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制覇行進
177 二度目の来襲
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東の空はまだ暗く、闘い後の余韻が残る街並みは、何事もなかった様に静かであった。
しかしながら、時間的にホテルの全ての窓は消灯しているはずなのだが、静寂を終わらせるかの様に一カ所だけが灯っていた。
大広間食堂では、鹿島達が貸し切っているかのように、タローとサニーご夫妻一行の騒がしい朝食が始まった。
サニーにヒカリ皇后や精霊たちの肌はてかてかと輝いているが、対照的に鹿島の顔色はいくらか沈んでいた。
鹿島のうつろな眼差しを気にする人はいない様子で、ウエイターやウエイトレスの驚愕した顔など気にすることなく朝食バトルが始まった。
料理の乗っている皿がなくなり、ソースだけの皿が山と積まれたころ、みんなは満足そうに玄関へ向かうと、東の空は少し赤焼け色になっていた。
流れ星が南の水平線に消えていくと、鹿島の運転するピカピカに磨かれた魔石駆動車が現れた。
「ピカピカじゃん。」
と、サニーが驚愕の表情で魔石駆動車を見回すと、
「不敬罪のお詫びと言って、二人で洗ってくれたらしい。」
「チップ渡した?」
「各自銀貨一枚ずつ。」
「高くついたわね。」
「でも気分がいい。」
「ですね。」
と、サニーは満足気に車の助手席に乗り込んだ。
鹿島達が朝日に照らされたハカタ港町上空に着くと、港を見下ろす丘の上に司令部のテントが設けられていた。
C-003機は司令部テントから離れた場所に着陸した。
眼下遠くの大河中に停泊している黒船を鹿島達は双眼鏡で眺めた後、魔石駆動車でテントに向かった。
テント外ではエントツ国防大臣とチャップリ元帥にパトラ情報局長達が出迎えていた。
「ごくろう。」
と、鹿島は軽く挨拶してテントの中に入っていった。
テントの中には広いテーブルに、ハカタ港町周辺の地図上に兵棋駒が広げられいた。
鹿島は兵棋駒の置かれた地図を見回せる場所に座り、色とりどりの駒から兵の配置を理解した。
「上空から眺めたら、かなりの塹壕が掘られていたが?誰の発案だ?」
「チンジュ女神様の使徒、Z-998号軍事顧問様です。」
「Z-998号は各情報を統括するだけでなく、軍事顧問も兼ねるのか。」
「これからの戦は全く違う戦い方になるとのことです。」
「火薬や、鉄の防護物が出てきたなら、そうですね。」
「Z-998号軍事顧問様の話を、皆、今一理解していないのです。」
「弓矢の代わりに、銃が主体になるでしょうし、爆裂弾丸を打ち出す鉄の筒がこれからの戦の主流だ。」
「槍や剣は使えますか?」
「槍は銃に取り付けた銃剣に代わり、抜刀隊も局地戦では有効でしょうが、塹壕戦やトーチカに対しては活躍の場が少なくなるでしょう。」
「トーチカとは?」
「銃座を守る硬い建物のことだ。」
「土のう袋を積む意味は?」
「土嚢と言って、銃から発射された弾丸や、爆裂破片から身を守る防護壁のことだ。」
「爆発だけでなく、破片が飛び散ると?」
「それが爆裂弾丸だ。」
「その爆裂弾丸が、あの黒い鉄船の筒から発射されると、Z-998号軍事顧問様もおっしゃっていました。」
「今回は、新しい戦の幕開けを体験する、いい機会だろう。まずは御覧じろと、行くか。」
鹿島が腕を回しながら立ち上がると、サニーたちも腕を回しながら後ろからついていった。
鹿島達が腕を回している頃、黒い戦艦から多数の小舟が降ろされだした。
小舟に乗り込む兵たちは鎧兜なしで、背中に銃らしき物を担いでいた。
先頭を進む小舟にはウソハキ国旗が掲げられていて、どうやら戦前触れ交渉人がいる様だと皆は感じた。
鹿島達が魔石駆動車に乗り込みだすと、エントツ国防大臣とチャップリ元帥にパトラ情報局長達もそれぞれ魔石駆動車に乗り出した。
鹿島はそれに気づき、
「今回はチャップリ元帥だけで交渉をしてもらい、エントツ国防大臣とパトラ情報局長は後方連絡を頼みたい。」
「ならば、お館様が向かわれるのも危険では?」
「俺の護衛達は最強だ。」
と鹿島がサニーとヒカリ皇后の肩を抱くと、五人の精霊たちも翅を広げて鹿島の周りで飛翔しだした。
桟橋に次々と小舟を連結させて、銃を持った兵たちを従えたウソハキ国の交渉人は、近づいてくるサニーとチャップリ元帥を待つかの様に、胸を張って腕を組んだ。
チャップリ元帥はウソハキ国の交渉人との距離をが十メートル手まで止まり、
「ジンギハーン帝国の奴隷どもが、何用合ってきた!」
と、怒鳴った。
「俺らはジンギハーン帝国を打ち破り、独立した。ので、おまえたちは俺らに従え。そして前回捕虜となったウソハキ国国民を返し、その慰謝料を払え。」
「ウソハキ国捕虜など一兵もいないし、慰謝料はこちらがもらう権利がある。」
「俺らの大砲の威力は、身に染みているだろう。ここでの提案を受けないのであるなら、大量の弾丸をお見舞いするぞ。」
「また負け戦をしに来たようだな。伝言を頼みたいが、我らが領土へ泥足で踏み込んだからには、残念ながらみんな生きては返さん。」
「残念だ!死ぬのはお前たちだ!」
と言って、ウソハキ国の交渉人は旗を大きく振った。
小舟で現れた百人からの銃から発射された銃弾を、サニーは目の前に幅十メートル高さ五メートルの土壁を創りだすと、翅を広げてチャップリ元帥の肩下から腕を伸ばして抱きかかえ、瞬間移動して塹壕の中へ移動した。
「来るぞ!伏せろ!」との拡声器並みの声がハカタ港町中に響いた。
黒い戦艦から無数の白い煙が立ち上ると、打ち上げ花火が空に飛び出す音とともにハカタ港街中に爆裂音が響いた。
「塹壕の中から、桟橋に向かって、矢の雨を降らせ!」
とまた拡声器並みの声がハカタ港町中に響いた。
周りで連続した爆裂と、風を切りながら塹壕の上を飛ぶ銃弾音の中、塹壕の中からクロスボウ部隊は目測なしの勘を頼りに、桟橋に向かって角度を定めて矢を放すと、周りを土のうで守られた五十基のバリスタ部隊も、桟橋にいるウソハキ国兵士にむかって一斉に矢を放した。
ウソハキ国の銃は単発式の様子で、おまけに薬莢が胴貨幣に転用できる銅製であるためか、皆、銃に残っている熱い薬莢を大事様に袋へ戻し終えてから弾込めを行うので、次の弾丸が発射されるまでかなりの間ができていた。
そんな中、予想だにしていなかった、矢の雨が降ってきだして混乱が起きていた。
しかしながら、矢の雨では負傷はしても、致命傷とはならない様子である。
爆裂の中、桟橋からの銃声が途切れないことで、鹿島達八人は矢の届かない小舟に空間移動し、
「火炎放射!」「風刃!」との合唱が響くと、負傷した百人の銃持ち兵士とウソハキ国の交渉人は炎の中で千切れ飛び散った。
鹿島達八人はハカタ湾の岬の高台に空間移動すると、
「合体竜巻!」と叫ぶと、八つの竜巻は一つに合体し、大河の流れに荒波を立てた。
荒れ狂う大河の中で戦艦は木の葉の様に荒波に隠れては現れ、砲撃を止めることはなかったが、幸いなことに砲弾はあらぬ方向へ飛んでいき、ハカタ港町での爆裂音はしなくなった。
が、三隻の戦艦は左右に揺れ傾きながらもすぐに起き上がり、転覆することなく吹き荒れる竜巻や川の流れを乗りきっていた。
前触れ無く、「暗雲!」との声を響かせた鎮守様が現れた。
青く晴れた空が真っ黒な雲で覆われると、「合体竜巻!」は大きく膨れ上がり、黒い雲と繋がった。
戦艦から黒い煙を吐き出していた排気煙突が千切れ飛び、甲板の木材をもまき散らしだした。
三隻の戦艦は大きな竜巻に飲み込まれて、その黒い三つの船体を横転させてしまった。
横転した戦艦は船底を上に向けた状態で竜巻の中から姿を現すと、再び竜巻の中へ巻き込まれるを繰り返しだした。
「一隻捕獲!」と鎮守様が怒鳴ると、竜巻の中から船底を上に向けたままの戦艦が、荒波を滑る様に博多湾に流れてきた。
大河の流れが元の静かな流れに変わり、空も青空になると二隻の戦艦の姿はなく、誰一人と流れの中には見当たらなかった。
しかしながら、時間的にホテルの全ての窓は消灯しているはずなのだが、静寂を終わらせるかの様に一カ所だけが灯っていた。
大広間食堂では、鹿島達が貸し切っているかのように、タローとサニーご夫妻一行の騒がしい朝食が始まった。
サニーにヒカリ皇后や精霊たちの肌はてかてかと輝いているが、対照的に鹿島の顔色はいくらか沈んでいた。
鹿島のうつろな眼差しを気にする人はいない様子で、ウエイターやウエイトレスの驚愕した顔など気にすることなく朝食バトルが始まった。
料理の乗っている皿がなくなり、ソースだけの皿が山と積まれたころ、みんなは満足そうに玄関へ向かうと、東の空は少し赤焼け色になっていた。
流れ星が南の水平線に消えていくと、鹿島の運転するピカピカに磨かれた魔石駆動車が現れた。
「ピカピカじゃん。」
と、サニーが驚愕の表情で魔石駆動車を見回すと、
「不敬罪のお詫びと言って、二人で洗ってくれたらしい。」
「チップ渡した?」
「各自銀貨一枚ずつ。」
「高くついたわね。」
「でも気分がいい。」
「ですね。」
と、サニーは満足気に車の助手席に乗り込んだ。
鹿島達が朝日に照らされたハカタ港町上空に着くと、港を見下ろす丘の上に司令部のテントが設けられていた。
C-003機は司令部テントから離れた場所に着陸した。
眼下遠くの大河中に停泊している黒船を鹿島達は双眼鏡で眺めた後、魔石駆動車でテントに向かった。
テント外ではエントツ国防大臣とチャップリ元帥にパトラ情報局長達が出迎えていた。
「ごくろう。」
と、鹿島は軽く挨拶してテントの中に入っていった。
テントの中には広いテーブルに、ハカタ港町周辺の地図上に兵棋駒が広げられいた。
鹿島は兵棋駒の置かれた地図を見回せる場所に座り、色とりどりの駒から兵の配置を理解した。
「上空から眺めたら、かなりの塹壕が掘られていたが?誰の発案だ?」
「チンジュ女神様の使徒、Z-998号軍事顧問様です。」
「Z-998号は各情報を統括するだけでなく、軍事顧問も兼ねるのか。」
「これからの戦は全く違う戦い方になるとのことです。」
「火薬や、鉄の防護物が出てきたなら、そうですね。」
「Z-998号軍事顧問様の話を、皆、今一理解していないのです。」
「弓矢の代わりに、銃が主体になるでしょうし、爆裂弾丸を打ち出す鉄の筒がこれからの戦の主流だ。」
「槍や剣は使えますか?」
「槍は銃に取り付けた銃剣に代わり、抜刀隊も局地戦では有効でしょうが、塹壕戦やトーチカに対しては活躍の場が少なくなるでしょう。」
「トーチカとは?」
「銃座を守る硬い建物のことだ。」
「土のう袋を積む意味は?」
「土嚢と言って、銃から発射された弾丸や、爆裂破片から身を守る防護壁のことだ。」
「爆発だけでなく、破片が飛び散ると?」
「それが爆裂弾丸だ。」
「その爆裂弾丸が、あの黒い鉄船の筒から発射されると、Z-998号軍事顧問様もおっしゃっていました。」
「今回は、新しい戦の幕開けを体験する、いい機会だろう。まずは御覧じろと、行くか。」
鹿島が腕を回しながら立ち上がると、サニーたちも腕を回しながら後ろからついていった。
鹿島達が腕を回している頃、黒い戦艦から多数の小舟が降ろされだした。
小舟に乗り込む兵たちは鎧兜なしで、背中に銃らしき物を担いでいた。
先頭を進む小舟にはウソハキ国旗が掲げられていて、どうやら戦前触れ交渉人がいる様だと皆は感じた。
鹿島達が魔石駆動車に乗り込みだすと、エントツ国防大臣とチャップリ元帥にパトラ情報局長達もそれぞれ魔石駆動車に乗り出した。
鹿島はそれに気づき、
「今回はチャップリ元帥だけで交渉をしてもらい、エントツ国防大臣とパトラ情報局長は後方連絡を頼みたい。」
「ならば、お館様が向かわれるのも危険では?」
「俺の護衛達は最強だ。」
と鹿島がサニーとヒカリ皇后の肩を抱くと、五人の精霊たちも翅を広げて鹿島の周りで飛翔しだした。
桟橋に次々と小舟を連結させて、銃を持った兵たちを従えたウソハキ国の交渉人は、近づいてくるサニーとチャップリ元帥を待つかの様に、胸を張って腕を組んだ。
チャップリ元帥はウソハキ国の交渉人との距離をが十メートル手まで止まり、
「ジンギハーン帝国の奴隷どもが、何用合ってきた!」
と、怒鳴った。
「俺らはジンギハーン帝国を打ち破り、独立した。ので、おまえたちは俺らに従え。そして前回捕虜となったウソハキ国国民を返し、その慰謝料を払え。」
「ウソハキ国捕虜など一兵もいないし、慰謝料はこちらがもらう権利がある。」
「俺らの大砲の威力は、身に染みているだろう。ここでの提案を受けないのであるなら、大量の弾丸をお見舞いするぞ。」
「また負け戦をしに来たようだな。伝言を頼みたいが、我らが領土へ泥足で踏み込んだからには、残念ながらみんな生きては返さん。」
「残念だ!死ぬのはお前たちだ!」
と言って、ウソハキ国の交渉人は旗を大きく振った。
小舟で現れた百人からの銃から発射された銃弾を、サニーは目の前に幅十メートル高さ五メートルの土壁を創りだすと、翅を広げてチャップリ元帥の肩下から腕を伸ばして抱きかかえ、瞬間移動して塹壕の中へ移動した。
「来るぞ!伏せろ!」との拡声器並みの声がハカタ港町中に響いた。
黒い戦艦から無数の白い煙が立ち上ると、打ち上げ花火が空に飛び出す音とともにハカタ港街中に爆裂音が響いた。
「塹壕の中から、桟橋に向かって、矢の雨を降らせ!」
とまた拡声器並みの声がハカタ港町中に響いた。
周りで連続した爆裂と、風を切りながら塹壕の上を飛ぶ銃弾音の中、塹壕の中からクロスボウ部隊は目測なしの勘を頼りに、桟橋に向かって角度を定めて矢を放すと、周りを土のうで守られた五十基のバリスタ部隊も、桟橋にいるウソハキ国兵士にむかって一斉に矢を放した。
ウソハキ国の銃は単発式の様子で、おまけに薬莢が胴貨幣に転用できる銅製であるためか、皆、銃に残っている熱い薬莢を大事様に袋へ戻し終えてから弾込めを行うので、次の弾丸が発射されるまでかなりの間ができていた。
そんな中、予想だにしていなかった、矢の雨が降ってきだして混乱が起きていた。
しかしながら、矢の雨では負傷はしても、致命傷とはならない様子である。
爆裂の中、桟橋からの銃声が途切れないことで、鹿島達八人は矢の届かない小舟に空間移動し、
「火炎放射!」「風刃!」との合唱が響くと、負傷した百人の銃持ち兵士とウソハキ国の交渉人は炎の中で千切れ飛び散った。
鹿島達八人はハカタ湾の岬の高台に空間移動すると、
「合体竜巻!」と叫ぶと、八つの竜巻は一つに合体し、大河の流れに荒波を立てた。
荒れ狂う大河の中で戦艦は木の葉の様に荒波に隠れては現れ、砲撃を止めることはなかったが、幸いなことに砲弾はあらぬ方向へ飛んでいき、ハカタ港町での爆裂音はしなくなった。
が、三隻の戦艦は左右に揺れ傾きながらもすぐに起き上がり、転覆することなく吹き荒れる竜巻や川の流れを乗りきっていた。
前触れ無く、「暗雲!」との声を響かせた鎮守様が現れた。
青く晴れた空が真っ黒な雲で覆われると、「合体竜巻!」は大きく膨れ上がり、黒い雲と繋がった。
戦艦から黒い煙を吐き出していた排気煙突が千切れ飛び、甲板の木材をもまき散らしだした。
三隻の戦艦は大きな竜巻に飲み込まれて、その黒い三つの船体を横転させてしまった。
横転した戦艦は船底を上に向けた状態で竜巻の中から姿を現すと、再び竜巻の中へ巻き込まれるを繰り返しだした。
「一隻捕獲!」と鎮守様が怒鳴ると、竜巻の中から船底を上に向けたままの戦艦が、荒波を滑る様に博多湾に流れてきた。
大河の流れが元の静かな流れに変わり、空も青空になると二隻の戦艦の姿はなく、誰一人と流れの中には見当たらなかった。
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