね~さんありがとう。楽しかった。」
と、ミルちゃんはイアラに抱き着いた。

 梯子を用意した二人の航空隊員は、
イアラの操縦していた複葉機に乗り込むと、そのまま空へ向かった。

 輸送艦作戦室には鹿島とトーマス元帥に加えて、
四人の運営委員会も集まった。

「美魔女さんから報告と、お願いがあるそうです。」
と、イアラはみんなを見渡すと、
四人の運営委員会からの非難を込めた顔を感じたので、
慌てて鹿島の方に向き直した。

「皆さん、お久しぶりですね。皆さん元気なので安心しました。」
と、美魔女は商売顔で挨拶したが、作戦室には静寂だけが返事した。

「あ、そう、帰ろかな~。」
と言って、美魔女は鹿島をにらみつけた。

「分かった。話を聞こう。」
と、鹿島は満面の笑顔を作った。

「本気の笑顔が欲しいな。」
「心から又もやお会いできて、嬉しいです。」
と、目元を痙攣させながら、鹿島は微笑んだ。

 二人のやり取りを見ていたトーマス元帥は、
しびれを切らしたように、
「美魔女さん。イアラ隊長からの報告では、
深刻な問題が発生してる事を知っていると?」

「ストリップーダンサー、マタ.ハリ知っていますか?」
皆は首を傾げた。

「この街の男どもは、みんな知っているのに、
ここの男どもは知らないと?」

「マタ.ハリさんが何かをしたと?」
「半月前頃から~、お店を開いて~、
あたしのお客を~、皆かっさらいやがった!」

 皆は手のひらで目を覆い、肘でテーブルを突いた。

「お前。そんな苦情を、、、言う為に、みんなを集めたのか?」
と、パトラは叫んだ。

「まだ話は、終わってない。ストリップーダンサーを調べていたら、お客はお金を払わないで、
色んな紙の束を渡していたの!おかしいでしょう。」

「ラブレターかもしれないでしょう。」
と、パトラが話し出すと、
マーガレットと鹿島にトーマス元帥は立ち上がり、

「諜報員!」
と、ハモった。

「お客は、どんな職業の人?」
と、マーガレットは冷静になったようで、
美魔女ににこやかな顔を向けた。

「エンジン工場のキシリさんや、キタさんや、
ほとんどは工場勤務だけどね、
マタ.ハリのやつ、あたしの愛人の警察署長を誘惑しやがった。」
「は~」
みんなの合唱が響いた。

「どこの工場勤務者か、わかるか?」

 美魔女は指を折りながら、途中から面倒になったのか、
「殆どの工場ね。」
と、手を広げた。

「あの堅物の警察署長をどのようにして、最初は誘惑したの?」
「夜中に忍び込んで、くわえ込ん、、、。
あたしが本気でかかれば一発よ。」
といった言葉を理解できたのは、
鹿島とテテサ教皇だけのようで、二人の顔だけが真っ赤になった。

 鹿島は美魔女の言葉を遮るように、
「技術を広めて競い合うのはいいことだが、
今は戦争状態なので、それを殺し合うために使われると困るので、
マタ.ハリは産業スパイ行動を、していると断定しよう。」

「警察は、あてにならないのでは?」
「そうだな~。聖騎士団は解散して、
柳生のみんなは里に帰ってしまったので、どうしましょうか?」
と、鹿島は珍しく弱気になった。

「せめて、柳生の里に連絡して、協力を仰ぎましょう。」
と、トーマス元帥は手を挙げた。

「柳生の協力を得るまで、
猫亜人と美魔女さんに協力して頂いてと、、、、。
被害状況と関係者の調査をお願いしよう。」
と、鹿島は美魔女の協力を得る事で反発されないように、
美魔女を猫亜人と同等の立場に立たせた。

 急遽、第三師団長大蛇丸司令官は、戦略作戦室に呼び出された。

「神降臨街の警察署長は、敵のスパイに陥落させられた。
今はイアラが柳生の里に協力を仰ぎに向かっている。
猫亜人と美魔女さんの協力は了解してもらった。指揮を頼む。」
と、鹿島は命じた。

「わかりました。私だけで、猫亜人と美魔女を指揮して、
ストリップーダンサーたちを監視、調査します。」

 監視と調査行動は静かに行われている最中に、
イアラはエアークラフトを使って、
頭領ムネフユとサスケを加えた二十人の配下を連れてきた。

「草家業から足を洗ったと聞いていたが、
呼び出しなどして済まない。」

「先代頭領の遺言は、亜人協力国の守り人に忠誠を誓えと言われています。
草家業からは足を洗って、皆は里に帰ってきましたが、
探索は廃業していません。この身は閣下に捧げます。」

「大蛇丸司令官の指揮下に入って、マタ.ハリなる者と、
それに連なる者たちを調べて、可能ならばその組織を吸収してくれ。」
と、鹿島は命じた。

 ストリップーダンサーとしてのマタ.ハリなる者は、
腰とお尻の動きは特別らしくて、男どもを虜にしてしまうらしい。

 更に夜伽の最中は、
お尻だけが別の生き物と思わせる動きをするらしい。

 との報告が、鹿島にもたらされた。

「こんな調査をした柳生の里の者たちは、平気か?」
「今回、敵が女の集団と聞いて、
サスケ以外はすべて女を連れてきました。」

「全員男に見えたが?」
「男装は彼女らの得意です。」

 ショーパブと呼ばれる店内には多くの客がいて、
ストリップーダンサーたちは怪しげな踊りをしている。

 ステージ前のテーブルを陣取っているのは、
顔を赤らめて酔っぱらっているサスケたちであった。

「おい。みせろ!」
「もっと卑猥に腰を振れ!」
と、叫んでいるのは、男装した柳生里の彼女らである。

「ね~、いい男。あんな女より、あたしが魅力的でしょう。」
と言って、卑猥な言葉を叫んでいる男の股に手を伸ばした。

「立派な逸物!」
と、股に手を伸ばしたのは、先程ステージにいた踊り子であった。

「今日は何かのお祝いですか?」
と、逸物を握り続けながら、
踊り子はエルフの男たちと張り合えるいい男に問いかけた。

「今日は複葉機の納品が終わったので、かなりの金が入ったのさ。」

「複葉機?」
「神降臨街の上空を騒がせている複葉機さ。」

「あ、巨大なトンボですか?」
「そうさ。俺らが設計して、作ったのよ。」

 逸物を握り続けている踊り子は、その手になお一層力を込めると、ステージ横にいる怪しげな目をした踊り子に合図を送った。

「随分と景気の良いお客様ですが、ニーチェ紹介してくれない。」
と、男装した柳生里の彼女たちのテーブルに、
ステージ横にいた一際艶やかな踊り子が現れた。

「うちのママさんです。
この人達は巨大なトンボを設計して、作り上げた人達だそうです。」

「私はマタ.ハリと言います。これからもごひいきください。」
「あたし、この人好みです。唾つけます。」
と、逸物を握り続けている踊り子は、
酔っ払ってはいない様子だが、かなりのテンションである。

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