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国興し
24 領主逃亡
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駆動車が屋敷門前に停車すると、二人の衛士兵がカイワレの前に走り込んできた。
「これは、一体何事ですか?」
「さっさと門を開けて、領主を呼んで来い!」
と鹿島が怒鳴ると、二人の衛士兵は鹿島に怒りを込めた怪訝な顔を向けたが、すぐに無視するようにカイワレに向き直した。
「どけ!門を開けないなら、このまま突っ込むぞ!」
駆動車は轟音とともに、格子門めがけて突進した。
駆動車は衛士兵共々格子門を跳ね飛ばした。
衛士兵は足をパンパに乗せていたカイワレと格子門に挟まれた。
鎧を着用していたのが幸いであったようで、辛うじて骨折はしていなさそうだが、かなりの打撲だった様子で大きな悲鳴を上げた。
「さっさとどかないと、次は引いてしまうぞ!」
鹿島が又もや怒鳴ると、二人の衛士兵は這うように駆動車前方で両脇に逃げ出した。
門の騒ぎに気が付いたのか屋敷の玄関ドアが開き、執事らしき男が現れるとパトラが突然、
「シーザー!」と叫んだ。
執事らしき男はパトラに気づいたのか、慌てるように向きを変えて玄関ドアを閉めた。
「何で?彼がここにいるのかしら?」
「知り合い?」
「私をだまして、奴隷商人に売った元の夫です。」
サニーはうなずくと、倒れ込んでいる衛士兵に手招きした。
衛士兵は腰が抜けたのか怯えるだけで、拒否反応する様にただ震えていた。
「引き寄せ念力!」とサニーが叫ぶが、衛士兵は十センチぐらい引き寄せられただけで、その後は微動だにしなくなりただ座り込んでしまった。
「鎮守様。手を貸してください。」
サニーは後ろに居る鎮守様を振り返る事無く、背中の翅を広げた。
鎮守様が翅の根元を握ると、
「引き寄せ念力!」再びサニーは叫んだ。
背中の翅が後ろに動くごとに、衛士兵は駆動車輌横に念力により引きずられてきた。
サニーは車から降りずに、座り込んだままの衛士兵に尋ねた。
「さっきの男は、何者だ?」
「新しい執事で、姫様の婿殿です。」
「姫様の婿?冒険者ギルドの平民会計士が、何で貴族の姫婿になれた?」
パトラは衛士兵の返答に、かなり驚いた様子で立ち上がった。
「これからの税収は、全て各ギルドで管理し徴収する為に、領主様は専属の会計士が必要になったのでしょう。」
と、衛士兵は税金に対して不満気に話し出した。
「サニーちゃん。いつまでも待っていられないわ。回復魔法で直してやりなさい。」
「はい。」
サニーは立ち上がれそうにない衛士兵に向かって、「回復。」と叫ぶと、
「領主を呼んで来なさい!」と、衛士兵に命じた。
衛士兵は体の痛みがなくなったのか起きだすと、屋敷に向かって駆け出し、玄関扉の中へ駈け込んでいった。
玄関扉が開くと、ガマガエルが服を着ているのかと見間違えてしまいそうな男と執事が現れた。
「耳長カエル亜人か?」
鹿島が驚くと、パトラが噴出した。
「領主様です。ちなみに人種です。」
「あの姿で、エルフ種族?」
と、サニーも驚いた。
ガマガエル亜人似は鹿島達を一瞥すると、
「カイワレ!これはどういう事だ!」
カイワレがうなだれたまま微動だにしないことでさらに激怒りし、顔を真っ赤にしたガマガエル亜人似は、
「奴隷たちはどこだ!護衛団はどうした!」
「護衛団は、みんな死んだ。」
「で!原因と理由は?」
鹿島は項垂れたままのカイワレのロープをほどき、
「話をきちんとしてこい!」と、箇条書を渡した。
ガマガエル亜人似が箇条書に目を通していると、屋敷の裏から十人ほどの甲冑士団が現れた。
鹿島は大きな二本の庭木に向かって、
「刃竜巻!」と叫ぶと、甲冑士団を吹き倒しながら二本の庭木を根ごと舞い上げた。
竜巻に巻き込んだ二本の庭木は、吹き倒れた甲冑士団の前に薪山を作った。
「屋敷も薪にしてもよいか?」と、鹿島はガマガエル亜人似に微笑んだ。
壊れた格子門を二頭の馬が飛び越えてきた。
みんなの注目が二頭の馬に注がれているとき、執事は屋敷中に逃げ戻っていった。
汗まみれの馬体の上で馬にしがみついている王女とマリーは、ぐったりとしながらもゆっくりと上体を起こした。
「置いてきぼりとはひどい。」
と、馬を気遣うように降り出した。
王女は腰を抜かして倒れ込んでいる衛士兵に、
「馬を頼む。」
と頭を下げるが、衛士兵が起き上がれないのに気づき、
「回復魔法。」
と唱えると、衛士兵は身体重たげに起き上がり、片足を引きずりながらも、二頭の馬を壊れた門横の馬厩舎へ連れて行きだした。
ガマガエル亜人似は、甲冑姿の王女にようやっと気が付いた様子に、
マリーはガマガエル亜人似の前に進み出て、
「ナントン様お久しぶりです。ヒカリ様とご挨拶に来ました。」
と、マリーは片目をつぶった。
「ヒカリ様?あ~ぁ。で、何用でいらしたのですか?」
「最上級精霊様ご一行に、カイワレが無礼な仕打ちをしていた現場に、たまたま出くわしたのだ。」
「最上級精霊様ご一行?おう、、、ヒカリ様ともあろう人が、何故に、戯言などを言いなさいます。」
「私の言葉を、戯言と取るか?」
「はい。戯言でしょう。それに、この箇条書は正規なものとは思えません。」
「どこの個所が?」
「全てです。」
王女は、ガマガエル亜人似の言葉を否定するように首を横に振った。
薪瓦礫山から出てきた甲冑士団に気付いたガマガエル亜人似は、
「高名な名を騙る犯罪者と、無法者たちを打ち取れ!」
と、ガマガエル亜人似が叫ぶと、十一人の甲冑士団が抜刀して鹿島達に向かってきた。
鹿島は駆動車から一歩踏み出し、
「シエエ~イ」と居合一声叫んで抜刀し、先頭甲冑士が分厚い諸刃の剣を上段から振り下ろすよりも早く、鎧隙間である喉笛を突き刺した。
次に横から飛び出てきた甲冑士は、腕の肩下隙間から心臓を神剣で突き刺された。
鹿島は槍を突き出してきた甲冑士の槍を避け、甲冑胴部を切り払った。
甲冑胴部は鹿島のイメージよりも硬くなく、「ブリキか?」と思わず声を出した。
残った他の甲冑士団も次々と鹿島に甲冑ごと打ち斬られると、ガマガエル亜人似領主は膝を崩した。
鹿島は血玉の付いた神剣を払い、手拭いで血油をふき取りながら、
「箇条書きは読んだか?
1、妖精国の最高指導者に対して、一方的に暴力をふるった。
2、妖精国の最高指導者の拉致を部下に指示した。
3、妖精国の最高指導者の付添いに対して、配下の者たちに剣を向けさせた。
4、妖精国は、これを宣戦布告と受け取った。
5、カイワレは、自分で落馬して足を骨折したので、治療者に足の骨折を治してもらう対価は、父親に金貨百貨を支払わせると約束した。
この事で、、お前の返事は?、、、だまってないで答えろ!」
「分かった。少し待っていてくれ。」
と言い残して、ガマガエル亜人似領主は屋敷の中に駆け足で入っていった。
屋敷に戻ったガマガエル亜人似の領主に執事が駆け寄り、ガマガエル亜人似領主にささやいた。
「脱出の用意は出来ています。後の始末は、各ギルドに指示を出しておきました。」
「婿殿はカイワレと違い、さすがだ。」
「では、傭兵を募って、軍を整えてから、出直しましょう。」
ガマガエル亜人似領主と家族一同は、多くの荷物を積んだ豪華な馬車三台で裏門から出ていった。
サニーは打ち捨てたままの遺体を横目で見て、
「あれ、だれが片付けるのかしら?」
「領主だろう。」
「その領主、何をやっているのかしら?遅いわね。」
「逃げたかも?」
と鹿島とサニーが話していると、
「まさか。領主が、領地や街を捨てることなどないわ。」
王女が割り込んできた。
屋敷の玄関ドアが少し開くと、外の様子をうかがっている目を感じた鹿島は、瞬間移動でドアを開いた。
「すみません。許して下さい。」
と、サニーに回復魔法を受けた衛士兵が土下座した。
「なんだ?お前か。ガマガエル領主は何をやっているのだ?」
「逃げました。」
「逃げた?何故に?」
「荷物を洗い浚い持って、逃げました。」
鹿島は、サニーに回復魔法を受けた衛士兵を連れて王女の所に行き、
「ガマガエル、逃げたらしい。」
「え~。」
「は~。」
王女とマリーは互いに睨み合うと、大きく息を吐いた。
「休戦協定も、治療費もなしだな。」
「タロー。こいつを刻みなさい。」
と、サニーがカイワレの肩をつかんで、鹿島の方へ押し出した。
「瘴気病にかかった集落の復興資金が、欲しかったが、無理かな~。」
「取り敢えず、一旦基地に帰って、食料を用意しましょう。」
「妖精の森では、果物しかないよ。」
「だな~。母艦の貯蔵庫は無限ではないので、妖精たちの食欲だと、直ぐに無くなりそうだし。」
呆然としているカイワレに、
「お前はもう用無しになった。今日はもう血など見たくない。さっさとどっかへいけ!」
と、サニーはカイワレの尻に蹴りを入れた。
カイワレは鼻と口を抑えながら、倒れた格子門を避け街中に消えていった。
王女は申し訳なさそうに、
「ちょっと待ってください。この街の税を集めて、資金を用意してはいかがでしょうか?」
「この街を統治しろと?」
「領主が逃げて、統治者不在の街だけでなく、ナントン領すべてをです。」
「何の為に?」
「最上級精霊様の聖典を、オハラ王国にお与えください。」
「統治と聖典の関係は?」
「最上級精霊様のご加護を、多くの人々に広げたいのです。」
「教団興しせよと?」
「瘴気病を治した力を、多くの人々にも分けて欲しいのです。」
「タローちゃん。やってみれば~。」
「げ~。俺が何で?」
「困っている人がいたら、助けるのは常識でしょう。」
「だけどさ~。無理があると思う。」
奴隷から解放されたパトラがはみんなのやり取りを聞いていて、
「奴隷も農奴も、解放して頂きたいのですが。」
「ほら、タローちゃん。期待されているわ。」
「僕も、奴隷兵です。農奴たちが売買されるのは、家族からしたら悲しいです。」
「がんばれ~タロー。」
「何で、集落の復興資金から、領地経営になるの?」
「だって、タローが領主をオン出したからでしょう。」
「タローちゃんの今の目標は、先ずは、奴隷たちと農奴たちの解放でしょう。」
「では、今から領地経営と、奴隷も農奴も解放しますっ。」
とサニーは片手をあげて宣言した。
王女とマリーは突然の奴隷たちと農奴たちの解放などと思惑違い方向に話が進んだが、最上級精霊様か国内に鎮座してご加護を受けられるなら、これからのオハラ王国にとっては益のあることだと確信した。
「これは、一体何事ですか?」
「さっさと門を開けて、領主を呼んで来い!」
と鹿島が怒鳴ると、二人の衛士兵は鹿島に怒りを込めた怪訝な顔を向けたが、すぐに無視するようにカイワレに向き直した。
「どけ!門を開けないなら、このまま突っ込むぞ!」
駆動車は轟音とともに、格子門めがけて突進した。
駆動車は衛士兵共々格子門を跳ね飛ばした。
衛士兵は足をパンパに乗せていたカイワレと格子門に挟まれた。
鎧を着用していたのが幸いであったようで、辛うじて骨折はしていなさそうだが、かなりの打撲だった様子で大きな悲鳴を上げた。
「さっさとどかないと、次は引いてしまうぞ!」
鹿島が又もや怒鳴ると、二人の衛士兵は這うように駆動車前方で両脇に逃げ出した。
門の騒ぎに気が付いたのか屋敷の玄関ドアが開き、執事らしき男が現れるとパトラが突然、
「シーザー!」と叫んだ。
執事らしき男はパトラに気づいたのか、慌てるように向きを変えて玄関ドアを閉めた。
「何で?彼がここにいるのかしら?」
「知り合い?」
「私をだまして、奴隷商人に売った元の夫です。」
サニーはうなずくと、倒れ込んでいる衛士兵に手招きした。
衛士兵は腰が抜けたのか怯えるだけで、拒否反応する様にただ震えていた。
「引き寄せ念力!」とサニーが叫ぶが、衛士兵は十センチぐらい引き寄せられただけで、その後は微動だにしなくなりただ座り込んでしまった。
「鎮守様。手を貸してください。」
サニーは後ろに居る鎮守様を振り返る事無く、背中の翅を広げた。
鎮守様が翅の根元を握ると、
「引き寄せ念力!」再びサニーは叫んだ。
背中の翅が後ろに動くごとに、衛士兵は駆動車輌横に念力により引きずられてきた。
サニーは車から降りずに、座り込んだままの衛士兵に尋ねた。
「さっきの男は、何者だ?」
「新しい執事で、姫様の婿殿です。」
「姫様の婿?冒険者ギルドの平民会計士が、何で貴族の姫婿になれた?」
パトラは衛士兵の返答に、かなり驚いた様子で立ち上がった。
「これからの税収は、全て各ギルドで管理し徴収する為に、領主様は専属の会計士が必要になったのでしょう。」
と、衛士兵は税金に対して不満気に話し出した。
「サニーちゃん。いつまでも待っていられないわ。回復魔法で直してやりなさい。」
「はい。」
サニーは立ち上がれそうにない衛士兵に向かって、「回復。」と叫ぶと、
「領主を呼んで来なさい!」と、衛士兵に命じた。
衛士兵は体の痛みがなくなったのか起きだすと、屋敷に向かって駆け出し、玄関扉の中へ駈け込んでいった。
玄関扉が開くと、ガマガエルが服を着ているのかと見間違えてしまいそうな男と執事が現れた。
「耳長カエル亜人か?」
鹿島が驚くと、パトラが噴出した。
「領主様です。ちなみに人種です。」
「あの姿で、エルフ種族?」
と、サニーも驚いた。
ガマガエル亜人似は鹿島達を一瞥すると、
「カイワレ!これはどういう事だ!」
カイワレがうなだれたまま微動だにしないことでさらに激怒りし、顔を真っ赤にしたガマガエル亜人似は、
「奴隷たちはどこだ!護衛団はどうした!」
「護衛団は、みんな死んだ。」
「で!原因と理由は?」
鹿島は項垂れたままのカイワレのロープをほどき、
「話をきちんとしてこい!」と、箇条書を渡した。
ガマガエル亜人似が箇条書に目を通していると、屋敷の裏から十人ほどの甲冑士団が現れた。
鹿島は大きな二本の庭木に向かって、
「刃竜巻!」と叫ぶと、甲冑士団を吹き倒しながら二本の庭木を根ごと舞い上げた。
竜巻に巻き込んだ二本の庭木は、吹き倒れた甲冑士団の前に薪山を作った。
「屋敷も薪にしてもよいか?」と、鹿島はガマガエル亜人似に微笑んだ。
壊れた格子門を二頭の馬が飛び越えてきた。
みんなの注目が二頭の馬に注がれているとき、執事は屋敷中に逃げ戻っていった。
汗まみれの馬体の上で馬にしがみついている王女とマリーは、ぐったりとしながらもゆっくりと上体を起こした。
「置いてきぼりとはひどい。」
と、馬を気遣うように降り出した。
王女は腰を抜かして倒れ込んでいる衛士兵に、
「馬を頼む。」
と頭を下げるが、衛士兵が起き上がれないのに気づき、
「回復魔法。」
と唱えると、衛士兵は身体重たげに起き上がり、片足を引きずりながらも、二頭の馬を壊れた門横の馬厩舎へ連れて行きだした。
ガマガエル亜人似は、甲冑姿の王女にようやっと気が付いた様子に、
マリーはガマガエル亜人似の前に進み出て、
「ナントン様お久しぶりです。ヒカリ様とご挨拶に来ました。」
と、マリーは片目をつぶった。
「ヒカリ様?あ~ぁ。で、何用でいらしたのですか?」
「最上級精霊様ご一行に、カイワレが無礼な仕打ちをしていた現場に、たまたま出くわしたのだ。」
「最上級精霊様ご一行?おう、、、ヒカリ様ともあろう人が、何故に、戯言などを言いなさいます。」
「私の言葉を、戯言と取るか?」
「はい。戯言でしょう。それに、この箇条書は正規なものとは思えません。」
「どこの個所が?」
「全てです。」
王女は、ガマガエル亜人似の言葉を否定するように首を横に振った。
薪瓦礫山から出てきた甲冑士団に気付いたガマガエル亜人似は、
「高名な名を騙る犯罪者と、無法者たちを打ち取れ!」
と、ガマガエル亜人似が叫ぶと、十一人の甲冑士団が抜刀して鹿島達に向かってきた。
鹿島は駆動車から一歩踏み出し、
「シエエ~イ」と居合一声叫んで抜刀し、先頭甲冑士が分厚い諸刃の剣を上段から振り下ろすよりも早く、鎧隙間である喉笛を突き刺した。
次に横から飛び出てきた甲冑士は、腕の肩下隙間から心臓を神剣で突き刺された。
鹿島は槍を突き出してきた甲冑士の槍を避け、甲冑胴部を切り払った。
甲冑胴部は鹿島のイメージよりも硬くなく、「ブリキか?」と思わず声を出した。
残った他の甲冑士団も次々と鹿島に甲冑ごと打ち斬られると、ガマガエル亜人似領主は膝を崩した。
鹿島は血玉の付いた神剣を払い、手拭いで血油をふき取りながら、
「箇条書きは読んだか?
1、妖精国の最高指導者に対して、一方的に暴力をふるった。
2、妖精国の最高指導者の拉致を部下に指示した。
3、妖精国の最高指導者の付添いに対して、配下の者たちに剣を向けさせた。
4、妖精国は、これを宣戦布告と受け取った。
5、カイワレは、自分で落馬して足を骨折したので、治療者に足の骨折を治してもらう対価は、父親に金貨百貨を支払わせると約束した。
この事で、、お前の返事は?、、、だまってないで答えろ!」
「分かった。少し待っていてくれ。」
と言い残して、ガマガエル亜人似領主は屋敷の中に駆け足で入っていった。
屋敷に戻ったガマガエル亜人似の領主に執事が駆け寄り、ガマガエル亜人似領主にささやいた。
「脱出の用意は出来ています。後の始末は、各ギルドに指示を出しておきました。」
「婿殿はカイワレと違い、さすがだ。」
「では、傭兵を募って、軍を整えてから、出直しましょう。」
ガマガエル亜人似領主と家族一同は、多くの荷物を積んだ豪華な馬車三台で裏門から出ていった。
サニーは打ち捨てたままの遺体を横目で見て、
「あれ、だれが片付けるのかしら?」
「領主だろう。」
「その領主、何をやっているのかしら?遅いわね。」
「逃げたかも?」
と鹿島とサニーが話していると、
「まさか。領主が、領地や街を捨てることなどないわ。」
王女が割り込んできた。
屋敷の玄関ドアが少し開くと、外の様子をうかがっている目を感じた鹿島は、瞬間移動でドアを開いた。
「すみません。許して下さい。」
と、サニーに回復魔法を受けた衛士兵が土下座した。
「なんだ?お前か。ガマガエル領主は何をやっているのだ?」
「逃げました。」
「逃げた?何故に?」
「荷物を洗い浚い持って、逃げました。」
鹿島は、サニーに回復魔法を受けた衛士兵を連れて王女の所に行き、
「ガマガエル、逃げたらしい。」
「え~。」
「は~。」
王女とマリーは互いに睨み合うと、大きく息を吐いた。
「休戦協定も、治療費もなしだな。」
「タロー。こいつを刻みなさい。」
と、サニーがカイワレの肩をつかんで、鹿島の方へ押し出した。
「瘴気病にかかった集落の復興資金が、欲しかったが、無理かな~。」
「取り敢えず、一旦基地に帰って、食料を用意しましょう。」
「妖精の森では、果物しかないよ。」
「だな~。母艦の貯蔵庫は無限ではないので、妖精たちの食欲だと、直ぐに無くなりそうだし。」
呆然としているカイワレに、
「お前はもう用無しになった。今日はもう血など見たくない。さっさとどっかへいけ!」
と、サニーはカイワレの尻に蹴りを入れた。
カイワレは鼻と口を抑えながら、倒れた格子門を避け街中に消えていった。
王女は申し訳なさそうに、
「ちょっと待ってください。この街の税を集めて、資金を用意してはいかがでしょうか?」
「この街を統治しろと?」
「領主が逃げて、統治者不在の街だけでなく、ナントン領すべてをです。」
「何の為に?」
「最上級精霊様の聖典を、オハラ王国にお与えください。」
「統治と聖典の関係は?」
「最上級精霊様のご加護を、多くの人々に広げたいのです。」
「教団興しせよと?」
「瘴気病を治した力を、多くの人々にも分けて欲しいのです。」
「タローちゃん。やってみれば~。」
「げ~。俺が何で?」
「困っている人がいたら、助けるのは常識でしょう。」
「だけどさ~。無理があると思う。」
奴隷から解放されたパトラがはみんなのやり取りを聞いていて、
「奴隷も農奴も、解放して頂きたいのですが。」
「ほら、タローちゃん。期待されているわ。」
「僕も、奴隷兵です。農奴たちが売買されるのは、家族からしたら悲しいです。」
「がんばれ~タロー。」
「何で、集落の復興資金から、領地経営になるの?」
「だって、タローが領主をオン出したからでしょう。」
「タローちゃんの今の目標は、先ずは、奴隷たちと農奴たちの解放でしょう。」
「では、今から領地経営と、奴隷も農奴も解放しますっ。」
とサニーは片手をあげて宣言した。
王女とマリーは突然の奴隷たちと農奴たちの解放などと思惑違い方向に話が進んだが、最上級精霊様か国内に鎮座してご加護を受けられるなら、これからのオハラ王国にとっては益のあることだと確信した。
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