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53テテサ教皇暗殺者

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 ガイア教会本部は、聖人テテサを正式にテテサ教皇に指名して全会一致で承認された。

 ガイア教会頂点の、テテサ教皇の誕生である。

併せて神降臨街教会を、ガイア教会本部とすることも通知された。

 神降臨街ではまた三日三晩のお祭りである。

本部となったために神降臨街教会の増築工事が必要となり、神降臨街住民は全員が参加したがったが、神降臨街職業訓練校卒業者等は、建築家や職人に育っていたために、
テテサ教皇は全て彼らに任すこととした。

 ムー帝国の内部事情が次々と戦略室に送られてきた。

テテサの情報収集力か聖騎士団の活躍かは分からないが、
ムー帝国の内部事情は、皇帝は病いの為に床に寝たきりになり、弟のキョクトウ君が全権を握っていて、全ての指示は彼から出ていたが、皇太子スケジュを蔑んでいる様子で非常に仲が悪いとの事である。

 しかしながら、皇太子妃の父は大将軍トローチであり、皇太子スケジュの意見を排除するのは難しいようである。

 ムー帝国の皇帝が崩御された後は、かなりの混乱が起きることが予想される。

 鹿島は運営委員会から呼び出された理由は、ムー帝国の皇帝が崩御された後の処置をどうするのかの協議だと思ったが、ムー帝国のキョクトウ君からの使者が尋ねてきて、
テテサ教皇就任の祝いと回復魔法の治療要請に、銀河連合クレジット一億である白金貨十貨を持って現れたとのことである。

 運営委員会の受けた感じでは、キョクトウ君の要請は、
亜人協力国と個人的に友好関係を築くことと、変事が起きた時の亡命先に、
亜人協力国を頼ろうとの事だと推測したので、テテサの回復魔法でムー帝国の皇帝を治療する為に、テテサはムー帝国に赴くことになった。

 皇太子スケジュとカントリ国からの暗殺も予想されるので、
テテサの護衛は最強の布陣で強化をした。

 そして、運営委員会はキョクトウ君を後押しして、ムー帝国を併合する計画を立案して、
テテサの身には危険も孕んでいるが、ムー帝国へテテサを送り出す事にした。

 力が弱くなったムー帝国を、無血で併合する案をまとめるためには、
先ずはテテサをムー帝国に向かわせることに全員一致で可決したが、
護衛は鱗甲冑の聖騎士団を中心に百名を選び、シーラーを除いたトーマスと元陸戦隊も、聖騎士団に扮して護衛する事になった。

 鹿島が護衛任務に参加できないのは、赤色微粒の存在を知っているだろうとの予想で、マーガレットとソシアル航宙技官の操縦によるエアークラフト二機に、
レーザー銃を持ったエルフ戦士十五名を選抜して、鹿島と共に城壁外での待機となった。

 そしてさらに、街一つ潰せる監視衛星の護衛を強化したのは、
決してテテサに害が及ばないように、用心してのことであり、何かあれば、
間違いなく街ごと消滅させてでも、鹿島はテテサを守る決心である。

 コーA.Iの通信で一段目の敵襲撃が予想された。
一キロ先に五十人の武装集団が潜んでいるとの事である。

 鹿島だけの判断で敵と決めて、誰にも知られないように監視衛星のレーザー砲にて、
襲撃者全員を消し去ったのちに、五十人の武装集団の出発点の調査を、
コーA.Iに監視衛星のナビの記録を調べさせた。

 矢張り結果は、卑劣なカントリ国からの指示で動いていたようである。

動機はムー帝国と亜人協力国の、仲たがいを目的としてのことだろう。

 十台の重機動車輌隊とトラックは、何事もなかったかのように、
ムー帝国の王都の門前に着いた。

 王都門が開くと、テテサ達は王都の教会に向かった。

 教会前には、司祭等教会関係者と思われる者たちが並んで迎えている。
エアークラフトのスクリーンには、男の全身が監視衛星にて、
五ヶ所からの角度でキョクトウ君と表示された。

 武器は携帯してないようである。

 テテサ護衛の物々しさに、教会関係者の皆が驚いている。

聖騎士団はテテサに近寄るすべてを阻止しているが、
テテサは聖騎士団の隙間から一人一人に手を添えている。

 教会に入ろうとしたところで、二段目の暗殺者が現れたようで、
黒いコートに身を隠した修道士らしき男の頭が、トーマスのレーザー銃によって蒸発させられた。

首のない遺体は、コート裏にかくした短剣を握りしめたまま転がった。

 迎えの言葉を浴びせていた教会関係者と、キョクトウ君付きの護衛等は、
一瞬の出来事に静まり返ったが、テテサと護衛達は、
何事もなかったように教会の中へ入っていった。

 一時間たったころ、協会からテテサ等が現れて、
十台の重機動車輌隊とトラックは、キョクトウ君と付き人護衛の乗ったエミュー聖騎士団の後から、ゆっくりと付いていくのが確認される。

 王宮門を過ぎて、宮殿入り口で護衛の聖騎士団に囲まれたテテサが下りて歩き出すと、三段目の暗殺者がいると、コーA.Iから無線が入り、
五人の暗殺者は、矢を装填した石弓を持っているのを確認したとの連絡が入り、
元陸戦隊のレーザー銃は、放たれた矢もろ共、宮殿城壁上の暗殺者の頭を胸ごと蒸発させた。

 キョクトウ君は、テテサの護衛たちは王宮に入ることができないが、
これほどの事件が起きると、護衛を外す事は出来ないと、
百十名全員がテテサに付いていく事を許した。

「皆さんは、ガイア様の眷属でいらっしゃいますのでしょうか?」
と、キョクトウ君は訊ねた。
「ええ。眷属に属している守り人たちです。」
と、聖騎士法務長官メイディは、静かにうそぶいた。

 王宮に入ったテテサ達一行は、皇帝の寝室前においては流石に、護衛の入室は禁じられた。

 テテサは予定通りに、頭に冠型の超小型のX線付きカメラ内蔵金属探知機を設定して、キョクトウ君と共に寝室へ向かった。

 カメラから映し出されるエアークラフトの映像には、四人の体には金属反応はなく、
X線の画像では骨だけが映し出されていた。

でっぷりと太った男には、皇太子スケジュの文字が表示されていて、後の三名は医師と表示された。

 鹿島とテテサの時間が合うときに、二人は手を握り合って、
赤い微粒を集める努力をした介があってようで、テテサの手のひらには、
テンコ盛りの赤い微粒が集まるようになっていた。

 テテサは、赤い魔石を取り出すと、片手を広げて赤い微粒をテンコ盛りにした。

 てんこ盛りにした赤い微粒を皇帝の口に押し込むと、その口を強くふさいだ。
皇帝の青白い顔は、少しずつ血の気を取り戻していく様子で、血色良い顔になっていく。

 暫く後に、皇帝は気分がいいのでと言って起きあがったので、
寝室の五人は驚きテテサにひざまずいた。

 皇帝は自分の手のひらを広げて、生きている感触を確かめるように手のひらを見つめている。

「死の淵から引き揚げていただき、感謝する。」
と、だけ述べた。
テテサは、起き上がった皇帝に、
「キョクトウ君の信心深い志に呼ばれて参りました。キョクトウ君に感謝してください。」
と、言って、ガイア様を模写した小型マイクを内蔵したワッペンを、
皇帝のベッド後ろの壁に貼り付けると、寝室から護衛の方へに向かったが、
テテサは振り返ることなく、

「私に対して、命を狙った者たちは、それ相応の罰を受けます。お覚悟しなさい。」
と、誰とはなく語り掛けた。

 皇太子スケジュはその言葉に、顔の血の気が引いていった。

 帝都の教会でくつろいでいるテテサの元へ、キョクトウ君が現れた。

「皇帝の命は、後どの位だと思いますか?」
と、キョクトウ君は尋ねた。
「ひと月でしょう。間に合いますか?」
と、テテサは探りを入れた。

「もしもの時は、力になってくれますか?」
「亜人協力国の国是を尊重して下さる、度合いによります。」

「教皇様の教えは、私の模範です。国と民の幸せが私の願いです。
亜人協力国に併合されるのは、仕方のないことです。
今のままの制度では、国の支配が崩壊するのは時間の問題でしょう。」

「亜人協力国は、キョクトウ君を保護したいし、大陸中に個人の尊厳を達成するために、
協力してほしいと思っています。」

「その時まで命が残っていたならば、協力させていただきます。」

 キョクトウ君はやはり賢者であり、良心的な心の持ち主のようである。

「もしもの時は、家族で教会にいらしてください。保護します。」

そして司祭と教会関係者に、テテサの命を狙ったのは、皇太子スケジュと
大将軍トローチであることを告げて、キョクトウ君の保護を指示した。

 それから毎日、太陽を背に、二キロ上空に待機したエアークラフト上から、
エルフ戦士ハービーハンの真っ赤な矢は、皇太子スケジュの足元に刺さった。

 皇太子スケジュは、上空からの真っ赤な矢に、ガイア様の怒りを受けてしまったと思い、
表に出ることができなくなり、寝室に籠ったきりになったが、
寝室の窓からも、真っ赤な矢は飛んできた。

 テテサ教皇の命を狙って、皇太子スケジュはガイア様の怒りを受けているとの噂は、
帝都中に広まってしまった。

 時同じころ、カントリ国王ハラグの右手に持った兜を、赤い矢が貫いていたのは、
五十人の武装集団を潜ませていたのは、ハラグ王の指示であったためである。
 
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