29 / 181
27人材流入
しおりを挟む
朝から暑い、時々一日おきで十℃の温度差がある。
今日は、鹿島はパンパ街に出かけ無ければ成らない。
陸戦隊三人を残して、九人体制で二十人のエルフと十人の猫亜人を伴って行こうと、鹿島は朝早くから意気込んでいる。
パンパ街の住民と亜人協力国住人との、触れ合いができるように、戦略チャンスを設ける必要があるだろう。
食糧貯蔵庫に向かうと、二十人のエルフと二十人の猫亜人が、トラック荷台に麦とイモ類の入った麻袋を積み込んでいる最中に、トーマスの怒鳴る声が聞こえる。
「お前たちは、五十キロの物が一人で運べないのか?」
「無理です。ホークとナイフ以外の重たいものは、持ったことがありません。」
と、ホルヘ一等陸士が、タゴール一等陸士の手を借りながら叫んでいる。
エルフは何とか肩に背負い歩いているが、猫亜人は両手に一つずつ五十キロの麻袋を持ち、トラック荷台に積み込んでいる。
エルフの男たちは、背丈百八十センチ位の細い体つきだが、大人の猫亜人は背丈百六十センチの小柄で、肩幅広く、がっちりとした体格は驚異的である。
アーマートと、妹のマクリーも力持ちと思ったが、全ての猫亜人は怪力持ちであるが、他の種族と争を好まず、壁に隠れる能力をガイア様に貰ったらしいが、徹底した非暴力主義に畏敬の念を抱かされる。
試しに、鹿島も一袋待ちあげると、五十キロの麻袋が二十キロ位に思えた。
二袋は無理だが、一袋を軽々と荷台に運んだ。
矢張り隊員たちは、怪訝そうな顔で鹿島を注視している目は、怖がってはいないが、鹿島の得体の知れない変化を感じているようである。
鹿島は猫亜人を十人の予定から、荷下ろしには矢張り猫亜人が必要であると思えたので、二十人体制に変更した。
エルフ二十人と隊員たち八人をトーマスに選ばせてから、パンパ街を目指した。
鹿島達がパンパ街につくと、城壁の門は閉ざされていた。
鹿島もトーマスも鼻で笑い、閉ざされている門を無視する様に荷を下ろし始めた。
荷を下ろし終えると門は少し開き、門の内側から一人の兵士が出てくると、鹿島に近寄ってきた。
「トマトマ.ドンク伯爵の代理できました、衛士兵トミエと申します。
領主様の事付けを預かりましたが、後程言います。
テテサ様とカサチー等孤児院の子供達は無事ですか?」
トマトマの伝言よりも、教会関係者のことを先に尋ねられた事に、鹿島は真意がわからないので、
「テテサ修道士殿は、、亜人協力国の運営委員会に入られ、カサチー殿は学校の運営委員に任じました。子供達も亜人の子たちと、うまく付き合っています。」
「そうですか。安心しました。カサチーの兄が門の裏で隠れています。
うまく脱出させて保護してください。
部下を蔑み、領民をぞんざいに扱う、領主様の伝言です。荷を置いて立ち去れ。との事です。」
教会関係者のことを先に尋ねた真意を知らされて、裏の事情があるのではと、思ったのは鹿島の勘違いであったようだ。
「では、城壁を崩すか?門を吹き飛ばすか?どちらかを選んでください。」
「住民にとってはどれも困るが、出来れば門の片側だけにしてください。」
「了解した。」
衛士兵トミエは門の中へ入り、再び門は閉ざされた。
鹿島はマイクを握り城壁内に向かって、
「パンパ街の皆さん、あなた達の慈悲深い領主様からの恵みです。
あなた達に施すとの事で、食糧十トンの注文を受けました。
門が壊れて開けられないようなので、昨日の爆裂魔法で門を吹き飛ばします。
注意してください。
門が開いたら、麦かイモ類を無料で、一人十キロ用意しました。」
門の内側から歓声が上がり、慌てたように門が目一杯に開いた。
衛士兵トミエへの伝言に、門番衛生兵が驚愕したのだろう。
門内側から群衆が一目散に、駆け出して来る。
その中に、一台の荷車が群衆に隠されるように、群衆と共に向かってくる。
群衆はエルフと猫種族の前に近付くと止まり、ゆっくりとした歩調になり静かに列に並んだ。
パンパ街の住民は、鹿島に気づくと皆が陸戦隊の真似をして敬礼している。
荷車はトラックの影に入り、それぞれが一人また一人と十人近くの青年と娘たちが、それぞれに隠れだした。
衛士兵トミエの言っていた、見習い修道女のカサチーの兄達が来たようである。
鹿島はトラックの裏に回り、
「あなた達は、何者ですか?私達に用事があるのですか?」
と、誰何すると、
「私は、カサーノと言います。カサチーの兄です。ここに居る皆、修道院の孤児院出身者です。カサチーの身が心配と、あなた達の国の住民にして頂きなさいと、修道院長に助言されました。
みんな職人で、材料が入荷しなくなり仕事がないのと、兵役にも行きたくないのです。」
カサーノは、一気にしゃべりだした。
陸戦隊の皆は、荷車から職方道具であろう荷を、トラックの荷台に移し替えて、カサーノ達を直ぐに小さな窓の軽機動装甲車に載せて、待機してもらうことにした。
穀物の分配が終わり掛けたころ、コーA.Iから無線が入り、
「三メートル位の四足動物が、東から近づいて来ます。距離一キロです。凄いスピードで七分後に遭遇します。」
陸戦隊全員が緊張して、東の方にレーザー銃を向けた。
その緊張の中でトマトマが現れたので、鹿島は再びマイクを握り、
「慈悲深いトマトマ.ドンク伯爵様が、皆を心配して慰労に来てくれました。歓迎しましょう。」
と、叫んだが皆唖然としている。
しかしながらも、皆は鹿島の配慮に気づいたようで、一斉に歓声を上げた。
トマトマは、何か言いたげな様だが、言葉を忘れたような顔で拳を振り上げたとき、
三十頭位の銀色狼似の四つ足動物が、「ギエ、ギエー」叫んで、近づいてきた。
トマトマは銀色狼似に気づき、住民を置いて一目散に門の内側に逃げていくと、直ぐに門を閉めてしまった。
エルフ達も銀色狼似に気づき、一斉に弓矢を構えた。
「陸戦隊、銀色オオカミはエルフに任せて、二十メートルで援護射撃!」
と、鹿島は叫んだ。
エルフの矢は、三十頭の銀色狼似の顔面に矢を打ち込み、四十メートルから三十メートル位で全てを倒した。
やはり、エルフの弓は脅威の凄腕である。
配給場から逃げ出していた住民も引き返してきた。
「昨日の魔法の杖も凄かったが、エルフの弓矢も凄いですね。」
と、次々に称賛した。
猫種族のトドが近寄り、
「肉は、人間種族に分けてあげて、獣なので赤い石はないが、毛皮だけを持ち帰りましょう」
と、提案してきた。
「では、解体をお願いします。」
トドはみんなに合図して解体に向かうと、猫亜人全員が解体に参加する為に、チェーンソーナイフを取り出しながらトドの後ろからついていった。
一頭の解体が終わると、トドが住民を呼ぶように手招きして肉を配り始めた。
トドは、食料を受けた人に断りの姿勢で、配給を受けてない人だけに配っている。
初老の住民が、猫亜人のナイフを見て、
「よく切れるナイフのようだが、何処で手に入れたのですか?」
「俺たちの国の守り人から頂いた、魔道具のナイフです。」
と、答えている。
「貴重な肉をわれらにあげて、あなた達の分無くなりますよ。」
「私達は、いつも食べきれないほど、毎日、肉は頂いています。魔物の肉を頂いた後のひと月は、肉を見たくないほどでしたが、それでも運んできてくださいました。」
「魔物の肉を食べたと、魔物肉を食べると精力抜群と聞きましたが、どうでしたか?」
初老は卑猥顔でにやけながら、小声で尋ねた。
「皆は、それ、なり、に、フ、フ、フ、頑張ったようです。来年は子供の夜泣き声で眠れないでしょう。腰の曲がった爺様にも春が来たようで、自慢げに背筋を伸ばして歩いています。」
と、トドも小声で鼻の下を伸ばしたかのような、卑猥顔である。
「本当に、魔物を倒したのですね。」
「魔物を倒すのを見ました。」
二人は竹馬の友の様に、意気投合している。
「このキャルドの毛皮は、どうするのですか?」
「商人へ売ります。」
「私は、毛皮の取引をしているムースンと言います。私に譲って頂けませんか?」
「我が国の指導者提督閣下が彼方にいます。相談して下さい。」
「指導者、王様でございますか?」
「そうですが、国では提督閣下と呼んでいます。閣下は我ら亜人に対しても、個人の尊厳をしてくれます。」
「個人の尊厳ですか、いい言葉ですね。閣下殿は、模範の指導者ですね。羨ましいです。」と、トマトマへの皮肉なのかムースンは肩を落とした。
鹿島のもとへ、トドが初老の男を連れて来て、
「閣下、毛皮商人のムースンです。キャルドの毛皮を譲ってくれと、相談されました。どういたしますか?」
トドは、承諾したい顔である。
鹿島は、近くにいたパトラの従兄弟ハービーハンを呼び、
「毛皮商人のムースンが、キャルドの毛皮を譲ってくれと、言ってきたが、毛皮を剥した猫亜人と、お前たちが仕留めた獲物だから、トドを交えて交渉してくれ。」
ムースンと二人の交渉が終わり、トドとハービーハンが来て、
「閣下、一頭分の毛皮、大銀貨伍貨で引き取ってもらいました。三十一頭分で金貨十五貨と大銀貨五貨です。正直な商人です。」
トドは興奮して報告した。
ハービーハンは少し冷静に、
「閣下、ムースンから、砦の倉庫にある毛皮を、買い取りたいと、申し込まれました。」
「毛皮を畜産物として扱い、売値の交渉は、畜産物責任者のパトラも同席させてください。」
「畏まりました。パトラ族長に任せます。」
ムースンは革袋の財布を持ちながら、鹿島の所へ来て革の財布を差し出した。
「私どもに、キャルドの傷一つない毛皮を譲って頂きました。これは代金です。」
と、鹿島に革袋を差し出した。
「これは、エルフと猫亜人のものです。彼らに渡してください。」
傍にいた、トドとハービーハンは、
「われらは、充分にいい生活させてもらっています。国にお金が必要でしょうから、国へ納めてください。」
トドの申し出に、ハービーハンも、
「そうです。豊国強兵、知識向上教育の国を目指しているのですから、国にはお金は必要です。」
そのやり取りを見ていたトーマスが、
「金の話は、閣下では無理、閣下の気持ちだと、今日の労賃と思い、みんなに配りたいと思ってのことです。貨幣に関しては、マティーレの判断を仰ぐことで、如何でしょうか?」
ムースンは、革の財布をだれに渡すべきか、オロオロしだしたが、おもむろに隣のトーマスへ押し付けてしまった。
トーマスの顔は、余計な荷物を握らせられ込んだ事に、余計なことを言ったと後悔している様子である。
このやり取りに、ムースンは感激したようで、
「亜人協力国は、此れからもっと、いい国になるでしょう。私の一族でも住民になれますでしょうか?」
ムースンはひざを折り、腕を胸に置き尋ねた。
「勿論、大歓迎です。」
鹿島はムースンの手を取り応えた。
「閣下と亜人協力国に一族一同忠誠を誓い、荷物を整理したのち、必ず移住致しますので、よろしくお願いします。」
「待っています。人間と亜人が協力で来たなら、いい国になります。」
トドは歓迎の言葉をかけながら喜び、ハービーハンも、
「私の作っているチーズが、もうすぐ出来上がります。食べに来て下さい。」
ムースンは涙目で、トドとハービーハンの手を握り、
「人生は、長く生きるものだと、今日感じました。ありがとうございます。」
ムースンは、迎えに来た青年たちと荷車を引いて、門に入っていった。
この男ムースンは、後に亜人協力国商業担当官となり、国の商取引の発展に貢献してくれるのである。
鹿島は、パンパ街の内部協力者を得たと感激した。
ムースンの協力を得て、内部不満者による支配者転覆をはかり、その指導者との併合を取り決め合うだけである。
鹿島は軽機動装甲車に居る、カサーノたちの向かいに座り、
「ようこそ亜人の国へ、来ていただくことに、歓迎します。亜人と上手く付き合ってください。亜人協力国は、彼等の国でもあります。」
「我々も亜人を昨日初めて見ました。今日も大勢の亜人を見て、驚いています。
修道院長から事前に、亜人もガイア様を信じているとのことで、安心しています。」
カサーノは鍛冶職人で、農具から武器、鎧まで幅広く対応しているとアピールした。
ほかの青年等と娘たちも、カサーノの弟子たちといろんな職人のようである。
皆は最初、軽機動装甲車の揺れに緊張していたが、窓から見える草木の流れに驚愕しだした。
砦に着くと、テテサとカサチーが丸太杭の門で待っていた。
「皆げんきでしたか?カサーノ兄さん、よく来てくれました。嬉しいです。」
カサチーは軽機動装甲車に飛び乗ってきて、テテサを車内に引き上げると、皆にこれからの生活においての注意を訓示始めた。
カサチーは子供たちに教えている基本として、亜人も人種も尊敬しあう仲を強調して、
皆にもそのことを理解して、尊厳を尊ぶ生活するように注意をしている。
テテサはこれからの仕事について、
「私は、この亜人協力国の運営委員会員に指名されて、国の財政をも知っています。この国に現在貨幣は殆ど有りません。今現在の状況において、金と銀、銅鉱山が見つかっており、貨幣の造幣が出来次第に仕事の対価を支払いします。住宅と食事は毎日用意するが、給料手当の件は、保留にして欲しい」
と歎願している。
カサーノはテテサの手を取り、
「テテサ様、私達皆お金目的で来たのでは有りません。安全な場所と未来の希望をもって、この国の住人になりに来たのです。」
毛皮商人と亜人たちの会話を聞いていたと付け加えて、テテサの申し出を気持ちよく承諾してくれた様子である。
艦尾入り口に着くと、機関部機関長と機関技官二人が出迎えていた。
「挨拶に来ました。機関部アマヤモとサーサデです。反射炉の建設及び、魔物から取れた皮膚と鱗の加工で、鍛冶職人方たちと、共同開発及び加工運用したいのです。」
と言ってから、カサーノ達を伴い職工区の建物群に向かった。
金属融解をするにあたり、鍛冶職人達はふいご式と主張したが、反射炉の建設が今の段階では現実的であるらしい。
反射炉での加工は千三百度しかない低温であるが、これに手を加えて二千度までの反射炉を建設して、運用するとの事らしい。
コーA.Iと工業部の調査結果で、鱗と表皮は高温であればあるほど、熱加工するとタングステン以上の強度になると説明し始めた。
而も、陸戦隊の着衣している防護服の強度よりも強く、重さは十分の一の軽さに出来るとの事らしいので、鱗一枚で一人分優に作成出来るという。
これらのことは安全にかかわることなので、優先的に進めてほしいと鹿島は要請した。
今日は、鹿島はパンパ街に出かけ無ければ成らない。
陸戦隊三人を残して、九人体制で二十人のエルフと十人の猫亜人を伴って行こうと、鹿島は朝早くから意気込んでいる。
パンパ街の住民と亜人協力国住人との、触れ合いができるように、戦略チャンスを設ける必要があるだろう。
食糧貯蔵庫に向かうと、二十人のエルフと二十人の猫亜人が、トラック荷台に麦とイモ類の入った麻袋を積み込んでいる最中に、トーマスの怒鳴る声が聞こえる。
「お前たちは、五十キロの物が一人で運べないのか?」
「無理です。ホークとナイフ以外の重たいものは、持ったことがありません。」
と、ホルヘ一等陸士が、タゴール一等陸士の手を借りながら叫んでいる。
エルフは何とか肩に背負い歩いているが、猫亜人は両手に一つずつ五十キロの麻袋を持ち、トラック荷台に積み込んでいる。
エルフの男たちは、背丈百八十センチ位の細い体つきだが、大人の猫亜人は背丈百六十センチの小柄で、肩幅広く、がっちりとした体格は驚異的である。
アーマートと、妹のマクリーも力持ちと思ったが、全ての猫亜人は怪力持ちであるが、他の種族と争を好まず、壁に隠れる能力をガイア様に貰ったらしいが、徹底した非暴力主義に畏敬の念を抱かされる。
試しに、鹿島も一袋待ちあげると、五十キロの麻袋が二十キロ位に思えた。
二袋は無理だが、一袋を軽々と荷台に運んだ。
矢張り隊員たちは、怪訝そうな顔で鹿島を注視している目は、怖がってはいないが、鹿島の得体の知れない変化を感じているようである。
鹿島は猫亜人を十人の予定から、荷下ろしには矢張り猫亜人が必要であると思えたので、二十人体制に変更した。
エルフ二十人と隊員たち八人をトーマスに選ばせてから、パンパ街を目指した。
鹿島達がパンパ街につくと、城壁の門は閉ざされていた。
鹿島もトーマスも鼻で笑い、閉ざされている門を無視する様に荷を下ろし始めた。
荷を下ろし終えると門は少し開き、門の内側から一人の兵士が出てくると、鹿島に近寄ってきた。
「トマトマ.ドンク伯爵の代理できました、衛士兵トミエと申します。
領主様の事付けを預かりましたが、後程言います。
テテサ様とカサチー等孤児院の子供達は無事ですか?」
トマトマの伝言よりも、教会関係者のことを先に尋ねられた事に、鹿島は真意がわからないので、
「テテサ修道士殿は、、亜人協力国の運営委員会に入られ、カサチー殿は学校の運営委員に任じました。子供達も亜人の子たちと、うまく付き合っています。」
「そうですか。安心しました。カサチーの兄が門の裏で隠れています。
うまく脱出させて保護してください。
部下を蔑み、領民をぞんざいに扱う、領主様の伝言です。荷を置いて立ち去れ。との事です。」
教会関係者のことを先に尋ねた真意を知らされて、裏の事情があるのではと、思ったのは鹿島の勘違いであったようだ。
「では、城壁を崩すか?門を吹き飛ばすか?どちらかを選んでください。」
「住民にとってはどれも困るが、出来れば門の片側だけにしてください。」
「了解した。」
衛士兵トミエは門の中へ入り、再び門は閉ざされた。
鹿島はマイクを握り城壁内に向かって、
「パンパ街の皆さん、あなた達の慈悲深い領主様からの恵みです。
あなた達に施すとの事で、食糧十トンの注文を受けました。
門が壊れて開けられないようなので、昨日の爆裂魔法で門を吹き飛ばします。
注意してください。
門が開いたら、麦かイモ類を無料で、一人十キロ用意しました。」
門の内側から歓声が上がり、慌てたように門が目一杯に開いた。
衛士兵トミエへの伝言に、門番衛生兵が驚愕したのだろう。
門内側から群衆が一目散に、駆け出して来る。
その中に、一台の荷車が群衆に隠されるように、群衆と共に向かってくる。
群衆はエルフと猫種族の前に近付くと止まり、ゆっくりとした歩調になり静かに列に並んだ。
パンパ街の住民は、鹿島に気づくと皆が陸戦隊の真似をして敬礼している。
荷車はトラックの影に入り、それぞれが一人また一人と十人近くの青年と娘たちが、それぞれに隠れだした。
衛士兵トミエの言っていた、見習い修道女のカサチーの兄達が来たようである。
鹿島はトラックの裏に回り、
「あなた達は、何者ですか?私達に用事があるのですか?」
と、誰何すると、
「私は、カサーノと言います。カサチーの兄です。ここに居る皆、修道院の孤児院出身者です。カサチーの身が心配と、あなた達の国の住民にして頂きなさいと、修道院長に助言されました。
みんな職人で、材料が入荷しなくなり仕事がないのと、兵役にも行きたくないのです。」
カサーノは、一気にしゃべりだした。
陸戦隊の皆は、荷車から職方道具であろう荷を、トラックの荷台に移し替えて、カサーノ達を直ぐに小さな窓の軽機動装甲車に載せて、待機してもらうことにした。
穀物の分配が終わり掛けたころ、コーA.Iから無線が入り、
「三メートル位の四足動物が、東から近づいて来ます。距離一キロです。凄いスピードで七分後に遭遇します。」
陸戦隊全員が緊張して、東の方にレーザー銃を向けた。
その緊張の中でトマトマが現れたので、鹿島は再びマイクを握り、
「慈悲深いトマトマ.ドンク伯爵様が、皆を心配して慰労に来てくれました。歓迎しましょう。」
と、叫んだが皆唖然としている。
しかしながらも、皆は鹿島の配慮に気づいたようで、一斉に歓声を上げた。
トマトマは、何か言いたげな様だが、言葉を忘れたような顔で拳を振り上げたとき、
三十頭位の銀色狼似の四つ足動物が、「ギエ、ギエー」叫んで、近づいてきた。
トマトマは銀色狼似に気づき、住民を置いて一目散に門の内側に逃げていくと、直ぐに門を閉めてしまった。
エルフ達も銀色狼似に気づき、一斉に弓矢を構えた。
「陸戦隊、銀色オオカミはエルフに任せて、二十メートルで援護射撃!」
と、鹿島は叫んだ。
エルフの矢は、三十頭の銀色狼似の顔面に矢を打ち込み、四十メートルから三十メートル位で全てを倒した。
やはり、エルフの弓は脅威の凄腕である。
配給場から逃げ出していた住民も引き返してきた。
「昨日の魔法の杖も凄かったが、エルフの弓矢も凄いですね。」
と、次々に称賛した。
猫種族のトドが近寄り、
「肉は、人間種族に分けてあげて、獣なので赤い石はないが、毛皮だけを持ち帰りましょう」
と、提案してきた。
「では、解体をお願いします。」
トドはみんなに合図して解体に向かうと、猫亜人全員が解体に参加する為に、チェーンソーナイフを取り出しながらトドの後ろからついていった。
一頭の解体が終わると、トドが住民を呼ぶように手招きして肉を配り始めた。
トドは、食料を受けた人に断りの姿勢で、配給を受けてない人だけに配っている。
初老の住民が、猫亜人のナイフを見て、
「よく切れるナイフのようだが、何処で手に入れたのですか?」
「俺たちの国の守り人から頂いた、魔道具のナイフです。」
と、答えている。
「貴重な肉をわれらにあげて、あなた達の分無くなりますよ。」
「私達は、いつも食べきれないほど、毎日、肉は頂いています。魔物の肉を頂いた後のひと月は、肉を見たくないほどでしたが、それでも運んできてくださいました。」
「魔物の肉を食べたと、魔物肉を食べると精力抜群と聞きましたが、どうでしたか?」
初老は卑猥顔でにやけながら、小声で尋ねた。
「皆は、それ、なり、に、フ、フ、フ、頑張ったようです。来年は子供の夜泣き声で眠れないでしょう。腰の曲がった爺様にも春が来たようで、自慢げに背筋を伸ばして歩いています。」
と、トドも小声で鼻の下を伸ばしたかのような、卑猥顔である。
「本当に、魔物を倒したのですね。」
「魔物を倒すのを見ました。」
二人は竹馬の友の様に、意気投合している。
「このキャルドの毛皮は、どうするのですか?」
「商人へ売ります。」
「私は、毛皮の取引をしているムースンと言います。私に譲って頂けませんか?」
「我が国の指導者提督閣下が彼方にいます。相談して下さい。」
「指導者、王様でございますか?」
「そうですが、国では提督閣下と呼んでいます。閣下は我ら亜人に対しても、個人の尊厳をしてくれます。」
「個人の尊厳ですか、いい言葉ですね。閣下殿は、模範の指導者ですね。羨ましいです。」と、トマトマへの皮肉なのかムースンは肩を落とした。
鹿島のもとへ、トドが初老の男を連れて来て、
「閣下、毛皮商人のムースンです。キャルドの毛皮を譲ってくれと、相談されました。どういたしますか?」
トドは、承諾したい顔である。
鹿島は、近くにいたパトラの従兄弟ハービーハンを呼び、
「毛皮商人のムースンが、キャルドの毛皮を譲ってくれと、言ってきたが、毛皮を剥した猫亜人と、お前たちが仕留めた獲物だから、トドを交えて交渉してくれ。」
ムースンと二人の交渉が終わり、トドとハービーハンが来て、
「閣下、一頭分の毛皮、大銀貨伍貨で引き取ってもらいました。三十一頭分で金貨十五貨と大銀貨五貨です。正直な商人です。」
トドは興奮して報告した。
ハービーハンは少し冷静に、
「閣下、ムースンから、砦の倉庫にある毛皮を、買い取りたいと、申し込まれました。」
「毛皮を畜産物として扱い、売値の交渉は、畜産物責任者のパトラも同席させてください。」
「畏まりました。パトラ族長に任せます。」
ムースンは革袋の財布を持ちながら、鹿島の所へ来て革の財布を差し出した。
「私どもに、キャルドの傷一つない毛皮を譲って頂きました。これは代金です。」
と、鹿島に革袋を差し出した。
「これは、エルフと猫亜人のものです。彼らに渡してください。」
傍にいた、トドとハービーハンは、
「われらは、充分にいい生活させてもらっています。国にお金が必要でしょうから、国へ納めてください。」
トドの申し出に、ハービーハンも、
「そうです。豊国強兵、知識向上教育の国を目指しているのですから、国にはお金は必要です。」
そのやり取りを見ていたトーマスが、
「金の話は、閣下では無理、閣下の気持ちだと、今日の労賃と思い、みんなに配りたいと思ってのことです。貨幣に関しては、マティーレの判断を仰ぐことで、如何でしょうか?」
ムースンは、革の財布をだれに渡すべきか、オロオロしだしたが、おもむろに隣のトーマスへ押し付けてしまった。
トーマスの顔は、余計な荷物を握らせられ込んだ事に、余計なことを言ったと後悔している様子である。
このやり取りに、ムースンは感激したようで、
「亜人協力国は、此れからもっと、いい国になるでしょう。私の一族でも住民になれますでしょうか?」
ムースンはひざを折り、腕を胸に置き尋ねた。
「勿論、大歓迎です。」
鹿島はムースンの手を取り応えた。
「閣下と亜人協力国に一族一同忠誠を誓い、荷物を整理したのち、必ず移住致しますので、よろしくお願いします。」
「待っています。人間と亜人が協力で来たなら、いい国になります。」
トドは歓迎の言葉をかけながら喜び、ハービーハンも、
「私の作っているチーズが、もうすぐ出来上がります。食べに来て下さい。」
ムースンは涙目で、トドとハービーハンの手を握り、
「人生は、長く生きるものだと、今日感じました。ありがとうございます。」
ムースンは、迎えに来た青年たちと荷車を引いて、門に入っていった。
この男ムースンは、後に亜人協力国商業担当官となり、国の商取引の発展に貢献してくれるのである。
鹿島は、パンパ街の内部協力者を得たと感激した。
ムースンの協力を得て、内部不満者による支配者転覆をはかり、その指導者との併合を取り決め合うだけである。
鹿島は軽機動装甲車に居る、カサーノたちの向かいに座り、
「ようこそ亜人の国へ、来ていただくことに、歓迎します。亜人と上手く付き合ってください。亜人協力国は、彼等の国でもあります。」
「我々も亜人を昨日初めて見ました。今日も大勢の亜人を見て、驚いています。
修道院長から事前に、亜人もガイア様を信じているとのことで、安心しています。」
カサーノは鍛冶職人で、農具から武器、鎧まで幅広く対応しているとアピールした。
ほかの青年等と娘たちも、カサーノの弟子たちといろんな職人のようである。
皆は最初、軽機動装甲車の揺れに緊張していたが、窓から見える草木の流れに驚愕しだした。
砦に着くと、テテサとカサチーが丸太杭の門で待っていた。
「皆げんきでしたか?カサーノ兄さん、よく来てくれました。嬉しいです。」
カサチーは軽機動装甲車に飛び乗ってきて、テテサを車内に引き上げると、皆にこれからの生活においての注意を訓示始めた。
カサチーは子供たちに教えている基本として、亜人も人種も尊敬しあう仲を強調して、
皆にもそのことを理解して、尊厳を尊ぶ生活するように注意をしている。
テテサはこれからの仕事について、
「私は、この亜人協力国の運営委員会員に指名されて、国の財政をも知っています。この国に現在貨幣は殆ど有りません。今現在の状況において、金と銀、銅鉱山が見つかっており、貨幣の造幣が出来次第に仕事の対価を支払いします。住宅と食事は毎日用意するが、給料手当の件は、保留にして欲しい」
と歎願している。
カサーノはテテサの手を取り、
「テテサ様、私達皆お金目的で来たのでは有りません。安全な場所と未来の希望をもって、この国の住人になりに来たのです。」
毛皮商人と亜人たちの会話を聞いていたと付け加えて、テテサの申し出を気持ちよく承諾してくれた様子である。
艦尾入り口に着くと、機関部機関長と機関技官二人が出迎えていた。
「挨拶に来ました。機関部アマヤモとサーサデです。反射炉の建設及び、魔物から取れた皮膚と鱗の加工で、鍛冶職人方たちと、共同開発及び加工運用したいのです。」
と言ってから、カサーノ達を伴い職工区の建物群に向かった。
金属融解をするにあたり、鍛冶職人達はふいご式と主張したが、反射炉の建設が今の段階では現実的であるらしい。
反射炉での加工は千三百度しかない低温であるが、これに手を加えて二千度までの反射炉を建設して、運用するとの事らしい。
コーA.Iと工業部の調査結果で、鱗と表皮は高温であればあるほど、熱加工するとタングステン以上の強度になると説明し始めた。
而も、陸戦隊の着衣している防護服の強度よりも強く、重さは十分の一の軽さに出来るとの事らしいので、鱗一枚で一人分優に作成出来るという。
これらのことは安全にかかわることなので、優先的に進めてほしいと鹿島は要請した。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※タイトルを『人間の中身はバグだらけ。 ~俺依存症な引きこもり少女と、セカイ系恋愛ファンタジー~』から変更しました。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる