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制覇行進

157 かたき討ちの結末

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 残酷なシーンあり、ご注意ください。

 薄暗い大木の下でまどろんでいたアクコー王は、聞き覚えのある声の断末悲鳴に目を大きく開き跳ね起きると、すぐさま脇の剣を掴み、枝葉の間からかすかに差し込む陽を背に駆け出した。

 アクコー王の護衛騎士二人は断末悲鳴のした方向に身構えていたが、アクコー王が剣を抜いて邪魔な枝葉を切り落しながら駆け出した後を追いかけた。

 アクコー王の剣捌きは上級者であったが、それでもなお駆け出しながらの剣の太刀筋は異常とも思えるほどの速さである。
追いかける二人の護衛騎士は遅れまいと後追うが、手首ほどある枝の切り口のとがった部分で顔中が傷だらけになっていた。

 アクコー王がようやく藪を抜けて低木が所々にある斜面草原に出ると、眼下に小さな集落が目に入った。
アクコー王は集落のから立ち上る窯煙に安どの息を吐いたが、後ろから顔中を血だらけにしながら叫ぶ護衛騎士に驚き斜面を駆け下り出した。

 アクコー王は斜面の草に隠れていた石に足を取られて転がりだした。
ちなみに、あちこちにある石に体を打ち付けながらの、岩と共に転がる様である。
ようやっと転がりが止まったのは、大きな岩にたたきつけられて気を失ったときであった。

 ビクトリー女王国三万の兵士が森の東側に展開する中、イザベラ女王と二百人の騎士たちは既に反重力デンシャ車両五両にて、アクコー王が藪を抜け出る一時間前にすでに集落に着いていた。

 イザベラ女王は丘斜面を転がる陣羽織姿に気づき、家陰に潜んでいた二百人の騎士たちに大岩を囲むように、斜面を登れと命じた。

 顔中を血だらけにしたオハラ親衛隊二人は、アクコー王が転げ落ちて岩にぶつかり横倒しになり、尚且つ起き上がれないアクコー王を唖然としながら眺めていた。
だが、集落から現れた二百人のビクトリー女王国騎士たちに気づき、アクコー王を打ち捨てる様に森へ引き返そうと踵を返した一人の騎士の胸板を、青い輝をまとった槍穂先が貫いた。

 残り一人もアクコー王を見捨てて踵を返そうとした時、隣の同僚がうめき声と共に斜面を転がり落ちていくのに気づき、恐怖した表情で首だけを森の方へ向けた時に、タワラボシ.ゲンバの槍穂先が首から血を噴きださせた。

 タワラボシ.ゲンバの後ろから現れたホルヘ公爵宰相は、眼下の大岩で横たわっているアクコー王に気づき急ぎ斜面を下りだしたが、やはり草陰の岩に足を取られた様子で大岩の方へ転がっていった。

 タワラボシ.ゲンバはホルヘ公爵宰相の転がる様を見て、急ぎながらも慎重に下り出した。
それを見た周りの騎士たちも慎重に草を押し潰す様に靴底で滑りだしたが、何人かが石に足を取られたのかホルヘ公爵宰相同様に転がっていった。

 ホルヘ公爵宰相は何とか大岩手前で転がりを止めきれたが、後ろから転がっていった騎士の一人が運悪くにもアクコー王にぶつかり、意識を失っていたアクコー王を目覚めさせた。

 前面で転がり起きたホルヘ公爵宰相に気づいたアクコー王は逃げようと立ち上がったが、タワラボシ.ゲンバの投げた槍で足を貫かれて再び転がっていった。

 アクコー王は足に刺さった槍と共に転がりだしながら、悲鳴を上げ続けた。

 足に槍を刺したままのアクコー王が転がりながら、男爵を賜っているイザベラ女王付きのムホー.マツゴロー伝令兵の所へ向かってきた。
ムホー.マツゴローはアクコー王の転がりを足で踏みつけ止めると同時に、片腕を掴んで背中に回してそのまま首を掴みねじ伏せた。

 ねじ伏せられているアクコー王の横に、ホルヘ公爵宰相とタワラボシ.ゲンバが勢い良く滑ってきた。

 ホルヘ公爵宰相は起き上がりざま尾刃剣を抜き、青く輝かせた剣を上段に構えた。
「ムホー.マツゴロー男爵!祖奴の首を前に差し出せ!」
と叫ぶと、ムホー.マツゴローは握りしめているアクコー王の腕をねじ上げ、肩部分から脱臼させた。


 タワラボシ.ゲンバはアクコー王の暴れる様に跳ねている槍をつかみ抜き取ると、再び槍を片側の太ももを貫き、地面深くまで差し込んだ。

 アクコー王が上向き状態で片足を地面に縫い付けられると、ムホー.マツゴローは暴れているアクコー王を、暴れさせないように正常な腕を再び背に回して羽交い絞めにし、
「あきらめろ。」と静かに語りかけた。
「無抵抗の俺を殺したなら、汚名が付くだろう。オハラ国はすべて渡す。なので命だけは助けてくれ!だから、、、頼む。」
とアクコー王は泣きながらホルヘ公爵宰相に懇願しだした。

 ホルヘ公爵宰相が何かを言いかけたが、タワラボシ.ゲンバが大声で、
「か弱き侍女であった娘メルシーも、助けを懇願したはずなのに、死に追いやった。」
「あれは勝手に自分で死んだ!」
「お前が殺したのだ!」

「娘アントワは抵抗虚しく、お前に首を折られて死んだ。」
とホルヘ公爵宰相はアクコー王の首に尾刃剣先を伸ばした。
「あれは俺の妻だ!俺のものになったので、殺傷権利は俺にある。」
「何の咎めもなしに、勝手に殺す権利はない。」
「夫たる者が正義だ!」
と反論し終えると、ムホー.マツゴローはアクコー王の腕の骨をぽきりと折った。

 アクコー王の弁論はムホー.マツゴローの心の琴線に触れたのか、上半身で暴れ出したアクコー王に冷たい目を向け、
「死んだほうがましだと思えるよう、俺がいびり通す。」
と言って、脱臼している腕方の部分を踏みつけると、骨の砕ける音が泣き叫ぶ悲鳴を打ち消す様に鈍く響いた。

 アクコー王が白目のまま気を失い静かになると、ムホー.マツゴローは気付とばかりに胸を踏みつけた。

 アクコー王は口から血を吐き出しながら、再び目を覚まして悲鳴を上げだすが、ムホー.マツゴローは折れた腕の骨をも踏みつけ砕きだした。

 ホルヘ公爵宰相とタワラボシ.ゲンバはムホー.マツゴローの行為に度肝を抜かれてしまい、哀れになったアクコー王に対しては、もはや仇討ちなどと口にできなくなっていた。

 ムホー.マツゴローは二人の表情を見て取り、剣を抜いてアクコー王の首に突き刺した。
ホルヘ公爵宰相とタワラボシ.ゲンバはアクコー王の苦しげな顔が青黒くなりだし、苦しんだままの黒肌表情で事切れたアクコー王を、見つめながら肩の力を抜いた。

 二人は天を仰ぎ、それぞれの娘たちに仇は取ったとの報告をしていた。
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