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第一章
コーリア報告書
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『狩り』と言う名の『復讐』を始めてからもう、数ヶ月になる。本当の悪役達の手によってコーリアは絶望に落とされた。そして、代わりに『私』が来たわけだけど……正直複雑だ。これまでにコーリアこと『私』は三人の悪役を落としてきた。
婚約者、バルベルト、メイドのメイダ……
面白可笑しくやってきた。決して後悔はしていない。それでも、いい気分はしないのだ。私がやっているのは『人の人生を地に落とす』ことなのだから。
「きっとコーリアだったら……こんなことしないだろうなぁ……」
『私』と『コーリア』。性別をのぞいては全くの別人だ。優しくおっとりとしたコーリア。反対に短期でさばさばとしている私。
「……あぁ、ほんとに複雑、真逆。」
これは『コーリア』の復讐劇。正確にはコーリアを思う『私』のお節介。別にやらなくてもいいのは分かってる。私には言わば関係のないことだから。それでも、これを放っておくのは少し違う気がした。
傷つけられたコーリアが『傷物』として一生を過ごすのはあまりにも残酷過ぎる。私は許せない。
「……ごめんね。コーリア、心の狭い私を許して……」
コーリアがこんな『復讐劇』を望まないのは分かっている。何処までも心が広いのだ。
悪役達は確かに『悪者』だと言える。復讐されたとしても自業自得だろう。けれど、全部が全部ではない。コーリアの欠点も少なからずあるのだ。『悪役』達につけ入る隙を与えたのは、コーリア自身。
婚約者のアル。もっと『コーリア』が自分に自信を持っていたら。言いたいことを素直に言っていれば……何か変わったのかも知れない。
バルベルト。少しでも、言い返していたら……ずる賢く作戦を練ってでも、優しい『自分』を捨てていれば。
メイドのメイダ。真実を打ち明ける勇気を持っていたら。両親のことを自分で知ろうとしていれば。
『助けて』その一言を口に出せていたら……
何か変わったのかも知れない。
『たら』『れば』を何度も繰り返す。
でも、一つ明らかなのは、どんなに心が広くても、どんなに優しくても。それが必ずしも良いとは限らない……と言うこと。
『理不尽を言われても、それを当たり前のように許す』とか『何を言われても、何も言い返さない』とか。挙げて行けば切りがないけれど……これは全て『優しさ』『心の広さ』とは無縁のものだ。言わばこれは『弱さ』、そして複雑なことからの『回避』だ。『逃避』とも言えるかも知れない。
「コーリア……あなたは強いけど、弱いね。優しさや広さだけじゃ、ダメなんだよ……それだけじゃ通用しない。」
……この複雑な『人間社会』では。
『優しさ』や『心の広さ』は確かに大切なもの。でも、そらだけじゃダメ。たまには、『ズル賢さ』もなくてはならないし、『非情』も確かに必要なのだ。
『悪』を行う人に情けはかけられない。例えその『罪』が誰かを守るためであっても『罪』は『罪』。裁かれなければならない。
「……時にはそれが残酷だよね。でもこれは『日本』と対して変わらない。」
私は……もう『罪人』なのだろうか。これまで、三人を落としてきた。正確には二人だが。アルは落ちたと言うより……
「うん。分かんない。」
疑心暗鬼にはなっただろう。せめて、あの瞬間だけは。
アルことアルドラート。あの夜会のパーティーで私との『婚約破棄』はしたものの、新しい『婚約』はまだしていないらしい。新しい『婚約』をするとしたら……おそらく
「マライナ……だっけ?」
あの、私を……いやコーリアを陥れた『悪女』だろうな。まぁ、あの時は……
「間違いなく、私が『悪女』だったけど……」
私が『マライナ』を知っているのは、前世でのゲーム経験があるからこそだ。ゲームではもちろん、『私』こと『コーリア』は悪役令嬢だった。私もコーリアのことは『悪女』として嫌いだったんだ。それはもう、立派な悪女としてゲームに登場していたのだから。
「でも…………やっぱ美人なんだよね。」
悪役令嬢ありきたり、美少女設定。はい、どうもっと。
これは良いとして、要するにゲームではまんま悪女だったのだ。でも……実際は真逆。ヒロインこそが『悪女』だった。私もびっくりしたよ。転生先が『悪女』で?最悪って思った。でもでも?ほんとはヒロインが『悪女』?はぁ?ってね。これは……返って良かったのか?どうなんだ?もうパニック。
「ゲーム設定……こじれすぎでしょ。あーあ。」
しかも、コーリアの記憶まで分かち合ったからね。矛盾マックスだよ。でもお陰で頭にきたから、何せ私は『短気』なもので。転生した瞬間、婚約者を切り捨てて。それでもって、『狩り』にみんなをご招待したわけだ。これまで、二人が参加してくれた。二人とも楽しんでくれたようで何より。
あぁ、そうそう。マライナのことだけど、コーリアの記憶によると……先にも述べた通り、全くの他人らしい。認識さえなかった。少なくともコーリア自身は。つまり、全くの他人に罪をでっち上げられて『婚約破棄』という分けだ。
「あーあ、ばからし」
まぁ、私の『悪役令嬢』という地位はマライナだけが原因ではない。他にも複雑に『貴族社会』とか『陰謀』とかが絡み合っていた。つい最近分かってきたことだ。
「こんな複雑過ぎる人……初めてだよ。コーリア……あなた、結構な不幸体質だったんだね。」
ゲーム歴のある私でも、こんな不幸過ぎる『登場人物』はなかなか見ない。
ちなみに…………
これを知った時の私の第一声と言ったら……
「うっわ、めんどくさ!超複雑!……頭がパンクしそう……」
である。
婚約者、バルベルト、メイドのメイダ……
面白可笑しくやってきた。決して後悔はしていない。それでも、いい気分はしないのだ。私がやっているのは『人の人生を地に落とす』ことなのだから。
「きっとコーリアだったら……こんなことしないだろうなぁ……」
『私』と『コーリア』。性別をのぞいては全くの別人だ。優しくおっとりとしたコーリア。反対に短期でさばさばとしている私。
「……あぁ、ほんとに複雑、真逆。」
これは『コーリア』の復讐劇。正確にはコーリアを思う『私』のお節介。別にやらなくてもいいのは分かってる。私には言わば関係のないことだから。それでも、これを放っておくのは少し違う気がした。
傷つけられたコーリアが『傷物』として一生を過ごすのはあまりにも残酷過ぎる。私は許せない。
「……ごめんね。コーリア、心の狭い私を許して……」
コーリアがこんな『復讐劇』を望まないのは分かっている。何処までも心が広いのだ。
悪役達は確かに『悪者』だと言える。復讐されたとしても自業自得だろう。けれど、全部が全部ではない。コーリアの欠点も少なからずあるのだ。『悪役』達につけ入る隙を与えたのは、コーリア自身。
婚約者のアル。もっと『コーリア』が自分に自信を持っていたら。言いたいことを素直に言っていれば……何か変わったのかも知れない。
バルベルト。少しでも、言い返していたら……ずる賢く作戦を練ってでも、優しい『自分』を捨てていれば。
メイドのメイダ。真実を打ち明ける勇気を持っていたら。両親のことを自分で知ろうとしていれば。
『助けて』その一言を口に出せていたら……
何か変わったのかも知れない。
『たら』『れば』を何度も繰り返す。
でも、一つ明らかなのは、どんなに心が広くても、どんなに優しくても。それが必ずしも良いとは限らない……と言うこと。
『理不尽を言われても、それを当たり前のように許す』とか『何を言われても、何も言い返さない』とか。挙げて行けば切りがないけれど……これは全て『優しさ』『心の広さ』とは無縁のものだ。言わばこれは『弱さ』、そして複雑なことからの『回避』だ。『逃避』とも言えるかも知れない。
「コーリア……あなたは強いけど、弱いね。優しさや広さだけじゃ、ダメなんだよ……それだけじゃ通用しない。」
……この複雑な『人間社会』では。
『優しさ』や『心の広さ』は確かに大切なもの。でも、そらだけじゃダメ。たまには、『ズル賢さ』もなくてはならないし、『非情』も確かに必要なのだ。
『悪』を行う人に情けはかけられない。例えその『罪』が誰かを守るためであっても『罪』は『罪』。裁かれなければならない。
「……時にはそれが残酷だよね。でもこれは『日本』と対して変わらない。」
私は……もう『罪人』なのだろうか。これまで、三人を落としてきた。正確には二人だが。アルは落ちたと言うより……
「うん。分かんない。」
疑心暗鬼にはなっただろう。せめて、あの瞬間だけは。
アルことアルドラート。あの夜会のパーティーで私との『婚約破棄』はしたものの、新しい『婚約』はまだしていないらしい。新しい『婚約』をするとしたら……おそらく
「マライナ……だっけ?」
あの、私を……いやコーリアを陥れた『悪女』だろうな。まぁ、あの時は……
「間違いなく、私が『悪女』だったけど……」
私が『マライナ』を知っているのは、前世でのゲーム経験があるからこそだ。ゲームではもちろん、『私』こと『コーリア』は悪役令嬢だった。私もコーリアのことは『悪女』として嫌いだったんだ。それはもう、立派な悪女としてゲームに登場していたのだから。
「でも…………やっぱ美人なんだよね。」
悪役令嬢ありきたり、美少女設定。はい、どうもっと。
これは良いとして、要するにゲームではまんま悪女だったのだ。でも……実際は真逆。ヒロインこそが『悪女』だった。私もびっくりしたよ。転生先が『悪女』で?最悪って思った。でもでも?ほんとはヒロインが『悪女』?はぁ?ってね。これは……返って良かったのか?どうなんだ?もうパニック。
「ゲーム設定……こじれすぎでしょ。あーあ。」
しかも、コーリアの記憶まで分かち合ったからね。矛盾マックスだよ。でもお陰で頭にきたから、何せ私は『短気』なもので。転生した瞬間、婚約者を切り捨てて。それでもって、『狩り』にみんなをご招待したわけだ。これまで、二人が参加してくれた。二人とも楽しんでくれたようで何より。
あぁ、そうそう。マライナのことだけど、コーリアの記憶によると……先にも述べた通り、全くの他人らしい。認識さえなかった。少なくともコーリア自身は。つまり、全くの他人に罪をでっち上げられて『婚約破棄』という分けだ。
「あーあ、ばからし」
まぁ、私の『悪役令嬢』という地位はマライナだけが原因ではない。他にも複雑に『貴族社会』とか『陰謀』とかが絡み合っていた。つい最近分かってきたことだ。
「こんな複雑過ぎる人……初めてだよ。コーリア……あなた、結構な不幸体質だったんだね。」
ゲーム歴のある私でも、こんな不幸過ぎる『登場人物』はなかなか見ない。
ちなみに…………
これを知った時の私の第一声と言ったら……
「うっわ、めんどくさ!超複雑!……頭がパンクしそう……」
である。
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