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国興し
45 鎮守様の思案
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鎮守様は豪華な部屋でくつろいでいると、ドアをノックする音に気づいた。
「タイガー殿?いいわよ。」
「お邪魔します。」
と言ってドアが開くと、大きな革袋を下げたタイガーが入ってきた。
「あるところには、あるのだな。」
と言って床に金貨の摩擦音を響かせた。
「これだけの金貨があれば、神降臨街は潤うでしょう。」
「これとあれは、あなたが管理しなさい。」
と言って部屋の隅に置いてある革袋を指さした。
「領主の野郎、払ったのだ。だが、なんで俺が管理するのだ?」
「明日の朝、王都に向かいます。王都にチンジュ女神教を建てたいと申請する予定だが、王の許可は無理でしょう。ですので。」
と言って鎮守様はタイガーを見つめた。
「ですので、とは、何事でしょうか?」
と、期待のまなざしをタイガーは返した。
「あなたを、聖騎士団の一部隊を指揮してほしい。」
「聖騎士団?女神様の騎士団ですか?」
「そうです。私の騎士団です。」
「聖騎士団の一部隊とは?他にも騎士団が存在するのですか?」
「これから、いろんな場所に教会を建てて、そこで騎士団を編成する予定です。」
「騎士団長は誰でしょうか?」
「私の半身、タローよ。」
「妖精国王ですか?」
「そうよ。騎士団はタローの指揮下に入る予定よ。不服?」
「いいえ、不服はないが、出来れば、忠誠の誓いは女神様にしたいです。」
「だから、タローと私は一心同体だと理解してほしい。」
「わかりました。お二人に忠誠を誓い、これより女神様の下僕となります。」
といって床に片膝をついた。
鎮守様は一人専用のソファーにかけていたが、向かいの三人用ソファーにタイガーを座らせて、
「これから指示します。
一つ、隣りのビクトリー王国の都に、チンジュ女神教の建物を確保しなさい。
二つ、聖騎士を千名集めて、戦える騎士団を編成しなさい。
三つ、情報を取得できる者たちの組織を作りなさい。
以上です。出来ますか?」
「莫大な資金を要しますが?」
「金鉱山や銀鉱山に銅鉱山も有るから、資金は十分よ。」
「壮大すぎて、頭の回転が追い付かない。」
「タイガー殿なら、出来ます。先ず、出来る事から準備してください。」
「わかりました。精一杯がんばります。では、今出来る事は、明日の準備です。」
と言って、両手に革袋を下げて部屋から出ていった。
警護のためか、ドアの前には完治した衛士兵が立っていた。
タイガーが軽く衛士兵の肩をたたくと、幼い衛士兵は、
「領主様に警備を申し出ると、怪訝な顔をされたが、女神様の警護は任せてください。」
と、満面笑顔でタイガーにうなずいた。
タイガーは少年衛士兵の顔を覗き込み、完全に女神様へ心酔していると読み取った。
「お前の名前は?」
「ヨハンです。ただのヨハンです。」
「ま、二つ名は、よい意味と、悪い意味があるからな。」
と微笑んでその場を去り、あてがわれた隣りの部屋に入りベッドで横になった。
タイガーは「個人の尊厳。」とポツリと呟いて、これから自分の人生が大きく変わることを確認しながら、これまでの生活を振り返った。
生誕地は、これから赴任予定先ビクトリー王国の隣国シャジャーイ国であった。
素性を尋ねられると、「小さな街地を持った騎士貴族の三男坊だ。物心付いた時にはすでに一族は離散没落していた。」との肩書で世の中を渡ってきた。
生活の為に十四歳のころから、いつの間にか剣技の腕を活かせる傭兵家業に入っていた。
しがらみを嫌いいつも単独行動であったが、戦闘時にはいろんな傭兵団の助っ人稼業に付いた。
お陰でいろんな集団から色んな事を見聞きし、生きる剣技と義理人情をも学んだ。
「個人の尊厳も悪くない。」
と呟くのは理不尽を嫌い、これまでの人道的な行動の背景にはかすかに残っていた騎士道の教えからであった。
「もしも夢がかなうのなら、仇を、、、、。無理な夢だ。」
と呟いて掛布を頭からかぶった。
鹿島は鎮守様と念力通信が繋がり、互いの状況を伝えあったが、何故か鎮守様は魔石のことを含め、すべてをお見通しであったことは、C-002号との繋がりだろうと推測した。
念力通信での最初の伝言は、パトラへの預かり貨幣十金貨と、もしも賄を辞めたいと言ってきたなら、餞別十金貨を渡してほしいとのことであった。
タローが最も驚いたのは、鎮守様の知らせは新しく騎士団を編成するので、団長に就任することと、いろんな場所に鎮守社を建設することも知らせてきた。
「鎮守社とは、こちらの世界で教会と受け取ってよいのでしょうか?」
「そうですが、造りは神社風にしたいな~。」
「コンピューターに指示しておいてください。図面は預かっていきます。」
鹿島への指示はすでに決まった兎種族の工場への移住と手伝いに、ボーボアの鱗を二万枚集めろとの事であった。
「二万枚?何頭分だ?」
「軽く二十頭ね。」
と、サニーは鹿島の肩に抱きついて答えた。
「五日後に、ビクトリー王宮の庭に迎えに来て。」
と鎮守様は追加注文をした。
「了解です。それまでに、ボーボアを何頭か狩っておきます。」
「お願いね。」
と機嫌の良い弾んだ声の先では、ステップ足だろうと鹿島は想像した。
「タイガー殿?いいわよ。」
「お邪魔します。」
と言ってドアが開くと、大きな革袋を下げたタイガーが入ってきた。
「あるところには、あるのだな。」
と言って床に金貨の摩擦音を響かせた。
「これだけの金貨があれば、神降臨街は潤うでしょう。」
「これとあれは、あなたが管理しなさい。」
と言って部屋の隅に置いてある革袋を指さした。
「領主の野郎、払ったのだ。だが、なんで俺が管理するのだ?」
「明日の朝、王都に向かいます。王都にチンジュ女神教を建てたいと申請する予定だが、王の許可は無理でしょう。ですので。」
と言って鎮守様はタイガーを見つめた。
「ですので、とは、何事でしょうか?」
と、期待のまなざしをタイガーは返した。
「あなたを、聖騎士団の一部隊を指揮してほしい。」
「聖騎士団?女神様の騎士団ですか?」
「そうです。私の騎士団です。」
「聖騎士団の一部隊とは?他にも騎士団が存在するのですか?」
「これから、いろんな場所に教会を建てて、そこで騎士団を編成する予定です。」
「騎士団長は誰でしょうか?」
「私の半身、タローよ。」
「妖精国王ですか?」
「そうよ。騎士団はタローの指揮下に入る予定よ。不服?」
「いいえ、不服はないが、出来れば、忠誠の誓いは女神様にしたいです。」
「だから、タローと私は一心同体だと理解してほしい。」
「わかりました。お二人に忠誠を誓い、これより女神様の下僕となります。」
といって床に片膝をついた。
鎮守様は一人専用のソファーにかけていたが、向かいの三人用ソファーにタイガーを座らせて、
「これから指示します。
一つ、隣りのビクトリー王国の都に、チンジュ女神教の建物を確保しなさい。
二つ、聖騎士を千名集めて、戦える騎士団を編成しなさい。
三つ、情報を取得できる者たちの組織を作りなさい。
以上です。出来ますか?」
「莫大な資金を要しますが?」
「金鉱山や銀鉱山に銅鉱山も有るから、資金は十分よ。」
「壮大すぎて、頭の回転が追い付かない。」
「タイガー殿なら、出来ます。先ず、出来る事から準備してください。」
「わかりました。精一杯がんばります。では、今出来る事は、明日の準備です。」
と言って、両手に革袋を下げて部屋から出ていった。
警護のためか、ドアの前には完治した衛士兵が立っていた。
タイガーが軽く衛士兵の肩をたたくと、幼い衛士兵は、
「領主様に警備を申し出ると、怪訝な顔をされたが、女神様の警護は任せてください。」
と、満面笑顔でタイガーにうなずいた。
タイガーは少年衛士兵の顔を覗き込み、完全に女神様へ心酔していると読み取った。
「お前の名前は?」
「ヨハンです。ただのヨハンです。」
「ま、二つ名は、よい意味と、悪い意味があるからな。」
と微笑んでその場を去り、あてがわれた隣りの部屋に入りベッドで横になった。
タイガーは「個人の尊厳。」とポツリと呟いて、これから自分の人生が大きく変わることを確認しながら、これまでの生活を振り返った。
生誕地は、これから赴任予定先ビクトリー王国の隣国シャジャーイ国であった。
素性を尋ねられると、「小さな街地を持った騎士貴族の三男坊だ。物心付いた時にはすでに一族は離散没落していた。」との肩書で世の中を渡ってきた。
生活の為に十四歳のころから、いつの間にか剣技の腕を活かせる傭兵家業に入っていた。
しがらみを嫌いいつも単独行動であったが、戦闘時にはいろんな傭兵団の助っ人稼業に付いた。
お陰でいろんな集団から色んな事を見聞きし、生きる剣技と義理人情をも学んだ。
「個人の尊厳も悪くない。」
と呟くのは理不尽を嫌い、これまでの人道的な行動の背景にはかすかに残っていた騎士道の教えからであった。
「もしも夢がかなうのなら、仇を、、、、。無理な夢だ。」
と呟いて掛布を頭からかぶった。
鹿島は鎮守様と念力通信が繋がり、互いの状況を伝えあったが、何故か鎮守様は魔石のことを含め、すべてをお見通しであったことは、C-002号との繋がりだろうと推測した。
念力通信での最初の伝言は、パトラへの預かり貨幣十金貨と、もしも賄を辞めたいと言ってきたなら、餞別十金貨を渡してほしいとのことであった。
タローが最も驚いたのは、鎮守様の知らせは新しく騎士団を編成するので、団長に就任することと、いろんな場所に鎮守社を建設することも知らせてきた。
「鎮守社とは、こちらの世界で教会と受け取ってよいのでしょうか?」
「そうですが、造りは神社風にしたいな~。」
「コンピューターに指示しておいてください。図面は預かっていきます。」
鹿島への指示はすでに決まった兎種族の工場への移住と手伝いに、ボーボアの鱗を二万枚集めろとの事であった。
「二万枚?何頭分だ?」
「軽く二十頭ね。」
と、サニーは鹿島の肩に抱きついて答えた。
「五日後に、ビクトリー王宮の庭に迎えに来て。」
と鎮守様は追加注文をした。
「了解です。それまでに、ボーボアを何頭か狩っておきます。」
「お願いね。」
と機嫌の良い弾んだ声の先では、ステップ足だろうと鹿島は想像した。
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