38 / 181
36三湖の森の戦い
しおりを挟む
トマトマ伯爵は、門番衛兵に届けられたヘレニズ公爵の手紙を読み終えると、
「連絡は、受け取った。あの忌々しい指導者を含めて二十人だけで、出っ張って来やがったようだが、なんと!これは、ガイア様の祝福だろう。相分かった!公爵様にすぐに向かうと伝えてくれ!」
とトマトマは、畏まっているミクタに声を掛けた。
宮殿中の窓を震わせる爆裂音が響いた。
親衛隊長のドトールは窓に向かって駆け出していくと、三湖の森方面から、土埃と煙が上がっていた。
親衛隊長のドトールは、直ぐにヘレニズ公爵への面会を求めた。
「魔物が出たと言われている三湖の森で、何が起きているのだ。」
「わかりませんが、すでに偵察隊を向かわせました。出陣の用意はすでに終えています。」
「出陣とは、また気が早いな。」
そして、ヘレニズ公爵は窓際に向かって、三湖の森の方を眺めながら、
「かなりの土埃のようだが、静かになったな。何者か同士が戦っていたようだが、相手が魔物では、無駄なことだろう。」
と、三湖の森街に与える魔物の恐怖が、これから起きるのだろうかと考え込んだ。
親衛隊の一人がドトールに駆け寄り、何事か報告すると共に手紙を渡した。
ヘレニズ公爵に親衛隊長のドトールは、トマトマ伯爵からの手紙を差し出した。
「手紙を持ってきた者は?」
「手紙を持ってきた者は、トマトマ伯爵のまだ幼き女親衛隊であったようで、手紙を門番衛兵に届けたならば、直ぐに帰れとの命を受けて多様で、すぐに帰った様子です。」
「趣味の悪い、幼き女親衛隊か?ヤキモチも病気だな。」
と、言いながらヘレニズ公爵は手紙を広げた。
「トマトマ伯爵は、千五百人の兵を集めたようで、すでにこちらに向かってきているようだ。トマトマ伯爵の間者からの報告では、三湖の森に現れた魔物を退治に、指導者を含めて二十人だけで、出っ張ってきたようだ。事実なら、千載一遇の機会だが?本当に亜人国のやつらは、魔物に挑んでいるのか?」
更に、別の親衛隊員が駆け込んできた。
「三湖の森の偵察をしてきました。何者かが、三湖の森の中で、魔物と戦っているようです。」
「公爵様!直ぐに出陣の命令を。」
「戦っている者たちは誰だ。」
「わかりませんが、何人かの猫亜人を見かけました。」
「軍隊の数は?」
「軍隊は見かけませんでしたが、森で戦っている人数は少数でした。数はわかりません。」
「ドトール。もう一度、確認のための偵察が必要なのではないか?」
「トマトマ伯爵様はすでに動いていますなら、再度の偵察隊が返ってきてからでは、後れを取ります!先ずは、出陣して某が偵察します。」
と、ドトールは叫んだ。
親衛隊長のドトールは、トマトマ伯爵との密約で、亜人国を支配したのちは、闇の樹海砦に駐屯するのは、自分を指名すると確約をもらっていて、二人の取り分をすでに決めていたようである。
「確かに、亜人国の兵がいないのなら、千載一遇の機会だ。」
「ではすぐに、出陣を準備します。」
と言って、ドトールは、駆け出すように退室した。
ヘレニズ公爵は、
「まだ、出陣命令は出してないのに、せわしない奴だ。仕方ないか。」
と言って、侍従長を呼んで甲冑を用意させた。
シリーとジャネックは三湖街の門から逃れる脱兎の如きのように、憤慨しながら伝令から帰って来た。
「ご苦労様でした。」
「非礼な門番達であった。我らをトマトマの女親衛隊だと思い、卑猥な言葉をかけてきた。」
シリーとジャネックはかなりの怒り方である。
ジャネックは鹿島の耳元で、
「シリー様に、特別なやさしい言葉をお願いします。」
と、小声でささやいた。
「シリー、私の頼みでいやな思いをさせたが、今回の任務はシリーでなければ、うまくいかなかったのです。これから起こることはシリーの手柄です。」
「いやな思いをしたことは、閣下に貸しということで、よろしいですか?」
と、シリーは恥じらいながら小声でささやいた。
鹿島は、シリーに言った事は本心でそう思っての表現であり、
パンパ街の情報提供者から伝えられた、トマトマの女親衛隊の事から思いついた人選であったので、貸しを素直に認めた。
二つに分離された魔物が、クレーン車と重機動車輌に引かれて森から出てきた。
これからトラックに積み直すようである。
三湖街の城門が開き、百人ほどの傭兵に続いて、
徴用されたと思える粗末な木製鎧を着こんだ二百人ほどの棍棒兵団と、
銀灰色の甲冑を纏った三百人位の騎士団風がその後ろから現れた。
三湖の森近くで、六百予のヘレニズ兵は広めに展開した。
亜人協力国兵の戦闘員が少ないのを確認しての、鶴翼の陣のつもりだろう。
ヘレニズ軍の鶴翼陣中央を割るように、エミュー部隊が前面に現れた。
その中央辺りに黄金甲冑を纏うった小太りの男が現れると、部下に指示をしている。
指示されたと思しき男がエミューに乗り、周りを警戒しながら、偵察隊の報告以外の兵がいないことを確認すると、
魔物を解体と積み込み作業中の、猫亜人達に近寄り声掛けした。
「この魔物は、当方の領地に生息していた魔物だ。さっさと魔物を置いて立ち去れ。」
猫亜人は驚いたようにトラックやら、魔物の影に隠れた。
エミューに乗った男は、勝ち誇ったように、魔物の周りを徘徊して、
「責任者はどいつだ!」
と叫んだ。
「俺が亜人協力国の守り人カジマで、指導者である。」
と言って、エミューに乗った男に鹿島は小枝を片手に近づいた。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵様に魔物を献上するならば、配下に加えてくださるとの下知である。」
「お前はヘレニズ.サンビチョ公爵ではなくて、ただの使い走りか?」
「ただの使い走りか?だと、俺は親衛隊長のドトールだ!口の利き方に気をつけろ!」
かなりプライドの高い男のようである。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵とは、お前みたいな馬鹿をよこすとはかなりの臆病者のようだな。奪いたければ、自分で出向け!と伝えろ」
と言って、鹿島は小枝で、ドトールの乗ったエミューの顔をはたいた。
ドトールはエミューの暴走に耐えるように、必死になってエミューを制御しながら、
ヘレニズ軍エミュー部隊に突っ込んでいったが、
ドトールはエミューを制御するのは難しいらしくて、他のエミュー部隊を混乱させていた。
隊列整わぬまま、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは突進して来たが、
ほかのエミュー等は混乱したままなので、ばらばらで突撃しだした。
「合点承知」
とパトラの声掛けでそれを合図に、森の影から爆裂砲が門を破壊すると、
爆裂音と共に、森の中に隠れていた三十頭の騎馬隊が側面から現れた。
続いて鶴翼の陣で備えていた兵の前に爆裂閃光弾丸を三発お見舞いすると、
騎馬隊を避けるように、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールを除いて、
すべての兵が城壁沿いに逃げ出していた。
射撃隊からは二発の銃声がしただけで、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールの乗ったエミューはもんどりをうち、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは投げ出された。
ドトールは、抜いた自分の剣でのどを貫いてしまったようで即死であった。
ヘレニズは脳震とうのようで、大の字に倒れている。
「何だ!戦闘はないのか?」
とパトラの呆れた顔と言葉である。
マーガレットも薙刀を振り回し、鹿島の後ろで気勢を上げている。
この二人は戦闘狂かと疑りたい心境であると同時に、悋気も隠し持っているのなら、鹿島は怖い二人だと思ったと同時に、重たい女たちだろうとも思った。
ヘレニズは気が付いたらしく、鹿島の前に連れてこられた。
「ヘレニズ、何故に魔物を横取りしたいと思ったのだ。」
「ここは俺の領地で、すべてが俺のものだ!」
「そんなのは屁理屈だ。城壁の外は全て他国と共有している事だろう。パンパ全て亜人協力国の領地だと、宣言したのは亜人協力国だ。」
「それこそ屁理屈だ。三湖の森はみんなが認めた俺の領地だ。」
「他人の獲物もお前のものなのか?」
「献上すれば、配下にすると伝えたはずだ。」
「では、お前の領地を亜人協力国に献上すれば、配下にしてやろう。」
「ふざけるな!俺はサンビチョ王国の公爵だぞ!」
「今はただの捕虜だ。領地を亜人協力国に献上すれば、身代金無しで解放しよう。」
ヘレニズは不利になると沈黙を決め込むようで、鹿島の目をそらして天を仰いでいる。
ハービーハンから無線が入った。
「トマトマは無傷で捕縛しましたが、女騎士団二十名はわれらに向かい挑んできたので、
全員肩を射抜き捕獲しました。
ただ、エミューから落ちた時に、打ちどころが悪い者もいるようです。救護班を依頼します。」
鹿島はトラックで救護班を向かわせて、ハービーハンからの状況説明を聞くと、
爆裂閃光弾一発でトマトマはいの一番に逃げ出してしまい、
トマトマ軍二百は彼の後を追わずに、蜘蛛の子を散らすように逃げ去ったとのことであったが、トマトマ軍の進軍からかなり遅れていた女騎士団は、
逃げてくるトマトマを庇う様に、エルフ族騎馬隊に向かってきたとのことである。
女騎士団の属している華族と正体は、不明のようである。
三湖の森の戦いは、駒卓上戦闘訓練よりも、あっけなく終わってしまった。
鹿島は、魔物との戦いや三湖の森の戦いで死傷者の少なさが、余りにも上手く行くことが出来た事で、何かの力が働いたのではと感じた。
しばらく後にコーA.Iの通信が入り、女騎士団の身元は、サンビチョ国王女イアラと解ったとのことである。
厄介ごとか、新たなる希望の芽なのかは、四人の運営委員会次第だろうと、鹿島は他人事のように聞いていた。
ハービーハンは、束縛されたトマトマの身柄を連れて現れた。
「久しぶりだな~トマトマ、何で俺たちに再び挑んできたのだ。」
「俺の穀物を勝手にばらまいただろう。」
「あれはお前が住民の為に必要だと言っただろう。だから俺が配給してやったのだ。恨まれる筋合いはない。」
「配給は、俺が行わねば意味が無い。」
「すまなかった。俺の早とちりだったのか。しかし、今回の争いはお前の方から仕掛けてきた。お前は捕虜だ。お前の領地を取り上げねば収まらない。」
「勝手にしてくれ。だけども、サンビチョ王国が黙っている訳がないぞ!」
「そこでだ、相談だがお前の領地を白金貨五十貨で買ってやろう。」
「たとえ売るとしても、白金貨五百貨だろう。」
「今のお前の領地は、白金貨五十貨の価値しかないだろう。」
「白金貨五百貨の価値はある。」
「お前を捕虜として、亜人協力国に招待しよう。ゆっくり考えて返答してくれ。」
白金貨五十貨は、星座連合の五億クレジットであるが、鉱山一つの価値もないけれども、
トマトマには充分すぎるだろう。
ハービーハンは既に捕縛していたヘレニズを、馬の後ろに引いて現れた。
更に、トマトマの綱を鹿島から受け取り、二人揃えてそのまま馬で引いていった。
マーガレットとパトラは、女騎士団を医療病室に案内するようなので、
鹿島はトーマスの運転で、シリーとジャネックやミクタを軽機動車に同乗させた。
「ミクタ殿。ヘレニズとトマトマの領地を治めてくれ。
基本は農奴と奴隷の開放で、地主の解体と教育の充実を整えてほしい。
それと余剰人員の樹海跡地への移住の面倒を見て欲しい。
あとは治安の安定もお願いします。」
「難しいが、必ずや成し遂げて見せます。」
「農奴と奴隷の開放、地主の解体、とは、どういう意味ですか?」
と、シリーが聞いてきた。
「地主の土地は、小作人と農奴達が耕作していて、作物は全て地主のもので、小作人や農奴、奴隷は食べるだけの人生です。小作人と農奴達の耕作地は小作人と農奴達の耕した土地です。売られた奴隷は、事情を確認して解放する。
罪人奴隷は罪の分だけの期間にします。」
とミクタは説明しだした。
「貴族の荘園も、農奴のものですか?」
「当然です。」
「貴族と地主の威厳と生活は、維持できません。」
「それは彼らの問題で、われらは関知しません。亜人協力国には貴族も地主も必要ないことです。」
シリーは釈然としないようで、ジャネックに同意をもとめるが、
ジャネックは首をかしげるだけで、同意を表さない様子である。
ミクタの説明は、亜人協力国の国是基本をテテサが理解し賛同して、
説法教育に取り入れてくれた成果によるものである。
「軍隊の事は、トーマスとよく相談し合ってください。」
ミクタはうまくやる男だろうと、鹿島はトーマスの顔を覗くと、トーマスも微笑んで頷いた。
ヘレニズとトマトマの捕縛は計画通り終わったが、後はどの様に領地を同意併合するかである。
「連絡は、受け取った。あの忌々しい指導者を含めて二十人だけで、出っ張って来やがったようだが、なんと!これは、ガイア様の祝福だろう。相分かった!公爵様にすぐに向かうと伝えてくれ!」
とトマトマは、畏まっているミクタに声を掛けた。
宮殿中の窓を震わせる爆裂音が響いた。
親衛隊長のドトールは窓に向かって駆け出していくと、三湖の森方面から、土埃と煙が上がっていた。
親衛隊長のドトールは、直ぐにヘレニズ公爵への面会を求めた。
「魔物が出たと言われている三湖の森で、何が起きているのだ。」
「わかりませんが、すでに偵察隊を向かわせました。出陣の用意はすでに終えています。」
「出陣とは、また気が早いな。」
そして、ヘレニズ公爵は窓際に向かって、三湖の森の方を眺めながら、
「かなりの土埃のようだが、静かになったな。何者か同士が戦っていたようだが、相手が魔物では、無駄なことだろう。」
と、三湖の森街に与える魔物の恐怖が、これから起きるのだろうかと考え込んだ。
親衛隊の一人がドトールに駆け寄り、何事か報告すると共に手紙を渡した。
ヘレニズ公爵に親衛隊長のドトールは、トマトマ伯爵からの手紙を差し出した。
「手紙を持ってきた者は?」
「手紙を持ってきた者は、トマトマ伯爵のまだ幼き女親衛隊であったようで、手紙を門番衛兵に届けたならば、直ぐに帰れとの命を受けて多様で、すぐに帰った様子です。」
「趣味の悪い、幼き女親衛隊か?ヤキモチも病気だな。」
と、言いながらヘレニズ公爵は手紙を広げた。
「トマトマ伯爵は、千五百人の兵を集めたようで、すでにこちらに向かってきているようだ。トマトマ伯爵の間者からの報告では、三湖の森に現れた魔物を退治に、指導者を含めて二十人だけで、出っ張ってきたようだ。事実なら、千載一遇の機会だが?本当に亜人国のやつらは、魔物に挑んでいるのか?」
更に、別の親衛隊員が駆け込んできた。
「三湖の森の偵察をしてきました。何者かが、三湖の森の中で、魔物と戦っているようです。」
「公爵様!直ぐに出陣の命令を。」
「戦っている者たちは誰だ。」
「わかりませんが、何人かの猫亜人を見かけました。」
「軍隊の数は?」
「軍隊は見かけませんでしたが、森で戦っている人数は少数でした。数はわかりません。」
「ドトール。もう一度、確認のための偵察が必要なのではないか?」
「トマトマ伯爵様はすでに動いていますなら、再度の偵察隊が返ってきてからでは、後れを取ります!先ずは、出陣して某が偵察します。」
と、ドトールは叫んだ。
親衛隊長のドトールは、トマトマ伯爵との密約で、亜人国を支配したのちは、闇の樹海砦に駐屯するのは、自分を指名すると確約をもらっていて、二人の取り分をすでに決めていたようである。
「確かに、亜人国の兵がいないのなら、千載一遇の機会だ。」
「ではすぐに、出陣を準備します。」
と言って、ドトールは、駆け出すように退室した。
ヘレニズ公爵は、
「まだ、出陣命令は出してないのに、せわしない奴だ。仕方ないか。」
と言って、侍従長を呼んで甲冑を用意させた。
シリーとジャネックは三湖街の門から逃れる脱兎の如きのように、憤慨しながら伝令から帰って来た。
「ご苦労様でした。」
「非礼な門番達であった。我らをトマトマの女親衛隊だと思い、卑猥な言葉をかけてきた。」
シリーとジャネックはかなりの怒り方である。
ジャネックは鹿島の耳元で、
「シリー様に、特別なやさしい言葉をお願いします。」
と、小声でささやいた。
「シリー、私の頼みでいやな思いをさせたが、今回の任務はシリーでなければ、うまくいかなかったのです。これから起こることはシリーの手柄です。」
「いやな思いをしたことは、閣下に貸しということで、よろしいですか?」
と、シリーは恥じらいながら小声でささやいた。
鹿島は、シリーに言った事は本心でそう思っての表現であり、
パンパ街の情報提供者から伝えられた、トマトマの女親衛隊の事から思いついた人選であったので、貸しを素直に認めた。
二つに分離された魔物が、クレーン車と重機動車輌に引かれて森から出てきた。
これからトラックに積み直すようである。
三湖街の城門が開き、百人ほどの傭兵に続いて、
徴用されたと思える粗末な木製鎧を着こんだ二百人ほどの棍棒兵団と、
銀灰色の甲冑を纏った三百人位の騎士団風がその後ろから現れた。
三湖の森近くで、六百予のヘレニズ兵は広めに展開した。
亜人協力国兵の戦闘員が少ないのを確認しての、鶴翼の陣のつもりだろう。
ヘレニズ軍の鶴翼陣中央を割るように、エミュー部隊が前面に現れた。
その中央辺りに黄金甲冑を纏うった小太りの男が現れると、部下に指示をしている。
指示されたと思しき男がエミューに乗り、周りを警戒しながら、偵察隊の報告以外の兵がいないことを確認すると、
魔物を解体と積み込み作業中の、猫亜人達に近寄り声掛けした。
「この魔物は、当方の領地に生息していた魔物だ。さっさと魔物を置いて立ち去れ。」
猫亜人は驚いたようにトラックやら、魔物の影に隠れた。
エミューに乗った男は、勝ち誇ったように、魔物の周りを徘徊して、
「責任者はどいつだ!」
と叫んだ。
「俺が亜人協力国の守り人カジマで、指導者である。」
と言って、エミューに乗った男に鹿島は小枝を片手に近づいた。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵様に魔物を献上するならば、配下に加えてくださるとの下知である。」
「お前はヘレニズ.サンビチョ公爵ではなくて、ただの使い走りか?」
「ただの使い走りか?だと、俺は親衛隊長のドトールだ!口の利き方に気をつけろ!」
かなりプライドの高い男のようである。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵とは、お前みたいな馬鹿をよこすとはかなりの臆病者のようだな。奪いたければ、自分で出向け!と伝えろ」
と言って、鹿島は小枝で、ドトールの乗ったエミューの顔をはたいた。
ドトールはエミューの暴走に耐えるように、必死になってエミューを制御しながら、
ヘレニズ軍エミュー部隊に突っ込んでいったが、
ドトールはエミューを制御するのは難しいらしくて、他のエミュー部隊を混乱させていた。
隊列整わぬまま、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは突進して来たが、
ほかのエミュー等は混乱したままなので、ばらばらで突撃しだした。
「合点承知」
とパトラの声掛けでそれを合図に、森の影から爆裂砲が門を破壊すると、
爆裂音と共に、森の中に隠れていた三十頭の騎馬隊が側面から現れた。
続いて鶴翼の陣で備えていた兵の前に爆裂閃光弾丸を三発お見舞いすると、
騎馬隊を避けるように、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールを除いて、
すべての兵が城壁沿いに逃げ出していた。
射撃隊からは二発の銃声がしただけで、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールの乗ったエミューはもんどりをうち、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは投げ出された。
ドトールは、抜いた自分の剣でのどを貫いてしまったようで即死であった。
ヘレニズは脳震とうのようで、大の字に倒れている。
「何だ!戦闘はないのか?」
とパトラの呆れた顔と言葉である。
マーガレットも薙刀を振り回し、鹿島の後ろで気勢を上げている。
この二人は戦闘狂かと疑りたい心境であると同時に、悋気も隠し持っているのなら、鹿島は怖い二人だと思ったと同時に、重たい女たちだろうとも思った。
ヘレニズは気が付いたらしく、鹿島の前に連れてこられた。
「ヘレニズ、何故に魔物を横取りしたいと思ったのだ。」
「ここは俺の領地で、すべてが俺のものだ!」
「そんなのは屁理屈だ。城壁の外は全て他国と共有している事だろう。パンパ全て亜人協力国の領地だと、宣言したのは亜人協力国だ。」
「それこそ屁理屈だ。三湖の森はみんなが認めた俺の領地だ。」
「他人の獲物もお前のものなのか?」
「献上すれば、配下にすると伝えたはずだ。」
「では、お前の領地を亜人協力国に献上すれば、配下にしてやろう。」
「ふざけるな!俺はサンビチョ王国の公爵だぞ!」
「今はただの捕虜だ。領地を亜人協力国に献上すれば、身代金無しで解放しよう。」
ヘレニズは不利になると沈黙を決め込むようで、鹿島の目をそらして天を仰いでいる。
ハービーハンから無線が入った。
「トマトマは無傷で捕縛しましたが、女騎士団二十名はわれらに向かい挑んできたので、
全員肩を射抜き捕獲しました。
ただ、エミューから落ちた時に、打ちどころが悪い者もいるようです。救護班を依頼します。」
鹿島はトラックで救護班を向かわせて、ハービーハンからの状況説明を聞くと、
爆裂閃光弾一発でトマトマはいの一番に逃げ出してしまい、
トマトマ軍二百は彼の後を追わずに、蜘蛛の子を散らすように逃げ去ったとのことであったが、トマトマ軍の進軍からかなり遅れていた女騎士団は、
逃げてくるトマトマを庇う様に、エルフ族騎馬隊に向かってきたとのことである。
女騎士団の属している華族と正体は、不明のようである。
三湖の森の戦いは、駒卓上戦闘訓練よりも、あっけなく終わってしまった。
鹿島は、魔物との戦いや三湖の森の戦いで死傷者の少なさが、余りにも上手く行くことが出来た事で、何かの力が働いたのではと感じた。
しばらく後にコーA.Iの通信が入り、女騎士団の身元は、サンビチョ国王女イアラと解ったとのことである。
厄介ごとか、新たなる希望の芽なのかは、四人の運営委員会次第だろうと、鹿島は他人事のように聞いていた。
ハービーハンは、束縛されたトマトマの身柄を連れて現れた。
「久しぶりだな~トマトマ、何で俺たちに再び挑んできたのだ。」
「俺の穀物を勝手にばらまいただろう。」
「あれはお前が住民の為に必要だと言っただろう。だから俺が配給してやったのだ。恨まれる筋合いはない。」
「配給は、俺が行わねば意味が無い。」
「すまなかった。俺の早とちりだったのか。しかし、今回の争いはお前の方から仕掛けてきた。お前は捕虜だ。お前の領地を取り上げねば収まらない。」
「勝手にしてくれ。だけども、サンビチョ王国が黙っている訳がないぞ!」
「そこでだ、相談だがお前の領地を白金貨五十貨で買ってやろう。」
「たとえ売るとしても、白金貨五百貨だろう。」
「今のお前の領地は、白金貨五十貨の価値しかないだろう。」
「白金貨五百貨の価値はある。」
「お前を捕虜として、亜人協力国に招待しよう。ゆっくり考えて返答してくれ。」
白金貨五十貨は、星座連合の五億クレジットであるが、鉱山一つの価値もないけれども、
トマトマには充分すぎるだろう。
ハービーハンは既に捕縛していたヘレニズを、馬の後ろに引いて現れた。
更に、トマトマの綱を鹿島から受け取り、二人揃えてそのまま馬で引いていった。
マーガレットとパトラは、女騎士団を医療病室に案内するようなので、
鹿島はトーマスの運転で、シリーとジャネックやミクタを軽機動車に同乗させた。
「ミクタ殿。ヘレニズとトマトマの領地を治めてくれ。
基本は農奴と奴隷の開放で、地主の解体と教育の充実を整えてほしい。
それと余剰人員の樹海跡地への移住の面倒を見て欲しい。
あとは治安の安定もお願いします。」
「難しいが、必ずや成し遂げて見せます。」
「農奴と奴隷の開放、地主の解体、とは、どういう意味ですか?」
と、シリーが聞いてきた。
「地主の土地は、小作人と農奴達が耕作していて、作物は全て地主のもので、小作人や農奴、奴隷は食べるだけの人生です。小作人と農奴達の耕作地は小作人と農奴達の耕した土地です。売られた奴隷は、事情を確認して解放する。
罪人奴隷は罪の分だけの期間にします。」
とミクタは説明しだした。
「貴族の荘園も、農奴のものですか?」
「当然です。」
「貴族と地主の威厳と生活は、維持できません。」
「それは彼らの問題で、われらは関知しません。亜人協力国には貴族も地主も必要ないことです。」
シリーは釈然としないようで、ジャネックに同意をもとめるが、
ジャネックは首をかしげるだけで、同意を表さない様子である。
ミクタの説明は、亜人協力国の国是基本をテテサが理解し賛同して、
説法教育に取り入れてくれた成果によるものである。
「軍隊の事は、トーマスとよく相談し合ってください。」
ミクタはうまくやる男だろうと、鹿島はトーマスの顔を覗くと、トーマスも微笑んで頷いた。
ヘレニズとトマトマの捕縛は計画通り終わったが、後はどの様に領地を同意併合するかである。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※タイトルを『人間の中身はバグだらけ。 ~俺依存症な引きこもり少女と、セカイ系恋愛ファンタジー~』から変更しました。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる