【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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60 手旗信号

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 鹿島は、テテサ教皇の奇跡と威厳の仕上げとして、今日はマーガレットの操縦でエアークラフトに乗り込み、パトラの弓で赤い矢をスケジュ皇帝の兜を射的予定である。

 鹿島の眼下には、スケジュ皇帝の打倒を目指す旗印のキョクトウ君は、
キョクトウ君陣営に賛同してきた兵と、
大蛇丸配下である三八式歩兵銃を装備したエミュー隊千名に、
エミューに引かせた大砲六十門と、
神降臨街屯田兵を加えた五千の軍を率いて進んでいる。

 キョクトウ君を補佐する様に指令を出したトーマス元帥と二名の副教育参謀少将は、
機動車輌にレール砲を搭載して、火炎放射器搭載軽車両十台を引き連れながら、
トロンボ州兵とゲルググ州兵の合流地点を目指していた。

 マーガレットの操縦でエアークラフトは、ムー帝国宮殿を眼下に見据えながら、
スケジュ皇帝が姿を現すのを待つために、宮殿上空を旋回しながら待つことにした。

ムー帝国は、宮殿前の広場と凱旋門まで間には、かなりの兵が集結していただけでなく、
城壁外の兵を合わせると十万はいるだろう。

 宮殿のベランダに、大将軍トローチと甲冑姿の評議員が揃って姿を現したとの、コーA.Iから連絡が入った。

 鹿島達もエアークラフト内で、午前十時の太陽の輝きの中心で待機した。

 宮殿前の広場と凱旋門までいる兵の歓声が轟くと、大きな日傘に身を隠すように、重甲冑姿のスケジュ皇帝が現れたが、ベランダの手すりまでは進んでこない。

スケジュ皇帝は赤い矢を恐れているようで、
陽射しを避ける様に大きな日傘に身を隠したままである。

 スケジュ皇帝がベランダにて、慣例通りの軍を鼓舞する演説を行わないことで、
兵の動揺するざわめきが起きだした。

大将軍トローチは、兵の動揺を鎮める為に自ら演説を始めた。

 パトラは、一つの弓に赤い矢を二本添えて、エアークラフトのドアを目いっぱい開けた状態の前で、仁王立ちして二本の赤い矢を弦からはなした。

二本の赤い矢は、大将軍トローチとスケジュ皇帝の兜を射抜き、兜ごと窓木枠に刺さった。

将軍トローチとスケジュ皇帝の頭つむじ真ん中髪の毛は、
無残にも鏃(やじり)により頭皮ごと剥されていた。

 周りの驚き声に、大将軍トローチとスケジュ皇帝は、何が起きたのか理解できずにいたが、
つむじと額の冷たさに気付き額に手を当てると、指先は血に染められていた。

 二人は卒倒してしまったようで、周りの護衛兵により奥の部屋へと運ばれて行った。
 
 二人がベランダから居なくなり、宮殿前の広場と凱旋門まで続いている兵の動揺したかなりの唸り声が、エアークラフトまで響いてきた。

 パトラの弓の腕は当たれと念じるとはいえ、神業だと思いながら敵に回さないで良かったと思い、鹿島はエルフ種族と共に、亜人協力国を興してくれたマーガレットにも感謝した。

 パトラとマーガレットは、エアークラフトのスクリーンに映った、
大将軍トローチとスケジュ皇帝のつむじを確認した様子である。

「パトラ。やればできるじゃん。」
「エルフ族においては、これぐらいできないと族長ではないよ。」
と、パトラは鼻高々である。

 流石に百八十年の貫禄であるが、近頃は鹿島と共に赤い微粒子の集め方も覚えてきたようで、てんこ盛りとはいかないが、手のひら一面に赤い微粒子を集めきれるようになっていた。

 突然パトラは鹿島の腕を握りしめて、
「元豊潤の森と、紅葉の森に、緑豊かな森の耳長族長たちにより、子供たちの名前が決まりました。ガイア様の【仁、礼、信、義、智、絆、持つものよ、世に平和と安泰を】の言葉から、
信は閣下だし、仁はマーガレットの子供だから、女の子は礼で、男の子は義に決まりました。つぎの子供は、智、絆らしいです。」
 勝手に鹿島の許可なしに決まったようであるが、喜ばないわけにいかない事なので、
「いい名前だけれど、次の子供って何?」
「あたしたちにもわからないけど、二万老樹霊はそう言っていたわ。」
「いい知らせだから、久しぶりに酒を飲みたいが、ジュースにしよう。」

 鹿島は四日夜の儀とマーガレットの誕生日以降は、決して酒を飲まないと誓っているので、
寂しいけれどもジュースにせざるを得ないと思った。

「大丈夫よー。三人で飲み明かしましょう。」
「酒は、今は軍事行動中なので、まずいと思う。」
「みんなに任せておけば、すべてうまくいきます。」
「そうです。閣下は自分で行動したがりです。」

 その夜はトーマスの妻ジャネックに脳筋娘と老樹霊たちを交えて、女子会が開かれた中に、ジュース片手に一人聞き役になりながら、一晩中付き合いさせられた。

 リアルタイムで送られるタブレットパソコンには、サンビチョ州での戦いにおいて、サンビチョ州で二番目に大きな二重壁のある丘の砦街は、既にカントリ国に攻撃されていた。

 街を守る城壁は二重だけど、土壁だけの貧弱で魔獣と猛獣の対策しかなく、丘の砦街住民は皆、五千の守備隊がまもる奥の砦に避難しているようである。

 街を守る外側土壁は、二万のカントリ国に三度目の攻撃で一ヶ所のほころびが出て、守備隊は奥の砦の中に逃げ込んだ。

奥の壁も土壁であるが、厚さと高さは街を守る外側土壁よりはましであり、二日後に着く予定の援軍が来るまでは、何とか耐えきって欲しいものである。

 女子会は終わっているようで、鹿島はパトラを起こさないように静かにベッドからすり抜けると、皆はあられもない姿で、あちらこちらの場所で毛布の中に転がっているが、
「もうすぐ子持ちになる俺は、理性の塊だ。」
と念じながら誰もいない場所を探した。

 仕方がないので、誰も居ない台所の隅でタブレットパソコンを開いて、戦場の状況を確認した。

 砦の丘街の攻防戦は一晩中続いているようで、それでも砦兵は活発な動き方で攻撃を防いでいる。

 ビリー司令官と二名の教育参謀中将に副参謀一人は、レール砲を搭載した高機動車輌二台と共に、エルフ戦士騎馬隊を伴い、遅れているエミュー隊を引き連れながら、
砦の丘街までは一時間で着く区距離まで迫っていた。

 ビリー司令官と教育参謀達は、キョクトウ君救出後からの行動を推測して、
まだ一日後でないと着かない予定のはずが、
いつ睡眠をとっていたのかが気がかりな強行前進である。

 コーA.Iに砦の丘街の指揮官をズームアップしてもらい、しばらく観察することにした。

 砦の丘街の指揮官は、宿舎の屋根に指揮番所を設けており、
四方の状況を常に観察しているようで、四人の手旗信号操者をせわしなく動かしていた。

 手旗信号操者のことをコーA.Iに尋ねると、古い教育参考映像では映し出したが、
活用方法としては説明しなかったし、
この惑星で手旗信号操者をみるのは、コーA.Iも初めて見る光景だといった。

 コーA.Iに手旗信号を解析するように指示して、内容を知らせるようにとさらに指示した。

 コーA.Iの手旗信号解析が判明したとの連絡で、
手旗信号操者の動きをズームアップしながら、信号の文字を表示しだした。

カントリ国の攻撃が弱まったところの守備隊には、
「順番に休んで、食事をしろ」
 と伝えている。

 苛烈に攻撃されている所には、予備の兵をまわしているようで、
予備と思われる兵は常に動き回り、予備配属先の兵が不足すると、
そこに移動して待機するようであり、連続で守備するのではなく、
常に守備兵の入れ替えを行いながら砦を守っている。

 一点突破しようとカントリ国の兵は攻め立てているが、
砦の丘街の指揮官はそこに次々と予備兵を増強して、
相手が攻めあぐむと守備兵も減らしている。

 鹿島は砦の丘街指揮官に会ってみたいと思った。

 砦の丘街の救援に駆け付けたビリー司令官等は、コーA.Iの砦の丘街の救援は必要ないとの助言により、攻撃目標をカントリ国の本隊と本陣への攻撃に切り替えたようで、
映像配信はレール砲から発射された爆発群を映し出した。

 カントリ国の本隊と本陣は、突然の爆裂で混乱している。

 一秒間に十発の爆裂弾丸の爆裂を初めて体験する者達は、爆風から逃げ惑うだけで、
状況を理解するのは困難であろう。

 本陣跡にエルフ戦士騎馬隊が到着しているが、生存者はいないようであると通信が入った。

 エルフ戦士騎馬隊は逃げ去るカントリ国兵にかまわずに、砦の丘街を取り囲んでいる兵団にむかっていく。

 レール砲から発射された爆裂弾丸は、逃げ去る群を壊滅するかのように、
大きな群を選別して攻撃している。

 エミュー隊も騎馬隊に合流して、包囲軍を背後から攻撃し始めたようで、
包囲軍は攻撃の薄いところから零れる様に逃げ出している。

 カントリ国兵の攻撃が止むと、砦の守備隊と住民が各門から次々出て来て、エルフ戦士の攻撃から逃げ惑う包囲軍のカントリ国兵を追いかけている。

 住民はカントリ国兵の落とした剣や槍を拾って、
逃げ惑う兵や戦意喪失した兵にも容赦なく攻撃している。

慈悲を懇願する者らは多数いるが、情けをかけては貰えない様子である。

やはり捕虜交換事件をみんなが知っているようで、情け容赦なく攻撃しているのは、
約束をほごにしたカントリ国の払う、大きな犠牲の責任は重いのである。

 累々と横たわっているカントリ国兵の数は、一万以上であろうが、
亜人協力国軍総出でカントリ国ハラグ王と思しき遺体を、探したが見つからなかった。

 ハラグ王は本陣を離れて包囲戦の指揮と取っていたが、
本陣と本隊が攻撃されている最中にすでに逃亡していた。

 食糧を満載した猫亜人の運転でトラック三台が現れて、
砦が丘街の住人に配給しだしているようであるのは、
陸戦隊時代にも周りの状態を観ながら、
隊の必要な物を常に用意していたビリー司令官の配慮であろう。

 猫亜人とエルフ戦士族による配給に、住民は近寄りがたくしていたが、
指揮番所で指揮をしていた男が、猫亜人とエルフ戦士族にお礼を述べだすと、
住民みんなも亜人達にお礼を言い出して、配給前に進み出てきた。

 亜人も人も同じ人間であると、理解し合える日も遠くないようである。

 トラック三台は引き揚げたが、エルフ戦士達はゲルとテントの設置班と、
砦が丘街の片付けに分かれているようである。

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