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136内乱消滅と世界大戦

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 柳生一族の里では、五万の海兵団が向かってくるとの知らせで、
三八歩兵銃を装備した訓練中の二千の忍者らは、二十倍以上の敵に興奮している。

 二千の忍者達の訓練場にジューベーがエミューに乗って現れると、訓練中の忍者達の動作がピタリと停止した。

「兄上様、お帰りなさい。」
と、駆け寄ったのは、
まだ二十歳前後のジューベーの弟ムネフユであった。

「お~、ムネフユ。壮健(そうけん)で何よりだ、」
「兄上様もお元気そうで。」
と応えたムネフユの顔は笑ってはいるが、目は鋭く睨み付けていた。

 二十畳はありそうな薄暗い部屋の囲炉裏(いろり)前で、
灯り替わりなのか小枝を折りながら土鍋の下に折った小枝を加えている宗矩がいる。

「父上様ただいま帰りました。」
とジューベーは囲炉裏(いろり)方へ声がけしたが、
宗矩は小枝を折り続けるだけで、
見向きも言葉も応じることなく無視している。

 無視しているだけなら、親子の諍い(いさかい)ではよくある事だが、宗矩の体からは、薄暗い中でも確認出来る赤紫の殺気が漂っていた。

 ジューベーは父親からの殺気を感じたのか、素早く柄に手を掛けきれる体制をとった。

「お前は腰の業物をどのように感じて拝領した。」
「折られた剣替わりです。」

「義は感じなかったのか?」
「替わりです。」

「頭領たるものは、親兄弟の縁を切ってでも、義は通すことだ。」
「たかが、剣ではないか。」

「お前の目指してるのは剣豪だろう。剣の性能は命を左右する。」
「じれったい言い方しないで、はっきり言ってくれ。」

「柳生の里の重きは、
義を本文として、
人の道を外れない正義を貫き、
相手の思いやりを感じて心でつながる事だ。
義を感じない甲斐性なしのお前は勘当だ。
義を通すことは、里のみんなを守る楯だ。
里のみんなを守れないお前は、二度とこの里へは帰ってくるな。」

「俺達は日陰者から、お天道様の下を堂々他歩けるようになるのだ。」
「すべての草にも里へ帰るように、ムネフユに指示した。
隠密家業は廃止だ。」
「この里の力を捨てると。」

「お前はポール殿と戦って、何を学んだ。」
「互いの剣の違いで、負けてしまった。」

「カントリ国傭兵十万人の消滅をどう思う。」
「俺にはわからない。」

「お前が相手した亜人協力国の守り人と、戦っても理解できないと?
われらが陰に隠れて気配を消せる力を、
見抜くことができた者たちを理解できないと?」
「それは、剣の違いだと言った。彼らが鬼神か魔神だとは思えない。」

「鬼神や魔神ならまだかわいい。
彼等は越境者、、、この世の先から来た人たちだろう。」
「神様だと?」

「神様はガイア女神さまだけだ。」
「たわけた事を、もうろくしたか親父殿。」
「耄碌(もうろく)したかどうか、立ち合いしてやろう。」
「望む処だ。頭領の座は力で奪う。」

 二人の体からは赤紫の殺気が漂うっていた。

 訓練中の二千の忍者らの輪の中で、
宗矩とジューベーは太刀合わせしている。

 二人共天の構えで向き合っているのは、一撃必殺心情の様子である。

 三間(約六メートル)幅の位置に立ち、互いに駆け出した。

 赤鞘から抜かれた鍔に玉石を散りばめた剣の威力は住様しく、
宗矩の持った剣と打ち合うと、宗矩の剣を太刀切った。

 ジューベーの剣は太刀切った勢いそのまま、
宗矩の眉間まで食い込んだ。

「卑怯な!」
ジューベーの予期せぬうめき声が響いた。

 宗矩の脛(すね)からは、
ジャックナイフみたいなばね式の刃が飛びだす仕掛けで、
足の甲にしっかりと刃が固定されている。

 足の甲に固定された刃は、ジューベーの腹を真一文字に割いていた。

「これが俺たちの戦い方だ。
名誉の勝利は義を渡すべき人にあげればいい。
それで俺らは義を通せる。」
と言い終わると、二人の傷口から赤い吹雪が噴き出した。

 モーリ副司令官率いる五万の海兵団は、
柳生の里手前でイエミツからの撤退命令を受け、
行軍を止めたモーリ副司令官は、
親族に類が及ばぬよう願い割腹自害した。

 イエミツも割腹自害しようとしてたようだが、
巴夫人と妻に負担をかけたまま逃げるなと説得されて、
生き恥をさらすのも懺悔だと納得した。

 反乱事件は幕を下ろしたが、
人事の埋め合わせに、戦略運営委員会は苦慮していた。

 日出国州の知事は海軍元帥を兼ねて、ヤンの負担とした。
海兵団司令官には巴夫人にすんなりと決まった。

 鹿島とビリーは、パトラとメイディの前で小さくなっている。

「私たちの心配よりも、子供達の自慢話ばかりしてたそうですが?」
「心配してました。心臓が止まるぐらい心配していました。」
と、鹿島はパトラに平謝りしているそばで、

「私が怪我したことも、一言も報告しなかったらしいですね。」
「あれは自分で怪我したのだから、
わざわざ言いふらすことなど出来ないでしょう。」
と、ビリーもメイディに弁解している。

「心配してますと、アピールするのも愛情の裏返しでしょう。」
「子供達は二番、妻が一番。常識でしょう。」
と、パトラとメイディは鹿島とビリーに、食って掛かっている。

 鹿島とビリーは弁解に精根尽きた様子で、銀河連合語で話しだした。

「子供達にヤキモチ焼かないように、ね!
言いやがったその口で、なんで俺らを責めるのだ。」
「誰がチクったのだろう?」
「マーガレットが言う訳がないし?」
と、鹿島とビリー二人は顔を見合わせると、
「脳筋バカ娘だ!」
と、二人はハモった。

 一方的に攻められていた鹿島等を、救ったのがトーマスであった。
「閣下。西大陸の国々が我が国に、次々と宣戦布告してきました。」

 四人は直ぐに戦略作戦室に急いだ。
「戦争し合っていた国々が、団結したのか?」
と、鹿島は釈然としていない様子である。

「団結したみたいです。
大陸と海峡を挟んだ島国エゲレス国王からさえも、
宣戦布告書に連盟サインがあります。」
と、マーガレットは鹿島に宣戦布告書を差し出した。

「第一次世界大戦かい。敵の兵数はどの位だ。」
「コーA.Iの推測では、百万から三百万人らしいです。」
「随分差があるようだけど?」

「最初は百万の軍だけが向かってきますが、徐々にその数は増えて、三百万の兵が投入できる力があると言ってます。」

「何で団結出来たのだ。」
「各国の農奴達が雲散霧消しているからでしょう。」
「立派な宣戦布告だ。」
と、鹿島はいない相手に皮肉を言った。

 戦略作戦室では、対西大陸軍に対応する為に、
トーマス元帥の熱弁が始まっていた。

「三百万の敵を相手にするので、
白金貨一万貨幣の追加予算を、出していただきたい。」
「そんな支出をしますと、インフレーションになります。」
と、マティー財務担当代表が異議を唱えると、

「海軍省からも追加予算で、早急に戦艦の建造をお願いしたい。」

 マーガレット首席行政長官からは、
「白金貨五千貨幣までは認めましょう。
後はトーマス元帥とヤン海軍元帥で、
追加予算の配分を決めてください。以上です。」

 図らずもメイディは、軍備追加予算に立ち会って居たので、
「驚いた。軍予算は許可制なんだ。」
「普通でしょう。」
と、ビリーは当たり前と言わんばかりである。

「すべての予算を軍事費に運用する王様は、
有能な指導者だと言われているわ。」
「列車の敷設や公共事業に予算を使わないと、
国は発展しないだろう。」
と、ビリーはメイディを諭すように話し出した。

 鹿島とトーマス元帥にヤン海軍元帥の三者会議が行われていた。

「武蔵戦艦型の二艦と巡洋艦十隻は、最低でも欲しい。」
と、ヤン海軍元帥は懇願している。

「建造費はどの位の見積もりだ。」
「白金貨三千貨幣。」
「無茶だ!」
と、トーマス元帥が騒ぎ出した。

「武蔵艦型の一艦と巡洋艦六隻で、なんとかしろ。」
と、鹿島は二人をなだめた。

「では、輸送艦三隻追加してください。」

「で、予算は?」
「戦艦が白金貨五百貨幣で、巡洋艦六隻白金貨一千二百貨幣に、
輸送艦が白金貨百五十貨幣で、合計額は千八百五十貨幣です。」

 トーマス元帥はヤン海軍元帥の予算額を聞いていて、
「残りは三千百五十貨幣か。
五個師団欲しかったが、三個師団しか増やせないか。」
と、天井を見つめた。

「追加予算は、俺が何とかする。暫くはこの予算でなんとかしてくれ。」
と、鹿島は二人に告げた。

 西大陸戦争は、三人に消耗戦になると予感させていた。

 トーマス元帥は三個師団を増やして、予備隊とした。

 さらに西大陸は湿地帯が多いために、
キャタピラー機動車輌一千台を追加した。

 機動車輌工場では、
分担工場がいくつも建造されて、最終組み立て場となった。

 海軍兵学校では追加募集を行い、
休みなしの十二時間の訓練と、知識学習が始まりだした。

 造船所も矢張り分担工場子会社が新設されて、
造船期間は数段の短さになっていた。

 既に西大陸戦争は局地的に事変が起きていて、
戦線は拡大の模様になってきていた。

 トーマス元帥の元には、第二師団や第四師団と第五師団からの、
補給物資の追加が毎日のように伝えられ出した。

 西大陸戦争が勃発した直後に、北の国フィルノルの国王から、
メイディ皇太女に王位継承がなされた。

 メイディ王女は直ぐに亜人協力国への併合を宣告すると、
フィルノル半島二国も亜人協力国に併合を申し込んできたので、
フィルノル半島州として認証された。
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