【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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57巨額の融資

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 火の国の宮殿の十倍はありそうな、白く大きな宮殿に驚いた裂熊丸は、
宮殿前の建物も石を積み上げて作り上げた様で、この地は完全に常識外な人々の住まう場所だと認知し出してきた。

 そして、裂熊丸は、まだどのように接すればよいのか思案中の、生まれたばかりの我が子にも、この神降臨街を見学させたいとの親心も芽生えた

 石の建物には大きな窓があり、その立派な建物の前で荷車は止まった。
「ここも、宮殿ですか?」
と裂熊丸はいろんな見学を経験したので、思考力が落ちたのではと思いながらも、
感想そのままの言葉が出た。
「いいえ。国立中央銀行です」
「国立中央銀行?」
裂熊丸は聞いたことのもない、固有名詞であったので意味が解らなかった。

 建物の中は塵一つない清潔な通路で、強力な光魔法による明るさである。
案内された部屋は、飾り物のない実用的な空間であった。

 ムースンは裂熊丸らを迎えて、柔らかなソファーに案内した。
裂熊丸は経験したこともない、柔らかなソファーにも驚愕した。

 出てきた飲み物も初めての味で、香りよく喉にやさしい喜びを裂熊丸に与えた。
「これは何の飲み物ですか?」
「紅茶でございます。」

 出された飲み物を尋ねる下品な言葉が出てしまったのは、裂熊丸は生まれ元が悪いので、外面では隠す様に努めていたのに、雰囲気に負けて隠すのには無理があった。

 ムースンは五人の正面に座り、裂熊丸等に名刺を渡すと、裂熊丸等は名刺を渡されたが、文字はわかるが四角い白いものを理解してない様子である。

「私自身の紹介状で名刺です。火の国獅子団団長裂熊丸様のことは、閣下より聞いています。
私は亜人協力国商業担当長官ムースンといいます。
火の国獅子団団長裂熊丸さま、皆様よろしくお願いします。」 
 と控えめながら、ムースンは凛とした態度である。

「閣下の伝言では、穀物が必要とのことですが、いかほど用意すれば宜しいのでしょうか?」
「一万トン必要です。」
「白金貨二百貨幣ですね。穀物一万トンは用意いたしますが、
神降臨街での取引においては、神降臨街穀物取引所での売りはできますが、
白金貨二百貨幣の支払いは、その場で穀物との交換です。
そして、運搬は買い手の負担です。
運搬の手段がないならば、亜人協力国の穀物商店と取引が御座いましたら、
今回の売値は同じで運送費は半額になりますし、
これからの取引は全て亜人協力国の穀物商店を通してください。今回は特別です。」

「取引先はあるが、支払方法で当方の結論が出せないので、保留になっている。」
「ここは銀行です。白金貨二百貨幣は用意できます。どうなさいますか?」
「金を貸すと?」
「条件次第で貸します。」

「条件とは?」
「私は商業担当なので、商取引はできるが銀行のことはわかりません。
白金貨二百貨幣を貸せる担当者を呼ばれますか?」

「是非に、できれば口添えお願いします。」
「亜人協力国運営委員会の承諾のない事で、閣下以外からの口添えお願いは聞けません。それに各担当の領域は冒せません。
銀行担当者を呼びます。お待ちください。」
と言ってムースンは部屋から出ていった。

 穀物を買い入れることができるのは、閣下と呼ばれている守り人のおかげらしいと、
裂熊丸は今更ながら気が付いた。

 裂熊丸等はしばらく待たされて、入ってきたのは猫顔ながら、
穏やかな可愛い顔の猫娘が現れた。

 裂熊丸は初めて見る猫亜人にしばらく見とれてしまったが、
「火の国獅子団団長裂熊丸と申します。今回の会談では良い結果を期待します。」
と裂熊丸は、初めて見る猫亜人の穏やかな可愛い顔の雰囲気に、丁寧な挨拶をさせられた。

「亜人協力国の運営委員で、国立中央銀行総裁のマティーレと申します。
こちらもよい結果を期待しています。裂熊丸さま、
そして、黒豹丸様には改めて亭主に変わりお詫びいたします。
その後、黒豹丸様のお身体の様子はどうですか?」

 黒豹丸は猫娘の言っていることが理解できないようで、
「私は猫亜人とは初めてお会いしますが、どういう意味でしょうか?」
「うちの亭主が皆さまに侮辱の言葉を吐いて、切り合いなさったと聞いています。」

「私に足蹴りを入れたのは、人種でしたが?」
「そうです。亭主は人種です。
閣下より話を聞いて、文化の違いで大変失礼な事を申したようですので、
この大陸の文化を、強く言い聞かせました。」

 人種を恐れて隠れ住む猫亜人が、
裂熊丸らの前で堂々と対応できることにも驚いていたが、混種結婚にもさらに驚かされた。

「では、融資の件でお話ししましょう。金利は年三パーセントで、複利計算です。
支払いは、五回が限度ですが金利は上がります。
但し、今回は初めての取引ですので、二回払いまでです。」
「すみません。計算に弱いので、白金貨二百貨幣お借りすると、
お支払いはどの様になるのでしょうか?」

 マティーレは紙用紙を出しただけであったが、
裂熊丸が感じたマティーレ総裁と名乗る猫娘は、何か白いものを押しつぶしたか、
何かの皮を引き延ばしたのか、わからないものをテーブルに広げたと思った。

 五枚の白い紙用紙には、数字の配列が並び、文字が書いてあった。
「こちらが一括払いで、一年間で支払っていただく、総額は白金貨二百六貨幣です。
二年間で支払致しますと、最初は百七貨幣で翌年は、白金貨百三貨幣と金貨五十貨幣です。支払金額が少ない場合は、金利にも金利がかかります。
後の三枚の紙は分割払いの参考資料です。」

「担保は何を要求しますか?」

「① 完済するまでは、決して矛先をわれらの国に向けない。
「② 互いの国境での自由通過と商取引の往来の自由。
「③ 火の国での亜人協力国民を保護する義務。
「④ 亜人協力国の民に対しては、火の国は逮捕権を放棄して、被告は領事裁判を受ける権利。
「⑤ 契約書には貴方と猛者頭五名の者に、火の国ガイア教会の司祭様ともに保証人となり、
「⑥ 完済出来ない場合は、貴方と猛者頭五名の者は亜人協力国に身柄を移してください。
「⑦ そして、火の国獅子丸大王の命も担保です。」

「われらのことは構わないが、火の国獅子王丸大王の命も担保との表現は受けかねます。」
「では表現を変えましょう。
亜人協力国が納得できるような火の国獅子丸大王は責任を取る。とは、如何ですか?」

「その案を、大王様に確認する時間をください。」
「われらが国には、時間は充分に有ります。よい返事をお待ちしています。
但し!契約を結ぶのであれば、貴方と猛者頭五名の者は契約に立ち会ってください。
火の国ガイア教会の司祭様の保証書も忘れないでください。
そして、今日から完済が終わるまでは、われらの国の民に刃を向けないでください。」

 裂熊丸は、
「条件は良い、ましてや二年払いならもっと良い。」
と口には出さないで、胸の中で小躍りした。

 裂熊丸はすぐに帰る支度をして、
十金貨で四頭のエミューを手に入れなければならないと思い、
エミュー売買牧場を探すことにした。

 銀行員の説明で、門の前のテント脇にエミューの牧場があるとのことで、
先ずはそこを目指した。

 裂熊丸等は繁華街を通り抜けながら、何でこんな品物が売れるのか分からない物や、
自足で賄える物ばかりだと一瞥した。

ただ果物は多種多様に豊富であり、衣類も個性的であるが、
多種多様な漬物屋には、ビックリさせられた訳は、漬物は自分好みで作るものである。

 意味の分からない看板もあり、甘い匂いのする店、複数並んだパン屋、みんな繁盛している。

裂熊丸等も干し肉ばかりだと飽きも来たので、パンを購入する為に、
比較的すいている店を選んで入ったら、パンの種類は一種類でなく、
種類の多さにもびっくりしてしまった。

 肉屋と魚屋にも驚かされる。
大量の肉の切れ身が並んでいて、今日中に売れてしまえるのかと、余計な心配をする裂熊丸であった。

 裂熊丸達がテント脇に着くと、獅子団皆はトーマスに気が付いていた。
今のトーマスは黒い甲冑ではなくて、二人の女儀仗兵と同じ様な虹色に輝く華やかな甲冑に、
身を包んでいるトーマスに、裂熊丸は違和感を覚えた。

 女儀仗兵達半分はテントの裏でトーマスを囲んで、
全員が刃を剝き出しのまま切りかかっているが、
トーマスの木刀により、はねのけられては交わされている。

 あの赤い剣の娘もかなり強く切り込むが、トーマスに軽くいなされているようである。
矢張りあの時の黒い鎧を着た男たちは、只者ではなかったと裂熊丸は確認したと同時に、冷や汗を伴う悪寒が全身に走った。

 猛者頭達は美人ぞろいの娘たちに興味がありそうだが、裂熊丸は女儀仗兵やトーマス等と、
もめごとは避けたかったので、猛者頭達をせかしながら牧場へ向かった。

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