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108ボイラー艦、戦艦日進と春日

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 真っ黒に日焼けしたヤンが要約帰港して来て、
鹿島の執務室に、
未来の妻巴姫を伴って結婚式参加への伺いと航海報告に現れた。

「ただいま戻りました。」
と、ヤンが敬礼姿勢で挨拶すると、
「お久し振りでございます。私共が留守の間、父や叔父を助けていただいたとのことで、誠にありがとうございました。」
と、巴はヤンの真似をして敬礼姿勢で挨拶した。

「無事に帰れてよかった。ま~これからは、俺たちは家族だ。」
と言って、特別上等なソファーに二人を案内した。

 ヤンの結婚式は一月後に日出国州都にて行う予定である。

 鹿島は南の国々や島々から購入してきた購入リストに目をやると、
バナナに似た果物から、各香辛料と生ゴムが目についた。

 特に生ゴムは、工業部にとっては合成樹脂ゴムを採用してはいるが、自然ゴムは喉から手が出るほどの必需品らしい。

 生ゴムを生産できる島々は、
エゲレス国やラキン国の支配下にあるために、入手が困難のようである。

「閣下。いい知らせと、悪い知らせがあります。」
「いい知らせから、頼む。」
「二つは重なります。ラキン国と戦争状態になりました。」
「は?戦争状態の話がいい知らせ?」
「はい。これでラキン国の植民地を、解放吸収出来ます。」
「開戦理由は?」
「我々が持ち出した商品は、かなりの金額になった上に、
豊富な品物を積んで出港したのを確認されて、
ラキン国の軍艦兼商船船団に海上で襲われました。」
「相手を沈めたのか?」
「火をつけて沈めました。」
「コーA.I。ヤンの戦闘状況をモニターしてくれ。」

 執務室の壁がスクリーンになり、
日章旗をはためかせる二本マストの帆船の後ろから、
大型弩弓と鉄製の招きかがり火を積んだ、
はためくラキン国旗を三本マスト帆船の最上に掲げた三隻の帆船が追いかけている。

 二本マスト帆船は程なく三本マスト帆船に追いつかれて、
大型弩弓から離された石の塊と火矢の飛来を受けだした。

 二本マスト帆船は飛来したそれら等をうまくすり抜けて、
ヤンは後ろの三隻の帆船マストをレーザーガンで倒したが、
マスト一本だけ倒れた一隻は直ぐに横付けしてきて、
二本マスト帆船に火矢を浴び出だした。

 少年らはすぐに消火したが、
敵の矢が飛来してけが人が出ているようである。

 二本マスト帆船からは、
弓矢と巴姫に蘭丸の二丁のワルサーP300拳銃から発射された弾丸は、敵船のマスト上に居る弓矢隊を全て射落とした。

 元三本マスト帆船から、
二本マスト帆船に乗り込んできかけた抜刀した者共を、
帆船同士の間から巴姫と蘭丸は、
拳銃で次々と射抜いて海に落としている。

 ヤンと少年たちは、打ち漏らした者共を迎え打ちながら、
乗り込んできた抜刀した者共を這いつくばらせている。

 ヤンと少年たちはそれらを倒した後に、
逆に三本マスト帆船に乗り込んで、
三本マスト帆船の船員等全員を海に追い落とすと、
その帆船に火を付けて沈めてしまった。

 二本マスト帆船は、
更にすべてのマストを倒された二隻の三本マスト帆船は動けなくなっていた。

 二本マスト帆船はそれぞれ順番に動けない帆船に近づくと、
それでもなお抵抗しようとしている大型弩弓を、
ヤンのレーザーガンは灰にしてしまった。

「賠償金は、其々の敵船から合計五百金貨をせしめましたが、
しかしながら、海上での戦闘行為は、国際条約では宣戦布告らしいです。」

「賠償金?その行為は、海賊行為だろう?」
「海での戦闘は、勝った方が正義であり、
負けた方は全て物を放置して海に逃げてしまったので、
放置されたものは勝者のものです。」
と、不思議そうに壁を見ていた巴も付け加えた。

「南の国々と島々は、エゲレス国とラキン国の植民地らしいので、
それらの国々と島々も、解放してやらねばならないでしょう。」

「その事は、白石知事からトーマス元帥へ伝えられていたはずです。
まだ、打ち合わせ中らしいとも聞いているが。」
と、鹿島は考え込んでいたが、
「あ、そうだ!ヤンの元帥就任の祝いがある。
ボイラー艦戦艦日進と春日が既に進水式を終えて、
今、桟橋で装備の点検と確認作業中らしいので、
帰りはボイラー艦で帰ればいい。」

「え、え、え~。ボイラー艦が進水した~。
まさか、海に川があるとは知りませんでしたが、
南の島々の海峡は川の流れのようでした。
あの場所は、三本マストの帆船でさえ通行は無理だが、
ボイラー艦ならば可能でしょう。
これで奥の島に隠れている海賊どもを討伐出来ます。
直ぐに日出国州から、航海士官候補等を呼びます。
では、停泊桟橋に行ってきます!」
と、鹿島に元帥就任挨拶もなしに、ヤンは巴の腕を引きながら、
開いたドアさえも閉めないで駆け出していった。

「なに、なに、ない~。」
と、輸送艦の通路に巴の声がこだました。

 ヤンの喜びは、
巴姫への結婚引き出物を確保したとの喜び方でもあった。

 鹿島の子供達の成長は、
他の子供達よりも生育が早いようで、三か月目には歩き出した。

 テテサ教皇もめでたく懐妊したようで、
テテサ教皇から受胎したとの吉報を鹿島は連絡を受けた。

 女神様からの祝福を受けられる子供はあと一人だが、
いまだ母親と子供の特定はなされていない。

 各街を繋ぐ交通網も発展して、
線路上では電車とディーゼルエンジン機関車が走っている。

 電線にする銅線は、カード普及が広まったので銅貨の製造は止まり、豊富な銅鉱山全てから回すことができた。

 個人経営のバスの運営が始まっていて、
庶民は観光旅行さえも可能になった。

 しかしながら、民間企業の人材不足は深刻となり、
南の国々から移民が殺到してくるようになった。

 人が増えると品物が売れ出し、
更に人手不足となるイタチごっこである。

 移民の数は遂に一億を超えたようである。

 人手不足を解消しなければならないので、
オートメーション化も進んでいるようである。

 住民の数が増えると工業はさらに発展して、
銀河連合前の地球星二十世紀前後時代と比べる事も出来た。

 国内の繁栄を感じることがないであろう第一師団遠征隊は、
無人の荒野に砦と交通網を敷設していた。

 第一師団の報告は、どこまでも続く針葉樹の伐採に明け暮れるだけで、コーA.Iの指摘した猫亜人の村に行っても常に無人であるらしい。
 
 針葉樹に居ると思われる猫亜人は、今の大河を見ると想像できないが、五百年前飢饉の際はせせらぎの小川であったようで、
たやすく針葉樹に入れた様子であった。

 第一師団のこれからの予定は、
伐採跡地を耕作地へ整地する計画のようだ。

 猫亜人看護隊と工作部隊の協力を得て、
猫亜人に耕作地に赴いてもらい耕作者に擬態して、
逃げた猫種族村人をおびき出す作戦のようである。

 コーA.Iの報告では、二億の猫種族が住んでいるらしいが、
針葉樹海には魔獣や魔物も多数生息しているようである。

 急遽独立師団から、魔物討伐隊も針葉樹海に出動するようである。

 独立師団は三日平均に一頭の魔物をたおしているらしい。
魔物討伐に対しての武器の供給を申請して受け取ってはいるが、
魔物討伐依頼がかなり多くて、
常に新たな追加武器の供給を申請しなければならない状況であるらしい。

 幸いなことに、魔物の赤い石はエルフ長老たちに高値で売れるために、武器購入資金は豊富なようである。

 独立師団では豊富な資金がある為に、
危険手当を多く出す事が出来るので、
危険である魔物討伐隊への志願者は常に抽選であるらしい。

 第二師団の報告では、亜人国領土よりも広い草原と森林地帯で、
人の姿を見かけることはなく、無人の荒野であるとの報告がなされた。

 しかしながらコーA.Iからの報告では、
北の森林地帯には多くの耳長種族が住んでいて、
時々家畜の群れを草原に連れては出て来るが、
それを待っている武装した集団がエミューに乗って現れると、
直ぐに森へ逃げ込むようであるらしい。

 武装した集団はエミューに乗った百人位の群れで、
五十グループ位いるらしい。

 パトラとマーガレットはコーA.Iに耳長種族の人口調査を指示して、
その政治体制の調査も依頼した。

 第三師団は治安部隊を新たに設けると、
各州に警察学校を設立した様子である。

 各部隊は戦闘よりも多忙になっていた。

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