【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

かんじがしろ

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制覇行進

138 鉄砲玉

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 ニキチ地方行政長官はホルヘ公爵宰相から「今後、賊たちの逃げ先である、シャジャーイ王国への援助をやめる。」との伝言を事付かって、シャジャーイ王国の宮殿に赴いていた。

 会見の間には、四段も高い王座にいるイカリ.シャジャーイ王は満面の表情でにこやかに、ニキチ地方行政長官を迎えていた。

 王座の一段低い場所から宰相らしき男が声がけした。
「して、ビクトリー女王から緊急の伝言があるとのことだが、どの様な事かな?」
「国境沿いのアリューシャに民を苦しめる盗賊がいて、我が国の警備兵が追撃すると、シャジャーイ王国へ逃げ込んでしまい、ほとほと困っています。賊達の根城集落は間違いなくシャジャーイ王国内にあり、我が国の警備兵を盗賊団の根城へ向かわせ襲撃したいのです。国境越えを認めていただきたい。」
「まるで、盗賊団が我が国の民だと言いたげだが?」
「最早居場所を特定しているので、祖奴らは死刑か奴隷落ちになる者たちです。そうゆう奴らなので、盗賊団がシャジャーイ王国の民かどうかは関係ありません。」
「つまり、我が国の民を盗賊団との証拠がなくても、罰すると?」
「証拠はあります。」
「それを示してもらおう。」
「結果で証明します。が、、、シャジャーイ王国は被害に遭っているアリューシャの民を苦しめる盗賊に対し、何ら協力対策を取らないと言うのであるなら、その結果友好関係が破綻したと受け止め、今後ビクトリー女王国からの援助は打ち切らざるを得ません。」
「まて!それはどう言うことだ!一地方行政官僚如きが、無礼な口をほざくな!」
「イザベラ女王陛下からの伝言です。」
宰相らしき男は苦虫をつぶした表情で、イカリ.シャジャーイ王の方を向いた。

 四段も高い王座にいるイカリ.シャジャーイ王は二人のやり取りを遮るように、
「ニキチ殿は盗賊団の根城を知っている素振りだが、盗賊団の根城へ我が国の調査衛士兵を案内できるか?」
「もちろん出来ます。」
「宰相、よきにはからえ。」
と言って、イカリ.シャジャーイ王は席を立ちながらチラリとニキチにあからさまな蔑視を向け、王座後ろの扉から出て行った。

 ニキチは勝ち誇る様に宰相らしき男に微笑んだ。

 元聖騎士ヨハンとゲルシムにエリゼル三人はニキチの護衛兼見習い行政官としてタイガー聖騎士団長から
命じられていて、聖騎士団印の無い鱗甲冑姿で同行付き添っていた。

 ニキチ達四人はここらの地域を監視している百人の衛士兵を束ねるクロコマ.カツゾー衛士兵に守られ、盗賊団の根城コージンヤマ集落に着くと、集落はのんびりと畑を耕す農夫や川で洗濯をする婦人に、元気に駆け回る子供らの居る平和な農村であった。

 ニキチたちはクロコマ.カツゾー衛士兵隊長の案内でコージンヤマ村長の家に行き、
「バールいるか!お前に聞きたいことがあるという、男を連れてきた!」
とクロコマ.カツゾー衛士兵隊長は乱暴に玄関をたたいたいて、奥に聞える様に大声で叫んだ。

 玄関扉が開き、瞳を隠した細目をした老人が顔を出し、
「これはクロコマ衛士兵隊長様、して、何用でしょうか?」
と村長は玄関口で訝し気にニキチをにらんだ。
「この村が盗賊団の根城との訴えで、調査に赴いた。」
「はぁ~?おいおい、何を根拠に?」
と、にやけた表情で衛士兵隊長に笑いかけた。

ニキチは二人の交わす挨拶に対し疑念を感じたが、余裕の表情の村長を自分に向けさせるため、
「アリューシャ一帯で集落を襲った盗賊団が、ここへ逃げ込んだのを確認している。」
「何の証拠もなく、それは突然な言いがかりだ。」
と卑猥な笑顔で返答した。

ニキチは二人のやり取り疑念に気づかぬふりして周りを見回しながら
「集落の数から推測して、男らが少ないようだが、どうしてだ?」
と言いながらクロコマ.カツゾー衛士兵隊長に顔を向けた。

 クロコマ.カツゾー衛士兵隊長は村長に対し和やかな表情から一転しいかつい顔した。
「男らはどこへ行った。」
「あの山の麓に山豚の群れがいるとの情報で、みんな狩りに出かけた。夕方には帰ってくるだろう。」
「そうか。なら俺らも今夜は山豚をごちになろう。」
「ま、夜半になるかもしれないが、待っている価値はあるだろう。」
と村長は鼻で笑いながら手を挙げて家に入っていった。

 ニキチ達調査団は村の男たちが帰るのを待つため、コージンヤマ村外で野営した。

 ニキチ達四人はテントの中で打ち合わせをしていて、
「ここが盗賊の本拠で間違いないが、村長とクロコマ.カツゾー衛士兵隊長はどうもグルのようだ。」
「え!衛士兵隊長も盗賊団の仲間だと?」
「その証拠をつかむ。協力してくれ。」
「もちろん。」と護衛三人は合唱した。

ニキチは静かに三人を見回し、
「三人とも生きて帰ることを優先し、結果報告をしてほしい。」
「われら三人は、行政官様を護衛するのが仕事です。」
「俺はやらねばならないことがある。」
「それを補佐するのも、われらの仕事です。」
「今回は、、、三人とも生きてタイガー殿に詳細を報告してほしい。」
「なれど、、、。」
「無駄死には俺一人でよい。いや、無駄死にではないな~。俺にもしものことがあったら、タイガー殿に仇を討ってほしい、、、、と伝えてくれ。」
「それは承知しかねます。」
「タイガー殿はシャジャーイ王国との、戦争の切っ掛けが欲しいはずだ。協力してくれ。」
「捨て駒になる、、、と?何も行政官様でなくても、よろしいのでは?」
「国と国との関係では、行政官の肩書は十分に重い。この報告書を君たちは生きて、タイガー殿に届けてほしい。」
と言って、手紙を元聖騎士ヨハンに渡しながら、
「俺を男にしてくれ。」
と言って、ニキチは威圧するように眼光鋭く、元聖騎士ヨハンの手をつかんだ。

 元聖騎士三人は「男にしてくれ。」との言葉に緊張し、互いに顔を合わせ合いその意図と真意を理解しあったが、やはり納得はできない様子で、
「ほかの方法はないのでしょうか?」
「これが、もっとも簡単明瞭な行動だ。」
三人が迷っている様子に気づいたニキチはさらに追い打ちをかけて、
「皆にもしものことがあったら、鎮守聖国が動く。タイガー殿に取っては、それはいい結果を生まない。そこを理解してくれ。」
「タイガー隊長個人で、、、仇打ちをしろと?」
「そうだ。ビクトリー女王国が動く前にだ。」
「理由をお聞かせください。」

 ニキチは一瞬歯を食いしばり固く口を閉ざしたが、鼻から大きく息を吐き、
「だな、、、。理由は、、イカリ.シャジャーイ王はタイガー殿の親兄弟の仇だからだ。」
「え~。な、、、」
「どんなことがあったのですか?」
「タイガー殿の父親は、前シャジャーイ王国の王太子だったのだ。」
三人は一瞬口を開いたまま無言であったが、意を決する様に
「それならば、親の仇だけの口実でよいはずでしょう。」
「タイガー殿の父親は、反乱者になっているらしい。ゆえに、親兄弟の仇とできない。」
「だから友の仇の証拠があれば、、、と?」
「納得してほしい。」
「行政官様は隊長の友として捨て駒になり、男になりたいと?」
「そうだ。」
と言って三人を睨んだが、三人も無言でその決断を確信する様にニキチを睨んだ。
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