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国興し

52 ペット

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 夕日になって薄暗くなりだした沼地の樹海では、鹿島は足場に足を取られながらも、何とかマングローブに似た根を頼りに移動しながら、逃げるボーボアを追っていた。
「こいつちょこまかと、逃げやがるな!」
「タロー!そっちじゃないよ!こっちに頭を持ち上げて出たよ!」
「今行く!逃がすな!」
「あ~!また潜ったよ!」
「こちこっち!」
と兵隊人形妖精達も騒ぎ出した。
「ボーボアは凶暴なのに、何でこいつは、戦わないで逃げ回るのだ!」
「兵隊妖精!取り囲め!タローは静かにしていて!」
「どうするのだ?」
「憑依する!」
と叫んでいるサニーは、水面下に隠れたボーボアの居た辺りを飛翔しだした。

 マングローブに似た樹木の間に静寂が訪れた。
サニーは水面の動きを見つめながら移動している。

 ボーボアは息継ぎしようと水面から顔を出した。
ボーボアの鼻先はサニーの直前であったが、ボーボアは首を伸ばしたまま微動だにせず、サニーをにらんでいた。
「サニー!逃げろ!」
と鹿島はマングローブに似た樹木の根を蹴りながら、サニのもとへ走り込んでいくとサニーが消えた。
鹿島は一瞬寒気が走ったが、ボーボア口元は微動だにしていないことに気づいた。
「憑依したのか?」
「そうよ。」
と、念力通信が返ってきた。

 ボーボアは首を三百六十度に何度も首を回しながら、飛翔している兵隊人形妖精たちを見回していたが、ボーボアの頭の上にサニーが現れると、又もや微動だにしない停止状態になった。
「タロー。この子は、連れて帰るわ。」
「え~。どういう事?」
「この子はまだ子供で、私たちの狩りを何度も見ていたらしいの。だから、戦う気はないらしい。だけどね、尾刃やうろこは提供してくれるらしいわ。」
「提供?」
「脱皮もするが、尾刃も鱗も生え替わるらしいのよ。」
「で、飼育すると?」
「ううん、放し飼いのペットよ。」
「危険だろ。」
「完全におびえているから、大丈夫でしょう。」
「大丈夫?」
「こんなに怖がってしまうと、本能的に逆らわないわ。」
「ま、サニーが決めたなら、いいでしょう。」
と鹿島は、一抹の不安はあるがサニーに同意した。
「で、どこに連れていく?」
「妖精の森でしょう。」
「え~、え~、え~、え~。」
との、兵隊人形妖精の合唱が沼地に響き渡った。
「だけど!妖精や人種には攻撃しないと約束したのよ!」
「信じるの!信じるの!信じるの!」
との、合唱がまた起きた。
「その代わり、軍隊魔蜂とその住処は、彼女の好物らしいので、魔物や魔獣の狩りは許可したわ。」
「え~、軍隊魔蜂とその住処を好物だと。敵の敵は、味方じゃん!」
と、一人の兵隊人形妖精が、ボーボアの移動に何故か賛同すると、全員が頷き合っていた。
兵隊人形妖精たちとボーボアはいつの間にか友好関係になった様子で、サニーと兵隊人形妖精たちに鹿島はボーボアの胴体に乗って、真っ暗になった樹海を移動した。

 翌朝、爆撃機はサニーのペットになったボーボアを吊り下げて、妖精森樹海に向かった。
後日、ペットのボーボアの活躍は住様しく、妖精森樹海に有る軍隊魔蜂の住処を次々と壊滅していくと、妖精たちすべてからペット位置を確保し、奇妙な連れ添いで森樹海の中を移動する様になっていた。
妖精慣れしたペットのボーボアは、時々現れる鹿島を見ると、大木の陰に隠れるが、頭隠して尾っぽは隠せきれないでいた。
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