守り人たちへ

蝶々

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2 動き続けるもの

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 『ある罪を犯した二人の囚人がいた。二人は鉄格子から外を見る。

 一人は空を見た

 一人は土を見た……』

 こんな言葉がある。一人はどこまでも続く空に未来を見た。一人は過去をその目に写し悔やみ続ける。この言葉の本当の意味は知らない。けれど私はそう思った。
 無力さに気づいた時、私はただ呆然とその日を過ごすことしかできなかった。片鱗が現れて数日。きっとまた次の『変化』は訪れるだろう。その時私はどうすればいい?『できることを探す』そう誓った。でも、不安や恐怖が私を押し潰そうとする。私の他にいる『守り人』たちはどうしているのだろうか。私と同じように震えているのか、それとも『別の方法』を見つけ動いているのか。どちらだろう…
あの『嵐』の翌日…それはたくさんの報道を受け、大々的に放送された。ニュースは朝から晩までその話題で持ち切りになり、数々の理論家や各専門家があらゆる可能性とつなぎ合わせ、いくつもの説を力説した。何も知らない多くの人々にとって、その説はあればあるだけ安心させた。だけど…私は知っているのだ。この現象の正体を…
そんなことを思いながら、空を見て物思いにふける。今日も空は薄暗く『あの日』から私は青空を見ていない。この光景を見ていると、何もかもが夢なんじゃないか…という考えが砕かれるのだ。

今は冬の季節。冷たい風が私の頬をくすぐる。
あの『嵐』を後に誰もが思うだろう。今は梅雨の季節じゃないのに…とか。あんなに土砂降りだったのに…その雨水はいったい何処に消えたの?とか。暴風だったのに、木は折れず葉っぱもさほど落ちていないのは何故かとか。
『私達はいったい何に怯えたのか』とか。被害のない今となっては、あれが現実だったのかも怪しい。それでもニュースが絶えないのは…映像として確かに記録が存在するからだ。そして映像でまた奇妙なことが一つ。それはあれだけの暴風だったのにも関わらず、木々や木の葉、草も何もかも揺れている様子は映らなかったこと。映ったのは雨が酷く降る様子。そして録音された音。つまり、雨が降る映像と風が吹き荒れる『音』が記録として残されたのだ。
こんなに奇妙なことはない…誰もがそう思った。だからこそ、誰もが不安や恐怖を抱き…解決するべく今も動き続けている。
だけど…それ以外は対して変わらないいつもの日常が繰り返される。人は動かなければ何も得られないから。

何が今大事かなんて正直分からない。悪魔の警告…そしていつもの日常…もちろん現実的なのは日常だ。それでもあの悪魔の言葉を無視することもできない。
非現実的なのは分かってる。けれど余りに衝撃的で鮮明に頭に残っているあの日。
空都の守り人…
オカルトじみたその言葉に疑問と現実だったら…という重みを感じながら心の中で何度も呟いた

何もないならそれでいい。平穏な日々が続くのならその方が良いに決まってる。でも…その日々が続く保証は一体何処にあるのだろうか。シーンと静まり返った部屋に時計がリズムを刻む。それはまるで時間の流れを現すように
…時は止まらず動き続けているのだと。
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