【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

かんじがしろ

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制覇行進

114 黒煙火薬

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 朝日を浴びた反重力デンシャ車両十両が東門前に連結していた。

「ニキチ。ほんとに除隊したのか。」
とタイガーは、いかつい甲冑を脱いで私服に着替えているニキチに寂しい表情を向けた。
「ま、今回の戦が終わったら、除隊する約束だったからな。」
「娘のためか。仕方がないな。」
「ま、突然妻を亡くしてしまい、娘を一人にできないからな。」
「実家で預かるとの話はどうなった?」
「周りが、ジジババばっかりの環境では、娘がかわいそうだ。」
「孤児院で預かるとの話もあっただろう。」
「兄弟にはそのことでは、感謝している。が、やはり親の愛情は与えてやるべきだろう。」
「教会の病院で助けきれなかったことは、すまないと思っている。」
「まさか、俺の方が感謝しているよ。いつも体の調子が悪いと言っていたのに、早く治療修道士のもとへ連れて行ってさえいたならと、悔やんでいる。」
「がんの病気とは、恐ろしいな。」
「まったくだ。」
「今、国の行政機関で、官吏向きの人材を探しているのだが、どうだろう。推薦できるが?」
「そうだなぁ~。ゆっくり考えてみるよ。」
「俺も帰ったら、お前向きの官吏職を探しておくわ。」
「妻の入院にしろ、兄弟には随分世話になりっぱなしだ。ありがとうな。」
「水臭いぞ。」
タイガーはニキチの落ち込んでいる肩をつかんで腕に力を込めると、ニキチは励まし力に苦笑いしているが、タイガーの豪快な笑い声に満面の笑顔を返し、感謝するようにデンシャ車両へ乗り込む一歩踏み出す勇気が出てきた様子で、デンシャ車両に乗り込んだ。

 イザベラ女王の執務室に訪れている鹿島とサニーは、イザベラ女王の落ち込んでいる姿を不思議に感じていた。
「イザベラ殿、何かあったのか?」
「いいえ、何もございません。少し疲れているだけです。」
とサニーを時々見つめて微笑むだけで、鹿島とは始終目を合わせない様にうつむくだけである。
「貴国と、互いに国の運営と防衛を協力し合う、共同連合国家条約を推進したいのだが、貴国の窓口交渉は誰でしょうか?」
イザベラ女王はしばらく沈黙していたが、大きく息を吐いて、
「ホルヘ公爵宰相に一任しています。よろしくお願いします。」
とやはり目を合わせることなくこぶしを握り締めるだけであった。

 サニーはイザベラ女王に何かが起きたと感じた様子で、
「イザベラ、何か言いたいのなら、言いなさいよ。」
イザベラ女王はサニーに何かを訴える目をしたが、しばらく間をおいて、
「共同連合国家条約を推進したいです。」
と早口言葉でサニーの目を見つめた。
「それは、女王として?」
またしばらくサニーの目を見つめ、
「女王と、、、、してです。」
「重い言葉ね。」

 鹿島は二人のやり取りを聞いていて、イザベラ女王は、国を共同管理とは名ばかりの併合乗っ取りではないかと、懸念していると感じた様子で、
「私は貴国を併合しようなどとは思っていません。ですので、官僚は地方のみで、駐留軍の指揮権はイザベラ殿となりますので、ご心配には及びません。」
イザベラ女王は鹿島の言葉に反応する様にようやく鹿島の目を見たが、すぐに目をそらし、
「良しなにお願いします。以後の交渉はホルヘ公爵宰相と話し合っていただきたいのです。」
「では、私たちはビクトリー王国都教会に向かいます。」
と、サニーは、此れ以上の話合いは無駄と感じた様子で立ち上がった。

 鹿島とサニーはイザベラ女王の執務室を出て中庭に向かい、互いに沈黙したままC-003号機に乗り込み操縦室に入り席に座った。
「イザベラに何があったのだ?」
「かなり落ち込んでいたわね。」
「かなりの貴族たちを綱紀粛正 (こうきしゅくせい)することになることに、心を痛めているのだろうか?」
「綱紀粛正?粛清かもよ。」
「乱れた規律を厳しくするのではなく、排除すると?」
「力さえあれば、一気に農地改革も奴隷解放も可能でしょう。」
「反対者を排除すると?」
「今が一番いい時期だわ。」
「確かに、外敵が攻めてきたのに、各領主たちは応じてこなかったとの、大義名分はあるな。」
「だけどね?イザベラの性格からしたら、そんなことで落ち込むなど、私は納得できないわ。」
「ほかの理由もあると?」
「心が折れたかも、、、、。」
といって遠くの空を見つめたまま黙り込んでしまった。

 鹿島はサニーがしばらく沈黙しだしたことで、
「C-003号。ジンギハーン帝国軍とアクコー王軍の状況を、スクリーンに出してくれ。」

 ナントン領地ミミズ街上空から映し出した戦場は、防護壁は無残にも破壊されていて、爆裂により多くの家屋から煙が上がっていた。
鹿島は無残にも崩れ落ちている防護壁を見て、
「戦闘開始時からの映像を見せてくれ。」
といって録画映像を見ていて、「あれは大砲か?」と驚愕した。

 ナントン領地ミミズ街攻防戦は、荷車に乗せた大筒から発射した爆裂弾丸によって始まった。
ミミズ街は、元ウソハキ国軍歩兵部隊二十万編成ジンギハーン帝国軍からの爆裂弾丸に抗するすべのない一方的な殺戮場となっていた
「大砲の構造はわかるか?」
「C-002号からの分析を表示します。」
鹿島は大砲と呼ぶべきか大筒と呼ぶべきかの判断はできないが、爆裂弾丸を発射するのに間違いなく火薬を使っていると感じた。
「火薬の種類はわかるか?」
「分析では、すでに黒煙火薬は普通に普及しているようで、黒煙火薬だと断定しています。」
「黒煙火薬が普通だと?」
「花火として、普通に存在しています。」
「爆裂弾丸は、黒煙火薬だけでは発火しないだろう?」
「花火弾と同じだろうと、C-002号は分析しています。」
「では、火縄銃もあるとゆうのか?」
「筒を作るだけなら可能でしょうが、筒元の閉鎖はねじ式にしないとすぐに破損するので、まだネジは製造できていないので、火縄銃は製造できないようです。」
「では大砲はなぜできた?」
「筒元の閉鎖構造は、未定です。」
ナントン領地ミミズ街攻防戦は、元ウソハキ国軍歩兵部隊二十万編成のジンギハーン帝国軍の突撃によってさらに‘とさつ場’となっていた。

 ミミズ街守備隊は千人もいないが、元ウソハキ国軍歩兵部隊二十万に対してはすでに戦う意欲をなくして逃げ惑っているだけである。
ミミズ街住民はナントン領主邸宅に逃げ込もうと屋敷前の防壁壁によじ登っているが、衛士兵によって阻止されていた。
鹿島は逃げ惑うミミズ街住民やミミズ街守備隊に関与する気が全くないので、ミミズ街映像は映画の場面としか感じなかったのか、すぐに興味をなくした。

「アクコー王軍の状況を知りたい。」
「ジンギハーン帝国騎馬隊十万はナントン領地深部深くまで攻め入っていて、間もなくアクコー王軍と交戦状態になるかと思います。」

 鹿島は両軍の動きからして、小一時間先だろうとの結論をだした様子で、興味なさそうにスクリーンから目をそらした。
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