【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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52条約を守れない国

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 神降臨街教会で罰当たりな事件が起きた。 
猫種族より神降臨街教会に献上された、ガイア様の聖杯が盗難にあったのである。

 この聖杯は猫種族が飢饉の際に、ガイア様から贈られた魔物の鱗からできた、
水魔法が掛けられた水差し型の聖杯であった。

 水差し型の聖杯は猫亜人が使うと、滞ることなく聖杯いっぱいに水は満たされていて、
いつまでも空になることはなかった

 樹海跡地においては、猫種族にはもう必要ないだろうとの判断で、
神降臨街教会に寄付されたものである。

 監視衛星の画像から、賊は五人組で、今は歓楽街となった三区の繁華街に消えていった。

 大蛇丸衛卒兵隊と、シリーの国勢調査部治安維持隊が合同で捜査した結果、
老樹霊の通報で犯人は程無く捕縛されたが、
運営委員会は盗み出した理由に唖然とさせられた。

 犯人たちの言い分は、水差し型の聖杯は元々カントリ国の宝であったのだが、
猫亜人に略奪されたものだと主張した。

 更に、カントリ国出身者は、猫亜人たちはカントリ国を裏切り逃亡したので、
猫亜人に対しては、俺らは何をしても許されると傲慢に答えた。

 報告を聞いた運営委員会は、聖騎士法務官等とシリー、大蛇丸を傍聴させて、
猫亜人長老会を証人喚問せざるを得なかった。
 
 長老会の語り部と呼ばれる老人は、聖杯の経緯を語り始めた。

 それは凡そ五百年前、大河の水が枯れてしまうほどの大陸全土が飢饉(ききん)に見舞われ、
作物を育てる事が出来ない中で、猫亜人にガイア様より水差し型の聖杯を贈られたことで、
飢饉を免れたとの事である。

 水差し型の聖杯のおかげで、他の土地よりもましな状態の猫亜人集落に、
大陸の半分を支配していた支配階級の者たちが、支配していた住民に追い出されて、
大挙して猫亜人集落に逃げ込んできた。

 猫亜人集落ではそれを憐れみ保護したが、彼等は生産に携わることなく、
数少ない作物を取り上げてしまうと、武器を買い込みだした。
猫亜人達は餓死寸前までに追い込まれたが、いつかは人種に理解してもらえると、
耐え忍んだが、耐えられないと判断した十一族猫亜人は、族毎に徐々に逃亡し始めた。
それに気づいた人種は残った猫亜人を隔離して、猫亜人をなお一層生産に酷使しだした。

 その苦難の状態のときガイア様が現れて、壁を抜ける能力と怪力や親族間のテレパシーを授けた。

更に、その地を捨てる手助けをしてくれたが、
十一族猫亜人はその時バラバラになってしまった。

 最初のころは、親族同士テレパシーで安否を確認していたが、
全ての族を養える土地はなく、バラバラに各地で生計を立てざるを得なかった。

 今は十一族猫亜人同士の交流はなく、すべての十一部族を養える樹海開拓を知らせることができないでいると、泣きながらひざを折った。

 いつの間にか二万年老樹霊が現れて、事実であると弁護した。

 猫亜人は嘘をつかないので、皆は信用した。

 カントリ国出身者の証人喚問では猫亜人は五百年前に人種の生活は庇護するから、
外敵から庇護してほしいと頼んできたが、猫亜人の収穫は少なく、
すべての猫亜人と人種の食糧はいつも不足がちで、約束を守らなかったのが猫亜人で、
人種は約束を守り外敵を駆逐して、カントリ国を建国した偉大な民族であるから、
尊敬されるべきであり、ほかの民族は従うべきであるとも言い出した。

 カントリ国を建国できたのは、猫亜人の協力があってのこととは思わずに、
大陸の半分を支配したことのある子孫で有るから、
自分たちは優秀であるとの思い上がりも感じられる。

 おまけに、猫亜人は国の宝である聖杯を持ち逃げしたから、取り返したと主張した。

 鹿島から見てもカントリ国出身者には全くもって、反省の言葉がないのは、
自分たちが正しいとほんとに思っているのか、
弁護のために主張しているのかわからないが、しかし窃盗は事実であるので、
罪人奴隷とせざるを得ないだろうと思えた。

 鹿島は、窃盗犯に近づいたときに、初めて魔物の眉間に剣を刺しこんだ時の、同じ得体の知れない悪寒を感じた。

 この事件により、カントリ国から急遽弁護士を兼ねた特使が来て、
聖杯の引き渡しを求めてきたが、
運営委員会がはねつけた事により、五年間で毎年五千金貨を支払う義務を遂行しない旨を、ムー帝国を経由して通達してきた。
 
 矢張り、カントリ国は、国際条約は守る気がない国の様で、
捕虜返還条約を反故にしてイアラを退位させてしまい、被害者ビジネスと思える偽称を振りかざして、ムー帝国都裁判所に於いて不利になったのは自業自得であったのに、
それさえも忘れて、難癖としか思えない要求をし出してきた。

自分の要求が通らないと、簡単に国家間の約束を反故にする信頼ならない国である。

 鹿島はカントリ国との国境通過監視所の封鎖と、国境線の監視強化を指示した。

 亜人協力国としたら、カントリ国は五年間で毎年五千金貨を支払う義務の条約は、
ムー帝国との間に保障する義務があり、カントリ国からの支払いの肩代わりを、
ムー帝国に通達したので、後は経過を見守ることである。

 それに伴い、裏社会を形成しようとしている厄介な理論で武装した、
カントリ国出身者の取り締まりを強化した。

 聖杯窃盗容疑者等の主張は、ガイア教会の聖杯窃盗事件の公判において、
更に多くのことを亜人協力国は要求された。
 
 公判審議中に、
猫亜人と共に建国した亜人協力国は、サンビチョ王国を併合したのであるから、
カントリ国出身者は、過去の猫亜人との経緯や、売春宿の女性を含めた被害者であると主張した。

 カントリ国出身者は、亜人協力国に対して過去での被害者であり、
それを癒す為に何をやっても許されるべきだと、主張する摩訶不思議な理論である

 聖杯窃盗容疑者等の罪状と過去の出来事は、個別の問題であるはずなのに、
カントリ国出身者の聖杯窃盗容疑者等と、
急遽カントリ国から派遣されてきた弁護人においても、
過去の個別事件と、自分の罪状を交換できると思っているようである。

 司法長官メイディの判決は、五百年前の出来事と、売春宿の被害者事件と、
ガイア様の聖杯窃盗事件は別物であるとして、判決文を読み上げた

 被告は五百年前の出来事で、個人的な損害を受けたと思えません。

 被告は直接に人権被害者ではありません。
 人権被害者と接点があったとしても、被告は聖杯の窃盗犯です。
 被告を犯罪奴隷とします。
 人権侮辱を含んだ窃盗犯として、十五年の強制労働を科す。

「これを最後に恨といやがらせ好きである、
カントリ国との関係は断ち切りたいものだな。」
と、メイディは独り言を呟いた。

 悪質な差別といわれなき人権侵害と認められた場合の対策として、
亜人協力国では殺人罪より重い新法律が成立していた。

 人権侮辱を含んだ窃盗犯として殺人罪より重い懲罰に、
鹿島に同情の気持ちがわかない理由は、五千人の捕虜の命が助かった恩義を忘れて、

猫亜人に見捨てられた恨みを五百年間忘れないで、

同情を受けやすい被害者になりすまし、

始まりの原因には目をつぶり、

その原因さえも物語のごとく歪曲して、
理不尽な要求をするのを国是としている者達は、

これからも何かと隙を見つけては、いろんな要求をするであろうが、
頑としてはねつけると鹿島は決めていた。

 カントリ国との国交正常化は、カントリ国民と政府の変化に期待せざるを得ないが、
他人の弱みに漬け込む様に常に絡んでくるから、
カントリ国との友好関係期待は、
無駄であろうと呟くしかない。
 
 そして、カントリ国との国境沿いに三千人のエルフ隊を配置して、ムー帝国には十万の兵を国境へ向かわせた。

 ムー帝国から特使が訪れて、国境沿いの軍隊を引き揚げさせて、
不可侵条約の締結を求めたのに対して、カントリ国と条約の完全施行を行うのであれば、
不可侵条約を結ぶことが出来ると伝えた。

 ムー帝国は条約の完全施行を約束して、カントリ国に代わり来年度分の五千金貨を支払らった。

 ムー帝国には、
「賢い国は、友好を求めてきます。愚かな国は、奪いに来ます。」
との噂話からか、はたまた、ほかの理由からか、
亜人協力国といつも紛争にしない様に、状況を判断できる賢者がいるようで、鹿島はテテサに調査を依頼した。

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