【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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88追いはぎ

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 鹿島は火の国に入ると周りの景色に違和感がよぎった。
その原因はしばらく進むと気づかされた。

 三本の枯れた倒木が目に入り、その違和感の原因が判明したのは、
生活園内周りの手入れがなされてなくて、
荒れ放題にほったかされたままの様子である。

「なあ~トーマス。森や林をかなり通ったが、枯れた倒木が多くないか?」

トーマスも三本の枯れた倒木に目をやり、
「そうですね。薪にすれば自前で使えて、
余ったならば売り品にもなるし、もったいないですね。」
「折方から推測すると、かなり前から倒れていたようだな~」

 トーマスは、
道路脇前方に倒れている枝木が落ちた丸太だけの倒木に目をやり、

「枯れ茸から推測すると、何年も倒れたままのようですね。」
「来る途中、幾つかの集落の近くを通ったので、人は居るだろうに?」

「薪を必要としないのだろうか?」
「若しくは、食べ物が少ない。」

「火の国は長い干ばつのために食料が不足していたらしいが、
我が国からの援助でかなり改善したと聞いていたのに、
末端までは届かないのだろうか?」
「若しくは、最悪の想像だが、援助物資は軍に貯蔵されたか?」

「想像したくないことですね。」

「前方三キロ先街道沿いの森に、
八人の武器を携帯した少年達と子供達がいます。」
と、コーA.Iから通信が入った。

「まさか子供らの追いはぎか?」
「それだと対応に苦慮しそうですね。」

「パトラは子供時代、自前の自衛団を作ったらしいので、
同じ類いかな~?」
「パトラさんの子供時代いって、どのくらい前でしょう?」

「百七十年前。」
「ハハハハハ---。」
「笑うな!」
「失礼しました。パトラさんには今のこと内緒にしてください。」
「言う!パトラの歳を笑ったと絶対言う!」

「家内の親せきから、百七十年物の葡萄酒を貰ったのですが、
その思いだし笑いです。」
「それは俺への賄賂だったのだろう?」

「欲しいのですか?」
「欲しい!」
「半分。いや!家内もだから、三分の一。」
「手を打った!」

「いや!四分の一!」
突然ポールの声がイヤホンから、鹿島達の耳を痛がらせた。

 鹿島達は互いに顔を見合わせて、
互いに肩を競り上げて同意せざるを得なかった。

 そんな鹿島達にお構いなしに、
二頭のエミューは少年達の潜む森に差し掛かった。

 鹿島は面白がる様に微笑みを浮かべながら、
双眼鏡で森を確認すると、
三人の少年と子供達は、枯れた丸太を立てて懸命に支えている。

 少年達は枯れた丸太を道に倒そうとの行為なのだろうか、
鹿島達の荷車の前か、荷車に直接被せ倒す予定かはわからないが、
鹿島達の通行を妨害しようとしているようである。

 作戦的には最良の作戦であるが、
自分らはひ弱な腕の子供だとは気づいてなさそうである。

 トーマスは、子供らが潜む藪十メートル手前でエミューを止めると、
鹿島は荷車から降りて、荷車横の道路脇で所用に及んだ。

 長い所用にひ弱な腕では負担が大きかったのか、
支えていた枯れた丸太は倒れてしまい、
荷車の遥か前方の道路を塞いだ。

 子供らはばらばらに隠れていた藪から飛び出すと、
鹿島達の荷車に向かって来た。

 四人の年長らしき子供達は素足である。

 ほかの年下子供も草履とは思えないほど、
草履底だけを蔓で縛っただけの様子だ。

 少年等が手に持つ武器を確認すると、
ささくれた剣を持っているのは一人だけで、
槍の刃先が付いているのは三人だけだが、
槍の刃先とは呼べないただの錆びた元刃物のようである。

 残り四人は、やや真っ直ぐな木の枝を尖らせただけの槍を構えている。

 鹿島はトーマスと変わりたくて顔を向けるが、
トーマスはにやけながら横に手を振った。

 鹿島は仕方なしに気は進まないが、
これも大人の義務と自分に言い聞かせて子供らの前に立った。

「金と食い物を置いていけ!」
 と、十二、三歳の汗でほこりがこびりついた顔の年長子供が叫んだ。

「金と食べ物をくださいでしょう。言葉は正確に言うものです。
でないと追いはぎと誤解されますよ。」

「怪我するぞ!」
「誰も何もしないのに、お前が勝手にケガする事に、俺にどうしろと?」

「お前が怪我するのだ!」
と言って切りかかってきたと同時に、周りの槍先が鹿島に向いた。

 鹿島はささくれた剣を左手で押し流し、
全ての槍先を右小脇に受けて抱え込んだ。

 抱え込んだ槍を横に振り、子供達をなぎ倒してしまった。

 持ち手のなくなった抱え込んだ槍を森の中に投げ込み、
体制整えて再度向かってきた年長子供から、
ささくれた剣を取り上げると、
年長子供をわきに抱え込みながら、ささくれた剣を森深くまで投げた。

 脇に抱え込んだ蔓で結んだ子供のズボンをずらし、
角に破けた跡を蔓で縫い付けた部分までずらすと、
尻丸出しにして平手で三度殴ったときに、
鹿島は見てはならないものを見てしまった。

 鹿島は恐怖に震えながら抱いた手の力を抜くと、
その子供は尻丸出しで泣き出した。

 周りの子供たちも泣き出し、鹿島はトーマスに助けを求めた。

「隊長。子供たちは泣き出したし、それに顔の汗はなにごとですか?」
「助けて、俺はとんでもない事をしてしまった。」
「とんでもない事?」
「体罰を与えるのも大人の義務だと思い、
女の子のお尻を叩いてしまった。」
「女の子?何処に?」
「お尻丸出しの子。」
ようやくトーマスも理解したようで、
荷台の衣服箱から急ぎ上着を取り出した後に、
尻丸出しの子にかけてやった。

 鹿島用の衣類箱の底にある、残っていた三個のチョコレートを掴み、
子供達の所へ重い心のまま近寄ると、
全員の子供達は鹿島に恐怖している。

 子供達は尻を叩かれた娘を中心にして、娘を庇うように固まり合った。

 鹿島は最悪の状態にしてしまった事で、
三個のチョコレートを差し出すが、
誰もが知らんふりして無視されている。

 見かねたポールは、鹿島からチョコレートを取り上げると、
子供達にチョコレートを配りだした。

 更にトーマスも自分用の飴を取り出して、
子供らに配りだした様子である。

 更に、ポールは非常食を持ち出して来ると、
子供らに配りだし初めている。

 子供らの顔は汗と埃で黒ずんではいるが、
よく見ると何人かの女の子らしい子供が見受けられた。

 子供らの顔は甘い食べ物のせいか、少しなごんできたが、
鹿島を恐怖の目でチラリとは見るが、顔と目を合わせない。

 自分の行為で、あの子は大きな傷を心に残すだろうと思うと、
鹿島は悔やんでも悔やみきれない様子である。

 重い気持ちのままコーA.Iに連絡を取り、テテサに助けを求めだした。

 直ぐにテテサと連絡が取れて、
子供らと遭遇してからのすべてを細かく話した。

 テテサに子供たちの引き取り先を頼むと、
火の国の孤児院はすべて機能しなくなっているので、
何とかゲルググ州に脱出させている状態ですとの事である。

 神降臨街教会から火の国教会の孤児院に何度か食料を送るが、
送った食料は途中で九割がた行方知れずになっていた。

 テテサの要請では、ゲルググ州孤児院も満杯なので、
子供達を何とかして神降臨街教会の孤児院まで、
連れてきてほしいと懇願している。

 この要請は、輸送機は柳生領地での砦建設優先専用状態なので、
鹿島は罪滅ぼしの一部だけだが、
全力で成さなさねば成らない状態になってしまった。

 地図を広げて、テテサに街道先にあるエンドリー城壁街に教会があるのであれば、
子供達の服装を調える為の買い物に、修道女の協力を頼んだ。

 子供達が落ち着いたとこで、鹿島達は子供達の服装を調える為に、
エンドリー城壁街を目指すことにした。

 八人の子供を荷車に乗せるところで、ひと悶着が起きた。
誰もが鹿島を怖がり、鹿島の操作する荷車に乗りたがらないのである。

 トーマスは子供たちを何とか分散させて、
鹿島の操作する荷車にトーマス自身も荷台に乗り、
これまでの経緯を、尻を叩かれた年長娘からいろいろ聞きだしている。

「十五家族位の親せき家族村で生活していたのですが、
日照りで農作物被害がひどくなって、
食べ物もなくなり、税をも収めきれず、
村の父や母達は、全員が農奴や奴隷に落とされる事になったのに、
それでも大人たちは逃げることができないので、
私が独り歩きできる子供たちを引き連れて、
あの森に逃げ込んだのですが、
森の恵みはすぐになくなってしまいました。
やまれず、あんなことをしました。
剣と槍は村を出るときに大人にもらいました。
でも本当にあんなことは初めてです。許してください。
私は良いが皆を役人に引き渡さないでください。」
と言ってすすり泣きしだした。

 鹿島は無線越しに聞こえる会話に嘘はないだろうが、
そこまで追い詰めた火の国王に対しては、悪感情が芽生えてきた。

 鹿島達は二キロ先にエンドリー城壁街が見えてきたので、
地図上には近くに小さな川が流れているのを確認すると、
そこの川原で子供たちを待たせる事とした。

 子供たちの服装を買う為に、トーマスに寸法を調べさせてから、
鹿島はそのメモを受け取り、荷車にある塩を積んだまま街に向かった。

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