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制覇行進

115 兄の思案

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 鹿島とサニーがビクトリー王国都教会に着くと、鍛錬所にてもすでに戦勝宴会が始まっていた。
「戦神タロー陛下様が登場だ!」との声で、「戦神タロー陛下様!」との合唱が教会敷地に響き渡った。
鹿島は自分も等々二つ名持ちにされたと実感した。

 鹿島達の前には鍛錬所に並べた中央テーブルまでの人垣道ができていて、みんなはせわしなく中央テーブル上のコップや食器をかたづけ出した。

 鹿島とサニーは人垣道を進んでいき中央テーブル席に着くと、鱗甲冑姿にエプロンをつけた女聖騎士たちが次々と料理や飲物を運んできた。
中でも圧巻なのは、豚の姿焼きを二人の聖騎士たちが担いできたことであった。
「戦神タロー陛下、大精霊様、お好みの肉部位はどこでしょうか?」
と後ろから包丁研ぎやすり棒と包丁をこすり合わせながら、タイガー聖騎士隊長がにこやかに訪ねてきた。
「おすすめの焼けた部位を頼む。」
「ま、お勧めは、肋骨周りのスペアリブでしょう。」
といって次々と骨付き肉を、鹿島とサニーの前においてある皿に盛りあげていった。

 相変わらずサニーの食欲は旺盛で、自分の分がなくなると鹿島の皿のスペアリブにまで手を出し始めた。
サニーのコップが空になると、鱗甲冑姿にエプロンをつけた女聖騎士がすぐに次ぎだした。
「ありがとう。」といってサニーは女聖騎士のほほにキスをした。
「あ~。ありがとうございます。」と、ほほにキスされた女聖騎士が真っ赤な顔で頭を下げると、周りにいたエプロンをつけた女聖騎士達は急いでジュースのおいてあるテーブルに駆け出し、ジュースの入ったタンブラーを抱え込んでサニーの周りに集まりだした。
サニーは、一口食べてはジュースをと、飲み嚙みを繰り返しながら、次々と女聖騎士のほほにキスしだしている。
鹿島もコップの酒を勢いよく飲みこんでコップを空にし、女聖騎士の方へ空のコップを向けると、
「懲りないやつ。」サニーのこぶしが後頭部へ飛んできた。
「ついでに俺も、、との、、、また俺の心を読まれた、、、。」
と言って後頭部を抑えながらテーブルにおでこを当てると、
「痛いの痛いの飛んでいけ。」と後ろからシンデレラ司祭長の声がした。
「相変わらず、仲がよろしいようですね。」
と言いながら、鹿島のコップに酒をなみなみとついだ。

 シンデレラ司祭長の後ろには鹿島がやっかむほどの美青年ハクバが付き添っていて、その後ろには護衛の五人が二人に誰をも近づけまいと取り囲んでいた。

 サニーはシンデレラの手を握って、顔を見つめた。
「そんなことは、記憶が戻ってからのことです。」
と、シンデレラは真っ赤な顔をして美青年ハクバの方を向いた。
鹿島はシンデレラの声で、サニーのテレパシーの内容は、おそらく、「いつ結婚するのか。」と尋ねたのだろうと推理した。
五人の護衛達もその内容を理解したのか、もろに嫌な表情をサニーに向けていた。
特に兄であるコビビトは何か言いたげであるが、周りの人だかりに遠慮する様に、言いたい言葉を生唾と共に飲み込んでいた。
やはり兄であるコビビトは、ハクバは記憶喪失ゆえに教会の居候執事であるが、本当はれっきとしたキルオシ帝国第三皇子であり、妹シンデレラとの身分違いを案じているようである。
出来れば、このまま記憶喪失であるならば、妹シンデレラの想いは遂げられるだろうと思っていた。

 サニーは兄であるコビビトに、
「いずれは、術も解けるが、早い方がいいのではないか?」
と、逆ににらみ返した。
コビビトは「検討してみます。」とだけ無表情で返した。

 冷たい風が吹いている鹿島達のテーブルに気づいたのか、骨だけかと思える焼き豚を持ったタイガーが再び現れた。
二人の聖騎士が担いできた豚肉にはほとんど肉は残っていないが、タイガーはそれでもなおあちらこちらに残っている肉をそぎだし、鹿島とサニーの皿に盛っていった。

 タイガーが現れたことで、サニーの食欲は再開しだした様子である。
「団長は、化け物から神様に昇天したようで、おめでとうございます。」
「ま、化け物と言われるより、ましだが、神と呼ばれるのもかんべんだな。」
「いやいや、俺も戦神タロー陛下と呼びたいです。」
と言って酒を進めだした。
「化け物呼ばわりは無しか?」
「化け物はまだかわいいいが、トンズラコ攻防戦では、戦神タロー陛下の後ろに着いた者達は、ボーボア尾刃槍をふるえなかったと、かなりの不満がでましたよ。」
「すまん。あの時は、無我夢中だったのだ。」
「謝ることなどないが、ここにいる者たちは、戦神タロー陛下の配下でよかったと喜んでいます。これでまた、多くの入隊希望傭兵たちが殺到してくるであろうし、感謝します。」
と言って豪快に酒を飲み干した。

 鹿島とサニーが戦勝宴会場から引き揚げようと席を立つと、このまま二人を見守ってくれとコビビトは懇願するかのように、サニーに深々と頭を下げていた。

 鹿島とサニーはいつもの通り修道士の案内であてがいの部屋に着くと、二人一緒に浴室へと向かった。
鹿島は白雪姫との結合以来サニーの胸を意識しだしていて、逸物はすぐに反応した。
サニーは鹿島の気持ちを弄ぶように、わざとらしく鹿島の背中に弾力圧胸を押し付けて喜んでいる。
鹿島はサニーの行為を「生殺しだ!」と、つい叫んでしまった。
「では明日、ヒカリちゃんのとこに寄っていく?」
「是非に、です。」と鹿島はサニーに抱き着いた。

 ベッドに入った鹿島は悶々とした気持ちのままサニーの乳房にかぶりつくが、余計に目が冴え出してきた。
「眠りの精霊よ、タローを深い眠りに誘え(いざなえ)。」
とサニーが呪文を唱えると、鹿島はそのまま寝入ってしまった。
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