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制覇行進

191 未確認の敵影。

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 鹿島はタイガーたちの窮地を思い、
「なら、すぐに救援に向かう。」 
「詮無き事。」
「意味がないと?」
「結果、、、誰も報いられない。」
「元聖騎士達だけでも。」
鎮守様は再度静かに首を横に振った。

 鹿島は鎮守様の落胆した姿を初めて見た気がした。
そんな時、パトラ情報長官から連絡が入った。
「タイガー騎士隊が動き出した?」
「曽我荘街に向かって進撃しだしました。」
「ヤスゴロー.ドモヤス軍と合流するのではなく、攻撃に向かったと?」
「名目御旗を手に入れましたゆえ。」
「名目御旗?」
「父親をドモヤスにだまし討ちされたソガ三兄弟妹のかたき討ちの助勢と、元聖騎士団の名誉を貶めた報い返しです。」
鹿島はタイガーがこの期に及んでも、なお戦い続けることに思考の違いを感じた
「して、その後は?」
「結果次第の御覧じろでしょう。」
「なに?なんか、、、フラグが立ってるような言い方だが?」
「結果をお知らせます。」
「ビクトリー国軍の動きは?」
「万全の態勢で動き出しました。」
「どこに向かって?」
「キルオシ帝国の旗を立てた、軍に向かってます。」

 鹿島は戦火が拡大していくのを感じた。
「なして、シャジャーイ王国では戦火が収まったと思ったのに、キルオシ帝国まで戦火が広がりそうなの?」
「戦火を望む者がいれば、火の粉をまき散らしますし、漁夫の利を得ようと火の粉を煽る者もいます。」
「源泉はヤスゴロー.ドモヤス軍か。」
「最初はタイガー殿であったが、これ幸いと便乗したヤスゴロー.ドモヤスの絵図書きが事を大きくしたようです。
「ヤスゴロー.ドモヤスとは、策士か。」
「世は戦国時代に突入したので、だれでもが策士になれます。」
と、鎮守様は感情のない言葉を発した。
「今や、火種はどこにでもあると?」
「鎮守聖国以外、すべてと言えます。此れからは、世界大戦規模の戦いも始まります。」
「戦国の乱の口火を切ったのは俺か?」
「戦国の兆候はすでに始まっていました。」
「アクコー王子の反乱か。」
「弟の欲望の為に戦に縁のない私達も、従兄弟殿も戦乱に巻き込まれました。」とヒカリ皇后も話の輪に入ってきた。

 鹿島はこの惑星でも欲の為に戦を望み、また正義の名目で戦をする事に、背徳を感じていた。
「タローちゃんのこれからの行動は、大河向こうの制覇よ。」
「え~、俺が大河向こうまで攻め込むの~。」と、逆らえぬ思いながらも少し抵抗する様に、一歩後ろに身を引いた。
「砂漠大陸へのルート確保と、人種や亜人の保護のためです。それに、サニーちゃん達妖精の保護義務の為でもあるわ。」
鹿島はサニーや妖精達の安全を守る為なら、戦いに躊躇などできないとの思いが湧き出て一歩前へ出た。
「地球での世界大戦規模の戦いになるのでしょうか?」
「まだ先だろうが、羽衣姫との未知の戦いかもしれない。」
「未知?」
「その為には、人種同士の争いを早く終わらせる必要があるわ。」
「それで、イザベラに最先端の武器を渡したのですか?」
「統一か連合か連邦の必要があるでしょう。」
「ですか。未知の戦いとは、何か具体的に教えてほしいです。」
「私の透視でも、わからないの。」と、鎮守様は首を横へ曲げた。
「ただ、何か得体のしれない、見たり聞いたりしたことのない邪悪さは感じるわ。」
今度は唇をかみしめ、顔をゆっくりと左右に振りだした。

 鹿島達は六人の精霊たちを残して、工場の隅からC-002号のいる建物に移動した。

 鹿島達はパソコンと、壁一面に多くのモニターが取り付けられている部屋に案内された。
「なにこれ。いくつモニターが置いてあるの?」
「停止衛星二十五基分と、監視飛行ドローン三十機分からの個別映像を記憶する為の数と、宇宙と月の監視記憶モニターもあります。」

 モニターの配置は部屋周り三百六十度面が大陸地図になっていて、その場所の現在を映し出していた。
改めて世界地図を見ると、大河向こうの陸地遥か彼方の海岸線の先には地中海ほどの海があり、その先に砂漠大陸が確認された。

 キルオシ帝国海岸沿いと砂漠大陸間は惑星半分を占める太海洋があり、その場所に設置してある大型スクリーンの前に、C-002号は鹿島達を案内した。

 スクリーン画面は、ハカタ港町から二十キロ先には大河の流れを避ける様に斜めに長い堤防があり、その内側は東京湾に類する位に壮大であった。
湾の内側には大型クレーンや、二柱の移動クレーが並んでいた。

 二柱の移動クレーが並んでいる場所がだんだん拡大されていくと、大型戦艦に中型、小型の戦艦も見受けられた。
二隻の大型戦艦はその外見から、すでに完成しているように見受けられた。
「大型戦艦は戦艦武蔵型戦闘艦です。あと中型艦は長門、金剛、扶桑型で、小型艦は三笠、日進型です。」
「なして日本帝国海軍なの?」
「コンピューターの記憶している情報からです。」
「そんな戦艦なら、ハカタ港町やキルオシ帝国海岸から、直接砂漠大陸への航海は可能だろう。」
「無理です。」
「なして?」
「太海洋の中あたりは常に極地並みの冷え込みにより、多数の氷山が漂いています。
更に、防風雨に防風霰があるので視界不良の上、レーダーも役に立ちません。
その上、大型戦艦の三倍もある、大型魚類や爬虫類が生息しています。」
「ありゃ、戦艦は大型魚類や爬虫類のえさになりえるのか。」
「ひと飲みでしょう。」
「おう~。」
と鹿島は理解した様に大きく息を吸った。

 次の画面は、すでに完成している大和型戦艦上では、海軍の操縦訓練が行われていた。
艦橋では艦長帽子をかぶった若い男が大声を上げていた。
「目標物ヨーソロー!一番二番砲、撃て!すぐの面舵三十度!全速力三百メートル後、取舵一杯!目標物ヨーソロー!」
大和型戦艦は大河の中、急流に漂う木の葉のように、左右に横倒寸前ながらも旋回していた。

 又もや画面が変わり、「匍匐前進。」との掛け声で、鱗ヘルメットに上半身前後を庇う鱗防弾チョッキをつけた兵たちが、腕や足を使い横ばいで這い出していた。
その手には、銃剣の付いた三八歩兵銃が握られていた。
「突撃!」との掛け声で、みんな立ち上がり駆け出した。
「伏塹壕!かかれ!」との声で、駆け出していたそのまま腹ばいとなり、腰に吊るしたスコップで伏身が隠れるほどの穴を掘りだし、その中に身を隠した。
「三連射撃!」との声で一斉に三発の魔石弾丸を連続発射した。
三八歩兵銃の仕組みは、火薬の代用に爆裂魔法魔石を組み込んであり、三十発の水素魔石弾丸が発射できた。

 前方には直径一メートルほどの大きさの石が乱雑に並べられていて、全てが砕け飛ぶと、「銃剣構え!突撃!」と、肉弾戦を想定した突撃であった。

 突撃隊の横を四輪駆動車が追い抜いて行き、操縦席後ろには、銃座を固定した機関銃が装備されていた。
「弾丸は鉛ではなく、水素魔石なのですか?」
「A―110号陛下達が製造した、出来立てほやほやの弾丸です。」
「もう配置したのか。」
「すべては計画通りの進行です。」
鹿島は、自分達はC-002号の創る世界の歯車の一つだと思えた。
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