【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

かんじがしろ

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国興し

23 奴隷商人との出会い

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 駆動車にとっては、三つの川に掛かったおっかなびっくりの貧弱な木造橋を何とか通過出来て、ようやっとミミズ街の防護壁が見えてきた。

 ミミズ街の防護壁門前では、大勢の人が群れているのを衛士兵が整理させようとうごめいていた。
「お前らはギルド長の依頼で、無法者を打ち取れとの依頼で来たのだろう!きちんと準備しろ!」
との衛士兵の声は混乱にかき消されていた。
混乱の中心あたりで騒いでいるのは、剣を投げ捨て村から逃げた一人であった。
「皆解散しろ!あ奴らは、人じゃない。悪魔の化身どもだ!」
「解散白だと?俺らはこれから、キング村に行く予定のところだ。」
「だから止めに来たのだ!」
「お前はどこにいたのだ!ボルアトはキング村での出来事の報告にきちんギルドに来たぞ。」
「俺はキング村にカイワレ様がまだ残っているので、救出しようとキング村を見張っていたのだ。」
「ではなぜ、ここにいる。」
「救出救護は不可能だと悟ったのだ。」
「ギルドの順位十番位のお前が、臆病風か!」
「順位一番の猛獣キンマンさえ、身二つになったのだ。」
「猛獣キンマンは油断して負傷したと聞いたが、身二つになっただと?」
「ギルドNO1の猛獣キンマンが!見二つ?」
と、見二つにされるなど、力量の差が大きくないと不可能だと、推測した周りの者たちも騒ぎだした。
「トロイもアホガーもバカヤーもみんなだ!」
「NO1からNO4までが!」
「祖奴らに、何処で会ったのだ!」
「キング村に、奴隷狩りに行った時だ。」
「しかし、お前の腰の剣はどうした。カイワレ様救出救護も出来ないまま、帰ってきたのか?」
集まった冒険者たちは、剣を投げ捨て村から逃げ帰った冒険者に軽蔑の目を向けた。

衛士兵は武装集団を整列させようとしていたが、混乱している武装集団の会話を聞き取り何やら集団で打ち合わせ出すと、土埃を巻き上げながら異様な魔物が近づいて来ているのに気が付いた。

 鹿島が武装団群れ手前五百メートル手前で駆動車を停車すると、荷台に転がしていたカイワレは、武装団群れに気が付いたのか、鹿島達から逃げようと目論んだようで急ぎ飛び降りた。

「氷」サニーが叫ぶと、カイワレは足が氷の塊の中で動かなくなって、地面に顔を突っ込んだ
「あいつ!心変わりして、約束を守らない気だ!」
「だな。」
鹿島は車から降りてカイワレの襟をつかんで起こすと、鼻血と口の中から新たに血があふれでている。
「大丈夫か?お前の前歯は、全部無くなっているぞ。でも、肉の塊にならなかっただけ、ましか!」

 鹿島はカイワレをボンネットに座らせ、パンパに足を乗せてそのまま氷魔法で固定した。
「領主の家に着くまで、大人しく座っていろ。そして場所を指示しろ。」
と命じた。
カイワレは折れた歯と潰れた鼻を両手で押さえ、痛さで震えながらも頷いた。
鹿島は荷台からロープを持ち出し、バックミラーの根元に縛り付けるとカイワレの腹を一周させ、その端を反対側のバックミラーに縛り付けた。
「しっかりと、ロープを握ってないと、転げ落ちるぞ!落ちてタイヤに惹かれたら、かなり痛いぞ。」
と言って、駆動車はミミズ街の防護壁入り口へ向かった。

 駆動車は、防護壁入り口を塞ぐ様に居並ぶ兵士と武装集団の前で急停車した。

「カイワレ様!」
と言って、衛士兵のリーダらしき兵士が飛び出し、鼻と口を塞いで押し黙っているカイワレの握っているロープに気づき切ろうとしたが、鹿島は魔法の水塊で兵士の頭を吹き飛ばした。
「あ!加減できなかった。ごめん!」
鹿島は立ち上がって、吹き飛んだ頭のなくなった遺体に向かって頭を下げた。

 入り口を塞ぐ武装集団は一斉に抜刀してカイワレに注視していたが、口うるさい威張り散らす衛士兵長が吹き飛ばされ、カイワレから何の指示もないことでそれ以上動く気配がなかった。
衛士兵の義務と恐怖の天秤は、恐怖の方が重い様子で遠巻きに後ずさりし始めた。

 鹿島は集落で出会った冒険者と名乗り、逃げ去った武装集団の後ろに隠れて震えている二人に気が付いた。
「お前たちは、見覚えがあるぞ。また俺に挑戦するか?」
二人は武装集団の後ろに隠れていたが、又もや逃げ去ってしまうと、武装集団のほとんども腰が逃げ腰である。
「今回は私に刃を向けたことは見逃す。次回はないぞ!」
と、鎮守様が叫び、「風圧。」と言って、入り口を塞ぐ様に居並ぶ兵士と武装集団を吹きとばした。

 風圧を受けなかった者達、吹き飛んだ者達全員が唖然としている中を、駆動車は街の通りに入った。

 風圧を受けなかった者達の中から娘が飛び出し、吹き飛んだ若者を介抱しだした。
「ジャージとアロハが“奴らは、人ではない”と言っていたのに、何で手向かおうと前に出たの?端麗の女性から強い魔力を感じたが、その魔法力はセーブされていたし、女の子の背中の翅を私は見たよ。本当にあ奴らは人ではなかった!」
介抱されている若者も、新たに驀進して来る白い甲冑騎士の乗った二頭の馬を避ける様に娘を抱いて転がった。

 鹿島達はカイワレを乗せたまま街の通りに入っていくと駆動車に驚いたのか、首に輪っかをはめた女性が転んでしまった。

 輪っかから伸びた紐を握っていた男は、転んだ女性を足蹴した後カイワレの姿に気付き驚き、
「若様!この、異常な光景は何事です?」
と声をかけるが、カイワレは口を抑えたまま押し黙っている。

 紐を握っていた男は、鹿島達の視線に気が付いたのか、倒れた女性を無視して鹿島の方へ向かってきた。

 首に輪っかをはめた女性のかかとから血がにじみ出たのを見たサニーは、車から飛び降りて女性のかかとを握ると、
「治療回復。」
と、女性のかかとに手をかざした。

「おい、耳切れ。俺の商品に傷をつけ、あまつさえ、若様を晒し者にするとは、お前らは何者だ!」
「おれか?タロー.カシマだ。お前は?」
「俺を知らないのか?俺は商業ギルド長で、奴隷商人イカレ.ポンチョだ。後ろの耳切れ女を、俺に譲れ!」
「何をぬかす!」
「大人しく従え。俺はお前も、奴隷にする事が出来るのだぞ。」
「うるせ~。吹っ飛びやがれ!水。」
水塊がイカレの顔ではじけると、身はそのまま後ろの家屋壁に吹き飛んだ。
「あ、何と今度は、制御出来た。」
と、鹿島は悦に入っているが、周りの見物人の注目は、カイワレの状況や奴隷商人イカレとの騒動よりも、サニーの背中の翅に見入っていた。
「ママ見て、おね~ちゃんの背中に、翅が生えている。」
「鳥人?」
「まさか、妖精?」
「妖精って、こんなに大きいの?」
「伝説の精霊様では?」

 サニーは周りの騒動よりも、輪っかをはめた女性に興味がある様子で、
「あなたは、どうして、輪っかのネックレスをしているの?」
「これは、、、奴隷だからです。」
「どういう理由で、奴隷になったの?」
「夫に売られたみたいです。」
「罪を犯して、奴隷になったの?」
「罪は冒していません。夫が困っているとのことでしたので、指示でサインしただけです。」
「サインした書類の内容は?」
「私は、字が読めないので、売買契約書に同意のサインをしてしまったのです。」
「救ってあげる。“輪っか、開錠。“」
首の輪っかが首から地面に外れ落ちると、
「今から自由よ。好きな所へ行きなさい。」
「私には、帰る場所がありません。お嬢さんたちと、同行できませんか?」
サニーは微笑み、女性の手を引いて鹿島の後ろ側に回り、鎮守様の隣に腰掛けさせた。
「あら、お客さん?」
「パトラと申します。」
「あたしは、鎮守様よ。」
「チンジュサマ、よろしくお願いします。」

 駆動車はカイワレが口を抑えたまま指で方向を示す通りに進むと、ざわめく街の通りを抜けて大きな屋敷門に着いた。
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