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国興し
54 ヒカリ王女の親衛隊
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鹿島はマリーの案内で客室と思える部屋に案内されると、双子の姉妹はすでに優雅にお茶を飲んでいるサニーのもとへ駆け出した。
以前のサニーには優雅などの言葉が似合わなかったが、既に翅を服の柄に戻している姿には気品さえも感じられた。。
部屋の中央辺りにテ―ブルが置かれいて、ソファーの真っ白いカバー布は、洗い立ての清潔な布が敷かれていた。
サニーの前テーブル側ソファーには誰も着席していないが、ソファーの背もたれから一歩下がった後ろには、洗い立ての清潔な地味服をまとったミドル世代の男と、最初にひざまずいた衛士兵が立っていて、その後にマリーによく似た三十路後半の女性が立っていた。
鹿島はマリーの案内で、両脇に双子の頭をなでているサニーのいるソファーにむかった。
鹿島がソファーに向かうと、鹿島の席側にいた女の子は慌ててサニーの膝を乗り越えていき、双子同士は並ぶ形になった。
ヒカリ王女は当然のように、鹿島達の向かいに一人座った。
マリーは兄と三十路後半と思えるの女性との会話を終えると、サニに近づき、
「サニー様、この子達をお風呂で洗い、食事を与えたいと思いますので、私の母にお預けして頂きたいのですが?」
サニーは双子に向くと、
「おなた達、お腹空いている?」
「うん、私もハニーネも、お腹空いている。」
「うん、私もサーシャ―も、お腹空いている。」
と、互いにハモッた
男二人の影に控えていたサニーの母親はにこやかな顔をして、
「お嬢ちゃん。身体を綺麗にして、その後ご馳走が待っているから、先に綺麗になろうね。」
と言って、ご機嫌になった双子の手を引いて部屋から出ていった。
マリーは子供たちとドアまで一緒に行くと、子供たちを見送った後ドアに鍵をかけた。
マリーが当然のように鹿島の横に座ると、それを合図かのように男二人は一歩前に踏み出し、ヒカリ王女の後ろに並んだ。
「紹介します。こちら様がチンジュ女神様の眷属であり、鎮守聖国王であらせられるタロー王陛下とその奥様で、大精霊サニー様です。
王女様の後ろにひかえているのが私の父親で、グレイドル.ゴールドルル伯爵です。その横にいるのが、兄であり、衛士兵隊長リルドラ. ゴールドルルです。」
「グレイドルとお呼びくださると、光栄です。」
「わたしも、リルドラと呼んでください。」
「私もタローでいいです。」
「私もサニーでいいわ。」
「まさか、鎮守聖陛下と大精霊猊下の名称で、呼ばせてください。」
と、ゴールドル伯爵は一歩下がって頭を下げた。
「堅い苦しい呼び名ね。」
「この身は既に、ささげた人がいますので、けじめの上から、お願いします。」
「だな。」
と鹿島はほほを膨らましたサニーを諭すように、ゴールドル伯爵に同意した。
マリーは挨拶の脱線を防ぐためか、みんなの関心事の核心に入った。
「無償で提供してくれるボーボアの鱗甲冑と武器の数々を贈られた理由を、お父様は理解できないと言っていましたが、チンジュ女神様の希望は、ゴールドル伯爵領主以下全員が、ヒカリ王女様の親衛隊になっていただきたいとの事です。」
「国に反旗を翻せと?」
「今はまだ、準備だけの段階ですが、時期が来たなら、ヒカリ王女様を守ってほしいとのことです。」
「ちょっと待って!私何も聞いていない。」
と、ヒカリ王女はうろたえた。
「だから、時期が来た場合の予防です。」
「時期とやらは、いつ来るの?」
「ヒカリ王女様の親衛隊の件は、この場以外で別に公表する必要は無い。だが、チンジュ女神様が、ゴールドル伯爵領は備えろと言っているのです。」
マリーは、親衛隊の件とゴールドル伯爵領が備える事は、ヒカリ王女に有無をも言わせない言い方をした。
親衛隊の件とゴールドル伯爵領が備えよとの事は、ゴールドル伯爵の顔を険しくした。
「この前、王宮の近衛兵を襲ったという、魔女に関係あるのか?」
と、ゴールドル伯爵は、備えよとの事は、現時点では王都での出来事しか思い至らなかった。
「第一王子が惨殺された事件ですか?」
「第一王子は、病気で死んだと聞いたが?」
「第一王子と近衛兵を殺傷したのは、チンジュ女神様です。彼等には、殺傷される原因があったのです。」
「それで、チンジュ女神様の保護下にある、王女様の身が危なくなったからと?」
と、ゴールドル伯爵は、ようやく納得のいく原因に思い至った。
「ヒカリ王女様の身を守るだけなら、鎮守聖国にいれば安全です。が、この領地を守るには、守る名目が必要になります。なぜ名目が必要になるかは、これからゆっくりと説明します。その過程で、タロー様の確約を欲しいのです。」
ゴールドル伯爵は、ヒカリ王女様の身を守るだけなら要らないと否定され、備えよとの理由が理解出来ない闇の中に又もや押し込まれた。
隣りに居る息子に助言を求める様に振り向くが、息子も怪訝な顔をしているだけである。
鹿島は、マリーが確約が欲しいと言っている理由は、ゴールドル伯爵領に名目でヒカリ王女を守れと言っているが、実際はゴールドル伯爵領に将来何かの事情で危機が迫ると、マリーは言いたい様子だと思えた。
「では、なぜ名目が必要になるのか、の説明を聞きたい。」
と兄のリルドラがソファーの背もたれから乗り出した。
「まず順次話します。質問はその後でしてください。
一つ、鎮守聖国からの農作物と加工食料品、兎種族の製造した商品、妖精や精霊様の製造した薬の中継地点を、ここゴールドル領都とする。
仕入価格は、鎮守聖国内の流通価格から二割引き値段にする。
中継地点としての仕入先はゴールドル家になり、販売価格は自由である。
二つ、ゴールドル領都にチンジュ女神教会を建て、教会司祭長にはヒカリ王女様がなり、私は聖騎士団支部長に赴任する。
三つ、ゴールドル領は直ちに農地改革と農奴解放を行い、農奴や小作人に耕作地を無償で引き渡す。
四つ、奴隷の誘拐解放事件が起きても、関与しない事。
五つ、ゴールドル家の必要な資金は、鎮守聖国が無制限に貸し出す。
以上がチンジュ女神様の希望と援助です。」
と言ったマリーは厳しい目をして、父親であるグレイドル.ゴールドル伯爵に決断を求める様に睨んだ。
ゴールドル領主も娘であるマリーをにらみ返すが、心の中は複雑であった。
「鎮守聖国の品物は多種多様であり、全てが国中で必要としているものであると、商人ギルドから報告があった。ただ、かなり安いが運搬費用が高くつくとの、報告もなされている。」
「それはすでに解消しました。この領地と鎮守聖国神降臨街の間には、広い道路が舗装され開通していますし、安全です。後は国内の幹線道路を整備するだけです。近い将来、魔導列車が運行すると、大量の品物が一日で届きます。」
「ナントン領地を通らないで、、、樹海側からか?」
「ゴールドル領地側の樹海も、すでに開墾しました。」
「国境税は?」
「鎮守聖国は輸出するので、無税でしょうが、輸入税は父様の権限です。で、いいわよね、タロー様。」
突然声がかかった鹿島は慌てて、「鎮守聖国では、輸出税は存在しない。」と輸出税の名称を聞いたことがないので、確信なしに答えた。
「穀物が半値とは、本当か?」
「そうです。薬に至っては領内価格の十分の一ですし、ほかの商品も半値以下です。いや、もっと安いと思う。」
「ここが中継地点となれば、ゴールドル家に、莫大な利益を確保出来る。」
と、ゴールドル領主は満足そうに腕を組んだが、兄のリルドラは納得してない顔である。
「二つ目の、チンジュ女神教会建設と内容は可能であり、認めてもいいと俺は思うが、
三つ目の農奴解放は絶対無理だろうし、
四つ目の、事件に関与しないなど、衛士兵としては、悪計を看破しない訳にはいかないし、理由がどうあれ、見逃せない。」
「農奴解放をしなければ、いずれ耕作者はすべて鎮守聖国へ逃げていきます。それよりも、耕作者全てに働く意欲を持ってもらった方が、税収は上がります。いい例が鎮守聖国の耕作者達です。彼等の報酬は、頑張った分だけ、多くの報酬が返ってくると知っていますから、みんなが頑張っています。搾取されるだけでは、ただ食い扶持分だけしか働きません。」
「多くの地主からの反発がある。」
「農奴や小作人の数からしたら、微々なる数ですし、領主ならば、彼らの土地を、二束三文で買い上げきれるでしょうに。」
「それでも資金はいる。」
「五つ目を忘れたの?」
「その分も出すと?」
「もらうのではなく、借りるのでしょう。」
マリー達兄妹のやり取りを聞いていたゴールドル領主は、
「農奴も奴隷もいない鎮守聖国を、見てみたいな~。」
「是非に行きましょう。」
とマリーは飛び上がった。
「俺も行きたい。」
「二人同時は、無理でしょう。」
とマリーが男二人を見比べると、男同士は目から火花を放電し合っていた。
鹿島は三人の会話がずれだしたことで、
「マリー殿の親衛隊の件と、ゴールドル伯爵領は備えよ、との事は、どの様になるのでしょうか?」
との問いかけに、ゴールドル領主は意に介していない風と思える笑顔で、
「親衛隊の件は秘密協定として、ヒカリ王女様に、俺と息子が忠誠を誓う。備えよとの件は、確かにこの条件を一つでも承諾したら、多くの敵を作る。すべてを承諾したら、とてつもない周り中が敵だらけだ。」
「その敵から守ってくれるのが、タロー様です。」
「約束など、滅んだあとで知る結果だろう。」
「では、チンジュ女神様からの五つの提案は?」
「一番大事なことは、自分で守り切る自信だ。農地改革と農奴小作人解放がうまくいくなら、専業兵士を増やせるだろうし資金もある。だが、とてつもない周り中が敵だらけになると、その対抗者は帝国以外、いないだろう。」
と、完全に敵を作らないで、程々の儲けさえ有れば良いとの思いだけの様子である。
だが、マリーの思いは、第一王子が死んだことを知らされたときの不安は、第二皇子が王位を継いだ後のヒカリ王女の立場は、不利になることは確かであるとの想いであった。
そのための布石を、チンジュ女神様は備えろと言っているのだとの思いであった。
「父様も、兄様も、森まで付き合っていただきたい。」
「今すぐか?すでに昼食の時間は過ぎているぞ。」
「今すぐです。タロー様もサニー様も、そして、王女様も行きましょう。馬の用意をします。兄様手伝ってください。」
と言って部屋から出ていった。
マリーは良からぬ企みをしたと鹿島は感じた。
以前のサニーには優雅などの言葉が似合わなかったが、既に翅を服の柄に戻している姿には気品さえも感じられた。。
部屋の中央辺りにテ―ブルが置かれいて、ソファーの真っ白いカバー布は、洗い立ての清潔な布が敷かれていた。
サニーの前テーブル側ソファーには誰も着席していないが、ソファーの背もたれから一歩下がった後ろには、洗い立ての清潔な地味服をまとったミドル世代の男と、最初にひざまずいた衛士兵が立っていて、その後にマリーによく似た三十路後半の女性が立っていた。
鹿島はマリーの案内で、両脇に双子の頭をなでているサニーのいるソファーにむかった。
鹿島がソファーに向かうと、鹿島の席側にいた女の子は慌ててサニーの膝を乗り越えていき、双子同士は並ぶ形になった。
ヒカリ王女は当然のように、鹿島達の向かいに一人座った。
マリーは兄と三十路後半と思えるの女性との会話を終えると、サニに近づき、
「サニー様、この子達をお風呂で洗い、食事を与えたいと思いますので、私の母にお預けして頂きたいのですが?」
サニーは双子に向くと、
「おなた達、お腹空いている?」
「うん、私もハニーネも、お腹空いている。」
「うん、私もサーシャ―も、お腹空いている。」
と、互いにハモッた
男二人の影に控えていたサニーの母親はにこやかな顔をして、
「お嬢ちゃん。身体を綺麗にして、その後ご馳走が待っているから、先に綺麗になろうね。」
と言って、ご機嫌になった双子の手を引いて部屋から出ていった。
マリーは子供たちとドアまで一緒に行くと、子供たちを見送った後ドアに鍵をかけた。
マリーが当然のように鹿島の横に座ると、それを合図かのように男二人は一歩前に踏み出し、ヒカリ王女の後ろに並んだ。
「紹介します。こちら様がチンジュ女神様の眷属であり、鎮守聖国王であらせられるタロー王陛下とその奥様で、大精霊サニー様です。
王女様の後ろにひかえているのが私の父親で、グレイドル.ゴールドルル伯爵です。その横にいるのが、兄であり、衛士兵隊長リルドラ. ゴールドルルです。」
「グレイドルとお呼びくださると、光栄です。」
「わたしも、リルドラと呼んでください。」
「私もタローでいいです。」
「私もサニーでいいわ。」
「まさか、鎮守聖陛下と大精霊猊下の名称で、呼ばせてください。」
と、ゴールドル伯爵は一歩下がって頭を下げた。
「堅い苦しい呼び名ね。」
「この身は既に、ささげた人がいますので、けじめの上から、お願いします。」
「だな。」
と鹿島はほほを膨らましたサニーを諭すように、ゴールドル伯爵に同意した。
マリーは挨拶の脱線を防ぐためか、みんなの関心事の核心に入った。
「無償で提供してくれるボーボアの鱗甲冑と武器の数々を贈られた理由を、お父様は理解できないと言っていましたが、チンジュ女神様の希望は、ゴールドル伯爵領主以下全員が、ヒカリ王女様の親衛隊になっていただきたいとの事です。」
「国に反旗を翻せと?」
「今はまだ、準備だけの段階ですが、時期が来たなら、ヒカリ王女様を守ってほしいとのことです。」
「ちょっと待って!私何も聞いていない。」
と、ヒカリ王女はうろたえた。
「だから、時期が来た場合の予防です。」
「時期とやらは、いつ来るの?」
「ヒカリ王女様の親衛隊の件は、この場以外で別に公表する必要は無い。だが、チンジュ女神様が、ゴールドル伯爵領は備えろと言っているのです。」
マリーは、親衛隊の件とゴールドル伯爵領が備える事は、ヒカリ王女に有無をも言わせない言い方をした。
親衛隊の件とゴールドル伯爵領が備えよとの事は、ゴールドル伯爵の顔を険しくした。
「この前、王宮の近衛兵を襲ったという、魔女に関係あるのか?」
と、ゴールドル伯爵は、備えよとの事は、現時点では王都での出来事しか思い至らなかった。
「第一王子が惨殺された事件ですか?」
「第一王子は、病気で死んだと聞いたが?」
「第一王子と近衛兵を殺傷したのは、チンジュ女神様です。彼等には、殺傷される原因があったのです。」
「それで、チンジュ女神様の保護下にある、王女様の身が危なくなったからと?」
と、ゴールドル伯爵は、ようやく納得のいく原因に思い至った。
「ヒカリ王女様の身を守るだけなら、鎮守聖国にいれば安全です。が、この領地を守るには、守る名目が必要になります。なぜ名目が必要になるかは、これからゆっくりと説明します。その過程で、タロー様の確約を欲しいのです。」
ゴールドル伯爵は、ヒカリ王女様の身を守るだけなら要らないと否定され、備えよとの理由が理解出来ない闇の中に又もや押し込まれた。
隣りに居る息子に助言を求める様に振り向くが、息子も怪訝な顔をしているだけである。
鹿島は、マリーが確約が欲しいと言っている理由は、ゴールドル伯爵領に名目でヒカリ王女を守れと言っているが、実際はゴールドル伯爵領に将来何かの事情で危機が迫ると、マリーは言いたい様子だと思えた。
「では、なぜ名目が必要になるのか、の説明を聞きたい。」
と兄のリルドラがソファーの背もたれから乗り出した。
「まず順次話します。質問はその後でしてください。
一つ、鎮守聖国からの農作物と加工食料品、兎種族の製造した商品、妖精や精霊様の製造した薬の中継地点を、ここゴールドル領都とする。
仕入価格は、鎮守聖国内の流通価格から二割引き値段にする。
中継地点としての仕入先はゴールドル家になり、販売価格は自由である。
二つ、ゴールドル領都にチンジュ女神教会を建て、教会司祭長にはヒカリ王女様がなり、私は聖騎士団支部長に赴任する。
三つ、ゴールドル領は直ちに農地改革と農奴解放を行い、農奴や小作人に耕作地を無償で引き渡す。
四つ、奴隷の誘拐解放事件が起きても、関与しない事。
五つ、ゴールドル家の必要な資金は、鎮守聖国が無制限に貸し出す。
以上がチンジュ女神様の希望と援助です。」
と言ったマリーは厳しい目をして、父親であるグレイドル.ゴールドル伯爵に決断を求める様に睨んだ。
ゴールドル領主も娘であるマリーをにらみ返すが、心の中は複雑であった。
「鎮守聖国の品物は多種多様であり、全てが国中で必要としているものであると、商人ギルドから報告があった。ただ、かなり安いが運搬費用が高くつくとの、報告もなされている。」
「それはすでに解消しました。この領地と鎮守聖国神降臨街の間には、広い道路が舗装され開通していますし、安全です。後は国内の幹線道路を整備するだけです。近い将来、魔導列車が運行すると、大量の品物が一日で届きます。」
「ナントン領地を通らないで、、、樹海側からか?」
「ゴールドル領地側の樹海も、すでに開墾しました。」
「国境税は?」
「鎮守聖国は輸出するので、無税でしょうが、輸入税は父様の権限です。で、いいわよね、タロー様。」
突然声がかかった鹿島は慌てて、「鎮守聖国では、輸出税は存在しない。」と輸出税の名称を聞いたことがないので、確信なしに答えた。
「穀物が半値とは、本当か?」
「そうです。薬に至っては領内価格の十分の一ですし、ほかの商品も半値以下です。いや、もっと安いと思う。」
「ここが中継地点となれば、ゴールドル家に、莫大な利益を確保出来る。」
と、ゴールドル領主は満足そうに腕を組んだが、兄のリルドラは納得してない顔である。
「二つ目の、チンジュ女神教会建設と内容は可能であり、認めてもいいと俺は思うが、
三つ目の農奴解放は絶対無理だろうし、
四つ目の、事件に関与しないなど、衛士兵としては、悪計を看破しない訳にはいかないし、理由がどうあれ、見逃せない。」
「農奴解放をしなければ、いずれ耕作者はすべて鎮守聖国へ逃げていきます。それよりも、耕作者全てに働く意欲を持ってもらった方が、税収は上がります。いい例が鎮守聖国の耕作者達です。彼等の報酬は、頑張った分だけ、多くの報酬が返ってくると知っていますから、みんなが頑張っています。搾取されるだけでは、ただ食い扶持分だけしか働きません。」
「多くの地主からの反発がある。」
「農奴や小作人の数からしたら、微々なる数ですし、領主ならば、彼らの土地を、二束三文で買い上げきれるでしょうに。」
「それでも資金はいる。」
「五つ目を忘れたの?」
「その分も出すと?」
「もらうのではなく、借りるのでしょう。」
マリー達兄妹のやり取りを聞いていたゴールドル領主は、
「農奴も奴隷もいない鎮守聖国を、見てみたいな~。」
「是非に行きましょう。」
とマリーは飛び上がった。
「俺も行きたい。」
「二人同時は、無理でしょう。」
とマリーが男二人を見比べると、男同士は目から火花を放電し合っていた。
鹿島は三人の会話がずれだしたことで、
「マリー殿の親衛隊の件と、ゴールドル伯爵領は備えよ、との事は、どの様になるのでしょうか?」
との問いかけに、ゴールドル領主は意に介していない風と思える笑顔で、
「親衛隊の件は秘密協定として、ヒカリ王女様に、俺と息子が忠誠を誓う。備えよとの件は、確かにこの条件を一つでも承諾したら、多くの敵を作る。すべてを承諾したら、とてつもない周り中が敵だらけだ。」
「その敵から守ってくれるのが、タロー様です。」
「約束など、滅んだあとで知る結果だろう。」
「では、チンジュ女神様からの五つの提案は?」
「一番大事なことは、自分で守り切る自信だ。農地改革と農奴小作人解放がうまくいくなら、専業兵士を増やせるだろうし資金もある。だが、とてつもない周り中が敵だらけになると、その対抗者は帝国以外、いないだろう。」
と、完全に敵を作らないで、程々の儲けさえ有れば良いとの思いだけの様子である。
だが、マリーの思いは、第一王子が死んだことを知らされたときの不安は、第二皇子が王位を継いだ後のヒカリ王女の立場は、不利になることは確かであるとの想いであった。
そのための布石を、チンジュ女神様は備えろと言っているのだとの思いであった。
「父様も、兄様も、森まで付き合っていただきたい。」
「今すぐか?すでに昼食の時間は過ぎているぞ。」
「今すぐです。タロー様もサニー様も、そして、王女様も行きましょう。馬の用意をします。兄様手伝ってください。」
と言って部屋から出ていった。
マリーは良からぬ企みをしたと鹿島は感じた。
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