【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

かんじがしろ

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制覇行進

118 ナントン領地併合

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 大量の水量により山峰が崩れて起きた岩や泥水は兵どもをも飲み込んでもなお、それでもまだ不服な様で勢い衰えない鉄砲水は平原へと向かっていた。

 オハラ王国軍は鉄砲水に襲われながらも多数の生存者がいるのは、追い風によって辛うじて丘を駆け上がれたことは幸運であったが、生存者のほとんどがすでに武器を放棄している状態であった。
けれどもジンギハーン帝国軍も自軍本陣丘に向かったが、逆に向かい風となったことで、多くの者たちは鉄砲水から逃れる事が出来なかった様子で、多数の兵は浅瀬にもかかわらず岩と流木に邪魔されてしまい多数の犠牲者が出ていた。

 アクコー王は泥まみれの自国兵を眺めながら渋い表情をして、増水しだした泥水川向こうのジンギハーン帝国軍を深追いできないと判断した。
此度の戦では多くの犠牲者と壊滅状態の戦闘不能者が出た事や、既にヒカリ王女指揮するゴールドル領地軍だけでなく、ビクトリー王国に侵攻した貴族領主軍三十万が敗れたことにより、敗戦敗戦と続いた事で多くの信頼を失った出来事だと心中は恐怖に襲われていた。
それゆえかアクコー王はすぐに軍の退却を急がせると泥まみれの兵たちを残し、周りの旗本達だけを伴って王都を目指して駆け出した。

 ジンギハーン帝国軍は辛うじて三千人位残っていたが、既に馬も武器もなく何とか泥をかき分けながらもハカタ港町に着いた。
ジンギハーン帝国軍に囚われたヨシツネ隊長もハカタ港町に姿を現していて、三本マスト大型帆船ジャンクへと乗せられていた。

 元ウソハキ国軍主力兵はジンギハーン帝国軍援護の為にオハラ王国軍との戦い場に向かっていたが、途中で川の増水と鉄砲水は元ウソハキ国軍を待っていたかのように、激流の中に巻き込んで行った。
辛うじて生き残っているのはカイワレ領主邸へ逃げ込んだ二百名だけであった。

 押し寄せた時は五千近くのジャンク帆船であったが、すでにマストが残っている運航可能な数は十隻ぐらいのようで、大半はその船体半分が水に浸かっていて湾内で傾いていた。

 ゴールドル伯爵邸宅居間では、鹿島達は自然災害に出くわした両軍の撤退の様子を、壁スクリーンに映し出した映像を確認するように見入って居た。
「アクコー王もこれだけの被害を出したのだから、そう易々とは次の軍事行動を行う余裕はないだろう。」
とゴールドル伯爵は、泥まみれとなりながらも何とか前に足を踏み出す十万以上の兵たちの列に見入っていた。
列に付き添う馬も荷車も既になく、はるか先にわずかばかりの騎馬武者が確認出来るだけである。

 ヒカリ王女と聖女突撃騎馬隊隊長タワラボシは、数名の騎馬武者隊を従えて颯爽と走るアクコー王に見入っていた。
颯爽と走るアクコー王達を見入っているヒカリ王女と聖女突撃騎馬隊隊長タワラボシの心境は、二人の表情から真逆であると鹿島は感じていた。

ヒカリ王女の颯爽と走るアクコー王達を見入っている目は不安な表情であり、タワラボシの表情は殺気に満ちていた。

 鹿島の目線思考に気付いたゴールドル伯爵は、
「ヒカリ王女様、提案が御座います。」
と、緊張と不安げな場の雰囲気を変えようと、真剣な表情をしてヒカリ王女を睨んだ。
ヒカリ王女はゴールドル伯爵から威圧感を受けると、前のめりに座っていた状態から隣の席にいる鹿島に身を委ねるかの様に体を横へ傾けた。
「今、ナントン領地はかなり混乱している状態なのに、治安を治める者が居ないので、我らがその代行をしとう御座います。」
鹿島はゴールドル伯爵の進言に対してとっさに懸念が出た。
「と、言うことは?ナントン領地を併合し、復興をすると?」
「今、ナントン領地では水害の後始末を出来る者は居ないので、故にだれも治めていません。ので、我らが復興と治安維持に向かうべきです。」
「聖女軍において、併合と復興をすることに、私も賛成です。」
と、タワラボシの殺気に満ちて居た表情は穏やかになって居たが、けれどもその目は獲物を追う狩人らしさを感じさせる輝きであった。

 ゴールドル伯爵とタワラボシが目を輝かせて居るのに対して、鹿島とヒカリ王女は互いに顔を向け合い、不安気の表情をしだし判断することに迷いが出た。
しかしながらサニーだけは全くの無関心の様子で、目の前の茶菓子に夢中であった。

 ゴールドル伯爵長男聖女近衛兵隊長リルドラも少し戸惑いと不安な表情しながら、
「今、ナントン領地を父上が併合するのは容易いでしょうが、この動く絵から推測して、かなりの荒れ地となった耕作地や住居の復興を治めるなど、何年かかるか想像できません。故にかなりの人材を復興に当てるのは無理があると思うのですが?」
と発言すると、ゴールドル伯爵とタワラボシも状況を理解した様子で唇をかみしめて思案しだした。

 鹿島は既に鎮守聖国においては、樹海開発土木工事は機械化していたことを思い出し、治安と復興工事は迷う事無くすぐにでも行うべきだと判断した。
「復興土木工事においては、鎮守聖国ではかなり機械化しているので、協力出来ると思う。」
「あ~、そうよ、あれは素晴らしい魔道具であった。あの魔道具をお貸しいただけるなら、すぐに復興できるでしょう。」
とマリーは感激の声を上げてソファーから立ち上がった。
「姫はその魔道具を見たと?」
「兄上様、あの魔道具ゴーレムは、小山をわずかな時間で平らにできる上に、大石をどかす事では百人、いや、三百人の仕事をします。」
と、マリーは興奮しながら兄であるリルドラに説明ながらも、なおかつ父親やタワラボシにも理解させようと、樹海の木々を伐採処分し、岩を削り農地としていく各種造成機材を熱く語りだした。

 ヒカリ王女はナントン領地へ無断で侵入することに対しては、判断することに迷いが出ていたが、許可をもらう相手がいないことと、鹿。島の賛同を得たことで安心して賛成した。
「全聖女軍は、聖女ヒカリ王女の名の下に、ナントン領地へ向かい、復興支援に向かう。」
と、憂いがなくなったと判断したゴールドル伯爵は宣言した
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