2 / 15
銀嶺の章
壱 ここは吉原 1
しおりを挟む
人生なんて…辛いことばかりだ。
何をやっても上手く行かなくて…どんなに頑張っても報われない。
「はぁ……なんか、疲れたな…」
胸が苦しくて、息がしづらくて。誰でもいいからそばに居てくれないかと…人恋しくなる。でも…独りだ。寒空の下、見上げた空はため息が出るほど綺麗で…こんな人生のどん底を味わってる今でさえ、心奪われる
「…綺麗な空…」
冷たい風が吹き抜けていく。沈みかけた太陽が黄金色の光を放って雲も道も草木も全てを柔く染め上げる。その中をたくさんの人が行き交い、歓喜の声が飛び交う。家族、兄弟、友達に恋人。みんな幸せそうでその光景が私には辛かった。その大衆のなかを独り歩く私がなんだか惨めに思えて。胸の痛みは余計に酷くなる
「あーあ…これから、どうしよっかな…」
今はまさに人生のどん底。
両親は遠い昔に離婚し、どちらも私を引き取ろうとしなかった。私を引き取ってくれた母方の祖父母はつい最近他界した。元々、祖父母は私の叔母に当たる人と住んでいたため、祖父母がいなくなった今…私の居場所は無くなりその家を出た。
バイトをしていたが、つい最近辞めることになって…私は今にいたる。バイト代と祖父母が残してくれたお金で少しは生きて行けそうだけど……これからの事を考えると……現実は厳しい。
大人になった今、子どもだった頃のようには行かなくて生活もそれを回すお金も桁が違う。
何をするべきなのかも分からないし…どうやって生活していけば良いのかも分からない
「ほんとに…どうしよ…」
視界がぼやけて前が霞む。こんなとこで泣いたら…余計に…
私は人気がない場所を探しただただ歩いた。
チリンッチリンッ
「?…鈴の音?」
チリンッチリンッ
何処からか鈴の音が聞こえる。まだ人通りのある場所だから、程々の人が歩いている。でも…誰独りとしてこの『音』に気づくことなく、まるで何もないかのように歩いている。こんなにはっきりと聞こえるのに。それなのに…この鈴の音が聞こえてるのは…私だけ?
チリンッチリンッ
訳も分からず鈴の音を追う。自分でもよく分からない。それでも体が動いた。何故か誘われているようなそんな気がして…
…あれ?ふと、その音が急に弱々しくなった。先に進めば進むほど音は小さくなっていく。不思議に思って、少し戻ると音は少しずつ大きくなった。
「これって…」
なんでこんなに必死になっているのか、本当に分からない。周りから見ればおかしな子だと思われるんだろうな。でも、この時は確かに…追うべきだって思ったから。
チリンッチリンッ チリンッチリンッ
「……ここだ。…路地裏?」
たどり着いた『そこ』は、よく言う路地裏ってやつで建物と建物の間に小さい隙間があって狭い道が続いている。日が差し込まないから、やっぱり真っ暗で少し不気味だ。
「う…なんかちょっと怖い。でも……やっぱ聞こえるんだよな」
チリンッチリンッ
『ンナァーオ』
「ぇ?ね…猫?」
突然聞こえたその声にビクッと震えた。その声の持ち主はどうやら『白猫』らしい。
「…綺麗な白猫…」
チリンッチリンッ
鈴の音……あぁ、そっか。
「なんだ……君の音だったんだ。綺麗な白猫さん」
目の前の白猫の首には、綺麗な黄金色の鈴がついていた。私はしゃがんでその白猫に話しかける
『ンナァーオ』
返事をするかのように鳴くとトテトテと近寄って来て私の膝に頬を擦りつけた。あまりに愛らしくて、頭を撫でると、また嬉しそうに喉を鳴らす
「君、何処からかきたの?飼い猫だよね…こんなに綺麗な毛並みだし。鈴もつけちゃって…」
しばらく白猫と戯れていると、猫は満足したのかスクっと立ち、またトテトテと歩き出した。
少し歩くと私をじっと見つめる。
まるで…『ついて来て』とでも言うように…
「……ついて来てほしいの?」
私はポツッと呟く
『ンナァーオ』
その声に答えるように白猫は鳴いた。怖いけど…恐る恐る足を踏み出し私も歩く。狭い路地裏に響くのは私の足音と荷物が揺れる音だけ。冬だからか凄く冷える。私…ほんとに何してるんだろう
『ンナァーオ』
しばらく闇雲に歩いていると、いきなり白猫の足が止まった。そこにはいつの間に現れたのか、綺麗な赤色の鳥居がありその下には階段が続いている。まるでトンネルのように赤色の鳥居と階段が続き、ただならぬ雰囲気が漂っていた。でも…嫌な感じはなくて、歓迎してくれてるような暖かな温もりが私を優しく包む
『ンナァーオ』
「……この先に行けばいいの?」
鳥居には焔が灯り、階段を照らしていた。
「君は?」
白猫は私をじっと見ると、もう一度足に頬を擦り寄せて鳥居の中へ走っていった。
「…行っちゃった」
こんな時にこんな時間に。私は何をしてるのかな。でも…なんでか、この先に行かなくちゃ行けない気がする。
誰かが待ってる気がする…
▼⛩このまま鳥居をくぐって進む
⛩元来た道を引き返す
【⛩このまま鳥居をくぐって進む】を選択
私は鳥居をくぐり白猫の後に続いて歩き出した
何をやっても上手く行かなくて…どんなに頑張っても報われない。
「はぁ……なんか、疲れたな…」
胸が苦しくて、息がしづらくて。誰でもいいからそばに居てくれないかと…人恋しくなる。でも…独りだ。寒空の下、見上げた空はため息が出るほど綺麗で…こんな人生のどん底を味わってる今でさえ、心奪われる
「…綺麗な空…」
冷たい風が吹き抜けていく。沈みかけた太陽が黄金色の光を放って雲も道も草木も全てを柔く染め上げる。その中をたくさんの人が行き交い、歓喜の声が飛び交う。家族、兄弟、友達に恋人。みんな幸せそうでその光景が私には辛かった。その大衆のなかを独り歩く私がなんだか惨めに思えて。胸の痛みは余計に酷くなる
「あーあ…これから、どうしよっかな…」
今はまさに人生のどん底。
両親は遠い昔に離婚し、どちらも私を引き取ろうとしなかった。私を引き取ってくれた母方の祖父母はつい最近他界した。元々、祖父母は私の叔母に当たる人と住んでいたため、祖父母がいなくなった今…私の居場所は無くなりその家を出た。
バイトをしていたが、つい最近辞めることになって…私は今にいたる。バイト代と祖父母が残してくれたお金で少しは生きて行けそうだけど……これからの事を考えると……現実は厳しい。
大人になった今、子どもだった頃のようには行かなくて生活もそれを回すお金も桁が違う。
何をするべきなのかも分からないし…どうやって生活していけば良いのかも分からない
「ほんとに…どうしよ…」
視界がぼやけて前が霞む。こんなとこで泣いたら…余計に…
私は人気がない場所を探しただただ歩いた。
チリンッチリンッ
「?…鈴の音?」
チリンッチリンッ
何処からか鈴の音が聞こえる。まだ人通りのある場所だから、程々の人が歩いている。でも…誰独りとしてこの『音』に気づくことなく、まるで何もないかのように歩いている。こんなにはっきりと聞こえるのに。それなのに…この鈴の音が聞こえてるのは…私だけ?
チリンッチリンッ
訳も分からず鈴の音を追う。自分でもよく分からない。それでも体が動いた。何故か誘われているようなそんな気がして…
…あれ?ふと、その音が急に弱々しくなった。先に進めば進むほど音は小さくなっていく。不思議に思って、少し戻ると音は少しずつ大きくなった。
「これって…」
なんでこんなに必死になっているのか、本当に分からない。周りから見ればおかしな子だと思われるんだろうな。でも、この時は確かに…追うべきだって思ったから。
チリンッチリンッ チリンッチリンッ
「……ここだ。…路地裏?」
たどり着いた『そこ』は、よく言う路地裏ってやつで建物と建物の間に小さい隙間があって狭い道が続いている。日が差し込まないから、やっぱり真っ暗で少し不気味だ。
「う…なんかちょっと怖い。でも……やっぱ聞こえるんだよな」
チリンッチリンッ
『ンナァーオ』
「ぇ?ね…猫?」
突然聞こえたその声にビクッと震えた。その声の持ち主はどうやら『白猫』らしい。
「…綺麗な白猫…」
チリンッチリンッ
鈴の音……あぁ、そっか。
「なんだ……君の音だったんだ。綺麗な白猫さん」
目の前の白猫の首には、綺麗な黄金色の鈴がついていた。私はしゃがんでその白猫に話しかける
『ンナァーオ』
返事をするかのように鳴くとトテトテと近寄って来て私の膝に頬を擦りつけた。あまりに愛らしくて、頭を撫でると、また嬉しそうに喉を鳴らす
「君、何処からかきたの?飼い猫だよね…こんなに綺麗な毛並みだし。鈴もつけちゃって…」
しばらく白猫と戯れていると、猫は満足したのかスクっと立ち、またトテトテと歩き出した。
少し歩くと私をじっと見つめる。
まるで…『ついて来て』とでも言うように…
「……ついて来てほしいの?」
私はポツッと呟く
『ンナァーオ』
その声に答えるように白猫は鳴いた。怖いけど…恐る恐る足を踏み出し私も歩く。狭い路地裏に響くのは私の足音と荷物が揺れる音だけ。冬だからか凄く冷える。私…ほんとに何してるんだろう
『ンナァーオ』
しばらく闇雲に歩いていると、いきなり白猫の足が止まった。そこにはいつの間に現れたのか、綺麗な赤色の鳥居がありその下には階段が続いている。まるでトンネルのように赤色の鳥居と階段が続き、ただならぬ雰囲気が漂っていた。でも…嫌な感じはなくて、歓迎してくれてるような暖かな温もりが私を優しく包む
『ンナァーオ』
「……この先に行けばいいの?」
鳥居には焔が灯り、階段を照らしていた。
「君は?」
白猫は私をじっと見ると、もう一度足に頬を擦り寄せて鳥居の中へ走っていった。
「…行っちゃった」
こんな時にこんな時間に。私は何をしてるのかな。でも…なんでか、この先に行かなくちゃ行けない気がする。
誰かが待ってる気がする…
▼⛩このまま鳥居をくぐって進む
⛩元来た道を引き返す
【⛩このまま鳥居をくぐって進む】を選択
私は鳥居をくぐり白猫の後に続いて歩き出した
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる