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86 影の護衛
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鹿島は教会での儀式が終わり、皆の待っている讃拝場に行くと、
皆は木製椅子に腰掛けて茶を飲んでくつろいでいた。
「閣下。その服装は?コスプレ?」
「特別な意味はないのだが、想い出させるな。
今気持ちが折れているのだ。」
「詮索しない方が?」
「頼む。」
鹿島が力ない足取りで、
コスプレからの着替えのために荷車の方へ向かうと、
教会外から異様な殺気が漂って来た。
トーマスはみんなを制して、前に進み出て周りを見回している。
ヤンはガンベルトの拳銃に手を当てって、
ポールは尾刃剣の鞘を左手に持った。
殺気の集まって居る人ごみに注意をすると、
その殺気は四人には向いていなくて、
ただ歩いているだけの通行人に、向けられているようである。
トーマスもそれに気づいたようで、
拍子抜けした顔で鹿島に目を向けた。
「護衛でしょうか?すごい数の護衛数と、
火花が出るくらいの殺気ですね。」
「日出国との条約で、『現支配階級の保護。』の義務のためだろう。」
「難儀なことを。」
屋根の上に隠れている何人かに気づき、
「それにしても、護衛にしては大げさなようにも思うが?」
「この国では何かがあると?」
「屋根の上にも隠れて警戒するなど、
過剰すぎる裏には原因があるはずだ。」
鹿島は修道女たちにあてがわれた神官衣装を取り替えて、
自前の服装に着替え直した。
先導する荷車にトーマスが運行操作席に座り鹿島は隣に同乗した。」
後ろの荷車では、ヤンはポールの運行操作席隣に座った。
教会門から出ると、副指南と二人の甲冑を付けた衛士兵が、
殺気香らせてエミューにまたがり先導した。
後ろにも矢張り数人が付いてきているようである。
コーA.Iから武器を隠し持った者等が、
進行方向にかなりいるとの連絡が入った。
先頭の副指南等が進むと、鹿島達に向かって歩いてくる者は、
異様な雰囲気を感じるのか、道路の端に寄っていく。
何人かで屯している者達に対しては、
道端で色々な装いして警戒していた数人が取り囲んで、
鹿島達との間に壁をこしらえている。
何度か、手持ち無沙汰な男が、道の真ん中をこちらに歩いてくると、そばに寄ってきた三人の男に腕をつかまれて、
路地裏に引きずられていった。
殺気を持った者たちを一人一人確認すると、
鹿島の目線に気が付いた隠れ護衛等は、
修羅場を経験した目で柄に手をかけて振り向くが、
鹿島達からすぐさま目をそらして周りを警戒しだす。
新井白石邸の門の前には多くの警備衛士が詰めていて、
その中央に柳生指南が待っており、
「よくお越しくださいました。有難うございます。
老中殿は中でお待ちです。」
と、満面の笑顔で迎えてくれた。
警備衛士と鹿島達の警護衛士は、
柳生指南を御屋形様と呼んでいるようで、
これら警護の者達は、柳生指南の配下のようである。
門に入ると下働き風な男二人が現れて、
鹿島達の荷車を預かるというので、
新井白石殿への土産に、
大きな花鳥風月の絵柄の入った花瓶を取り出してポールが担いだ。
新井白石邸の客間に案内され、
書生と呼ばれた青年がドアを開け入ると、
そこにはすでに新井白石が待っていた。
「お待ちしておりました。本日はよくぞ来て下さいました。
有難う御座います。」
「お招きありがとうございます。厚かましくお邪魔しました。」
鹿島達の挨拶が終わると、
「粗品でございますが、挨拶がてらにお受け取り下さい。」
と、ポールは花瓶を差し出した。
「こちらこそ、急な招待で戸惑わせたであろうに、
お土産までのいただけるとは、有難う御座います。」
四つのお茶が運ばれて来て、鹿島とトーマスは、
白石とテーブルを挟むかたちで対面するソファーに腰掛けた。
ヤンとポールは、出されたお茶を無視すると、
異様な視線と殺気漂う部屋周りに警戒するように、
壁を背に鹿島達斜め後ろに立ったままである。
白石は遠慮気に向かいのソファーに腰をかがめながら、
ヤンの行動に不信を抱くかのようにヤンに注視した。
鹿島もヤンに振り向くと、ヤンは木目柄の天井に顔を向けている。
ヤンはにやけながらもその目の注視先には、
強い眼力で天井板柄にある枝節跡に注がれている。
白石も何かに気づいたのか天井に顔を向けると、
大きな音で二度拍手した。
天井裏四隅に忍んでいた四人の気配は、
白石の出した拍手に応えるように気配を消した。
ヤンは何事もなかったように鹿島の隣に座り、
出された茶をすすりだす。
やはりポールもトーマスの横に座り、茶をすすっている。
「大変失礼しました。警護の者等が、近付き過ぎていました。」
と、大石はテーブルに手を付いて頭をテーブルに押し付けた。
「過剰な警護には痛み入ります。」
と、鹿島は少し皮肉を込めて返した。
廊下を慌ただしい足音がすると、ノックは形ばかりで、
直ぐに柳生指南が部屋に飛び込んで来て床に平伏した。
「配下の者共の無礼は、私の責任です。この身一つでお許しください。」
と言って、短刀を抜き、腹をさらしだして短刀を腹に向けた。
ヤンの動きはその動作よりも早く、
柳生指南の腕から短刀を蹴り上げて、切腹寸前を阻止した。
「過激な護衛の理由を説明してもらいたい。」
「恥ずかしながら我が国では、誰かの失脚を画策する者がいて、
提督閣下を巻き込むやもしれないと思われたのです。」
「その者等は、俺の子種を欲しがった者等か?」
と、鹿島は尋ねながら、ムー州キョクトウ知事の懸念を確認した。
「確信は有りませんが、
子種を欲しがった者等も含めて警戒していますが、
『現支配階級の保護。』優先です。」
「ならば、柳生殿には落ち度はないだろう。」
「お許し頂けると?」
「強い殺気だが、それが俺らに向いていないのは、承知している。」
と言って、服装を正させた柳生指南をも向い席に誘った。
「俺らが襲われたならば、それは俺たちの行動責任です。
柳生殿、馬鹿な考えで我らを困らせないでいただきたい。」
と言って、鹿島は改めて軽はずみな漫遊において、
日出国に迷惑を掛けている事には、素直に頭を下げた。
青ざめていた柳生指南は、
鹿島達の無責任な漫遊を後悔した態度に安心した様子である。
柳生指南の顔の血色もよくなりだしてきて、
「提督閣下等は、人でございますか?」
と、真剣な顔で尋ねて来た。
「先祖代々人間だが、何に見えるのだろう?」
と、トーマスは鹿島の代わりに、怪訝そうに微笑んだ。
「亜人協力国の守り人と言われている皆様と、
目を合わした沿道の警護人や天井から覗いていた配下の者たちが、
得体のしれない眼光に恐怖に怯えています。
「それは、自分で発散させた自分の殺気でしょう。
『魔王の正体枯れ尾花。』ともいうし。」
と、トーマスは笑いながら返答しが、
鹿島は変な例え噺で新たな誤解を与えねば良いがと思ったが、
トーマスの考えを少し理解して、
神様と思われるより魔王と誤解されてもよいと思い直した。
鹿島達と柳生指南の会話が切れるのを白石は本題に入りたい様子で、
直ぐ魔王話に割り込んできた。
「条約推進に向けて、
『無償にて亜人協力国軍は日出国のために、亜人協力国軍派遣を日出国へ駐留させる』については、我が国は急ぎたいのですが、
提督閣下の意見を聞かせていただけませんか?」
と、白石は真剣な顔で鹿島をにらんだ。
「そのことですが、腹を割って話します。我が国とすれば、
引き延ばせるだけ引き延ばすつもりだったが、
状況が変わって亜人協力国とすればすぐにでも推進したい。」
「変化した理由を説明頂けますか?」
「巴姫様の保護です。」
「保護する理由を聞いても?」
「亜人協力国籍家族になるかもしれないので。」
「巴姫様とヤン殿の婚姻を後押しすると?」
「仲間の希望達成は、俺等の喜びです。
全ての仲間の希望には、俺等は全力で応援と協力には労をいといません。」
「亜人協力国の軍事訓練においては、各国が模範とすべき、
仲間の絆を最優先事項としている事は知っています。」
「俺等守り人の絆は、他国の民を全て消滅させてでも、仲間を守ります。」
「亜人協力国守り人であれば可能でしょう。
巴姫様は良い婿殿を選んだようですが、
『無償にて亜人協力国軍は日出国のために、亜人協力国軍派遣を日出国へ駐留させる』については、
どの様に行動して、何処に駐留させる予定でしょうか?」
「既に作戦発動を行っています。場所については、
すでに候補地は決まりましたので、了解願いたい。」
と言うと、ポールは日の国と塩の国の国境に挟まれた三角地の
日出国領土地図を広げると、
塩の国と火の国に国境に近い場所を指摘した。
「ここの所にある丘に砦を築き、
最新装備した五千人を駐留させる予定です。」
「ここは柳生領で、柳生城下町から一キロ先ですが?
柳生殿承知できますか?」
「喜んで!駐留地の提供は出来ます。
そして、我らは喜んで寄合させていただきます。
帝の承諾命があれば、その傘下に入っても構いません。」
予定ではエルフ銃撃隊三千の予定が、五千人に増えてしまっていた。
二千増えた訳は、ポールのヤンへの気遣いだろう。
ポールの説明は続き、
移動トラックは五百台に、火炎放射器、機関銃砲、
レール砲搭載車輌百五十台、自走砲五十台が含まれていた。
如何やら大掛かりな決定は、鹿島が教会にて赤い微粒子の訓練中に、
トーマス元帥と参謀にて決定されていたようである。
それだけでなく、元王女イアラと女傑団による、
ヘリコプター操縦訓練中の彼女らも投入控えとなっていた。
砦建設には、猫亜人施設部隊も投入されるようだ。
唖然としている鹿島にかまわずに、
話はすでに決定事項になってしまった。
此れは、十万のカントリ国傭兵の虐殺を、
鹿島にかぶせてしまったトーマス元帥の悔恨(かいこん)情からの決定で、
以後の被害は自分の責任だとの意思表示だろう。
細かい打ち合わせは、
トーマス元帥と二人の参謀に柳生殿との間で進められだし、
その推進はトントン拍子に同意され、
日出国帝の了解を取るだけに決定した。
日出国への駐留軍打ち合わせが終わり、
柳生指南の鹿島たちに対する感想が披露された。
「姫君をどのようにして豚似コヨーテから逃がすか、
ジューベーと相談中に、
豚似コヨーテが姫君に襲い掛かった時は肝を冷やしたが、
ヤン殿の体当たりと剣の鋭さには、女神様の救いを感じた。
守り人様たちが豚似コヨーテとの接近戦では、
姫君を除いて、目の前でじかに見た皆は、
近寄りがたい威圧を感じてしまい、
子供達は守り人様たちを恐れてしまいました。
その後の皆の態度悪さをご理解ください。」
と、平謝りだした。
「矢張り、恐れられていたのですか?われらも以後気を付けましょう。」
と言って、鹿島は苦笑いしだした。
皆は木製椅子に腰掛けて茶を飲んでくつろいでいた。
「閣下。その服装は?コスプレ?」
「特別な意味はないのだが、想い出させるな。
今気持ちが折れているのだ。」
「詮索しない方が?」
「頼む。」
鹿島が力ない足取りで、
コスプレからの着替えのために荷車の方へ向かうと、
教会外から異様な殺気が漂って来た。
トーマスはみんなを制して、前に進み出て周りを見回している。
ヤンはガンベルトの拳銃に手を当てって、
ポールは尾刃剣の鞘を左手に持った。
殺気の集まって居る人ごみに注意をすると、
その殺気は四人には向いていなくて、
ただ歩いているだけの通行人に、向けられているようである。
トーマスもそれに気づいたようで、
拍子抜けした顔で鹿島に目を向けた。
「護衛でしょうか?すごい数の護衛数と、
火花が出るくらいの殺気ですね。」
「日出国との条約で、『現支配階級の保護。』の義務のためだろう。」
「難儀なことを。」
屋根の上に隠れている何人かに気づき、
「それにしても、護衛にしては大げさなようにも思うが?」
「この国では何かがあると?」
「屋根の上にも隠れて警戒するなど、
過剰すぎる裏には原因があるはずだ。」
鹿島は修道女たちにあてがわれた神官衣装を取り替えて、
自前の服装に着替え直した。
先導する荷車にトーマスが運行操作席に座り鹿島は隣に同乗した。」
後ろの荷車では、ヤンはポールの運行操作席隣に座った。
教会門から出ると、副指南と二人の甲冑を付けた衛士兵が、
殺気香らせてエミューにまたがり先導した。
後ろにも矢張り数人が付いてきているようである。
コーA.Iから武器を隠し持った者等が、
進行方向にかなりいるとの連絡が入った。
先頭の副指南等が進むと、鹿島達に向かって歩いてくる者は、
異様な雰囲気を感じるのか、道路の端に寄っていく。
何人かで屯している者達に対しては、
道端で色々な装いして警戒していた数人が取り囲んで、
鹿島達との間に壁をこしらえている。
何度か、手持ち無沙汰な男が、道の真ん中をこちらに歩いてくると、そばに寄ってきた三人の男に腕をつかまれて、
路地裏に引きずられていった。
殺気を持った者たちを一人一人確認すると、
鹿島の目線に気が付いた隠れ護衛等は、
修羅場を経験した目で柄に手をかけて振り向くが、
鹿島達からすぐさま目をそらして周りを警戒しだす。
新井白石邸の門の前には多くの警備衛士が詰めていて、
その中央に柳生指南が待っており、
「よくお越しくださいました。有難うございます。
老中殿は中でお待ちです。」
と、満面の笑顔で迎えてくれた。
警備衛士と鹿島達の警護衛士は、
柳生指南を御屋形様と呼んでいるようで、
これら警護の者達は、柳生指南の配下のようである。
門に入ると下働き風な男二人が現れて、
鹿島達の荷車を預かるというので、
新井白石殿への土産に、
大きな花鳥風月の絵柄の入った花瓶を取り出してポールが担いだ。
新井白石邸の客間に案内され、
書生と呼ばれた青年がドアを開け入ると、
そこにはすでに新井白石が待っていた。
「お待ちしておりました。本日はよくぞ来て下さいました。
有難う御座います。」
「お招きありがとうございます。厚かましくお邪魔しました。」
鹿島達の挨拶が終わると、
「粗品でございますが、挨拶がてらにお受け取り下さい。」
と、ポールは花瓶を差し出した。
「こちらこそ、急な招待で戸惑わせたであろうに、
お土産までのいただけるとは、有難う御座います。」
四つのお茶が運ばれて来て、鹿島とトーマスは、
白石とテーブルを挟むかたちで対面するソファーに腰掛けた。
ヤンとポールは、出されたお茶を無視すると、
異様な視線と殺気漂う部屋周りに警戒するように、
壁を背に鹿島達斜め後ろに立ったままである。
白石は遠慮気に向かいのソファーに腰をかがめながら、
ヤンの行動に不信を抱くかのようにヤンに注視した。
鹿島もヤンに振り向くと、ヤンは木目柄の天井に顔を向けている。
ヤンはにやけながらもその目の注視先には、
強い眼力で天井板柄にある枝節跡に注がれている。
白石も何かに気づいたのか天井に顔を向けると、
大きな音で二度拍手した。
天井裏四隅に忍んでいた四人の気配は、
白石の出した拍手に応えるように気配を消した。
ヤンは何事もなかったように鹿島の隣に座り、
出された茶をすすりだす。
やはりポールもトーマスの横に座り、茶をすすっている。
「大変失礼しました。警護の者等が、近付き過ぎていました。」
と、大石はテーブルに手を付いて頭をテーブルに押し付けた。
「過剰な警護には痛み入ります。」
と、鹿島は少し皮肉を込めて返した。
廊下を慌ただしい足音がすると、ノックは形ばかりで、
直ぐに柳生指南が部屋に飛び込んで来て床に平伏した。
「配下の者共の無礼は、私の責任です。この身一つでお許しください。」
と言って、短刀を抜き、腹をさらしだして短刀を腹に向けた。
ヤンの動きはその動作よりも早く、
柳生指南の腕から短刀を蹴り上げて、切腹寸前を阻止した。
「過激な護衛の理由を説明してもらいたい。」
「恥ずかしながら我が国では、誰かの失脚を画策する者がいて、
提督閣下を巻き込むやもしれないと思われたのです。」
「その者等は、俺の子種を欲しがった者等か?」
と、鹿島は尋ねながら、ムー州キョクトウ知事の懸念を確認した。
「確信は有りませんが、
子種を欲しがった者等も含めて警戒していますが、
『現支配階級の保護。』優先です。」
「ならば、柳生殿には落ち度はないだろう。」
「お許し頂けると?」
「強い殺気だが、それが俺らに向いていないのは、承知している。」
と言って、服装を正させた柳生指南をも向い席に誘った。
「俺らが襲われたならば、それは俺たちの行動責任です。
柳生殿、馬鹿な考えで我らを困らせないでいただきたい。」
と言って、鹿島は改めて軽はずみな漫遊において、
日出国に迷惑を掛けている事には、素直に頭を下げた。
青ざめていた柳生指南は、
鹿島達の無責任な漫遊を後悔した態度に安心した様子である。
柳生指南の顔の血色もよくなりだしてきて、
「提督閣下等は、人でございますか?」
と、真剣な顔で尋ねて来た。
「先祖代々人間だが、何に見えるのだろう?」
と、トーマスは鹿島の代わりに、怪訝そうに微笑んだ。
「亜人協力国の守り人と言われている皆様と、
目を合わした沿道の警護人や天井から覗いていた配下の者たちが、
得体のしれない眼光に恐怖に怯えています。
「それは、自分で発散させた自分の殺気でしょう。
『魔王の正体枯れ尾花。』ともいうし。」
と、トーマスは笑いながら返答しが、
鹿島は変な例え噺で新たな誤解を与えねば良いがと思ったが、
トーマスの考えを少し理解して、
神様と思われるより魔王と誤解されてもよいと思い直した。
鹿島達と柳生指南の会話が切れるのを白石は本題に入りたい様子で、
直ぐ魔王話に割り込んできた。
「条約推進に向けて、
『無償にて亜人協力国軍は日出国のために、亜人協力国軍派遣を日出国へ駐留させる』については、我が国は急ぎたいのですが、
提督閣下の意見を聞かせていただけませんか?」
と、白石は真剣な顔で鹿島をにらんだ。
「そのことですが、腹を割って話します。我が国とすれば、
引き延ばせるだけ引き延ばすつもりだったが、
状況が変わって亜人協力国とすればすぐにでも推進したい。」
「変化した理由を説明頂けますか?」
「巴姫様の保護です。」
「保護する理由を聞いても?」
「亜人協力国籍家族になるかもしれないので。」
「巴姫様とヤン殿の婚姻を後押しすると?」
「仲間の希望達成は、俺等の喜びです。
全ての仲間の希望には、俺等は全力で応援と協力には労をいといません。」
「亜人協力国の軍事訓練においては、各国が模範とすべき、
仲間の絆を最優先事項としている事は知っています。」
「俺等守り人の絆は、他国の民を全て消滅させてでも、仲間を守ります。」
「亜人協力国守り人であれば可能でしょう。
巴姫様は良い婿殿を選んだようですが、
『無償にて亜人協力国軍は日出国のために、亜人協力国軍派遣を日出国へ駐留させる』については、
どの様に行動して、何処に駐留させる予定でしょうか?」
「既に作戦発動を行っています。場所については、
すでに候補地は決まりましたので、了解願いたい。」
と言うと、ポールは日の国と塩の国の国境に挟まれた三角地の
日出国領土地図を広げると、
塩の国と火の国に国境に近い場所を指摘した。
「ここの所にある丘に砦を築き、
最新装備した五千人を駐留させる予定です。」
「ここは柳生領で、柳生城下町から一キロ先ですが?
柳生殿承知できますか?」
「喜んで!駐留地の提供は出来ます。
そして、我らは喜んで寄合させていただきます。
帝の承諾命があれば、その傘下に入っても構いません。」
予定ではエルフ銃撃隊三千の予定が、五千人に増えてしまっていた。
二千増えた訳は、ポールのヤンへの気遣いだろう。
ポールの説明は続き、
移動トラックは五百台に、火炎放射器、機関銃砲、
レール砲搭載車輌百五十台、自走砲五十台が含まれていた。
如何やら大掛かりな決定は、鹿島が教会にて赤い微粒子の訓練中に、
トーマス元帥と参謀にて決定されていたようである。
それだけでなく、元王女イアラと女傑団による、
ヘリコプター操縦訓練中の彼女らも投入控えとなっていた。
砦建設には、猫亜人施設部隊も投入されるようだ。
唖然としている鹿島にかまわずに、
話はすでに決定事項になってしまった。
此れは、十万のカントリ国傭兵の虐殺を、
鹿島にかぶせてしまったトーマス元帥の悔恨(かいこん)情からの決定で、
以後の被害は自分の責任だとの意思表示だろう。
細かい打ち合わせは、
トーマス元帥と二人の参謀に柳生殿との間で進められだし、
その推進はトントン拍子に同意され、
日出国帝の了解を取るだけに決定した。
日出国への駐留軍打ち合わせが終わり、
柳生指南の鹿島たちに対する感想が披露された。
「姫君をどのようにして豚似コヨーテから逃がすか、
ジューベーと相談中に、
豚似コヨーテが姫君に襲い掛かった時は肝を冷やしたが、
ヤン殿の体当たりと剣の鋭さには、女神様の救いを感じた。
守り人様たちが豚似コヨーテとの接近戦では、
姫君を除いて、目の前でじかに見た皆は、
近寄りがたい威圧を感じてしまい、
子供達は守り人様たちを恐れてしまいました。
その後の皆の態度悪さをご理解ください。」
と、平謝りだした。
「矢張り、恐れられていたのですか?われらも以後気を付けましょう。」
と言って、鹿島は苦笑いしだした。
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