【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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116近衛師団

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 モモハラ草原の中心にできた耳長街の裁判所では、
各州から集められた司法官によって、
元オトロシ国犯罪者の判決が言い渡されていった。
 
 耳長街の裁判所で明かされたのは、
真ガイア教会による資金源確保の為に、
誘拐は組織的に行なわれていた事であった。

 真ガイア教会関係者は新たに五千人にも及んだので、
森林伐採には事欠かないようである。

 耳長種族を所有していた者等も、
虐待の罪が加算されて重い罪となった。
王をはじめ、王族も貴族者等も慣れない仕事で苦労するであろう。
 
 オトロシ州に置いて官史の追加追加により、
亜人協力国の州と神降臨街から多くの官僚を派遣してしまったので、
各役所はかなりの弊害が出てしまっていた。

 特に一番被害を受けたと騒いでいるのが、
脳筋ムキムキ娘事シーラーであった。

 生まれた娘の祝い金が出ないと騒いでいたが、
ただ遅れているだけだとの説明で納得した様子でもある。
 
 オトロシ州の西と南側の国境線対岸では、
国境先に多くの兵が集結しだしたので、きな臭くなりだしていた。

 トーマス元帥は、戦力補充と強化の為に各州から兵士の募集をすると、
軽く三個師団を編成することができたので、
新たに三つの師団を編成した。

 日出国州と塩州に鉄州の兵をまとめて、
十万の第一海兵団として司令官を元日出国王イエミツを指名すると、
なんとイエミツは、元モーリ王を副指令に指名したのであった。

 第七師団の司令官には、参謀ポールが指名された。

 そして、第八師団は自薦、他薦の応募がかなりあったが、
候補者選択の監査が必要になった。

 第八師団に於いては、
兵と下士官は既に編成されていた師団であったが、
司令官未定のままであったのを幸いと
鹿島は訓練指導の名目で、司令官の最終承諾者は自分だと主張すると、
仮の司令官だと言って強引にその地位に着いた。
いや、奪い取った。

 鹿島の気持ちがわかるトーマス元帥は仕方なしに、
第七師団の呼び名は近衛師団と名前を変えた。

 近衛師団と第七師団はともに七万の兵力で、
機動車輌にともに五十台が配備されている弱小師団であった。

 近衛師団は異種混同部隊で、
耳長種族三万五千人で人種も三万五千人である。
 
 トーマス元帥が近衛師団を交付したら、
各師団から転属願いが殺到して、又もやトーマス元帥を悩ませた。

 極めつけは、マルティーン司令官とヒルルマ司令官であった。

 二人共近衛師団の連隊指揮官の願い上申書を、
トーマス元帥に送ってきたがすぐに却下された。

 しかしながら、トーマス元帥が全面的に認めたのが、
カナリア街の若き戦士達七名とパンパ街出身者に、
パトラ指揮するパトラ親衛隊の編入を認めた。

 パトラに至っては、
親衛隊の指揮官となる元パトラ親衛隊の解散式場で、

「閣下に何かあったら、全員エルフ社会から追放する」
と宣言した。
 
 教育参謀達は、近衛師団に対しての訓練は特に過酷であった。

 ホルヘに至っては、連帯責任において鹿島を痛烈に批判するばかりか、近衛師団兵の前でこことばかりに鹿島を罵倒した。

 カナリア街の若き戦士達七名は、自分の所為で鹿島に恥をかかせたと、悔しがっている様子だ。

 カナリア街の若き戦士達七名の奮起を見たほかの中隊も、
感化された様子で訓練に音を上げる者等も居なくなった。

 カナリア街の若き中隊長戦士達七名の属している連隊と、
元パトラ親衛隊であった耳長種族連隊は、
たがいに負けまいとライバル意識が芽生えていた。
 
 近衛師団と第七師団は、風雲急を告げている砂漠地帯へ進軍した。

 鹿島は、
日に何度か起こる超新星の二次三次爆発による磁気嵐に不安を感じながら、
機動車輌の助手席に乗り込んだ。
 
 第五師団と第六師団はそれぞれ別々に進軍したが、
第六師団が拠点に着いた時には、
既に第五師団と新興国家モーゴー国のフタコブエミュー隊との戦闘は開かれていた。
 
 第五師団では、
耳長種族の育てたエミューは砂漠での走りは苦手のようで、
新興国家モーゴー国のフタコブエミューの走りには、
付いて行けない様子である。

 原因は蹄(ひずめ)の違いらしい。
 
 砂漠地帯に面した耕作地帯の村では、
頻繫に新興国家モーゴー国のフタコブエミュー隊に襲われ出した様子である。

 第六師団は襲われた耕作地帯の村々や、
襲撃者から標的されそうな村々の住民を護衛しながら避難させている。

 第五師団は避難民と後ろを警戒しながら、耕作地と砂漠地帯の中間で、モーゴー国のフタコブエミュー隊の迎撃しようと備えている。

 鹿島に第五師団ヒビイからの定期連絡が入った。

 内容は小銃の作動不良が起きているとのことである。

 そして、鹿島が感じた通信の雑音をも含めて、コーA.Iに連絡した。

「小銃の作動不良と、無線の雑音の原因と対策を調べてくれ。」
と、鹿島は不安げに話した。

「すべての原因は砂でしょう。
砂が入らないように小銃も無線機も布で覆うべきです。」

「無線の雑音は超新星が原因ではないと?」
「今は電磁層を狂わせる波長は観測できません。」

 鹿島は直ぐにポール司令官と中隊長以上を集めて、
小銃の作動不良と、無線の雑音の原因を伝えると、
対策をも徹底するよう命じた。
 
 近衛師団と第七師団は小一時間の休憩を終わり、
レーザー銃を持った耳長種族を先頭に再び進軍しだした。

 ただ、レーザー銃を携帯しているのは中隊長以上で有り、
その数は五十丁だけである。
 
 近衛師団は小高い森のすそ野を迂回すると、
まだ青々とした麦畑の中に、一部屋と釜戸だけしかない様な、
耕作者の家屋と見受けられる平屋が五十戸程建つ村に着いた。

「閣下。村の住人は誰一人といません。
村の中程の家に入られてお休み下さい。」
と、馬に乗った偵察将校らしき、耳長種族の男が鹿島の馬わきに並んだ。

「家屋の中には誰も入れるな。作物や物には手を付けるな。」
と、鹿島は無表情で答えた。

「畏まりました。徹底させます。」
と返事して、先頭の連隊長の方へ駆け出して行った。

 近衛師団はそのまま村を通り過ぎて、
家畜は一頭も見当たらない広い牧場(まきば)に着いた。

 広い牧場(まきば)が今夜の野営地のようであるが、
既に妹太陽は月と並んで東の空に顔を出していた。

 近衛師団と第七師団の連隊長全員は鹿島の前に集合すると、
「馬とエミューはモモハラ草原に送る。」
と鹿島が宣言すると、連隊長全員は反対した。

「モーゴー国のエミュー隊に対抗できなくなります。」
「われらのエミューでは、彼等のエミューに対抗できないだけでなく、砂漠での進行には邪魔になるだけだ。」

「邪魔になるとは?」
「乾草の運搬と水の確保だ。
十日間ぐらいの期間であれば、
乾草を刈り取るも運搬も可能であるだろうが、
それ以上になった場合には、維持は困難であろう。」

 確かにそうだと、みんなは気が付いた様子である。 

 近衛師団と第七師団の乗馬とエミューは、
運搬用を除いて全てモモハラ草原に放牧すると決定された。

 放牧とは聞こえはいいが、打ち捨てるのである。

 乗馬とエミューを打ち捨てに行くのは、
近衛師団の耳長種族千名も併せて発令された。
 
 鹿島は、近衛師団と第七師団の誰もが、
森や草原での戦いは慣れてはいるが、
砂漠での戦いは初めてであろうと思いながら、
陸戦隊時代の戦い方を考えた。

 陸戦隊時代では、
砂漠地帯でのトカゲモドキや蟲との戦闘は常であった。

 その時何に不自由したか、何がつらかったかを考えている様子であるが、銀河連合時代の補給部隊は陸戦隊から常に罵倒されている光景が浮かぶと、今の補給体制が盤石ではないと気が付いた。

 自分の周りだけなら水魔法で水は出せるが、
七万人分の水の確保は無理があった。

 妹太陽の為に寝付けないのか、鹿島の行動は早かったが、
「テテサ教皇様、聖杯をお貸しください。」
といった後にしまったと思ったようで、

「テテサの体は大丈夫ですか?」
と付け加えている。

「ひどい。私のことはついでなのね。」
「ごめんなさい。作戦を考えていたら、急に水の補給が万全ではないと気が付いて、すぐに要求だけが出てしまいました。」

「今回だけは許します。
ガイア様からの伝言で、
聖杯は元の形からかなり変形してしまっていますが、
イアラ航空隊長に連絡して届けさせます。」

「お腹の様子はどうですか?」
「よく動く子供です。」
「元気が一番だ。」

「あと、メイディの事ではありがとう。」
「あれはビリーの事でもあったので、気にしないで下さい。
帰りましたら、いの一番で駆け付けます。」
と言って鹿島は無線を切ったが、身体中汗だらけである。

 妹太陽と月が西の地平線に沈むと、
兄の太陽は東の空を真っ赤にした後に現れた。

 兄の太陽が現れると、イアラの操縦するエアークラフトも現れた。

 聖杯の形は元の形を思い出せない変わりようで、
七福神の布袋様の持っている袋に似た鱗製袋に、
放水口が取り付けてあった。
 
 鹿島は連隊長全員の前で元聖杯を示して、
「水は十分に確保したが、乗馬とエミューを放牧する事に変更はない。」

 全員はやはりえさの確保が無理であるし、
砂漠での戦いでも無理だと気が付いてくれた様子であったので鹿島は満足した。

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