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17 網の威力
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葉樹海に生い茂る枝葉は、通り過ぎる風を捕らえようとざわめいているところへ、ざわめく枝葉を鎮めるように広大な白い網が上空から降って来た。
静寂になった枝葉の下では、静かに潜んでいた軍隊魔蜂は敵襲来を感じたのか、異様な数の翅音が起きた上空に向かって飛び立たった。
軍隊魔蜂たちが上空に向かっていくと、
「魔素固定バリヤー!」
幹の影から飛び出たサニーが叫ぶと同時に、住処にへばりついている親衛隊伴侶の隙間から、ガラスみたいに固まった空気鏃(やじり)が、躍り出た鹿島たちに向かって飛んできたが、鹿島やサニーたち妖精の直前で消滅した。
「あぶなかったな~」
「サニーの魔力が遅れていたら、危なかったですね~。」
「突然襲ってくるなんて、卑怯だわ。」
「俺たちも、突然襲っているが。」
「お互い様だから、許そう。」
「許さないわよ、奴らの翅をもぎ取ってやるわ。」
樹海に生い茂る枝葉の上空では、三十匹ほどの軍隊魔蜂が網に頭を突っ込み暴れもがいている。
「少ないわね。」
「前回かなり倒したから、残りはこんなものでしょう。」
「翅が全然足りない。」
「抽選で分けるらしよ。」
「では、抽選で当たるよう、頑張りますか。」
三十匹ほどの軍隊魔蜂は網から逃れようと暴れているが、長い脚は余計に網に絡んでいった。
上空で待機していた兵隊人形妖精達は、網の隙間から突き出た軍隊魔蜂の頭を剣で滅茶苦茶に切り込み、落下防止のためか頭の外殻だけを残した。
網の裏側に現れた兵隊人形妖精達は、足と頭が網に絡まって抵抗できない軍隊魔蜂の背中に止まり、翅をほじくるように剝がしていった。
地上近くでは、住処にへばりついている十匹の親衛隊伴侶魔蜂が、一斉に鹿島達の方へ向かってきた。
五人の妖精たちは、一斉に向かってくる十匹の親衛隊伴侶魔蜂目掛けて投網を投げた。
投網は後方の風魔法の助力なしだが見事に広がり、七匹の親衛隊伴侶魔蜂を絡めた。
三匹の親衛隊伴侶魔蜂が鹿島達に向かってくると、鹿島はジャンプして、先頭の親衛隊伴侶魔蜂の頭を勝ち割り、さらに背中の中心部で切り分けた。
落下する先頭の親衛隊伴侶魔蜂の背中を蹴って、低空飛行してきたもう一匹を翅を掠る事無く身二つにした。
サニーはまだ「魔素固定バリヤー!」と呪文を唱え続けているが、五人の妖精たちと後方で控えていた兵隊人形妖精達は共に、投網に絡まって落下した七匹の親衛隊伴侶魔蜂をめった刺ししだしていた。
遅れて飛び出した親衛隊伴侶魔蜂が、妖精たちの背後から襲い掛かってきた。
鹿島は、遅れて飛び出した親衛隊伴侶魔蜂の顔面先に瞬間移動した。
神剣は、魔蜂の顔面を貫いているが、そのまま背後の兵隊人形妖精達の頭ギリギリを掠めていき、魔蜂の顔面を抱いたまま太い幹にぶっつかった。
鹿島が幹にぶっつかったのを見ていたサニーは、一瞬呪文を止めると、住処から翅を引きずる足の短い白い下腹部が異常に大きな芋虫が現れると、サニー目掛けて空気鏃が飛んできた。
白い芋虫も焦り慌ててたのか、空気鏃はサニーの頭ギリギリ上を掠めていった。
鹿島達の後ろに控えていたのか、白い衣装の妖精が鹿島のもとに飛翔して行くのを確認したサニーは、魔石をさらに高く掲げて再び呪文を唱えだした。
回復した鹿島は、下腹部が異常に大きな芋虫型蜂が、翅を広げて苦し気によたよたと飛翔しようと助走しだすと、頭上から神剣を振り下ろした。
芋虫型蜂は左右に身二つになっているが、それでなを飛び上がろうと翅を動かし続けていた。
住処から首だけを出した黒い頭は、生まれたばかりの軍隊魔蜂のようである。
網に絡まった魔蜂を倒し終えた妖精たちは、一斉に飛行して住処に殺到すると、首だけを出した軍隊魔蜂に襲い掛かった。
女王魔蜂と思われる芋虫が絶命したのを見ていたサニーは呪文をやめて、住処に向かって、「凍てつけ!」と叫んだ。
住処が氷に包まれるのを見た、周りの妖精たちから感動がわいた。
「サニーいつの間に、凍てつく魔法までも覚えたの?」
「そうよ。何で大きくなって、老樹霊みたいになれたの?」
「タローの愛です。」
「本当に、老樹霊になったの?」
「私が生まれた老樹は、まだ若い。大精霊と呼びなさい。」
「お~。」
感動の声が森にこだました。
五人の妖精たちは五面の投網を、一面の網につなぎ合わせて、氷漬けの住処を一面にまとめた網で覆い、枝に絡みついた網を片付け中の混乱場所を避けて飛行し岩場に向かった。
サニーは女王魔蜂の胸から魔石を取り出し、すでにはがされた翅を鹿島に持たせると、後ろからわきの下に手を差し込み、鹿島を抱いて飛び上がった。
岩場に着いた五人は、
「炎!」と一斉に叫び、大小さまざまな炎を氷の塊にぶっつけた。
「刃竜巻!」と、岩場の方から、サニーに抱かれた鹿島にも聞こえたようで、岩場の方で静かに回転する竜巻を注視していた。
母艦での鎮守様の仕事は夜通しとなっていた。
「タローちゃん、プログラムの変更と、増殖数式処理を修理ロボットにプログラムして。」
「修理ロボットを、どのようにしたいのですか?」
「鉱山露天掘りの指揮官が欲しい。」
「露天掘り?」
「正面にある、あの山全部が、鉄鉱山なので、採掘工事を始めたいのです。」
「鉄は最優先で確保しなければならないが、石炭は?」
「樹海の地下にあるわ。」
「高炉の建設は、土魔法で建設すると言っていましたが、いよいよ始まるのですね。」
「タローちゃんは、しばらく私の手伝いね。」
「だとさ。」
「魔蜂は私が指揮して、倒してしまう予定だけど、白い森はどうしましょうか?」
「白い森は、場所の確認だけにしてください。」
「了解しました。」
「タローが、網を考え付いたのは、すごいことだったわ。」
「そうです。凄いです。まさか魔蜂を簡単に捕縛して、全滅させるなど想像していませんでした。」
「後は、サニーちゃん達の頑張りだわ。」
「新しい回復薬もすごいです。」
「でも、病気に感染した時には、飲んではいけないよ。」
「心得ています。」
「病原菌も、回復すると?」
「そうよ。覚えておいてね。」
と、鎮守様は鹿島に注意するよう促した。
鹿島は、鎮守様が立案した展開図の地図に感動しながら見ていた。樹海の中の孤島といった雰囲気の山々のすそ野には、いろんな工場予定地と、完成予定表が書きこんである紙面を見比べていた。
静寂になった枝葉の下では、静かに潜んでいた軍隊魔蜂は敵襲来を感じたのか、異様な数の翅音が起きた上空に向かって飛び立たった。
軍隊魔蜂たちが上空に向かっていくと、
「魔素固定バリヤー!」
幹の影から飛び出たサニーが叫ぶと同時に、住処にへばりついている親衛隊伴侶の隙間から、ガラスみたいに固まった空気鏃(やじり)が、躍り出た鹿島たちに向かって飛んできたが、鹿島やサニーたち妖精の直前で消滅した。
「あぶなかったな~」
「サニーの魔力が遅れていたら、危なかったですね~。」
「突然襲ってくるなんて、卑怯だわ。」
「俺たちも、突然襲っているが。」
「お互い様だから、許そう。」
「許さないわよ、奴らの翅をもぎ取ってやるわ。」
樹海に生い茂る枝葉の上空では、三十匹ほどの軍隊魔蜂が網に頭を突っ込み暴れもがいている。
「少ないわね。」
「前回かなり倒したから、残りはこんなものでしょう。」
「翅が全然足りない。」
「抽選で分けるらしよ。」
「では、抽選で当たるよう、頑張りますか。」
三十匹ほどの軍隊魔蜂は網から逃れようと暴れているが、長い脚は余計に網に絡んでいった。
上空で待機していた兵隊人形妖精達は、網の隙間から突き出た軍隊魔蜂の頭を剣で滅茶苦茶に切り込み、落下防止のためか頭の外殻だけを残した。
網の裏側に現れた兵隊人形妖精達は、足と頭が網に絡まって抵抗できない軍隊魔蜂の背中に止まり、翅をほじくるように剝がしていった。
地上近くでは、住処にへばりついている十匹の親衛隊伴侶魔蜂が、一斉に鹿島達の方へ向かってきた。
五人の妖精たちは、一斉に向かってくる十匹の親衛隊伴侶魔蜂目掛けて投網を投げた。
投網は後方の風魔法の助力なしだが見事に広がり、七匹の親衛隊伴侶魔蜂を絡めた。
三匹の親衛隊伴侶魔蜂が鹿島達に向かってくると、鹿島はジャンプして、先頭の親衛隊伴侶魔蜂の頭を勝ち割り、さらに背中の中心部で切り分けた。
落下する先頭の親衛隊伴侶魔蜂の背中を蹴って、低空飛行してきたもう一匹を翅を掠る事無く身二つにした。
サニーはまだ「魔素固定バリヤー!」と呪文を唱え続けているが、五人の妖精たちと後方で控えていた兵隊人形妖精達は共に、投網に絡まって落下した七匹の親衛隊伴侶魔蜂をめった刺ししだしていた。
遅れて飛び出した親衛隊伴侶魔蜂が、妖精たちの背後から襲い掛かってきた。
鹿島は、遅れて飛び出した親衛隊伴侶魔蜂の顔面先に瞬間移動した。
神剣は、魔蜂の顔面を貫いているが、そのまま背後の兵隊人形妖精達の頭ギリギリを掠めていき、魔蜂の顔面を抱いたまま太い幹にぶっつかった。
鹿島が幹にぶっつかったのを見ていたサニーは、一瞬呪文を止めると、住処から翅を引きずる足の短い白い下腹部が異常に大きな芋虫が現れると、サニー目掛けて空気鏃が飛んできた。
白い芋虫も焦り慌ててたのか、空気鏃はサニーの頭ギリギリ上を掠めていった。
鹿島達の後ろに控えていたのか、白い衣装の妖精が鹿島のもとに飛翔して行くのを確認したサニーは、魔石をさらに高く掲げて再び呪文を唱えだした。
回復した鹿島は、下腹部が異常に大きな芋虫型蜂が、翅を広げて苦し気によたよたと飛翔しようと助走しだすと、頭上から神剣を振り下ろした。
芋虫型蜂は左右に身二つになっているが、それでなを飛び上がろうと翅を動かし続けていた。
住処から首だけを出した黒い頭は、生まれたばかりの軍隊魔蜂のようである。
網に絡まった魔蜂を倒し終えた妖精たちは、一斉に飛行して住処に殺到すると、首だけを出した軍隊魔蜂に襲い掛かった。
女王魔蜂と思われる芋虫が絶命したのを見ていたサニーは呪文をやめて、住処に向かって、「凍てつけ!」と叫んだ。
住処が氷に包まれるのを見た、周りの妖精たちから感動がわいた。
「サニーいつの間に、凍てつく魔法までも覚えたの?」
「そうよ。何で大きくなって、老樹霊みたいになれたの?」
「タローの愛です。」
「本当に、老樹霊になったの?」
「私が生まれた老樹は、まだ若い。大精霊と呼びなさい。」
「お~。」
感動の声が森にこだました。
五人の妖精たちは五面の投網を、一面の網につなぎ合わせて、氷漬けの住処を一面にまとめた網で覆い、枝に絡みついた網を片付け中の混乱場所を避けて飛行し岩場に向かった。
サニーは女王魔蜂の胸から魔石を取り出し、すでにはがされた翅を鹿島に持たせると、後ろからわきの下に手を差し込み、鹿島を抱いて飛び上がった。
岩場に着いた五人は、
「炎!」と一斉に叫び、大小さまざまな炎を氷の塊にぶっつけた。
「刃竜巻!」と、岩場の方から、サニーに抱かれた鹿島にも聞こえたようで、岩場の方で静かに回転する竜巻を注視していた。
母艦での鎮守様の仕事は夜通しとなっていた。
「タローちゃん、プログラムの変更と、増殖数式処理を修理ロボットにプログラムして。」
「修理ロボットを、どのようにしたいのですか?」
「鉱山露天掘りの指揮官が欲しい。」
「露天掘り?」
「正面にある、あの山全部が、鉄鉱山なので、採掘工事を始めたいのです。」
「鉄は最優先で確保しなければならないが、石炭は?」
「樹海の地下にあるわ。」
「高炉の建設は、土魔法で建設すると言っていましたが、いよいよ始まるのですね。」
「タローちゃんは、しばらく私の手伝いね。」
「だとさ。」
「魔蜂は私が指揮して、倒してしまう予定だけど、白い森はどうしましょうか?」
「白い森は、場所の確認だけにしてください。」
「了解しました。」
「タローが、網を考え付いたのは、すごいことだったわ。」
「そうです。凄いです。まさか魔蜂を簡単に捕縛して、全滅させるなど想像していませんでした。」
「後は、サニーちゃん達の頑張りだわ。」
「新しい回復薬もすごいです。」
「でも、病気に感染した時には、飲んではいけないよ。」
「心得ています。」
「病原菌も、回復すると?」
「そうよ。覚えておいてね。」
と、鎮守様は鹿島に注意するよう促した。
鹿島は、鎮守様が立案した展開図の地図に感動しながら見ていた。樹海の中の孤島といった雰囲気の山々のすそ野には、いろんな工場予定地と、完成予定表が書きこんである紙面を見比べていた。
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