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制覇行進
179 神話伝説
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ハカタ湾港は先程まで荒れ狂う大河の流れが嘘のように、水面に周りの山々を映していた。
そんな中で、無様な船底腹を水面に現している戦艦に飛翔して着艦したサニーは、山から吹き下ろす風に髪の毛をなびかせつつ、籠に入った風魔石を船周り中にばらまき始めた。
ハカタ湾港では、木造三本マスト帆船の三倍はある、八千トン級の戦艦が船底腹を隠す様に傾きだした。
船体下から大量の泡が噴き出すと、氷山が回転しながら起こす様の大きな波を引き起こし船体は水を吐き出している。
瞬く間に艦橋を上に向けた正常な状態で水に浮かび上がり、付属品はぼろぼろになってはいるが戦艦としての威厳を現した。
港桟橋に黒い戦艦が起こした大波が襲う様を、鹿島は丘の上に設置された司令部テント脇で眺めながら、
「宣戦布告とは?」と鎮守様に尋ねた返事を、はぐらかさせた事を思い出していた。
それはおそらくサニーの敵討ちに参加する理由が出来たことと、今はまだ全てを公表できない何かを、いつかは鎮守様からの返事説明があるだろうと、今は納得することとした。
「凄まじいですね。」
と脇にいるエントツ防衛大臣が声がけすると、鹿島も改めて黒い戦艦に見入った。
「あの凄まじい戦艦を、われらも造船しなければならないだろう。」
「いいえ、戦艦ではなく、お館様や大精霊猊下様たちのことです。」
「え?」
と、鹿島は改めて一般魔法の威力は生活に便利な微々たる魔法であり、一部の人達だけが持つささやかな攻撃魔法を思い出した。
「ま、精霊たちだからだろう。」
「私達に魔法を教えたのは、精霊様や妖精たちらしいから、納得はできますね。」
「え?初めて聞いた話だ。詳しく聞きたい。」
「神話伝説では、鎖につながれた原始人間たちに、魔法を教えてたのが精霊様と妖精たちとの、言い伝えがあります。」
「あら、タロー様は神話を存じてないのですか?」
と、ヒカリ皇后は鹿島の腕にしがみついた。
「鎖につながれた原始人間たちと、精霊や妖精たちの関係を詳しく知りたい。」
「昔々、神々様の住む国では、人種は神々から何も与えられることなく、ただ奉仕するだけの存在でしたが、大精霊様が現れ、人々に自由と自我を教え、精霊様達や妖精達の手助けで神々様の住む国から逃げ出し、この大陸へ来れたのです。」
「そんなことをしたなら、神々は怒っただろう。」
「怒った神々は精霊様の住まう老樹木の樹海ごと、荒れ地の砂漠にしてしまったそうです。
そして、老樹木は枯れて精霊様も光の魂になりましたが、その魂で神々を石にする呪いをかけたので、人種を見下すだけで威張った神様たちは石になり消滅しました、のだと。」
「まずいくつか疑問が浮かんだ。まず、妖精の森樹海の精霊や妖精たちは、なぜ生き残れたのだ。それに、人種は魔法をいつ学んだのだ。そして、神々はすべて石になったのか?」
「そこから先は、神話伝説ではなく、真実を話しましょう。」
といつの間にか帰ってきていたのか、背後からサニーの声がした。
鹿島達は司令部テントの片側にあるテーブルに移動して、パトラ情報局長が用意した紅茶とクッキーをほおばる精霊たちを無視したサニーは、鹿島に向かって話し出した。
「まず、人種がこの大陸に来れたのかを話すと、消滅した精霊たちが生きていた時に、大陸間の海洋に氷の道を創り出したのです。
人種は氷の橋を渡り、この大陸に来ました。
そして、当時この大陸は若い大陸であったために、精霊はただ一人だけでした。
妖精の森樹海の初代大精霊様は人々に生活魔法を教え、肥沃な土壌である森を与えました。
人々は水にも火にも不足することなく、肥沃な土壌の森を開墾しました。
そのことから、人種は精霊を信仰したのです。」
「人種が魔法を学んだ過程は理解したが、妖精の森樹海の精霊や妖精たちは、なぜ生き残れたのだ。」
「人々が海洋を渡っている間、神々は精霊達や妖精軍隊との戦い中であったのと、石化病禍が蔓延しだしたので、海洋を渡る戦力と時間がなかったのでしょう。
だが、置き土産の瘴気病だけはしっかりと、妖精の森樹海に届けに来やがったのは生き残りの羽衣姫です。」
「瘴気病を蔓延させたのは、羽衣姫だと?」
「そうだ。あの憎きくそ野郎だ。」
「消滅した樹海と、残れた妖精の森樹海の違いは?」
「その原因は知らない。それに、初代大精霊様達が拉致された理由も不明だ。」
「では、もひとつ。神々は石化したとして、なぜ羽衣姫は石化しなかったのだ?」
「それがわかれば、苦労はない。それに、タローが知りたい、チンジュ様が羽衣姫に宣戦布告した原因も、私には不明だ。」
と言って、残っているクッキーを全て鷲掴みしてしまった。
「あ、俺が気が付いたことを話していいか?」
「なにを?」
「瘴気病を絶滅する方法は?」
「樹海をすべて、燃やしてしまうことだな。」
「あ~、あのくそやろ~。人種に樹海を消滅させようと企んだのか!」
「だろうな。」
「確かに、人種が力を蓄えたなら、人種の脅威である瘴気病を絶滅しようとしたのであろうが、タローたちが現れたことで、瘴気病は脅威とはならなかった。」
「ので、羽衣姫は新たな計画をたてた。」
「新たなる計画として、あの戦艦か。」
「妖精の森樹海に近いハカタ港町を拠点にして、妖精の森樹海に侵攻しようとしたのかも?」
「何で妖精の森樹海に?」
「目的が分かれば、その理由も判明するだろうが。」
「では、目的を調査する必要があるわね。」
「大河向こうへの進攻か?」
「こちらも逆侵攻よ。」
「そこまでやるの?」
「姫神信仰などぶっ潰すわ。」
と、サニーが手を上げると多くのクッキーが零れ落ち、精霊たちはそれを器用に空中でつかみ取った。
そんな中で、無様な船底腹を水面に現している戦艦に飛翔して着艦したサニーは、山から吹き下ろす風に髪の毛をなびかせつつ、籠に入った風魔石を船周り中にばらまき始めた。
ハカタ湾港では、木造三本マスト帆船の三倍はある、八千トン級の戦艦が船底腹を隠す様に傾きだした。
船体下から大量の泡が噴き出すと、氷山が回転しながら起こす様の大きな波を引き起こし船体は水を吐き出している。
瞬く間に艦橋を上に向けた正常な状態で水に浮かび上がり、付属品はぼろぼろになってはいるが戦艦としての威厳を現した。
港桟橋に黒い戦艦が起こした大波が襲う様を、鹿島は丘の上に設置された司令部テント脇で眺めながら、
「宣戦布告とは?」と鎮守様に尋ねた返事を、はぐらかさせた事を思い出していた。
それはおそらくサニーの敵討ちに参加する理由が出来たことと、今はまだ全てを公表できない何かを、いつかは鎮守様からの返事説明があるだろうと、今は納得することとした。
「凄まじいですね。」
と脇にいるエントツ防衛大臣が声がけすると、鹿島も改めて黒い戦艦に見入った。
「あの凄まじい戦艦を、われらも造船しなければならないだろう。」
「いいえ、戦艦ではなく、お館様や大精霊猊下様たちのことです。」
「え?」
と、鹿島は改めて一般魔法の威力は生活に便利な微々たる魔法であり、一部の人達だけが持つささやかな攻撃魔法を思い出した。
「ま、精霊たちだからだろう。」
「私達に魔法を教えたのは、精霊様や妖精たちらしいから、納得はできますね。」
「え?初めて聞いた話だ。詳しく聞きたい。」
「神話伝説では、鎖につながれた原始人間たちに、魔法を教えてたのが精霊様と妖精たちとの、言い伝えがあります。」
「あら、タロー様は神話を存じてないのですか?」
と、ヒカリ皇后は鹿島の腕にしがみついた。
「鎖につながれた原始人間たちと、精霊や妖精たちの関係を詳しく知りたい。」
「昔々、神々様の住む国では、人種は神々から何も与えられることなく、ただ奉仕するだけの存在でしたが、大精霊様が現れ、人々に自由と自我を教え、精霊様達や妖精達の手助けで神々様の住む国から逃げ出し、この大陸へ来れたのです。」
「そんなことをしたなら、神々は怒っただろう。」
「怒った神々は精霊様の住まう老樹木の樹海ごと、荒れ地の砂漠にしてしまったそうです。
そして、老樹木は枯れて精霊様も光の魂になりましたが、その魂で神々を石にする呪いをかけたので、人種を見下すだけで威張った神様たちは石になり消滅しました、のだと。」
「まずいくつか疑問が浮かんだ。まず、妖精の森樹海の精霊や妖精たちは、なぜ生き残れたのだ。それに、人種は魔法をいつ学んだのだ。そして、神々はすべて石になったのか?」
「そこから先は、神話伝説ではなく、真実を話しましょう。」
といつの間にか帰ってきていたのか、背後からサニーの声がした。
鹿島達は司令部テントの片側にあるテーブルに移動して、パトラ情報局長が用意した紅茶とクッキーをほおばる精霊たちを無視したサニーは、鹿島に向かって話し出した。
「まず、人種がこの大陸に来れたのかを話すと、消滅した精霊たちが生きていた時に、大陸間の海洋に氷の道を創り出したのです。
人種は氷の橋を渡り、この大陸に来ました。
そして、当時この大陸は若い大陸であったために、精霊はただ一人だけでした。
妖精の森樹海の初代大精霊様は人々に生活魔法を教え、肥沃な土壌である森を与えました。
人々は水にも火にも不足することなく、肥沃な土壌の森を開墾しました。
そのことから、人種は精霊を信仰したのです。」
「人種が魔法を学んだ過程は理解したが、妖精の森樹海の精霊や妖精たちは、なぜ生き残れたのだ。」
「人々が海洋を渡っている間、神々は精霊達や妖精軍隊との戦い中であったのと、石化病禍が蔓延しだしたので、海洋を渡る戦力と時間がなかったのでしょう。
だが、置き土産の瘴気病だけはしっかりと、妖精の森樹海に届けに来やがったのは生き残りの羽衣姫です。」
「瘴気病を蔓延させたのは、羽衣姫だと?」
「そうだ。あの憎きくそ野郎だ。」
「消滅した樹海と、残れた妖精の森樹海の違いは?」
「その原因は知らない。それに、初代大精霊様達が拉致された理由も不明だ。」
「では、もひとつ。神々は石化したとして、なぜ羽衣姫は石化しなかったのだ?」
「それがわかれば、苦労はない。それに、タローが知りたい、チンジュ様が羽衣姫に宣戦布告した原因も、私には不明だ。」
と言って、残っているクッキーを全て鷲掴みしてしまった。
「あ、俺が気が付いたことを話していいか?」
「なにを?」
「瘴気病を絶滅する方法は?」
「樹海をすべて、燃やしてしまうことだな。」
「あ~、あのくそやろ~。人種に樹海を消滅させようと企んだのか!」
「だろうな。」
「確かに、人種が力を蓄えたなら、人種の脅威である瘴気病を絶滅しようとしたのであろうが、タローたちが現れたことで、瘴気病は脅威とはならなかった。」
「ので、羽衣姫は新たな計画をたてた。」
「新たなる計画として、あの戦艦か。」
「妖精の森樹海に近いハカタ港町を拠点にして、妖精の森樹海に侵攻しようとしたのかも?」
「何で妖精の森樹海に?」
「目的が分かれば、その理由も判明するだろうが。」
「では、目的を調査する必要があるわね。」
「大河向こうへの進攻か?」
「こちらも逆侵攻よ。」
「そこまでやるの?」
「姫神信仰などぶっ潰すわ。」
と、サニーが手を上げると多くのクッキーが零れ落ち、精霊たちはそれを器用に空中でつかみ取った。
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