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制覇行進
167侵略国家ビクトリー女王国
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霧が晴れない曙の中、ジロチョーは村の子供達や老人に女性たちが立ち去る背中を見ていた。
無事にビクトリー女王国へと逃れきれることを望んで、道中不足するであろうが、目一杯に用意した食料を持たせて、精霊様の加護にすがり、安泰な旅の願いを祈りながら見送った。
それ故、迂回するコースながらも、比較的安全な旅ができるオオオカ領地に向かわせた。
ちなみに、オオオカ領地では昔から盗賊団への取り締まりが厳しかったので、今も盗賊団の被害は少ないとの事であったからである。
新しい二人の名主代官が殺害されて居なくなっていたことで、悪政代官に苦しんでいた不満だらけの各集落からの応援はスムーズに進み、日が昇るにつれて竹槍を持った群衆が続々と集まりだしてきた。
鹿島達はシミズ村を見下ろす丘の上にいた。
「随分と集まってきたわね。」
とサニーは飛翔しながら鹿島の肩にお尻を乗せて留まり呟いた。
飛翔練習中のヒカリ皇后も鹿島のそばに寄ってきて、
「完全武装の騎士に対し、竹槍だと無謀なように思いますが?」
「そこはほれ、俺たちが手を貸そうではないか。」
「私たちで、領主軍を壊滅させると?」
と、サニーはめんどくさそうに眉を下げた
「いや、あくまでもこの戦いは花嫁の仇が本分だ。ので、われらが領主軍の装備をくすめて無防備化する。」
「コソ泥をしろと?」
「別に泥棒をするのではない。返してもらうだけだ。」
「物は言いようね。」
とサニーは言いながら微笑んだのは、同意したとの返答だと鹿島は受け取った。
鹿島達の目前の風景が歪にゆがむと、
「我が国の特使が殺されたのです。私にもクロコマ.カツゾーを打ち取る権利があります。」
と、空間が歪にねじれた場所からイザベラ女王の声が響いた。
鹿島は驚き、
「何で、、、、事情がわかった?」
「タロー様の目と耳は私と繋がっていますので。」
「目と耳が繫がっている?初耳だ。」
「精霊キク様の能力です。」
との声を聞いた五人の精霊たちと、いつの間にかヒカリ皇后に憑依していた精霊フローレンさえも周りに集まってきた。
「キク!私たちにもその念力魔法を教えなさい。」
「そうよ、独占禁止違反!」
イザベラ女王に憑依していた精霊キクが出てきて、
「私も大精霊サニー様に教わったのよ。」
との返事に精霊たちは一斉にサニーに振り向いた。
「別に隠していたのではない。みんなが興味ないのだと思っていただけだ。キクみたいに皆が教えてほしいと願うなら、教えましょう。だが条件がある。」
「条件?」
「タローから協力を依頼されても、タローの目にクマができるほどの過酷なことを要求しない事と、精を吸う回数を減らしなさい。そうしないとタローが干からびてしまう。」
「大精霊サニー様のご指示に従います。」
と、六人の精霊たちは礼儀正しく丁寧に跪いた。
六人の精霊たちがサニーの指導を受けているのを眺めている鹿島に、ヒカリ皇后は鹿島の腕を握りしめ、意識的にべたりと腕に胸を押し付けていると、イザベラ女王がそばに寄ってきた。
「タロー様、クロコマ.カツゾーに、どのような責任を取らせる予定でしょうか?」
「シャジャーイ王国の件で、連絡しようと思っていたのだが、イザベラ殿が来てくれて、丁度良かった。」
「我が国の侵攻名分が無くなる、との事でしょうか?」
「そうだねぇ~、俺たちとタイガー殿がうまく動いたなら、ビクトリー女王国の錦の御旗は降ろさざるを得ないな。」
「侵攻名分の錦の御旗は既に受け取っていますわ。」
「はぁ~?どんな御旗?」
「オオオカ領地民の救援要請の錦の御旗です。」
「どういうことだ?」
「以前から、オオオカ領主より、自領住民の保護か、ないしは、最悪事態になりそうなら、移民を受け入れてくれとの要請です。」
「ビクトリー女王国はどのような処置を行う予定だ?」
「オオオカ領地民の保護と、移民を受け入れる心算でいます。」
「侵攻する予定だと?」
「シャジャーイ王国で長引く無政府状態が続くなら、民は危機的状態になり、混乱は加速していくわ。」
「無政府状態の原因はタイガー軍だと?」
「善政を行えない無法者たちを登用している、、、ヤスゴロー.ドモヤス宰相を潰さなければなりません。」
「善政を行えない無法者たちを登用している事を、タイガー殿に教えてあげた方が、いいのではないか?」
「現時点では、タイガー殿は内政が不得意な上に、信頼できる行政官がいないので戦上手なタイガー軍は混乱します。」
「タイガー軍は戦専門だけだと?イザベラ女王殿はかなり詳しいな。優秀な密偵からの報告か?」
「です。」とイザベラ女王は鹿島に隠し事をしたくないので、タイガー軍の中に密偵がいることを肯定した。
鹿島は思わぬタイガー軍内部事情と事態を知り、腕を組んで考えこんだ。
「なら、クロコマ.カツゾーに引導を渡すのは新婦の夫に譲り、従姉妹殿は見届け立会人を派遣し、ヤスゴロー.ドモヤス宰相の身柄をタイガー殿に要求する方が、最低被害で済む無難なやり方ではないでしょうか?」
とヒカリ皇后がイザベラ女王に提案すると、鹿島は現時点ではタイガーとヤスゴロー.ドモヤス宰相との信頼関係が不明なので、結論を急ぐべきではないと判断し、ヒカリ皇后の提案話を遮るように、
「タイガー殿は親の仇を終えた後始末を、どのように考えているのだろう?」
「それを私たちも知りたいのですが、人の心中を知るすべがない。」
「タイガー殿が親の仇を終えた後は、残念ながら現状を垣間見て判断すると、混乱状態だけになるか。」
「タイガー軍政はかなり評判が悪いので、民は支配者に脅え暮らす事になり、かなりの確率で精神が不安定な混乱状態になるでしょう。」
とイザベラ女王は唇をかんだ。
鹿島は事態の深刻さを知りえたが、しかしながら、対処方法が思い浮かばなかった。
「タロー様、事の結末を私に任せてほしい。」
とイザベラ女王は半身を乗り出した。
鹿島は顔をしかめた表情で、イザベラ女王をにらんだ。
「わが国だけが、さらに混乱を増幅するキルオシ帝国からの侵略を防ぎ、シャジャーイ王国民の混乱を鎮めきれます。」
と言って、イザベラ女王は頭を下げた。
「全面同意と協力はできないが、ビクトリー女王国軍の動きは黙認できる。」
「ではすぐに、ニキチ特使の部下であった三人を、クロコマ.カツゾーに引導を渡す見届け立会人として、こちらへ向かわせます。以後のことはまた。」
と言って、ゆがんだ空間に消えていった。
鹿島はすでに始まっているシャジャーイ王侯内の混乱を、鎮める方法を思い浮かばないことに、ジレンマを感じていた。
「イザベラちゃんなら、うまくやるわよ。」
と、サニーが後ろから声掛けした。
「従姉妹殿は強引なので、犠牲者の数が心配です。」
「小を犠牲にし、大を生かす。それも正義だわ。」
と、サニーはみんなの思いを吹き飛ばす爆弾発言をした。
「小とまさか、タイガーたちで、、、、。」
「シャジャーイ王国民が、大になるかしら。」
サニーは当たり前だとの態度で、鹿島をにらみ返し、
更に、「非常事態と判断した場合は、特にそれが重要でしょう。」と付け加えた。
無事にビクトリー女王国へと逃れきれることを望んで、道中不足するであろうが、目一杯に用意した食料を持たせて、精霊様の加護にすがり、安泰な旅の願いを祈りながら見送った。
それ故、迂回するコースながらも、比較的安全な旅ができるオオオカ領地に向かわせた。
ちなみに、オオオカ領地では昔から盗賊団への取り締まりが厳しかったので、今も盗賊団の被害は少ないとの事であったからである。
新しい二人の名主代官が殺害されて居なくなっていたことで、悪政代官に苦しんでいた不満だらけの各集落からの応援はスムーズに進み、日が昇るにつれて竹槍を持った群衆が続々と集まりだしてきた。
鹿島達はシミズ村を見下ろす丘の上にいた。
「随分と集まってきたわね。」
とサニーは飛翔しながら鹿島の肩にお尻を乗せて留まり呟いた。
飛翔練習中のヒカリ皇后も鹿島のそばに寄ってきて、
「完全武装の騎士に対し、竹槍だと無謀なように思いますが?」
「そこはほれ、俺たちが手を貸そうではないか。」
「私たちで、領主軍を壊滅させると?」
と、サニーはめんどくさそうに眉を下げた
「いや、あくまでもこの戦いは花嫁の仇が本分だ。ので、われらが領主軍の装備をくすめて無防備化する。」
「コソ泥をしろと?」
「別に泥棒をするのではない。返してもらうだけだ。」
「物は言いようね。」
とサニーは言いながら微笑んだのは、同意したとの返答だと鹿島は受け取った。
鹿島達の目前の風景が歪にゆがむと、
「我が国の特使が殺されたのです。私にもクロコマ.カツゾーを打ち取る権利があります。」
と、空間が歪にねじれた場所からイザベラ女王の声が響いた。
鹿島は驚き、
「何で、、、、事情がわかった?」
「タロー様の目と耳は私と繋がっていますので。」
「目と耳が繫がっている?初耳だ。」
「精霊キク様の能力です。」
との声を聞いた五人の精霊たちと、いつの間にかヒカリ皇后に憑依していた精霊フローレンさえも周りに集まってきた。
「キク!私たちにもその念力魔法を教えなさい。」
「そうよ、独占禁止違反!」
イザベラ女王に憑依していた精霊キクが出てきて、
「私も大精霊サニー様に教わったのよ。」
との返事に精霊たちは一斉にサニーに振り向いた。
「別に隠していたのではない。みんなが興味ないのだと思っていただけだ。キクみたいに皆が教えてほしいと願うなら、教えましょう。だが条件がある。」
「条件?」
「タローから協力を依頼されても、タローの目にクマができるほどの過酷なことを要求しない事と、精を吸う回数を減らしなさい。そうしないとタローが干からびてしまう。」
「大精霊サニー様のご指示に従います。」
と、六人の精霊たちは礼儀正しく丁寧に跪いた。
六人の精霊たちがサニーの指導を受けているのを眺めている鹿島に、ヒカリ皇后は鹿島の腕を握りしめ、意識的にべたりと腕に胸を押し付けていると、イザベラ女王がそばに寄ってきた。
「タロー様、クロコマ.カツゾーに、どのような責任を取らせる予定でしょうか?」
「シャジャーイ王国の件で、連絡しようと思っていたのだが、イザベラ殿が来てくれて、丁度良かった。」
「我が国の侵攻名分が無くなる、との事でしょうか?」
「そうだねぇ~、俺たちとタイガー殿がうまく動いたなら、ビクトリー女王国の錦の御旗は降ろさざるを得ないな。」
「侵攻名分の錦の御旗は既に受け取っていますわ。」
「はぁ~?どんな御旗?」
「オオオカ領地民の救援要請の錦の御旗です。」
「どういうことだ?」
「以前から、オオオカ領主より、自領住民の保護か、ないしは、最悪事態になりそうなら、移民を受け入れてくれとの要請です。」
「ビクトリー女王国はどのような処置を行う予定だ?」
「オオオカ領地民の保護と、移民を受け入れる心算でいます。」
「侵攻する予定だと?」
「シャジャーイ王国で長引く無政府状態が続くなら、民は危機的状態になり、混乱は加速していくわ。」
「無政府状態の原因はタイガー軍だと?」
「善政を行えない無法者たちを登用している、、、ヤスゴロー.ドモヤス宰相を潰さなければなりません。」
「善政を行えない無法者たちを登用している事を、タイガー殿に教えてあげた方が、いいのではないか?」
「現時点では、タイガー殿は内政が不得意な上に、信頼できる行政官がいないので戦上手なタイガー軍は混乱します。」
「タイガー軍は戦専門だけだと?イザベラ女王殿はかなり詳しいな。優秀な密偵からの報告か?」
「です。」とイザベラ女王は鹿島に隠し事をしたくないので、タイガー軍の中に密偵がいることを肯定した。
鹿島は思わぬタイガー軍内部事情と事態を知り、腕を組んで考えこんだ。
「なら、クロコマ.カツゾーに引導を渡すのは新婦の夫に譲り、従姉妹殿は見届け立会人を派遣し、ヤスゴロー.ドモヤス宰相の身柄をタイガー殿に要求する方が、最低被害で済む無難なやり方ではないでしょうか?」
とヒカリ皇后がイザベラ女王に提案すると、鹿島は現時点ではタイガーとヤスゴロー.ドモヤス宰相との信頼関係が不明なので、結論を急ぐべきではないと判断し、ヒカリ皇后の提案話を遮るように、
「タイガー殿は親の仇を終えた後始末を、どのように考えているのだろう?」
「それを私たちも知りたいのですが、人の心中を知るすべがない。」
「タイガー殿が親の仇を終えた後は、残念ながら現状を垣間見て判断すると、混乱状態だけになるか。」
「タイガー軍政はかなり評判が悪いので、民は支配者に脅え暮らす事になり、かなりの確率で精神が不安定な混乱状態になるでしょう。」
とイザベラ女王は唇をかんだ。
鹿島は事態の深刻さを知りえたが、しかしながら、対処方法が思い浮かばなかった。
「タロー様、事の結末を私に任せてほしい。」
とイザベラ女王は半身を乗り出した。
鹿島は顔をしかめた表情で、イザベラ女王をにらんだ。
「わが国だけが、さらに混乱を増幅するキルオシ帝国からの侵略を防ぎ、シャジャーイ王国民の混乱を鎮めきれます。」
と言って、イザベラ女王は頭を下げた。
「全面同意と協力はできないが、ビクトリー女王国軍の動きは黙認できる。」
「ではすぐに、ニキチ特使の部下であった三人を、クロコマ.カツゾーに引導を渡す見届け立会人として、こちらへ向かわせます。以後のことはまた。」
と言って、ゆがんだ空間に消えていった。
鹿島はすでに始まっているシャジャーイ王侯内の混乱を、鎮める方法を思い浮かばないことに、ジレンマを感じていた。
「イザベラちゃんなら、うまくやるわよ。」
と、サニーが後ろから声掛けした。
「従姉妹殿は強引なので、犠牲者の数が心配です。」
「小を犠牲にし、大を生かす。それも正義だわ。」
と、サニーはみんなの思いを吹き飛ばす爆弾発言をした。
「小とまさか、タイガーたちで、、、、。」
「シャジャーイ王国民が、大になるかしら。」
サニーは当たり前だとの態度で、鹿島をにらみ返し、
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