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制覇行進
74 イザベ王女と近衛兵達の凱旋
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首都防衛近衛士兵達は立ち上がれる気力を実感し、鹿島達が目の前を通っていく姿を焼き付かるかの様に一挙一動見逃さないでいた。
そして目の前から過ぎていくと感動と感謝の気持ちを込めて、あるものは頭を下げ、あるものは敬礼を返して見送った。
「イザベラ王女様、首都防衛近衛士兵達を整列させて、イザベラ王女様が連れ帰ってくれ。」
と、ホルヘ公爵はイザベラ王女に厳しい顔を向けた。
「私が?叔父上様でなく。私がですか?」
「いま、首都防衛近衛士兵達が一番信頼できる指揮官は、イザベラ王女様だけでしょう。」
「女性の指揮官など聞いたことがない。」
「何事においても、最初はある。」
二人の周りにいる幹部将校たちも、二人の会話を期待を込めた表情で聞いていた。
ホルヘ公爵はさらに厳しい顔で周りを見回し、死の恐怖におびえている者がいない事を目の輝きで確認した。
沼の方から歓声が響くと、荷馬車に乗せたボーボアの頭が現れた。
二人の周りにいた幹部将校たちは荷馬車に乗せたボーボアに唖然としていたが、厳しい顔で其々に散らばりだすと、その外側にいた小隊長印羽を着けた兵たちもその後を追っていった。
首都防衛近衛士兵達は各幹部将校の後ろに整列しだし、小隊長指揮官の号令なしで整然と隊列を組んでイザベラ王女の前に並んだ。
イザベラ王女の後ろにはすでに荷馬車に乗せたボーボアが置いてあり、イザベラ王女の正面に位置していた隊列がボーボアめがけて駆けだした。
駆け出た兵たちはイザベラ王女をボーボアの頭上に導こうと、組体操真似して人垣階段を造りだした。
イザベラ王女はホルヘ公爵に背中を押されて、大惨事の終結宣言は自分がやらなければいけないと判断した。
人垣階段を上り、ボーボアの頭上に立ち上がると大きな歓声が起きた。
イザベラ王女は大きな歓声に応えようと、三千人の首都防衛近衛士兵達一人一人と目を合わせるように見回した。
目が合ったと感じた兵たちの間から、なお一層の歓声が順次上がりだした。
イザベラ王女が直立姿勢で空を見上げると、鳥のさえずりが聞こえるほどに、歓声はぴたりと止んで静寂が訪れた。
「この足で踏んでいる仲間の仇の首を落としたのは私だが、仲間の犠牲とみんなの抵抗で弱っていたから、打ち取ることができたのだ!みんなはボーボアと対決して勝ったのだ!誇りを持て!」
大きな歓声が響いた。
イザベラ王女が両手を差し出すと、再び静寂が訪れた。
「悲しくも、犠牲者となった仲間に生かされた感謝と共に、彼らの冥福を祈り、さらにチンジュ女神様と妖精様たちに、犠牲者の無念を癒していただきたいとお願いしよう。」
といって片膝をついて両手を合わせた。
三千人の首都防衛近衛士兵達もイザベラ王女に倣い、全員が片膝ついて祈った。
そして、「チンジュ女神様に感謝します。」との合唱が響き渡った時に、イザベラ王女自身とホルヘ公爵が驚いた。
イザベラ王女が立ち上がると、三度の静寂が訪れた。
「我々は勝ったぞう!」
とイザベラ王女が拳を突き上げると、全員もこぶしを突き上げて勝ちどき声を挙げた。
ホルヘ公爵はイザベラ王女の拳を見つめながら、
「一歩前進したな。」と、満足感を顔に出していた。
イザベラ王女はボーボアの首から降りて馬に騎乗すると、
「首都に凱旋するぞ!」と言ってこぶしを再び上げた。
三千人の首都防衛近衛士兵達もそれに応え、整然と隊列を組んでイザベラ王女についてきた。
イザベラ王女たちが防護壁門に差し掛かると、顔中包帯で覆った陣羽織男たちが駆け寄って来た中に片腕となったエンテコもいた。
顔中包帯で覆った陣羽織男たちは、先頭からくるイザベラ王女とその後ろにいるホルヘ公爵を避けるように、出入口の端側を通り抜けて馬上にいる二人の後ろに飛び出た。
「皆無事でよかった!俺がこれから指揮を執る。敵は聖騎士を名乗る無頼漢どもだ!」
と、エンテコは残った片腕の手を挙げた。
陣羽織男たちは意気揚々と首都防衛近衛士兵達の先頭を歩きだすと、隊列の進む歩幅が小さくなりだした。
意気揚々と歩く陣羽織男たちは、後ろから付いて来ている兵たちとの間隔が開きだしてきた。
兵達は同じ歩調の足音でついてくるが、陣羽織男たちは足音が遠ざかりだすのに気づいて振り返ると、後ろを向いた顔面に石つぶてをもろに受けた。
陣羽織男たちの頭上から、雨あられと石がれきが降ってきた。
陣羽織男たちは頭に石の襲撃を受けて、ようやっと状況を飲み込めた様子で、頭から血を流し、顔は膨れ上がった状態で一目散にイザベラ王女たちを追い抜いていった。
陣羽織男たちが走って行く先々では、顔中血だらけの集団がせまってくる恐怖からか、女性の悲鳴はコダマし合っているかのように連続していた。
そして目の前から過ぎていくと感動と感謝の気持ちを込めて、あるものは頭を下げ、あるものは敬礼を返して見送った。
「イザベラ王女様、首都防衛近衛士兵達を整列させて、イザベラ王女様が連れ帰ってくれ。」
と、ホルヘ公爵はイザベラ王女に厳しい顔を向けた。
「私が?叔父上様でなく。私がですか?」
「いま、首都防衛近衛士兵達が一番信頼できる指揮官は、イザベラ王女様だけでしょう。」
「女性の指揮官など聞いたことがない。」
「何事においても、最初はある。」
二人の周りにいる幹部将校たちも、二人の会話を期待を込めた表情で聞いていた。
ホルヘ公爵はさらに厳しい顔で周りを見回し、死の恐怖におびえている者がいない事を目の輝きで確認した。
沼の方から歓声が響くと、荷馬車に乗せたボーボアの頭が現れた。
二人の周りにいた幹部将校たちは荷馬車に乗せたボーボアに唖然としていたが、厳しい顔で其々に散らばりだすと、その外側にいた小隊長印羽を着けた兵たちもその後を追っていった。
首都防衛近衛士兵達は各幹部将校の後ろに整列しだし、小隊長指揮官の号令なしで整然と隊列を組んでイザベラ王女の前に並んだ。
イザベラ王女の後ろにはすでに荷馬車に乗せたボーボアが置いてあり、イザベラ王女の正面に位置していた隊列がボーボアめがけて駆けだした。
駆け出た兵たちはイザベラ王女をボーボアの頭上に導こうと、組体操真似して人垣階段を造りだした。
イザベラ王女はホルヘ公爵に背中を押されて、大惨事の終結宣言は自分がやらなければいけないと判断した。
人垣階段を上り、ボーボアの頭上に立ち上がると大きな歓声が起きた。
イザベラ王女は大きな歓声に応えようと、三千人の首都防衛近衛士兵達一人一人と目を合わせるように見回した。
目が合ったと感じた兵たちの間から、なお一層の歓声が順次上がりだした。
イザベラ王女が直立姿勢で空を見上げると、鳥のさえずりが聞こえるほどに、歓声はぴたりと止んで静寂が訪れた。
「この足で踏んでいる仲間の仇の首を落としたのは私だが、仲間の犠牲とみんなの抵抗で弱っていたから、打ち取ることができたのだ!みんなはボーボアと対決して勝ったのだ!誇りを持て!」
大きな歓声が響いた。
イザベラ王女が両手を差し出すと、再び静寂が訪れた。
「悲しくも、犠牲者となった仲間に生かされた感謝と共に、彼らの冥福を祈り、さらにチンジュ女神様と妖精様たちに、犠牲者の無念を癒していただきたいとお願いしよう。」
といって片膝をついて両手を合わせた。
三千人の首都防衛近衛士兵達もイザベラ王女に倣い、全員が片膝ついて祈った。
そして、「チンジュ女神様に感謝します。」との合唱が響き渡った時に、イザベラ王女自身とホルヘ公爵が驚いた。
イザベラ王女が立ち上がると、三度の静寂が訪れた。
「我々は勝ったぞう!」
とイザベラ王女が拳を突き上げると、全員もこぶしを突き上げて勝ちどき声を挙げた。
ホルヘ公爵はイザベラ王女の拳を見つめながら、
「一歩前進したな。」と、満足感を顔に出していた。
イザベラ王女はボーボアの首から降りて馬に騎乗すると、
「首都に凱旋するぞ!」と言ってこぶしを再び上げた。
三千人の首都防衛近衛士兵達もそれに応え、整然と隊列を組んでイザベラ王女についてきた。
イザベラ王女たちが防護壁門に差し掛かると、顔中包帯で覆った陣羽織男たちが駆け寄って来た中に片腕となったエンテコもいた。
顔中包帯で覆った陣羽織男たちは、先頭からくるイザベラ王女とその後ろにいるホルヘ公爵を避けるように、出入口の端側を通り抜けて馬上にいる二人の後ろに飛び出た。
「皆無事でよかった!俺がこれから指揮を執る。敵は聖騎士を名乗る無頼漢どもだ!」
と、エンテコは残った片腕の手を挙げた。
陣羽織男たちは意気揚々と首都防衛近衛士兵達の先頭を歩きだすと、隊列の進む歩幅が小さくなりだした。
意気揚々と歩く陣羽織男たちは、後ろから付いて来ている兵たちとの間隔が開きだしてきた。
兵達は同じ歩調の足音でついてくるが、陣羽織男たちは足音が遠ざかりだすのに気づいて振り返ると、後ろを向いた顔面に石つぶてをもろに受けた。
陣羽織男たちの頭上から、雨あられと石がれきが降ってきた。
陣羽織男たちは頭に石の襲撃を受けて、ようやっと状況を飲み込めた様子で、頭から血を流し、顔は膨れ上がった状態で一目散にイザベラ王女たちを追い抜いていった。
陣羽織男たちが走って行く先々では、顔中血だらけの集団がせまってくる恐怖からか、女性の悲鳴はコダマし合っているかのように連続していた。
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