【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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68 蜜酒と二頭の魔物

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 鹿島は、まだ外は暗いうちから、朝一番目から聞きたくない声で起こされた。

「パンパカパン~ン。朝ですよ~。魔物はもう活動を始めているよ~。」

 朝のうるさい声は、馬鹿野郎でなく、馬鹿女郎に起こされた。

「まだ暗いだろう。」
「もう明るいよ~。朝御飯の時間だよ~。」

「お前も食べるのか?」
「人種の料理は好みです。」
「肉も食べるのか?」
「なんでも食べるけど魚は大好物です。骨ごと食べます。」

 確かに日干し魚を畑にまいて、肥料とする話は聞いたことがある。
「いい匂いがするので、貰いに行きます。」

 せわしない美魔女がいなくなると、マーガレットとパトラの二人も起きだした。
「五月蠅い奴だ。」
とマーガレットは不機嫌顔でつぶやいた。
パトラも渋い顔である。

 鹿島が指揮天幕に向かうと、既にトーマスとジャネックは朝食中であった。
「おはようございます!」
とジャネックは挨拶すると、急ぎ早に賄い所に向かっていった。

 マーガレットとパトラもパンと芋汁を其々が手にして、指揮天幕に入ってきた。

 二人の後ろから入ってきたジャネックは、鹿島の分らしいパンと芋汁を手にしていた。
 
 食事が終わり、
鹿島は、トーマスと二人で魔物狩りの打ち合わせを確認している間に、
マーガレットとパトラは、
ジャネックに何かを確認しているようであるが、
ジャネックは、二人からの問いかけを、
理解できない表情で首をかしげている。

 草原には大きなロール型スクリーンが設置された。
そして、今日の作戦の最終確認がなされた。

 前面には魔物討伐隊が占めて、
その後ろには警護担当のエルフ騎馬隊と解体撤去猫亜人が取り囲み、
隙間からは観察者も聞き入っていた。

 基本作戦内容は、
魔物が樹海から出てきてプールの蜜酒を飲みほした後に、
麻酔薬の効き目で寝いったならば、三台の液体窒素放水車においては、
尾刃と下半身の足を含む凍結を開始する事が確認された。

半身の足を含む凍結が完了後、安全を確信した後に、
鹿島とトーマスは二十キロのプラスティック爆弾を背負い、
魔物に降下して赤い石を取り出せるように、
心臓周りの表皮をプラスティック爆弾で吹き飛ばす。

それを合図に、
ソシアル航宙技官のエアークラフトからは、
頭を吹き飛ばす貫通爆裂ミサイルで攻撃しはじめる。

六台の軽機動車輌にレール砲を乗せた攻撃隊は、
前足付け根に表皮を切り割る半月型流刃弾を打ち込み、
その後をなぞる様に、
爆裂弾丸を打ち込んで前足を吹き飛ばす作戦である。

 
 そして、予期せぬ状況においては、第二、第三の計画作戦をも確認をした。

 最終的に、万が一の場合は、
監視衛星によるレール砲にて消滅させる予定でが、それは秘密作戦であった。

 魔物が樹海から出てくる場所の地点予想が、コーA.Iから送られてきたので、
解体撤去係の猫亜人による、樹海から二百メートル離れて蜜酒プール組み立て作業が行われた。

 組み立てられたプールには、タンク車から大量の麻酔薬を混ぜ込んだ蜜酒が入れられた。

 鹿島とトーマスは、其々二つの二十キロのプラスティック爆弾を背負い、
マーガレットとパトラの操縦するエアークラフトに乗り込んだ。

 何故か木の枝を抱え込んだ美魔女が、樹海から飛び出てきた。
その後からは、二頭の魔物が追いかけてきた。

 美魔女は、小脇に抱えた枝を魔物に投げつけながら、
蜜酒プールに導いている。

蜜酒プール五十メートル辺りに近づいた所で、
残りの枝を投げ捨てると、
美魔女は、蜃気楼のように消えてしまった。

 二頭の魔物は消えた美魔女を探すように、
周りを見渡して臭いを嗅ぐそぶりをすると、
蜜酒に気づいたようで、蜜酒プールに近寄って蜜酒を飲み始めた。

 魔物が蜜酒を飲んでいる姿を見ていていた鹿島は、
八岐大蛇(やまたのおろち)を倒した須佐之男命(すさのおのみこと)になった気分である。

 突然、鹿島の首に美魔女の手が回ってきた。
「ゆんべは、ごまかしていたけど、彼女達は知らないの?」
「何の事だか、分かりません。」
「かまととではなかったようなので、やっぱり知らないのかな?」

「今魔物の盗伐中です。その話は後日にしましょう。」
「え!約束しましたよ。」
と言って消えてしまった。

「しまった。勘違いされた!」
トーマスは怪訝な顔の後で、
「何かやらかしたようですね。」
とニヤついた。

「変わってくれ」
「俺はジャネック一本です。」

「今の言葉には皮肉もこもっているだろう。」
「まさか、二人の山の神様を持ったことで、理想とは違ったことを反省している事には、心底から同情しています。」

「浮世は難しい。このように戦っている方が楽だ。」
「もうそろそろ、戦いから身を引いたらどうですか?」
「トーマスは身を引きたいのか?」
「私には、戦いが向いています。」
「俺もだ!」

 魔物は息継ぎをしてないかのように蜜酒を飲みほしているが、中々眠る気配がない。

 二メートルの高さであった蜜酒プールは、もう一メートルもないくらいに飲み干されていた。

魔物の一頭がようやく顔を上げたが、再び蜜酒プールに頭を突っ込んだ。

 鹿島は、須佐之男命(すさのおのみこと)もこんなじれったい気持ちで、
八岐大蛇(やまたのおろち)が酒を飲み干すのを待っていたのかと想像した。

 蜜酒プールは、残り僅か十センチの高さぐらいになった頃、
少し小柄な魔物は、千鳥足で樹海の方へ帰りだしたので鹿島達は焦ったが、蜜酒プールと樹海の中間で横向きに倒れ込んだ。

 攻撃対象としては、理想の倒れ方である。

 もう一頭は残りを全て飲み干すように蜜酒プールに入り込み、
底に残った蜜酒を嘗め回している。

嘗め回しながら疲れたのか、酔いと麻酔薬の効き目か、そのままうつぶせになったまま、動かなくなった。

 潰された蜜酒プールは邪魔ではあるが、解体だけの為に猫亜人を危険に晒す事が出来ないので、うつぶせになった魔物に対して、鹿島は、作戦開始を指示した。

鹿島の掛け声で最初に飛び出したのが、液体窒素タンク車であった。

 予定通り三台の液体窒素放水車が下半身全てを氷つかせたのを確認した鹿島とトーマスは、二十キロのプラスティック爆弾を背負い魔物に降下した。

二人は、肩の下あたりの心臓部分を囲むように、四十キロのプラスティック爆弾を並べてセットした。

 並べられた四十キロのプラスティック爆弾に導火線を差し込んで、
エアークラフトに釣り上げてもらい、
待機している攻撃隊に連絡して秒読みを開始した。

 「今」の合図で導火線を通して、プラスティック爆弾に電流を流すとどうじに、大爆発が起きると、
攻撃隊は、一斉に作戦通りに魔物の頭と腕を吹き飛ばした。

 シーラーからの連絡が入り、
凍らせた下半身の氷にひびがはいたとの知らせと共に、
シーラーの乗った液体窒素放水車が魔物の下半身に向かって走り出した。

鹿島は、時間を無駄にしたくないので、
「シーラーまて!このまま作戦通りに俺たちは降りる。待機していてくれ!」

 鹿島とトーマスは再び首のなくなった魔物に降下すると、
表皮の剝離した一面の肉がむき出しになった肩下肋骨に二人で切り込み、
砕けてないか心配な赤い石をむき出しにした。

エアークラフトに繋がっているかぎ爪で、
むき出しになっている赤い石を包み込むと、
引き上げの合図とともに、
魔物の尾刃が氷と共に鹿島たちに向かってきた。

 鹿島は、尾刃の動きがスローモーションに感じたので、
トーマスを赤い石のあった場所へ突き落すと、
尾刃剣を抜いて迫りくる尾刃を受け止めたが、力負けして肉の中に落下した。

 魔物の尾刃が、
エアークラフトから垂れているロープをも切り落としたために、
吊り下げられていたかぎ爪と共に、
赤い石は魔物の背中にあたりの草原の草中に落ちていった。

 パトラは降下訓練を受けてないのに、
安全帯なしで動かなくなっている魔物の背中に降下してきた。

 肋骨にしがみついているトーマスと肉に刺さった鹿島は、
パトラに引き上げられた。

「モニターを見ていたら、二人共魔物の尾で、、、切られたと思ったわよ。」
と、目頭赤くして怒っている。

 そして、パトラの声が、鹿島の頭の中で響いた。
「精霊の目と耳が私とマーガレットに移動して、全て感じました。
今夜検証しましょう。」
と言って、これ以上の話はしたくないと、強い眼光を鹿島に向けた。

「ありがとう。助かったよ。」
と鹿島は理解できないまま了解すると、
すぐに次の作戦を実行するように指令した。

 次の作戦は、魔物は理想的に横向きになっていたので、
エアークラフトに残してあるプラスティック爆弾は使用しない事にした。

下半身を凍らせたのちに、攻撃班だけで頭と前足を吹き飛ばした。

半月型流刃弾で赤い石を傷つけないように、
胸の周りに打ち込んで表皮を切り割る。

その後をなぞるように貫通爆裂弾丸で、
胸の表皮を剝離させる作戦である。

鹿島とトーマス元帥は、マーガレットに連絡をして、
エアークラフトを着陸してもらい、かぎ爪を拾い再び機乗して降下に備えた。

 既に攻撃は始まっていて、
魔物の下半身と尾の周りは氷山みたいに氷の丘になっていた。

死んでいるのか、麻酔の効き目でしびれているのかはわからないが、
ピクリともしないので、エアークラフトから降下したのちに、
むき出しになっている肋骨をトーマスと鹿島は一本ずつ切断した。

 二人は、難無くかぎ爪を差し込むと、心臓の裏にある赤い石をエアークラフトに引き上げてもらった。

後は猫亜人による解体作業である。

 草原に落ちた赤い石は、傷もなく草の中に隠れていたが、無事に無傷の赤い石を二個回収した。

 付き添ってきた遠征隊の周りには、大勢のカナリア街の住民たちが、
鹿島たちが魔物と戦うのを見ていたようである。

 鹿島たちが現れるとジョシュー知事が駆け寄ってきて、

「本当に倒したのですね。ありがとうございます。」
「後で魔物の肉を届けますので、
売上金はカナリア領地の金庫でお預かりしていてください。
最悪の樹海を丸太抗で囲み保護区に指定すると、
樹海の老樹霊と約束しましたので、その工事代金に充てる予定です。」
「工事が始まるまでお預かりします。」

 ジョシュー知事の顔は、若者らの様な活気ある目を、
らんらんと輝かせて鹿島を見つめた。

 鹿島は、ジョシュー知事に丸太抗工事を委託して、提供できる機材と道具の説明出来る担当官をよこす旨と、見積もりを頼んだ。
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