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131雪の伐採場
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伐採された倒木の枝に掃き出されたように、
一面一帯が真っ白になって視界を遮っていた。
伐採されている針葉樹の周りには、
大勢の犯罪奴隷たちが集まり始めた。
「おい。お前等大丈夫か?」
鹿島は足で受け止めた枝を蹴飛ばしながら、雪の中から顔を出した。
「何でこっちに倒すのだ。」
「何言っていんだ。こっちに倒すのは事前に教えていただろう。」
「聴いていねえ~。」
「デブは聞いていただろう?」
雪の中に頭から突っ込んでいたデブは、身体を引き出されると、
「すまねぇ、方向を勘違いしていたようだ。
それに俺の名はデイブだ。何度訂正させるのだ。」
と、雪を払う素振りで、
話題をそらすかのように頭を搔きながら怒り出した。
「ありがとよ兄弟。」
と、伐採された倒木の方向を追及される事を避けたい為か、
デイブは鹿島に思いがけない言葉を吐いて頭を下げた。
「兄弟と言われる筋合いはねうよ。」
と、鹿島は苦言を抑えてかめんどくさそうに雪を払っている。
鹿島はツンドラの寄宿舎と呼ばれる四人部屋の監獄に、
二人一組で鎖に繋がれて収容されていた。
鹿島は、もう一組の二人はうるさくよくしゃべる奴らだと思いながらも、聞き耳だけは立てていた。
「何で、ここが寄宿舎なのだよ。」
「俺らの手間賃から、宿泊代をピンハネするからさ。」
「は?お前、俺らの賃金は保証されているのを、知らないのか?」
「だから、賃金は保証されているが、
ここでは、特別食事代と特別牢獄代を引かれるから、
寄宿舎と呼ぶのだ。」
「ここが特別かいィ?」
と、鎖でつながれている二人はよく喋り合うが、
鹿島とデイブも鎖で繋がっているのに、
互いにあまり話ししたがらない。
鹿島は伐採作業を終わり、
ツンドラ寄宿舎で五日目の白夜の寒い夜を迎えたとき、
草のサスケが刑務官として現れた。
サスケは鹿島と目を合わせることなく、
鋭い眼光で牢獄三人を見渡しながら草同士の挨拶の指を絡ませて草の印をした。
鹿島はサスケが草であることは知っているのに、
目を合わせることなく草の印をした事を不思議に思った。
鹿島はその夜寝床に入ったが、サスケと初めて会ったときは、
鋭い眼光で睨まれた事を思い出して寝付けないでいると、
よくしゃべる二人はかなり低い声でひそひそ話を始めた。
「あの新入り、何の意味の挨拶だったのだ。」
「自己紹介だろう」
その声は常人では聞き取れない低い声であったが、
ガイア女神様から贈られた力に依って、
五感の鋭くなっていた鹿島には聞き取れた。
「うほん。」
と、デイブが咳をすると、
よくしゃべる二人は咄嗟に毛布を頭まで被った。
鹿島はデイブが咳すると咄嗟に毛布をかぶった事で、
三人の関係を理解した。
鹿島は、サスケが草の挨拶をして鋭い目が三人に向けられた事で、
三人は仲間で柳生の草であり、
柳生一族だと伝えたかった事をやっと理解した。
と、同時に柳生一族は敵か味方かの疑念も湧いてきた。
柳生一族が味方であるならば、
サスケは無言で指を絡ませる必要など無いはずである。
鹿島は背中に悪寒を覚えて、
何か大きな陰謀が動き出したと思わされた。
咳をしたデイブは、
倒された倒木が自分達に迫った時、
斧を避けるように鹿島の影に入ったので、
咄嗟にデイブを抱える事が出来たのだと鹿島は思い出した。
何故デイブは倒木の倒れる方向を知っていたのに、
敢えてその方向に鹿島を誘った目的は、
デイブは倒木の枝葉に当たったとしても大した怪我をしないのを知っていて、
鹿島を斧の標的にさせるのが本来の目的だったのだと思った。
点と点が繋がった事で、鹿島は自分の敵がおぼろげに浮かんだ。
テテサ教皇が敵であるはずはないし、
聖騎士団長であり宗教を重んじる司法長官サクラであるならば、
法治裁判を敢えて否定して、
情緒法裁判に重きを置いた判決だと理解していたが、
自分を狙った柳生の草が現れた事で、
今ここに居る原因は、この判決は仕組まれたことであり、
後ろに隠れている大物暗殺者は、
ガイア教会の付属となって居る柳生の草を使える立場の人物と、
推測せざるを得なくなっていたが、
だが、サスケの立場がよく理解できないでもいる。
サスケは宗矩には絶対の忠誠を持っているはずであり、
サスケの行動からすると、鹿島に利するその意味を推測するが、
どうしても合点がいかない様子である。
サスケは新しく赴任してきた監視長と、
牢獄監視責任者室でこれまでの経過と、
囚人奴隷42号の状況と草の監視体制を説明した。
「奴隷42号に付けてある、例の奴らは信用できそうか?」
「信用などしていません。」
「だな。道具は用意した。あとは結果待ちだ。」
と、にやけた。
「お館様から、私宛の追加指令を受けていませんでしょうか?」
「追加指令?何も無い。今の任務を継続してくれ。」
と言われたサスケの顔には安どが漂った。
無機物に感動しなくなっている鹿島だが、
朝日に照らされたダイヤモンドダストの輝きに一瞬目が移った。
ダイヤモンドダストの先では、
犯罪奴隷伐採工事には珍しいよく喋り合う二人はチェーンソーノコギリを持って、
さらに興奮したように騒いでいる同室の二人を眺めている。
「おい!チェーンソーノコギリの扱いには気を付けろ!」
と、太い針葉樹に斧を食い込ませている鹿島をサスケは無視して通り過ぎながら、
騒いでいるチェーンソーノコギリを持っている二人に注意した。
「おい。今度は俺がやるよ。交代しよう。」
と珍しくデイブが鹿島に声掛けして、斧を取り上げた。
鹿島は無言でデイブに斧を渡すと、
斧で切りのけた部分を搔き集めて足元に積み上げだした。
「そろそろ、ノコギリの出番でないか?」
と、チェーンソーノコギリを持った二人は、
斧で三角に切り込んだ針葉樹に近づいてきた。
「そ~だな。頼むわ。」
と言って、デイブは鹿島の後ろに回った。
チェーンソーノコギリのエンジンがけたたましく響くと、
周りの皆が注目しだしたのにも構わず、
騒がしいい二人は息を合わせて鹿島に向かった。
チェーンソーノコギリを持った男は、
けたたましく響くチェーンソーノコギリの根元を腹に固定して、
横に振りながら鹿島に迫った。
鹿島はチェーンソーノコギリを持った男に向いて身構えると、
それに合わせるように、デイブは後ろから鹿島を羽交い絞めして来た。
チェーンソーノコギリの動きは、
トカゲモドキからしたらスローモーションにしか感じないし、
鹿島を羽交い絞めして来た男の力は、
子供の力位にしか感じて無かった。
チェーンソーノコギリを持った男の目にサスケの飛礫(つぶて)が飛び込み、
更に鹿島は自分の周りに搔き集めていた木っ端木材をけり込んで、
チェーンソーノコギリを持った男と相方の股と弁慶の泣き所(向う脛)に木っ端を蹴り上げ飛ばした。
チェーンソーノコギリを持った男は苦痛な表情に成ると、
鎖に繋がれている相方と歩調が乱れてバランスを崩してしまった。
バランスを崩した男は、
振り回しながら持っていたチェーンソーノコギリを、
相方の腹に食い込ませてしまった。
いや、相方もバランスを崩した上に雪に足を取られた状態から、
自分でチェーンソーノコギリに向かって行った様子にも見えた
「げえーーー」
「プチュッツ。パシャ~」
積もっている雪は真っ赤に染まり、
所々に白い塊が赤い一面に飛散しているが、
その白い塊は雪ではなくて脂肪肉だと見受けられた。
鹿島は羽交い絞めして来た男の腕をつかみ、
両手背負い投げでデイブの頭を倒木予定の針葉樹に投げ飛ばした。
デイブは、
泡を吹いて顔を正常な状態とは思えない背中側に向けている。
サスケは鹿島の前に飛び出してくると、
チェーンソーノコギリを相方の腹に食い込ませて、
まだ握り込んで呆然としている男の腹に、
渾身の当て身を食らわせて気を失わせた。
サスケは鹿島の足の鎖に雪を被せながら、
「閣下は、此れからはコオル街の二代目で、
四十一号デイブと名乗ってください。」
と云いながら、足の鎖にカギを差し込み素早く鎖を雪の中に突っ込み、デイブの足の鎖の部分を再び鹿島の足に固定した。
「閣下。この鎖を引きちぎってくれ。」
と雪の中に突っ込んだ鎖を指差した。
鹿島は、
素早く雪の中で足首につけていた輪っか部を二つに引きちぎった。
周り四方真っ赤な雪になった修羅場を囲むように、
犯罪奴隷たちが集まりだしてきた。
牢獄監視責任者らしき男が騒ぎの輪の中に現れて、
「何事だ!」
と、周りの群衆と化した犯罪奴隷たちを解散させるよう、
引き連れてきた牢獄監視兵に指示しだした。
「サスケ。状況を説明しろ」
「10001号は足を滑らせて、
10002号を誤って殺害したようです。」
「後ろの首がへし折れている男は、何者だ。」
「例の42号です」
「なに?42号。死因は?」
「逃亡を図って、雪に足を滑らせたのか、
自分で木にぶっつかったようです。」
牢獄監視責任者はニヤリと笑うと、
「逃亡を図って、事故で死んだ。
後ろから押して手助けした者は居ないだろうな?」
「誰も触ってはいないとのことです。」
「後ろに控えているのは?」
「コオル街の二代目草で、41号デイブと言います。」
「41号デイブ?二代目草ならば、一度も里帰りした事など無かったであろう。里に帰りたいのであれば、口添えが出来るぞ。」
「一旦コオル街に帰り、考えます。」
と、鹿島は答えた。
顔を相方の血と脂肪肉を顔中にこびりつかせた男は気が付くと、
弁解の言葉を出そうと口元を開いた。
牢獄監視責任者は居合一声で剣を鞘から抜き出し、
開いた口元を遮るようにそのまま一撃動作で、
チェーンソーノコギリ男の首をはねた。
「所詮、裏家業の流れ者達だ。
伐採作業場で混乱を起こした責任は取らせるべきだろう。」
と言って、ニヤリと笑ったが、鹿島には単なる口止めだと聞こえた。
一面一帯が真っ白になって視界を遮っていた。
伐採されている針葉樹の周りには、
大勢の犯罪奴隷たちが集まり始めた。
「おい。お前等大丈夫か?」
鹿島は足で受け止めた枝を蹴飛ばしながら、雪の中から顔を出した。
「何でこっちに倒すのだ。」
「何言っていんだ。こっちに倒すのは事前に教えていただろう。」
「聴いていねえ~。」
「デブは聞いていただろう?」
雪の中に頭から突っ込んでいたデブは、身体を引き出されると、
「すまねぇ、方向を勘違いしていたようだ。
それに俺の名はデイブだ。何度訂正させるのだ。」
と、雪を払う素振りで、
話題をそらすかのように頭を搔きながら怒り出した。
「ありがとよ兄弟。」
と、伐採された倒木の方向を追及される事を避けたい為か、
デイブは鹿島に思いがけない言葉を吐いて頭を下げた。
「兄弟と言われる筋合いはねうよ。」
と、鹿島は苦言を抑えてかめんどくさそうに雪を払っている。
鹿島はツンドラの寄宿舎と呼ばれる四人部屋の監獄に、
二人一組で鎖に繋がれて収容されていた。
鹿島は、もう一組の二人はうるさくよくしゃべる奴らだと思いながらも、聞き耳だけは立てていた。
「何で、ここが寄宿舎なのだよ。」
「俺らの手間賃から、宿泊代をピンハネするからさ。」
「は?お前、俺らの賃金は保証されているのを、知らないのか?」
「だから、賃金は保証されているが、
ここでは、特別食事代と特別牢獄代を引かれるから、
寄宿舎と呼ぶのだ。」
「ここが特別かいィ?」
と、鎖でつながれている二人はよく喋り合うが、
鹿島とデイブも鎖で繋がっているのに、
互いにあまり話ししたがらない。
鹿島は伐採作業を終わり、
ツンドラ寄宿舎で五日目の白夜の寒い夜を迎えたとき、
草のサスケが刑務官として現れた。
サスケは鹿島と目を合わせることなく、
鋭い眼光で牢獄三人を見渡しながら草同士の挨拶の指を絡ませて草の印をした。
鹿島はサスケが草であることは知っているのに、
目を合わせることなく草の印をした事を不思議に思った。
鹿島はその夜寝床に入ったが、サスケと初めて会ったときは、
鋭い眼光で睨まれた事を思い出して寝付けないでいると、
よくしゃべる二人はかなり低い声でひそひそ話を始めた。
「あの新入り、何の意味の挨拶だったのだ。」
「自己紹介だろう」
その声は常人では聞き取れない低い声であったが、
ガイア女神様から贈られた力に依って、
五感の鋭くなっていた鹿島には聞き取れた。
「うほん。」
と、デイブが咳をすると、
よくしゃべる二人は咄嗟に毛布を頭まで被った。
鹿島はデイブが咳すると咄嗟に毛布をかぶった事で、
三人の関係を理解した。
鹿島は、サスケが草の挨拶をして鋭い目が三人に向けられた事で、
三人は仲間で柳生の草であり、
柳生一族だと伝えたかった事をやっと理解した。
と、同時に柳生一族は敵か味方かの疑念も湧いてきた。
柳生一族が味方であるならば、
サスケは無言で指を絡ませる必要など無いはずである。
鹿島は背中に悪寒を覚えて、
何か大きな陰謀が動き出したと思わされた。
咳をしたデイブは、
倒された倒木が自分達に迫った時、
斧を避けるように鹿島の影に入ったので、
咄嗟にデイブを抱える事が出来たのだと鹿島は思い出した。
何故デイブは倒木の倒れる方向を知っていたのに、
敢えてその方向に鹿島を誘った目的は、
デイブは倒木の枝葉に当たったとしても大した怪我をしないのを知っていて、
鹿島を斧の標的にさせるのが本来の目的だったのだと思った。
点と点が繋がった事で、鹿島は自分の敵がおぼろげに浮かんだ。
テテサ教皇が敵であるはずはないし、
聖騎士団長であり宗教を重んじる司法長官サクラであるならば、
法治裁判を敢えて否定して、
情緒法裁判に重きを置いた判決だと理解していたが、
自分を狙った柳生の草が現れた事で、
今ここに居る原因は、この判決は仕組まれたことであり、
後ろに隠れている大物暗殺者は、
ガイア教会の付属となって居る柳生の草を使える立場の人物と、
推測せざるを得なくなっていたが、
だが、サスケの立場がよく理解できないでもいる。
サスケは宗矩には絶対の忠誠を持っているはずであり、
サスケの行動からすると、鹿島に利するその意味を推測するが、
どうしても合点がいかない様子である。
サスケは新しく赴任してきた監視長と、
牢獄監視責任者室でこれまでの経過と、
囚人奴隷42号の状況と草の監視体制を説明した。
「奴隷42号に付けてある、例の奴らは信用できそうか?」
「信用などしていません。」
「だな。道具は用意した。あとは結果待ちだ。」
と、にやけた。
「お館様から、私宛の追加指令を受けていませんでしょうか?」
「追加指令?何も無い。今の任務を継続してくれ。」
と言われたサスケの顔には安どが漂った。
無機物に感動しなくなっている鹿島だが、
朝日に照らされたダイヤモンドダストの輝きに一瞬目が移った。
ダイヤモンドダストの先では、
犯罪奴隷伐採工事には珍しいよく喋り合う二人はチェーンソーノコギリを持って、
さらに興奮したように騒いでいる同室の二人を眺めている。
「おい!チェーンソーノコギリの扱いには気を付けろ!」
と、太い針葉樹に斧を食い込ませている鹿島をサスケは無視して通り過ぎながら、
騒いでいるチェーンソーノコギリを持っている二人に注意した。
「おい。今度は俺がやるよ。交代しよう。」
と珍しくデイブが鹿島に声掛けして、斧を取り上げた。
鹿島は無言でデイブに斧を渡すと、
斧で切りのけた部分を搔き集めて足元に積み上げだした。
「そろそろ、ノコギリの出番でないか?」
と、チェーンソーノコギリを持った二人は、
斧で三角に切り込んだ針葉樹に近づいてきた。
「そ~だな。頼むわ。」
と言って、デイブは鹿島の後ろに回った。
チェーンソーノコギリのエンジンがけたたましく響くと、
周りの皆が注目しだしたのにも構わず、
騒がしいい二人は息を合わせて鹿島に向かった。
チェーンソーノコギリを持った男は、
けたたましく響くチェーンソーノコギリの根元を腹に固定して、
横に振りながら鹿島に迫った。
鹿島はチェーンソーノコギリを持った男に向いて身構えると、
それに合わせるように、デイブは後ろから鹿島を羽交い絞めして来た。
チェーンソーノコギリの動きは、
トカゲモドキからしたらスローモーションにしか感じないし、
鹿島を羽交い絞めして来た男の力は、
子供の力位にしか感じて無かった。
チェーンソーノコギリを持った男の目にサスケの飛礫(つぶて)が飛び込み、
更に鹿島は自分の周りに搔き集めていた木っ端木材をけり込んで、
チェーンソーノコギリを持った男と相方の股と弁慶の泣き所(向う脛)に木っ端を蹴り上げ飛ばした。
チェーンソーノコギリを持った男は苦痛な表情に成ると、
鎖に繋がれている相方と歩調が乱れてバランスを崩してしまった。
バランスを崩した男は、
振り回しながら持っていたチェーンソーノコギリを、
相方の腹に食い込ませてしまった。
いや、相方もバランスを崩した上に雪に足を取られた状態から、
自分でチェーンソーノコギリに向かって行った様子にも見えた
「げえーーー」
「プチュッツ。パシャ~」
積もっている雪は真っ赤に染まり、
所々に白い塊が赤い一面に飛散しているが、
その白い塊は雪ではなくて脂肪肉だと見受けられた。
鹿島は羽交い絞めして来た男の腕をつかみ、
両手背負い投げでデイブの頭を倒木予定の針葉樹に投げ飛ばした。
デイブは、
泡を吹いて顔を正常な状態とは思えない背中側に向けている。
サスケは鹿島の前に飛び出してくると、
チェーンソーノコギリを相方の腹に食い込ませて、
まだ握り込んで呆然としている男の腹に、
渾身の当て身を食らわせて気を失わせた。
サスケは鹿島の足の鎖に雪を被せながら、
「閣下は、此れからはコオル街の二代目で、
四十一号デイブと名乗ってください。」
と云いながら、足の鎖にカギを差し込み素早く鎖を雪の中に突っ込み、デイブの足の鎖の部分を再び鹿島の足に固定した。
「閣下。この鎖を引きちぎってくれ。」
と雪の中に突っ込んだ鎖を指差した。
鹿島は、
素早く雪の中で足首につけていた輪っか部を二つに引きちぎった。
周り四方真っ赤な雪になった修羅場を囲むように、
犯罪奴隷たちが集まりだしてきた。
牢獄監視責任者らしき男が騒ぎの輪の中に現れて、
「何事だ!」
と、周りの群衆と化した犯罪奴隷たちを解散させるよう、
引き連れてきた牢獄監視兵に指示しだした。
「サスケ。状況を説明しろ」
「10001号は足を滑らせて、
10002号を誤って殺害したようです。」
「後ろの首がへし折れている男は、何者だ。」
「例の42号です」
「なに?42号。死因は?」
「逃亡を図って、雪に足を滑らせたのか、
自分で木にぶっつかったようです。」
牢獄監視責任者はニヤリと笑うと、
「逃亡を図って、事故で死んだ。
後ろから押して手助けした者は居ないだろうな?」
「誰も触ってはいないとのことです。」
「後ろに控えているのは?」
「コオル街の二代目草で、41号デイブと言います。」
「41号デイブ?二代目草ならば、一度も里帰りした事など無かったであろう。里に帰りたいのであれば、口添えが出来るぞ。」
「一旦コオル街に帰り、考えます。」
と、鹿島は答えた。
顔を相方の血と脂肪肉を顔中にこびりつかせた男は気が付くと、
弁解の言葉を出そうと口元を開いた。
牢獄監視責任者は居合一声で剣を鞘から抜き出し、
開いた口元を遮るようにそのまま一撃動作で、
チェーンソーノコギリ男の首をはねた。
「所詮、裏家業の流れ者達だ。
伐採作業場で混乱を起こした責任は取らせるべきだろう。」
と言って、ニヤリと笑ったが、鹿島には単なる口止めだと聞こえた。
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