【何カ所か18禁]女神の伴侶戦記

かんじがしろ

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20耳長種族

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 樹海の中にある開墾された牧場(まきば)に、青々と伸びている薬草畑と、一部の牧草は生気に溢れてはいるが、ほとんどの牧草は枯れ果てている。

 牧場と呼ぶには、家畜が見当たらないようでもある。

 牧場の周りには多くの家屋があるが、動いている人は感じられない。

 久ぶりの雨が降り、恵みの雨と思うには少し悲しいと嘆くパトラであった。

 耳長種族は遥か昔にガイア様に愛されて、長寿と薬草を授かった。

しかし今、薬草があっても万能薬を作り出せないのは、去年の厄災が今年も同じ魔物によって、厄災を再び起こしにやってきたがために、赤い石が不足しているのである。

 去年の厄災が今年もやって来たことで、魔物が現れたとの悲報に集落中パニック状態に陥らされている。

 集落外れの放牧地で、それが現れたのは十日前あたりであった。
魔物相手ではなすすべもなく、ただ居なくなるのを待つだけである。

 魔物が現れたとの悲報に集落中がパニック状態に陥っている原因は、魔物の食い散らかした腐肉は、病気の気が拡散する事で伝染病を発生させることであった。

そして、魔物の食い散らかした肉片から病気の気が発生したならば、食い散らかされた腐肉が無くなるのを待たなければならない。

 食い散らかされた腐肉を、病気の気に平気な忌々しい蟲に頼らざるを得ない事にも腹ただしい。

 蟲は耳長種族からすると厄災の一つであり、いろんな流感性病気や魔物と同じ伝染病の原因でもある。

 蟲は雨が降ると土からはい出して、死骸の肉を食べだけでなくて、生きているものの体に嚙みつき、卵を込いりこませて産み付ける。
そして、いろんな流感性病気と伝染病の原因をも起こさせる厄介な蟲である。

 今回の厄災に対し耳長種族に於いては、赤い石は全くの不足である。
耳長種族の多くの病人の数に対しても、赤い石は必要な数の十分の一にも満たない。

 耳長種族三万の内、五千人は既に病気になってしまっている。

 老人や子供達と言った体力のないものから死んでいく厄介な病気で有り、回復には赤い石を使った万能薬しかない。

 何とか元気ある者は急遽魔獣討伐隊を組み、赤い石を集めるために魔獣を求めて、それぞれに集落から発していた。

 パトラは親戚同士五人で石を集めるために、多くの魔獣がいる闇の樹海へ出発した。
野宿しながらの魔獣討伐も十日目であるのに、ここまでの間、赤い石は二十個にも満たない。

 五人の前にやっと二日ぶりに三頭のダーホーが現れた。
三頭とも優に五メートルは有る大型主であったが、五人は臆する事無くそれぞれに槍と弓を構えて立ち向かい、三本の弓には其々二本の矢を構えて三頭のダーホーに対峙した。

「目に当たれ」
と、三人は共にハモリ、三本の矢は三頭のダーホーの六個の目を射ぬいた。
残り二人も、
「太ももに当たれ」
と念じて、六本の槍を次々と投げ出した。

 六本の槍はぞれぞれの太ももを刺し貫き、三頭のダーホーを横たえた。

 五人は一方的に矢を射かけて、ダーホーが動かなくなったのを確認すると、首と毒のある足首を落としてから胸を裂き赤い石を取り出した。

 パトラ達は闇の樹海へ向かう途中で、魔獣三頭から三個の赤い石を集めたが、樹海近くであるのに、遭遇する魔獣の数が少なすぎると五人は怪訝に思った。

 これはひとえに魔物の出現が原因だろう。

 パトラ達五人には闇の樹海の天辺は近くに見えるのだが、なかなか着かないのは、樹木が高い為に近くに見えている錯覚からだろう。

 魔獣の少なさを嘆いている時に、闇の樹海森の方から閃光が起こり、空気が強く五人の顔を震わせるすごい音が響いてきたので、閃光の方を見ると白い煙が見えた。

 パトラは白い煙の中に、奇怪な物が二つ空中に浮かんでいるのを確認した。

 白い煙が晴れた後には、闇の樹海前の岩場に魔物が現れた。
魔物が現れたと思ったら、魔物の足元あたりから再び閃光が起こり、空気を強く震わせるすごい地響きが響いてくると、土煙のなかに魔物が倒れた。
四度目の爆発音の後、奇怪な物から人がロープを使い、魔物の上へ降りていくのが見えた。

 奇怪な物は人を下ろすとその場から離れて行き、向かった先には二メートルもの丸太を抗打ちした、砦のようなところに降りていった。

 パトラ達五人は丸太の上に猫亜人の騒ぐ声が聞こえたので、魔物の方よりも騒いでいる猫亜人の方へ向かう事とした。

 丸太の上では猫亜人が騒いで居て、殆ど猫亜人は魔物の方を見ていたが、人間の女と猫亜人数名だけは、近づくパトラ達五人を見ていた。

 パトラは、人間と猫亜人が奇妙な組み合わせで、並んでいるのを不審に思えた。

 人間は猫亜人を見ると、虐待して殺してしまうはずだが、人間の女と猫亜人の女はパトラ達を見て、お互い頷きあっている理由を知りたくなった。

 マーガレットは四人の陸戦隊が降下し終わり、魔物から赤い石を取り出すのを確認しているとき、監視衛星から五人の耳長種族が抗丸太壁に向かっているとの、コーA.Iから知らせの通信が入った。

 猫亜人達が抗丸太壁上で、魔物との交戦を眺めている外壁の方らしい。

 マーガレットは耳長種族と接する機会と思い、猫亜人達のいる外壁へ向かうと、その内側へエアークラフトを着地させて、急ぎ階段を上り抗丸太壁の上で五人の耳長種族を待った。

 程なく彼等の姿が見えると、中の一人が抗丸太壁下へ駆け出して来て、抗丸太壁の上に居る猫亜人達に、
「どういう訳ありで、人間といる?」
と、推疑した。

マティーレが進み出て、
「守ってもらい、いい生活をさせてもらっている。」
と答えた。
「自由は?」
「決して奴隷ではない、住民として自由に生活している。
ここは、豊かで広い、作物が売れたならば報酬も貰える。
そして石の壁が完成されたなら、他の集落にいる猫亜人も呼ぶつもりでいる。」 
と応えた。

 パトラは砦みたいな感じの大木の杭の上にいる猫亜人に、人間に奴隷にされているのか聞くと、奴隷でなくて守られていると言い、豊かな生活をしているといった。

 猫亜人は、どんなに強く拘束しても逃げ出せるから、奴隷にはできないとは思ったが、
まさか人種と一緒に生活しているとは、パトラには思いも寄ら無かったようである。

 耳長種族五人は長い相談事をしだしたが、要約話が決まったようで、耳長種族女性パトラが一歩進み出て、
「猫亜人は事実だけを話し、うそを言わないことは知っている。
魔物を倒したのはこの壁に住む住人か?」」
と、誰何した。

「魔物を倒したのは、この壁を造った人間たちです。」
「ならば、魔物を倒したのは人種か!魔物の赤い石はどうした?」
「ここから分かりません。」

 長身の色白美貌な耳長種族女性は魔物の赤い石に興味があるようなので、マーガレットは何がしかの取引ができると思い、マティーレの前に出て、
「魔物の赤い石は、色んな使い道が有るので、大事に取り出しました。」
と、応えた。

 パトラは再び協議を始めて、耳長種族四人に人種と取引の話し合いをするが、取引に関しては自分に一任するよう、承諾を求めて了解を得た。
「魔物の赤い石について相談があります。ここの責任者に会いたいので、口添えを頼みたい。」

 猫亜人の女が言うことには、魔物を倒したのは一緒に居る人種で、赤い石を取り出したと言ったので、もしかしたら猫亜人と生活している人種ならばと、藁をもつかむ希望で猫亜人同様に友好関係を結び、赤い石の取引を何とかしたいとの思いで、パトラは責任者に合わせて欲しいと申し込んだ。
「私も責任者の一人です。壁の内へ招待しますので如何ですか?」
「それはありがたい。是非にお願いします。」

 大木抗の上にいる猫亜人と並んでいる人種の女は、自分も責任者の一人だと名乗り、取引の条件を話し合うためだろう、パトラ達五人に砦の内に入って来いといったので、パトラはうれしさを隠さずに即答で応じた。

 マーガレットは、長身の色白美貌な耳長種族女性が、リーダーのようであると確信したようで、傍にいるトドに、門を開けて彼らを内側に入ってもらい、艦のところへ案内するよう頼んだ。

 二本の太さ二メートル位の丸太は、地面からゆっくりとせり上がって入り口は開いた。
その仕組みは解らないが、ここの人間達は魔術師だろうと思い、パトラに奇妙な疑念の思いがこみ上げてきた。

 パトラ等耳長種族五人は入り口から入るが、パトラは人間の女が、その場に見当たらないのを不審に思いながらも、数名の猫亜人等に案内されて、見たこともない高い白い大きい建物の方へ向かった。

 猫亜人はパトラ等耳長種五人に、ここでの生活は最高に幸せで、果樹園に百個以上の妖精ハチドリの巣があると自慢げに教えながら、彼等人間は金を持ってないので、農作物を納めたら大量の貴重な塩を渡されたと満足げに自慢した。

 猫亜人の自慢はさらに続き、肉は毎日食べきれない程、人間種族の守り人が持ってくるらしいし、川には一メートル以上ある大量の魚を引き込んだ生け簀から、自由にとって良いとのことだ。

 人種はこの大陸ではない異国からの到来者らしいが、人種の要求は子供達の教育の為に、学校を創るようにと言われた事と、個人の尊厳規範を要求されただけであった。

 五人に説明しているその男の妻が、子供達の学校教師であると言って自慢している。

 この砦にはガイア様が住んでいるかと思えるほど、人種とは思えない、個人の尊厳を要求するなどの恵まれた条件である。

 ここが魔法使いの人間がいない砦で、猫亜人だけの砦ならば、是が非でもパトラは住みたいと思うのであった。
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