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国興し
37 誘拐
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三ヶ所の砦の業務が退屈になりだすにつれて、神降臨街の酒場は忙しくなりだしていた。
酒場の隅の席では、シーザーと体格のいい護衛男は場違いな感じで深くめにフードをかぶり、顔を隠すように席に座っていた。
二人は店一杯を貸切り状態で埋めているグループの、頭目らしき男の席に聞き耳をしていた。
「頭領、そろそろ限界ですぜ。」
ロビンは、配下の男の愚痴に思案顔しながら頷いた。
「そうだよ。フッドの兄貴の意見に、俺らも賛成だ。」
と、ほかの席で騒いでいた男も加わり、足元がおぼつかないながらも口はよく回っていた。
「月に一度の大銀貨では、毎日酒も飲めないし、ここには女郎屋もない。」
貸切り状態の二十人はいろんな不満を述べだした。
「それに、こんな弓まで手に入ったのだ。多少の討伐隊だって怖くはないし、奴らを逆襲殲滅できるぜ。」
とフッドはベアボウを掲げた。
シーザーと体格のいい護衛男はお互い頷き合うと、二人はロビンのいる席に向かった。
「賞金首のロビン殿かな?」
シーザーはフード外すと、にこやかな顔で話しかけた。
「いい儲け話があるのだが、話を聞いてくれるかい兄弟。」
体格のいい護衛男もフードを開いた。
「てめ~は、あの夜の傭兵か?」
ロビンとフッドが立ち上がると、みんなも異常な雰囲気に気が付いた様子で集まってきた。
「あ~、お互い生きて再会するとはな。これも何かの縁だ。戦は俺らの負けで終わったのだし、此れからは仲良くやろうぜ。」
シーザーは周りに集まりだした群衆に見せびらかせように巾着袋をテーブルに乗せると、わざとらしく金貨のこすれ合う音を響かせた。
「三十金貨ある。前金で十金貨渡そう。成功の暁には、残りを渡す。」
シーザーはテーブルに十金貨を置いた。
周りに集まっているロビンの仲間たちのぎらついた眼は、金貨からロビンを伺うようにゆっくりと移っていった。
ロビンはみんなの注目を感じて様子で、
「で、どんな仕事だ?」
「女を一人、誘拐するのを手伝ってほしい。」
「どこの女を?」
「やるのか?やれないのか?」
「俺らに、やれないことがあると?」
フッドは不敵にニヤリとしながら金貨と革袋を見つめると、みんなも同じように金貨と革袋に目を移した。
パトラはシーザーを伴い、基本学習学校へと向かっていた。
「まさか、あなたが、基本学習学校教師になりたいなんて言い出した時は驚いたが、でもいい事だわ。」
「俺は計算が得意だし、教えるのだって得意さ。」
「教師は不足しているから、校長様も喜んでいたわ。」
「チンジュ女神様が、校長様とは驚いたよ。」
「でも、何で護衛まで付いて来るの?」
パトラは後ろを振り向いて体格のいい護衛男を確認した。
「俺は、ミミズ街出身者からは嫌われているだろうから、用心のためさ。」
「この街は安全なのに、面接まで付いて来るなど不要でしょう。」
「安全?どうかな~。」
「彼は、門のとこまでで、、、いいでしょう。」
「部屋のドアまで、お願いします。」
「ま、、、仕方がないわね。」
と、パトラはシーザーの腕に抱き着いた。
パトラは、校長室と書かれた下げ札のドアをノックした。
「パトラです。教師希望者をお連れしました。」
部屋の中から椅子を動かす音と共に、
「お待ちしていました。どうぞ、お入りください。」
と、球を転がすような声が響いた。
シーザーと護衛の男はパトラを押し倒して部屋に飛び込んだ
「生神様とやら、一緒に来てもらおう。」
護衛の男は鎮守様を羽交い絞めにした。
「こんな乱暴をしなくても、御用があるならついていくわ。」
鎮守様は球を転がすような笑い声で応えた。
「観念するとは、聞き分けがいい。騒がれて死人が出るのは、俺の好みではない。」
パトラは鎮守様が羽交い絞めされた状態に気づき、急いで起き上がった。
「あなた、何の真似!」
「うるさい!」
と、シーザーはパトラを一刀に切り捨てた。
鎮守様は羽交い絞めを解き、パトラにかがみこんだ。
「細胞、神経接着。」
と唱えると、たちまち胸の傷口はふさがった。
シーザーは仕方がないとの顔をしながら、意識もうろうとしているパトラの腕を結び、さらにさるぐつわまでをもした。
「静かにしてしていろ。でないと、、、、この女の命はない。」
と、パトラを転がした状態で鎮守様の背中を押した。
「何処へ連れて行こうと?」
「その内にわかる。大人しくしていれば、だれも傷つかん。」
基本学習学校門前でもひと悶着が起きていた。
アチャカは、基本学習学校門前で屯んでいる武装集団に違和感を受け、観察していると幌馬車を護衛している風の中にロビンを見留た。
「ロビン!ここで何をしている?」
「これは、従兄弟殿。達者でいたか?」
「この前会ったばかりだろう?」
「またそのうち、挨拶に行くよ。」
「俺は、何をしているのだと聞いているのだ!」
「怒鳴るな。藪用事だ。」
幌馬車からも数人が降りてきた。
「何でお前の配下全員が、俺に殺気を向けながら柄に手をかけるのだ?」
「な~、従兄弟殿。見ざる聞かざる言わざるじゃ~ダメかい。」
「この街へお前を引き込んだのは俺だ。お前のやる事すべての責任を、俺は負っているのだから、訳ぐらいは知っておくべきだろう。」
「護衛だ。」
「誰の?」
「護衛対象は、俺も知らん。極秘任務だ。」
「誰からの命令だ?」
「上官だろう。」
「上官の名は?」
「忘れた。だから、サッサと行っちまえ。」
とロビンはアチャカに背を向けたと同時に、基本学習学校出入口扉が開いた。
アチャカは、基本学習学校出口から一緒に出て来た鎮守様とシーザーの組合せに異様さと怒りを覚えて、とっさにロビンの剣を奪い取った。
鎮守様もアチャカの行動に気づくと、
「アチャカ殿、大丈夫です。ちょっと出かけてきます。」
「シーザー野郎と、何用事で?」
アチャカは剣をロビンに向けたまま問いかけた。
「うるさい!おとなしくしないと、このきれいな顔が、拝めなくなるぞ。」
と、シーザーは鎮守様の背中を剣先で押した事で、アチャカはすべてを悟った。
「己らは、誘拐犯か!」
鎮守様はアチャカの問いに答えることなく、静な笑顔で周りを見回し幌馬車に乗り込んだ。
「死ね!」
アチャカは、ロビンの目がみんなと同様に鎮守様を見つめた瞬間切りかかった。
ロビンの悲鳴で、周りの男たちはいっせいに抜刀した。
シーザーは鎮守様の背中を押すと、そのまま荷車に乗り込むと同時に、護衛の男は荷車の操席へ飛び込むように乗り、二頭立ての馬に鞭を当てた。
配下二十人全員は逃げ去る幌馬車と、倒れているロビンに襲い掛かっているアチャカの方向との優先順位に戸惑いだした。
「ジジとババはそいつを倒して、頭領を手当しろ。俺達は金貨を追う。」
フッドは馬にまたがり馬車を追った。
フッドの言葉に誰もが賛同した様子で残り全員は二台の幌馬車に向かいだすと、指示に従い我先にと乗り込んでその後を追った。
アチャカはジジとババからの攻撃を防ぎつつ、転げまわりながら逃げ惑う傷ついたロビンを追い詰めていった。
「お前は何処で、俺らおやじたちの志を失くしたのだ!」
「貧欲のやつらから奪うだけが、正義ではない。」
「義賊を捨てたと?」
「仲間を食わせていくのも、正義だ。」
「それは当然だが、貧者を助けている女神様をお前は!」
「俺らが生きていくために、必要と判断した。」
「お前には生きる価値はない!」
「生き抜くことが、価値だ!」
「お前は、、、ただの盗賊に成り下がりやがって!」
「好き勝手に生きているお前が漢ぶるなど、ちゃんちゃらおかしいだろう。俺らを捨てやがったやつが正義漢ぶるな!」
「正義漢ぶってはいないが、俺らの親たちの苦しみを、他の人には経験させたくないと、女神様たちの力を借りて努力はしている。」
アチャカはジジが横から切り込んでくるその剣先を払いのけたが、背後から突いてきたババの剣先は、アチャカの背中に突き刺さった。
アチャカの顔は、最早人とは思えない血走った目は般若目であった。
「お前は、最早生きている価値はない。」
アチャカは背中の剣を気にも留めてないようで、渾身の力を込めてロビンの胸に剣を突き立てた。
酒場の隅の席では、シーザーと体格のいい護衛男は場違いな感じで深くめにフードをかぶり、顔を隠すように席に座っていた。
二人は店一杯を貸切り状態で埋めているグループの、頭目らしき男の席に聞き耳をしていた。
「頭領、そろそろ限界ですぜ。」
ロビンは、配下の男の愚痴に思案顔しながら頷いた。
「そうだよ。フッドの兄貴の意見に、俺らも賛成だ。」
と、ほかの席で騒いでいた男も加わり、足元がおぼつかないながらも口はよく回っていた。
「月に一度の大銀貨では、毎日酒も飲めないし、ここには女郎屋もない。」
貸切り状態の二十人はいろんな不満を述べだした。
「それに、こんな弓まで手に入ったのだ。多少の討伐隊だって怖くはないし、奴らを逆襲殲滅できるぜ。」
とフッドはベアボウを掲げた。
シーザーと体格のいい護衛男はお互い頷き合うと、二人はロビンのいる席に向かった。
「賞金首のロビン殿かな?」
シーザーはフード外すと、にこやかな顔で話しかけた。
「いい儲け話があるのだが、話を聞いてくれるかい兄弟。」
体格のいい護衛男もフードを開いた。
「てめ~は、あの夜の傭兵か?」
ロビンとフッドが立ち上がると、みんなも異常な雰囲気に気が付いた様子で集まってきた。
「あ~、お互い生きて再会するとはな。これも何かの縁だ。戦は俺らの負けで終わったのだし、此れからは仲良くやろうぜ。」
シーザーは周りに集まりだした群衆に見せびらかせように巾着袋をテーブルに乗せると、わざとらしく金貨のこすれ合う音を響かせた。
「三十金貨ある。前金で十金貨渡そう。成功の暁には、残りを渡す。」
シーザーはテーブルに十金貨を置いた。
周りに集まっているロビンの仲間たちのぎらついた眼は、金貨からロビンを伺うようにゆっくりと移っていった。
ロビンはみんなの注目を感じて様子で、
「で、どんな仕事だ?」
「女を一人、誘拐するのを手伝ってほしい。」
「どこの女を?」
「やるのか?やれないのか?」
「俺らに、やれないことがあると?」
フッドは不敵にニヤリとしながら金貨と革袋を見つめると、みんなも同じように金貨と革袋に目を移した。
パトラはシーザーを伴い、基本学習学校へと向かっていた。
「まさか、あなたが、基本学習学校教師になりたいなんて言い出した時は驚いたが、でもいい事だわ。」
「俺は計算が得意だし、教えるのだって得意さ。」
「教師は不足しているから、校長様も喜んでいたわ。」
「チンジュ女神様が、校長様とは驚いたよ。」
「でも、何で護衛まで付いて来るの?」
パトラは後ろを振り向いて体格のいい護衛男を確認した。
「俺は、ミミズ街出身者からは嫌われているだろうから、用心のためさ。」
「この街は安全なのに、面接まで付いて来るなど不要でしょう。」
「安全?どうかな~。」
「彼は、門のとこまでで、、、いいでしょう。」
「部屋のドアまで、お願いします。」
「ま、、、仕方がないわね。」
と、パトラはシーザーの腕に抱き着いた。
パトラは、校長室と書かれた下げ札のドアをノックした。
「パトラです。教師希望者をお連れしました。」
部屋の中から椅子を動かす音と共に、
「お待ちしていました。どうぞ、お入りください。」
と、球を転がすような声が響いた。
シーザーと護衛の男はパトラを押し倒して部屋に飛び込んだ
「生神様とやら、一緒に来てもらおう。」
護衛の男は鎮守様を羽交い絞めにした。
「こんな乱暴をしなくても、御用があるならついていくわ。」
鎮守様は球を転がすような笑い声で応えた。
「観念するとは、聞き分けがいい。騒がれて死人が出るのは、俺の好みではない。」
パトラは鎮守様が羽交い絞めされた状態に気づき、急いで起き上がった。
「あなた、何の真似!」
「うるさい!」
と、シーザーはパトラを一刀に切り捨てた。
鎮守様は羽交い絞めを解き、パトラにかがみこんだ。
「細胞、神経接着。」
と唱えると、たちまち胸の傷口はふさがった。
シーザーは仕方がないとの顔をしながら、意識もうろうとしているパトラの腕を結び、さらにさるぐつわまでをもした。
「静かにしてしていろ。でないと、、、、この女の命はない。」
と、パトラを転がした状態で鎮守様の背中を押した。
「何処へ連れて行こうと?」
「その内にわかる。大人しくしていれば、だれも傷つかん。」
基本学習学校門前でもひと悶着が起きていた。
アチャカは、基本学習学校門前で屯んでいる武装集団に違和感を受け、観察していると幌馬車を護衛している風の中にロビンを見留た。
「ロビン!ここで何をしている?」
「これは、従兄弟殿。達者でいたか?」
「この前会ったばかりだろう?」
「またそのうち、挨拶に行くよ。」
「俺は、何をしているのだと聞いているのだ!」
「怒鳴るな。藪用事だ。」
幌馬車からも数人が降りてきた。
「何でお前の配下全員が、俺に殺気を向けながら柄に手をかけるのだ?」
「な~、従兄弟殿。見ざる聞かざる言わざるじゃ~ダメかい。」
「この街へお前を引き込んだのは俺だ。お前のやる事すべての責任を、俺は負っているのだから、訳ぐらいは知っておくべきだろう。」
「護衛だ。」
「誰の?」
「護衛対象は、俺も知らん。極秘任務だ。」
「誰からの命令だ?」
「上官だろう。」
「上官の名は?」
「忘れた。だから、サッサと行っちまえ。」
とロビンはアチャカに背を向けたと同時に、基本学習学校出入口扉が開いた。
アチャカは、基本学習学校出口から一緒に出て来た鎮守様とシーザーの組合せに異様さと怒りを覚えて、とっさにロビンの剣を奪い取った。
鎮守様もアチャカの行動に気づくと、
「アチャカ殿、大丈夫です。ちょっと出かけてきます。」
「シーザー野郎と、何用事で?」
アチャカは剣をロビンに向けたまま問いかけた。
「うるさい!おとなしくしないと、このきれいな顔が、拝めなくなるぞ。」
と、シーザーは鎮守様の背中を剣先で押した事で、アチャカはすべてを悟った。
「己らは、誘拐犯か!」
鎮守様はアチャカの問いに答えることなく、静な笑顔で周りを見回し幌馬車に乗り込んだ。
「死ね!」
アチャカは、ロビンの目がみんなと同様に鎮守様を見つめた瞬間切りかかった。
ロビンの悲鳴で、周りの男たちはいっせいに抜刀した。
シーザーは鎮守様の背中を押すと、そのまま荷車に乗り込むと同時に、護衛の男は荷車の操席へ飛び込むように乗り、二頭立ての馬に鞭を当てた。
配下二十人全員は逃げ去る幌馬車と、倒れているロビンに襲い掛かっているアチャカの方向との優先順位に戸惑いだした。
「ジジとババはそいつを倒して、頭領を手当しろ。俺達は金貨を追う。」
フッドは馬にまたがり馬車を追った。
フッドの言葉に誰もが賛同した様子で残り全員は二台の幌馬車に向かいだすと、指示に従い我先にと乗り込んでその後を追った。
アチャカはジジとババからの攻撃を防ぎつつ、転げまわりながら逃げ惑う傷ついたロビンを追い詰めていった。
「お前は何処で、俺らおやじたちの志を失くしたのだ!」
「貧欲のやつらから奪うだけが、正義ではない。」
「義賊を捨てたと?」
「仲間を食わせていくのも、正義だ。」
「それは当然だが、貧者を助けている女神様をお前は!」
「俺らが生きていくために、必要と判断した。」
「お前には生きる価値はない!」
「生き抜くことが、価値だ!」
「お前は、、、ただの盗賊に成り下がりやがって!」
「好き勝手に生きているお前が漢ぶるなど、ちゃんちゃらおかしいだろう。俺らを捨てやがったやつが正義漢ぶるな!」
「正義漢ぶってはいないが、俺らの親たちの苦しみを、他の人には経験させたくないと、女神様たちの力を借りて努力はしている。」
アチャカはジジが横から切り込んでくるその剣先を払いのけたが、背後から突いてきたババの剣先は、アチャカの背中に突き刺さった。
アチャカの顔は、最早人とは思えない血走った目は般若目であった。
「お前は、最早生きている価値はない。」
アチャカは背中の剣を気にも留めてないようで、渾身の力を込めてロビンの胸に剣を突き立てた。
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