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64蟒蛇(うわばみ)伝説
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朝 ベッドから降りる前に、鹿島は誰の部屋であるかの確認するのが癖になってしまっていた。
「起きましたか?食事できているよ。」
とパトラの弾ませた声で、部屋の主が二人以外でないことに安心する。
食事間には扉が無いので、寝室に扉を開けるとエルフ娘たちが食卓周りを世話しなく動き回っている。
亜人協力国においては平等主義をも国是としているが、
この大陸では理解されていないのだろうかとも思える。
十人用食卓の中央には、向かい合わせに二人分の食事が用意されていた。
食卓の席に着くなりコーA.Iからの通信が入った。
「カントリ国の兵たちは自国の領地であるのにも関わらず、
追跡できないように集落や森に火をつけて周り、
全ての橋を粉砕してしまい、
小川の丸太橋さえも壊しながら逃走しているようです。
恐らく井戸にも毒を落として行ったと思われます。
そして、避難民と思われる多数の人々は川を渡れずに、
川原で避難民集落を作り出しています。」
コーA.Iからの報告を聞いて、
鹿島はカントリ国指導者達の、外道と思える行動を新たに確認させられた。
コーA.Iからの報告がなされ終わると、直ぐにテテサ教皇からの通信も入った。
「閣下。カントリ国の避難民集落に食料配給をしたいと思うのですが、許可してください。」
「戦略会議においては、カントリ国には関わらないと、決めたでしょう!」
と、パトラが横から怒りながら発言した。
そして、マーガレットとマティーレも論争に参加してきた。
「人道的には送るべきです。」
「指導者達と民は分けるべきだと思います。」
と、二人は避難民集落に食料の配給をするべきだと主張した。
「マティーレが賛成するのであれば、私は反対しませんが、
結果は新たなる恨を受け取るだけと思います。」
と言って、パトラは引き下がった。
三人はしばらく返事をしなかったが、
「やらないよりも、やった結果が最悪であろうと、亜人協力国の国是は示せます。」
と、テテサ教皇は返した。
テテサ教皇の言葉にも皆は黙り込んでいるので、カントリ国への援助には賛成ではないが、避難民集落への食料配給に皆は、反対もしてないと判断した鹿島は、
「猫亜人にトラックで向かってもらいましょう。カントリ国の民が猫亜人と和解するなら、
これからの付き合い方に良い展望が望めるでしょう。」
「現地に聖騎士団が居ますので、協力してもらいます。」
と、テテサ教皇は返事した。
鹿島はまだ越境してないビリー司令官に連絡を取り、
砦の丘街指揮官を司令官に昇格させて、
猫亜人と聖騎士団の警護責任者に指名した。
現地司令官としてのすべての権限を与えたのちに、
彼の要求する兵をサンビチョ州兵からあてがうようにも指示をした。
準備が出来次第、避難民集落の食料配給場所へ向かうように命じろと伝えた。
ビリー司令官には、カントリ国の首都に向かって進軍するようにも指示した。
今回のカントリ国との戦闘では一番の難関であろうが、
砦の丘街指揮官は厄介なカントリ国民意をも、解決できるかの実力を知る機会である。
朝食をすまして、戦略室に向かうと既にトーマスと二万年老樹霊が待っていた。
二万年老樹霊は運営委員会の推薦で、オブザーバーとしての参加が認められていたが、
肩書は意見参考人であり議決権はなかった。
ただ、二万年老樹霊には何かがあるのではとの思いが、運営委員会全員の気持ちである。
二万年老樹霊は参加しても、みんなの発言を聞いているだけである。
全員が集まったところで、首席行政長官のマーガレットから重要な工事と、
懸念されていることの説明がなされた。
最も重要な工事は電力問題である。
電力に関しては、神降臨街における生活上だけであるならば、艦屋上の太陽光発電が出来るソーラーパネルで十分であり、現在稼働している工場に限定するならば、
火力発電で賄えると説明されたが、将来的には各街を繋げる交通網の整備が必要なので、水力発電を建設したいとのことである。
水力発電の場所として、最適な所がすでに検討されているとのことである。
そこは大河上流の二百メートル高さの滝であり、
簡単な発電所でも百機の発電機を取り付けられるとの事である。
将来的には千機以上も可能であるらしい。
百機の発電機が稼働したならば、
すべての計画中の工場と亜人協力国すべてに、
電力を供給できる規模とのことでもある。
問題は労働力だけであるが、今、技術班総出で取り込んでいるので、
部品はすべて工場にて製作計画中であるとの事である。
懸念されている事は、最悪樹海の美魔女からの報告では、
また二頭の魔物が樹海の奥から移動して、
カナリア街近くの樹海を徘徊しているとのことである。
「監視衛星は、魔物を追跡出来ない理由があるのですか?」
と、トーマスが尋ねると、
「魔物の体温が変化するので、赤外線センサーが役に立たないのです。」
とコーA.Iからの返事が返ってきた。
「だから美魔女に監視を依頼していたのです。」
と、朝から不機嫌顔のマーガレットが応えた。
運営委員会にとっては、カントリ国の話題と美魔女の名前が出ると、
いつも最後はみんな不機嫌になるようだ。
運営委員会にとっては両方とも生理的に受け入れられないようで、
潰してしまうには良心の呵責において実行できないからである。
美魔女にとっては、カントリ国と同列に扱われることは迷惑であろう。
いかがわしい証拠はないが、三区の繁華街で怪しげな行為をしているのであるから、それは致し方ない。
法事国家を目指している運営委員会としては、美魔女の行動証拠を男どもが隠して、
非協力的なので辞めさせる事が出来ない事に余計にイラつくのである。
「今陸戦隊においては全員を揃える事は出来ない状態なので、今集められる人数でやるしかないだろう。」
「今集められる人数と言ったら、隊長と私を入れても四人だけです。」
「ビリー司令官にお願いして、三人送ってもらいましょうか?」
「ビリー司令官が無理しなければよろしいと思いますが?不安ですね。」
鹿島とトーマスの会話に、マーガレットとパトラが手を挙げた。
「あたしたちも参加させて下さい。」
と、二人はハモった。
「今回は絶対ダメです。二人のお腹の子供達を、あなたたちは守らなければなりません。」
との鹿島の言葉に、二人とも立ち上がっていたが肩を落として席に着いたが、
「エルフ戦士からあたしが選抜します。」
とパトラは再び鹿島に顔を向けた。
「仲間としては、エルフ戦士は信頼できるが、兵器の扱いにおいては、
訓練なしでは難しいのです。」
「今からすぐに訓練させます。」
静かに鹿島達の会話を聞いていた二万年老樹霊が、
誰にも気づかれたくない気に静かに手を挙げた。
二万年老樹霊の挙げた手に気づいたテテサ教皇は、
驚き顔と短い声を出すと、皆が二万年老樹霊の挙げた手に注目した。
二万年老樹霊は今までに何度か出席していた。
戦略会議において感想を求められても笑っているだけであったが、
初めて意見を述べたい様子である。
「老樹霊様。何か良い知恵がありますでしょうか?」
テテサ教皇から老樹霊に対して、丁寧言葉を発したのを初めて聞いた事に驚いた。
「エルフ種族にも猫種族にも伝わっているはずの、
大蛇山の蟒蛇(うわばみ)伝説を忘れていませんか?」
「大蛇山の伝説では、
酔っぱらった大蛇同士が尾を互いに飲みこみ合った結果、
両方とも死んだことは子供でも知っていますが、
大蛇の事と魔物が関係しているとは分かりませんし知りません。」
と、マティーレは不思議そうに答えた。
「蜂蜜に水を加えるとお酒になることは、ご存知でしょうか?」
「聞いたことはありますが、蜂蜜自体が高価なので見たことも、
ましてや飲んだこともございません。」
「時々樹海の中が花一面になります。その時は妖精ハチドリの巣には、
溢れる位の蜜が溜まりますが、
強い風が吹くと多数の妖精ハチドリの巣は自重に耐え切れずに、
風に飛ばされて水たまりの小さな池に落ちてしまうことがあり、
その池で発酵してお酒になることがあります。
魔物はその匂いに誘われて集まってきます。」
鹿島は故郷の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説を思い出しながら聞いていると、
「大蛇同士が互いの尾を飲み込んでいる所に、
たまたま居合わせたエルフの勇者が大蛇二頭を打ち取ったとの伝説は、
魔物であったと言う訳ですか?」
「それはまだ鉄の時代ではなくて青銅時代であったが、
酔っぱらった魔物同士は酒を奪い合い、
両方の尾刃が相手の心臓を貫いて魔石をも粉砕し、
互いにつながったまま輪になり絶命したところで、
硬い鱗と当時としては切れ味鋭い尾刃を手に入れたエルフ戦士は、
誰も倒せない勇者となった伝説が正しい伝説です。」
「エルフ種族が人種からの虐殺攻撃を受けて、
絶滅しかけた危機を救った勇者の伝説は、本当であったのですか?」
「大蛇山の伝説と尾刃を手にいれた伝説は、元々一つの物語です。」
「私の故郷でも似たような伝説があります。ただ違うのは大蛇の首は八つ有り、酒を用意したのは大蛇を倒した男です。
倒した男は尾から天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を手に入れて神になりました。」
「崇められるには、崇められる理由があります。貴方とテテサ教皇の様に、
そして、これから生まれる子供達の母親のように。」
「よし!妖精ハチドリの蜜を採集しまくろう!
そして、魔物をおびき寄せる蜂蜜酒を醸造して魔石で催眠薬の製造を急ごう。」
と、パトラは気勢を上げた。
「睡眠薬の製造ができるのですか?」
と、鹿島は少し疑問に思っていた睡眠薬の存在を知らされて、
自分に睡眠薬を使用されたのではと思ってしまったようである
睡眠薬のことを知っているマーガレットが使用するわけはないし、
パトラは睡眠薬の存在を知らないであろうと思っていたが、
知っているならばパトラなら使用するかもと思っていたので、
睡眠薬製造が出来るのかを質問したが、
パトラからの返事はなかった。
しかしながら、
次元の違う異世界同士で、似たような酒にかかわる伝説には驚かされたが、
時すでに遅いが、二人の山神様を持ってしまった鹿島には、
勇者伝説よりも酒に釣られた大蛇が、
酒で身を亡ぼした伝説の方が教訓となった。
トーマスと鹿島は蜜採集作戦会議に臨み、
パトラは魔石での催眠薬の製造を担当して、
マーガレットは製造部に蜂蜜酒醸造器を頼んだ後に、
二万年老樹霊に六ケ所の妖精ハチドリの巣がある場所の提供を頼んだ。
鹿島に睡眠薬を盛られた疑惑は、うやむやのうちに無視されてしまった。
「起きましたか?食事できているよ。」
とパトラの弾ませた声で、部屋の主が二人以外でないことに安心する。
食事間には扉が無いので、寝室に扉を開けるとエルフ娘たちが食卓周りを世話しなく動き回っている。
亜人協力国においては平等主義をも国是としているが、
この大陸では理解されていないのだろうかとも思える。
十人用食卓の中央には、向かい合わせに二人分の食事が用意されていた。
食卓の席に着くなりコーA.Iからの通信が入った。
「カントリ国の兵たちは自国の領地であるのにも関わらず、
追跡できないように集落や森に火をつけて周り、
全ての橋を粉砕してしまい、
小川の丸太橋さえも壊しながら逃走しているようです。
恐らく井戸にも毒を落として行ったと思われます。
そして、避難民と思われる多数の人々は川を渡れずに、
川原で避難民集落を作り出しています。」
コーA.Iからの報告を聞いて、
鹿島はカントリ国指導者達の、外道と思える行動を新たに確認させられた。
コーA.Iからの報告がなされ終わると、直ぐにテテサ教皇からの通信も入った。
「閣下。カントリ国の避難民集落に食料配給をしたいと思うのですが、許可してください。」
「戦略会議においては、カントリ国には関わらないと、決めたでしょう!」
と、パトラが横から怒りながら発言した。
そして、マーガレットとマティーレも論争に参加してきた。
「人道的には送るべきです。」
「指導者達と民は分けるべきだと思います。」
と、二人は避難民集落に食料の配給をするべきだと主張した。
「マティーレが賛成するのであれば、私は反対しませんが、
結果は新たなる恨を受け取るだけと思います。」
と言って、パトラは引き下がった。
三人はしばらく返事をしなかったが、
「やらないよりも、やった結果が最悪であろうと、亜人協力国の国是は示せます。」
と、テテサ教皇は返した。
テテサ教皇の言葉にも皆は黙り込んでいるので、カントリ国への援助には賛成ではないが、避難民集落への食料配給に皆は、反対もしてないと判断した鹿島は、
「猫亜人にトラックで向かってもらいましょう。カントリ国の民が猫亜人と和解するなら、
これからの付き合い方に良い展望が望めるでしょう。」
「現地に聖騎士団が居ますので、協力してもらいます。」
と、テテサ教皇は返事した。
鹿島はまだ越境してないビリー司令官に連絡を取り、
砦の丘街指揮官を司令官に昇格させて、
猫亜人と聖騎士団の警護責任者に指名した。
現地司令官としてのすべての権限を与えたのちに、
彼の要求する兵をサンビチョ州兵からあてがうようにも指示をした。
準備が出来次第、避難民集落の食料配給場所へ向かうように命じろと伝えた。
ビリー司令官には、カントリ国の首都に向かって進軍するようにも指示した。
今回のカントリ国との戦闘では一番の難関であろうが、
砦の丘街指揮官は厄介なカントリ国民意をも、解決できるかの実力を知る機会である。
朝食をすまして、戦略室に向かうと既にトーマスと二万年老樹霊が待っていた。
二万年老樹霊は運営委員会の推薦で、オブザーバーとしての参加が認められていたが、
肩書は意見参考人であり議決権はなかった。
ただ、二万年老樹霊には何かがあるのではとの思いが、運営委員会全員の気持ちである。
二万年老樹霊は参加しても、みんなの発言を聞いているだけである。
全員が集まったところで、首席行政長官のマーガレットから重要な工事と、
懸念されていることの説明がなされた。
最も重要な工事は電力問題である。
電力に関しては、神降臨街における生活上だけであるならば、艦屋上の太陽光発電が出来るソーラーパネルで十分であり、現在稼働している工場に限定するならば、
火力発電で賄えると説明されたが、将来的には各街を繋げる交通網の整備が必要なので、水力発電を建設したいとのことである。
水力発電の場所として、最適な所がすでに検討されているとのことである。
そこは大河上流の二百メートル高さの滝であり、
簡単な発電所でも百機の発電機を取り付けられるとの事である。
将来的には千機以上も可能であるらしい。
百機の発電機が稼働したならば、
すべての計画中の工場と亜人協力国すべてに、
電力を供給できる規模とのことでもある。
問題は労働力だけであるが、今、技術班総出で取り込んでいるので、
部品はすべて工場にて製作計画中であるとの事である。
懸念されている事は、最悪樹海の美魔女からの報告では、
また二頭の魔物が樹海の奥から移動して、
カナリア街近くの樹海を徘徊しているとのことである。
「監視衛星は、魔物を追跡出来ない理由があるのですか?」
と、トーマスが尋ねると、
「魔物の体温が変化するので、赤外線センサーが役に立たないのです。」
とコーA.Iからの返事が返ってきた。
「だから美魔女に監視を依頼していたのです。」
と、朝から不機嫌顔のマーガレットが応えた。
運営委員会にとっては、カントリ国の話題と美魔女の名前が出ると、
いつも最後はみんな不機嫌になるようだ。
運営委員会にとっては両方とも生理的に受け入れられないようで、
潰してしまうには良心の呵責において実行できないからである。
美魔女にとっては、カントリ国と同列に扱われることは迷惑であろう。
いかがわしい証拠はないが、三区の繁華街で怪しげな行為をしているのであるから、それは致し方ない。
法事国家を目指している運営委員会としては、美魔女の行動証拠を男どもが隠して、
非協力的なので辞めさせる事が出来ない事に余計にイラつくのである。
「今陸戦隊においては全員を揃える事は出来ない状態なので、今集められる人数でやるしかないだろう。」
「今集められる人数と言ったら、隊長と私を入れても四人だけです。」
「ビリー司令官にお願いして、三人送ってもらいましょうか?」
「ビリー司令官が無理しなければよろしいと思いますが?不安ですね。」
鹿島とトーマスの会話に、マーガレットとパトラが手を挙げた。
「あたしたちも参加させて下さい。」
と、二人はハモった。
「今回は絶対ダメです。二人のお腹の子供達を、あなたたちは守らなければなりません。」
との鹿島の言葉に、二人とも立ち上がっていたが肩を落として席に着いたが、
「エルフ戦士からあたしが選抜します。」
とパトラは再び鹿島に顔を向けた。
「仲間としては、エルフ戦士は信頼できるが、兵器の扱いにおいては、
訓練なしでは難しいのです。」
「今からすぐに訓練させます。」
静かに鹿島達の会話を聞いていた二万年老樹霊が、
誰にも気づかれたくない気に静かに手を挙げた。
二万年老樹霊の挙げた手に気づいたテテサ教皇は、
驚き顔と短い声を出すと、皆が二万年老樹霊の挙げた手に注目した。
二万年老樹霊は今までに何度か出席していた。
戦略会議において感想を求められても笑っているだけであったが、
初めて意見を述べたい様子である。
「老樹霊様。何か良い知恵がありますでしょうか?」
テテサ教皇から老樹霊に対して、丁寧言葉を発したのを初めて聞いた事に驚いた。
「エルフ種族にも猫種族にも伝わっているはずの、
大蛇山の蟒蛇(うわばみ)伝説を忘れていませんか?」
「大蛇山の伝説では、
酔っぱらった大蛇同士が尾を互いに飲みこみ合った結果、
両方とも死んだことは子供でも知っていますが、
大蛇の事と魔物が関係しているとは分かりませんし知りません。」
と、マティーレは不思議そうに答えた。
「蜂蜜に水を加えるとお酒になることは、ご存知でしょうか?」
「聞いたことはありますが、蜂蜜自体が高価なので見たことも、
ましてや飲んだこともございません。」
「時々樹海の中が花一面になります。その時は妖精ハチドリの巣には、
溢れる位の蜜が溜まりますが、
強い風が吹くと多数の妖精ハチドリの巣は自重に耐え切れずに、
風に飛ばされて水たまりの小さな池に落ちてしまうことがあり、
その池で発酵してお酒になることがあります。
魔物はその匂いに誘われて集まってきます。」
鹿島は故郷の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説を思い出しながら聞いていると、
「大蛇同士が互いの尾を飲み込んでいる所に、
たまたま居合わせたエルフの勇者が大蛇二頭を打ち取ったとの伝説は、
魔物であったと言う訳ですか?」
「それはまだ鉄の時代ではなくて青銅時代であったが、
酔っぱらった魔物同士は酒を奪い合い、
両方の尾刃が相手の心臓を貫いて魔石をも粉砕し、
互いにつながったまま輪になり絶命したところで、
硬い鱗と当時としては切れ味鋭い尾刃を手に入れたエルフ戦士は、
誰も倒せない勇者となった伝説が正しい伝説です。」
「エルフ種族が人種からの虐殺攻撃を受けて、
絶滅しかけた危機を救った勇者の伝説は、本当であったのですか?」
「大蛇山の伝説と尾刃を手にいれた伝説は、元々一つの物語です。」
「私の故郷でも似たような伝説があります。ただ違うのは大蛇の首は八つ有り、酒を用意したのは大蛇を倒した男です。
倒した男は尾から天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を手に入れて神になりました。」
「崇められるには、崇められる理由があります。貴方とテテサ教皇の様に、
そして、これから生まれる子供達の母親のように。」
「よし!妖精ハチドリの蜜を採集しまくろう!
そして、魔物をおびき寄せる蜂蜜酒を醸造して魔石で催眠薬の製造を急ごう。」
と、パトラは気勢を上げた。
「睡眠薬の製造ができるのですか?」
と、鹿島は少し疑問に思っていた睡眠薬の存在を知らされて、
自分に睡眠薬を使用されたのではと思ってしまったようである
睡眠薬のことを知っているマーガレットが使用するわけはないし、
パトラは睡眠薬の存在を知らないであろうと思っていたが、
知っているならばパトラなら使用するかもと思っていたので、
睡眠薬製造が出来るのかを質問したが、
パトラからの返事はなかった。
しかしながら、
次元の違う異世界同士で、似たような酒にかかわる伝説には驚かされたが、
時すでに遅いが、二人の山神様を持ってしまった鹿島には、
勇者伝説よりも酒に釣られた大蛇が、
酒で身を亡ぼした伝説の方が教訓となった。
トーマスと鹿島は蜜採集作戦会議に臨み、
パトラは魔石での催眠薬の製造を担当して、
マーガレットは製造部に蜂蜜酒醸造器を頼んだ後に、
二万年老樹霊に六ケ所の妖精ハチドリの巣がある場所の提供を頼んだ。
鹿島に睡眠薬を盛られた疑惑は、うやむやのうちに無視されてしまった。
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