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51結婚式

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 トーマスから報告したいことがあると、コーA.Iを通して鹿島に無線が入った。

二人は食堂で待ち合わせの約束をしたが、トーマスはジャネットを伴い現れた。

 鹿島は珈琲をすでに飲んでいるが、二人はレモンティーを頼んだ。

妙な組み合わせで現れたので、シリーのことで何か起きたのかと、鹿島は不安にもなった。

 注文したレモンティーが届くまで、トーマスは落ち着かない様子である。

 鹿島は、トーマスからの挨拶が終わっても、話を切り出さない事に、かなりの深刻なことが起きているのかと不安を感じてきたが、トーマスの顔からは、何かを危惧する感じではないと悟ると、
武骨物のトーマスの顔に、鹿島は冗談含みに微笑んだ。

 鹿島の微笑みに、トーマスは狼狽して、
「ジャネットと結婚しようと思います。」
と、トーマスが切り出すと、脇のジャネットが、
「結婚します」
と、断言した。
「え~~。」
 鹿島は余りにも、予期せぬことが起きたので、大声で叫んでしまい、
思わず両手を挙げて椅子から立ち上がったら、後ろの方からカップの割れる音がした。

「何時から?」
「鱗甲冑を送った夜から」
「その後過酷な訓練を課していたようだが、心痛まなかったのですか?」
「それは愛です」
と、トーマスと鹿島は二人で顔を突き合わせて、小声でやり取りした。

「気づかなかった。不覚だ~。」
と、また大声で叫んでしまった。

 鹿島はトーマスの隠密軍事行動においての、優秀さはいつも認めていたが、
自分のことでも流石である。
「式はいつだ。」

 また二人は小声で話しはじめている。
「報告と、それを含めての相談です」

 鹿島達二人の小声に業を煮やしたジャネットは、
「普通に話せないことですか?」
と、イラついた顔で訊ねた。

 鹿島達は、微笑みを返しながら、
「すまん。軍人はフラグを立てないために、小声になってしまうのだ。」
「フラグ?」
「幸せを奪われ無い様に、用心してのことです」
「分からないが、幸せを奪われ無い為なら認めます。」

「ジャネット。おめでとう!式はいつにする?」
「早い方が希望です。」
「よし!みんなを呼ぼう!コーA.I、運営委員を呼んでくれ。お祝い事だと付け加えろ。」

 鹿島はどうも、コーA.Iに対して高圧になってしまうのは、コンプレックスがあるからだろうか。

「おめでとうございます!」
と、みんな口々に祝ってくれながら、食堂に集まってきてくれた。

 みんなはすでに気が付いていたようで、知らなかったのは鹿島だけのようである。

 そこで思わぬ告白がなされた。
「同じ日に、私達も合同結婚式を行ってよろしいでしょうか?」
と、マティーレが手を挙げた。

「相手は?」
 鹿島はマティーレに熱を上げている部下のホルヘのためにも、聞かなければならないと思った。
「ホルヘ.ゴンザレス副教育将校に決まっているでしょう。」
と、パトラが叫んだ。

 マティーレの相手がその部下であったことが、鹿島を更に驚かせた。
「彼のことを嫌っていると思っていました。」
「きらいも好きの内です。しつこく押し倒されました。でも、今では私の方が夢中でしょう。」

どうも、ホルヘはマティーレに嫌われていると思っていたのだが、鹿島には女がわからないようである。

 鹿島も二人との関係状態で、いつまでも結論を引き延ばすことは卑怯だと思い、
マーガレットとパトラをほかのテーブルに誘った。

「俺たちも急いで結婚式をしなければならないが、二人共どのように思っているのでしょうか?」
「子供達の為に?二人の為に?」
「両方です。」

「元々エルフ種族では家族はあるが、生活持続可能であれば長命故に、多夫多妻の考えを持った者も居るので、結婚にはこだわらない。
故に結婚式はない。事前の所有宣言は終わっているし、あとは受胎確認結果報告だけです。」

 マーガレットは静かに、
「私にとっては、結婚式はけじめであり、決意を表す事なので式を挙げたい。」

 結局は三組合同となったのだが、
脳筋ムキムキ娘事シーラー教育将校とマーク機械省技官も、結婚式参加が決まって四組合同となった。

 そして、鹿島は脳筋ムキムキ娘事、シーラー教育将校からの除隊願を受け入れた。
 
 四組合同結婚式は、テテサの立ち合いと庇護を受けて、神降臨街教会で宣誓式を挙げた。
 
輸送艦の大ホールは満杯で、スクリーン付き全ホールでの宴会が始まった。
 
 この結婚式で注目されたのが結婚式主役たちでなく、元航宙軍と陸戦隊の独身男性たちであった。

 十五名の独身男性の周りは、全種族の若い娘たちで賑やかである。
売り込みに夢中なのは、イアラ率いる美人ぞろいの女傑団で、薙刀師範であるマーガレットは次々と仲立人にされている。

 女傑団は剣術訓練中にマーガレットと一緒になった時に、マーガレットの薙刀に魅了されたようで、女傑団は全員が尾刃薙刀装備となった。
 
 イアラは尾刃剣の支給を許可されたが、使い慣れたと言ってそのままチェーンソー剣のままである。

 頃も岳中になった頃、ビリー教育将校と聖騎士司法長官メイディは、意気投合しているようである。

他の元航宙軍と陸戦隊の独身男性たちも、何人かに絞り込んでいるようであるが、
モテキを楽しんでいるようにも見えた。

 その中でシリーたち小娘達は、独身男性達に相手されないので、トーマスとジャネットの周りへ集まりだしていた。

 近い将来、異世界から到来してきた全ての者は、よい伴侶を見つけるだろうと思える。

 鹿島は結婚式が終わり一段落したと思ったが、パトラにエルフ種族街の広場に呼ばれた。

 鹿島が広場に着くと、全エルフ種族が集まったような数が、
広場からはみ出して牧草地まで広がっている。

 周りには屋台が並び、みなは思い思いの酒と弁当を広げている。

 パトラの全族長ハンを宣言した時並みの賑わいである。
櫓はないが、替わりに高機動車輌が用意されていて、屋根までは梯子がかけられていた。

 パトラは鹿島の手を引いて、梯子を上りマイクを握った。
「今日は重大な発表がある。ここにいらした亜人協力国の総督を名誉エルフに加える。
不服あるの者は申し出よ。」
万以上の群衆は静かである。

「総督をエルフ種族として、歓迎するか?」

地響き方思えるほどの歓声が轟いた。

「間もなく、私には娘と息子が授かる。父親はシン.カジマ名誉エルフである。
娘と息子が生まれたならば、エルフ種族として温かく迎えてほしいし、
厳しく教育してもらいたい。」

 地響きを伴った歓声は、神降臨街に響き渡るほどの音量である。
 
パトラは感謝の意を述べて、全エルフ種族に報告を終えた。
あとは三日三晩の宴会であった。

 パトラの妊娠に伴い、一族の娘たちが常にそばにいて、身の回りの世話を始めている。

 闇の樹海に生息している老樹霊達から、妊婦の体に良いと、ひょうたんや胡瓜形等々の色んな柑橘類が、マーガレットとパトラに毎日送られてきた。


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