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59再対戦カントリ国

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 鹿島達元陸戦隊は、商人風ななりをした火の国の戦士等と別れて、元来た跡をたどりながら、キャルドを倒した辺りで迎えのエアークラフトが現れた。

 絶命したキャルドを捨てておくわけにもいかず、七百キロはあると思われる十二頭をエアークラフトに乗せるのは無理と判断して、乗せられる肉と皮だけを持ち帰ることにした。

残り大半の身はすべて炭になるまで焼き尽くしながら、
鹿島達は焼けた肉で遅い朝食になってしまった。

 鹿島はエアークラフトでの移動中に、運営委員会から連絡を受けた内容は、
サンビチョ州の国境沿いに、二万のカントリ国軍が集結中であるらしい。

 農奴と奴隷の開放は必要であるが、運営委員会としての方針は、カントリ国を亜人協力国に併合したくない希望も伝えられた。

その訳には、猫亜人種とのトラブルごとばかりではなく、明確な理由があった。

 カントリ国は、独特の恨文化であり、恨を持つことでカントリ国人は、自分は常に被害者であるという情治理屈である。

被害者は常に正義であり、法治よりも情治と人治が優先されるべきだとの思いである。

 五百年前に猫亜人の好意を逆手に取り、支配したが逃げ出された挙句に何とかカントリ国を建国できたが、猫亜人への恨みとそれ以前までは大陸の半分を支配していたのに、
自國人に追い出された支配者層の怨みが、自分の不幸は猫亜人と自分らを追い出した國人のせいにする恨となって、いまも恨だけを引きずりながら周りを混乱させている状態を、運営委員会は、怨み塊の恨と向き合いたくないのである。

 ガイア教会に於いても、かなりの努力はしたが、情治と人治を武器に立ち向かわれると、そこには正義さえも押しつぶされてしまうのだという。
最悪なのは、哀れ身の心で接すると、それがいつの間にか当たり前になってしまい、さらに要求は混迷させながらエスカレートする。

 恨をほぐす努力をさせても、その説得者に新たな恨を発生させるので、
長い時間をかけて引きずっている恨を自主的に解消させるしかないが、
ガイア教会としても、恨につける薬を前向きな希望で探したのだが、有れば欲しいものである。

 違った行動をしても、自主正当性を周りの恨に頼って、
それが正しいと思われるまで嘘を続けるようなので、やっかいなカントリ国風土である。

運営委員会はそんなカントリ国には、矢張り、関わりたくないのが本音であろう。

 エアークラフト内は急遽作戦室となり、カントリ国との戦争に備えて、元陸戦隊ビリー教育将校は、サンビチョ州方面司令官に任命された。

 騎馬隊とエミュー隊のエルフ戦士三千兵と、サンビチョ州兵三万に加えて、ヒット州兵二万の指揮をさせたうえに、元陸戦隊トーマス元帥に二名の副教育参謀少将除いた残りを、サンビチョ州方面副司令官に任命してから、各兵団の参謀兼任するよう併せて任命した。

 トーマス元帥と二名の副教育参謀少将には、トロンボ州兵とゲルググ州兵六万を指揮して、キョクトウ君陣営に賛同してきた兵と、大蛇丸配下である神降臨街兵を加えた。

更にムー帝国打倒を目指す旗印のキョクトウ君をも、補佐する様に指令を出した。

 各州兵にとっては、これまでの経過から、ムー帝国とカントリ国に対しては復讐戦を含んでの戦いであるために、鹿島はかなりの犠牲者が出るだろうと思ってしまう戦いであるので、万全の用意をするよう各指揮官に指令を出した

 鹿島は神降臨街に着いたそのままに、キョクトウ君を加えた全体作戦案を披露した。

 眠気の気配なくサンビチョ州方面ビリー司令官は、カントリ国と戦うために、装備の手配をして軍勢を整えた。

ビリー司令官は、機動車輌と騎馬隊の三八式歩兵銃を携えていた、エルフ戦士三千を従えて軍旅した。

 何故か聖騎士団メイディ法務長官も、三百のエミューに乗った聖騎士団を従えてビリー司令官軍の後を追っていくが、エミュー隊では、ビリー司令官軍機動車輌隊と騎馬隊には、追いつけないであろう。
 
 マーガレットの住居となった特別高級VIP室に向かい、鹿島がチャイムを押すと、マーガレットはドアを開けるなり抱き付いてきた。

 居間の方から、複数の笑い声が聞こえるので、居間に入ると来客がすでにいた。

マティーレと手伝いの猫娘たちに混ざり、見たことのない子供がいるので、
「どこの子供です?」
と尋ねると、
「一万年老樹霊です。」
と、答えた。

 一万年老樹霊は、ドレスのコスプレ姿で十歳位の年齢に変身していた。

 鹿島は、こんなコスプレ姿で怪しげな稼ぎ方をしていたのかと思い、社会的に許されないだろうと怒りがこみ上げてきたが、
「これは特別に今日からです。」
と、一万年老樹霊は鹿島の感情に気づいたのか、何の兆候もないはずなのに、鹿島の心の中の怒りを先取りして否定してきた。

「私たちの子供と一緒に成長したいので、この姿での許可をもらいたいと訪れたのよ。」
と、マーガレットはおどけ笑いをした。

 老樹霊は鹿島たちの子供を、守るとの約束を果たそうとしているらしいが、コスプレ姿での営業は、社会的責任が重いだろうと頭をよぎり、複雑な気持ちである。

「老樹霊は、男でも女でもない無性だと、初めて知ったわ。それに、いろんな感情はあるのに、恋する感情だけが理解できないようなの。」
と、マティーレもおどけた声を出した。

「子供の物心がつくまでは女の子で、それから先は男の子になるそうです。」
と、マーガレットは笑い出した。

 鹿島には何が可笑しいのかわからないが、一万年老樹霊の精いっぱいの取引だろうと雑念を払い理解した。

 鹿島は朝起きて、白いご飯に久々の和食定番の焼き魚に、ほう鶏の目玉焼きである。

「子供の名前が決まりました。私の子供は仁(ジン)です。あなたがガイア様に呼ばれた仁、礼、信、義、智、絆、から選びました。」
「俺に相談なく決めたのですか?」
「あなたに任せていても、いつまで経っても決めきれないでしょう。」
確かにかなり前から催促されていたが、鹿島には決めかねていたのであった。

 鹿島にコーA.Iから通信が入り、ヒット州知事ミクタの二万の軍がサンビチョ州に入った辺りで、監視衛星がカントリ国の遊撃隊と思われる、三千からなる国境を超える軍を発見した。

 鹿島は、ヒット州知事ミクタに知らせた。

 ミクタは、サンビチョ州方面司令官に、カントリ国の遊撃隊を攻撃したいとのことで許可を願いたいと連絡すると、カントリ国の遊撃隊攻撃を激励と共に許可された。

 ヒット州兵はサンビチョ州側に陣を構築しだした。
 
カントリ国から見て、手薄と思ったヒット州側傍からの侵入を試みての事だろう。

 スクリーンに映し出された、ヒット州軍の鶴翼迎撃態勢陣構えでいるのは、
知事ミクタの采配のすばらしさを見た思いである。

「この大陸での戦いは、前面展開打撃戦だけと思っていたが、
知事ミクタの采配のすばらしさですね。」
「私のシミュレーションでは、この戦い方が最適と出ました。」
とコーA.Iは、鹿島に自慢げに返事したが、
近頃は、コーA.Iの態度には鹿島も気にしなくなった様子である。

 確かに、大砲を前面に配置して、二千丁の村田銃を持った兵で迎え撃ち、側面からは伏兵にした槍と剣部隊配置は、火器類に精通してないと思い浮かばないだろう。

 ミクタ知事はコーA.Iによく相談するとは聞いていたが、戦術までも相談するとは驚きであった。

 鹿島はヘレニズ領軍とトマトマ領軍との戦い前のシミュレーション訓練のとき、コーA.Iとミクタ知事同士が組んで、亜人協力国と兵棋演習で戦った時に、ミクタ知事はコーA.Iをほめちぎっていた事を思い出した。

 カントリ国兵はミクタ知事軍の伏兵に気づくことなく、二千丁の村田銃を持った兵団に向かって、楯を持った密集体制の前面展開打撃戦で鶴翼陣形の中へ進んでいく。

 ミクタ知事軍の村田銃火器の強さを知っていたならば、攻め方は違っていただろうが、知らないので仕方のないことだろう。
 
カントリ国兵はミクタ知事軍の伏兵に気づくことなく、鶴翼陣形の中に入ってしまったところで、大砲と村田歩兵銃が一斉に火を噴いた。

カントリ国兵の楯は用をなすことなく、砲弾と弾丸の前では無力の物である。
 
砲撃がやむと、側面の伏兵は、カントリ国兵の後方と側面に、槍と剣で突進した。

二千丁の村田銃火器には長い銃剣が装備されていて、槍と剣の役割をしている。

カントリ国軍とミクタ知事軍の魔物の表皮楯と槍と剣にも差があるうえに、更に圧倒的な兵の数において、ミクタ知事軍の一方的な攻撃である。

 数十分の戦いは終わったが、カントリ国兵の生存者はいないであろう。

ミクタ知事軍の容赦ない攻撃は、この大陸では当たり前の事であるし、鹿島等銀河連合軍においても、トカゲモドキも蟲も捕虜にしないで殺してしまうし、トカゲモドキも蟲も鹿島等を捕虜にしないで餌にするのは、どちらも戦う前の優劣は関係なく、同じ対等な殲滅戦である。

 サンビチョ王都での捕虜確保は、シーラー教育参謀中将の銀河連合結成前における戦いにおいて、人権保護の歴史的は長久、戦士としての誇りからくる人道的良心からのことであった。

 他の銀河連合者にとっても、人間との戦いは、本心は苦悩であるはずだろうが、個人の尊厳を大義名分として戦い、戦いが終わればこの地を故郷とすると言葉を出しても、何時か故郷に帰れる微かな希望を、胸の片隅に閉まって戦っている事だろう。
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