私の七つの罪について

蝶々

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憤怒2

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 愛される『運命』にないあの子たちを私は守ると決めた。それは間違ってはなかったと思うし、後悔なんてしてない。ただ……『分かっていなかった』んだ。『愛する』という意味を。その分岐を……

 あの子たちが、この家に来てから……数ヶ月がたとうとしていた。弟と双子の妹三人である。
当然のように、両親は一切の連絡を絶ち、会いにさえ来なかった。予想通り。冷たい家なのだと再度思う。

私が弟妹に懐かれるのも必然だった。

 正直、ほんとは憎かった。両親が今度こそ愛し合って……産まれたかも知れないと思っていたから。
でも、その『憎しみ』はあの子たちが……この『家』に来ると知った時に消えたし、あの子たちの『顔つき』を見て……完全になくなった。

両親のものとは何処か違う、面影があった。その意味に気づいたとき私は自分と同じ境遇であろうその子たちに親近感を覚えた。だからこそ……私が『愛さなきゃ』とそう思ったのだ。
この『冷たい家』にきた。その意味を。私は知っているから。
この子たちの『親』が我が子を捨てたのか。それとも、私の両親が『対面』のために奪い我が物としたのか……
それは分からないけれど……
私は愛されたかった。でも、それが叶うことはない。だからせめて誰かを『愛したかった』……一つ思ったんだ。『愛したら』……いつか私も『愛される』その時が来るかも知れないって。

 その日から私の『愛す』日々が始まった。幼い弟妹はとても可愛く、私に懐いてくれた。泣けば私は喜んであやしたし、寝る間も惜しんで寝かしつけた。その日々に『幸せ』を心から感じて決して苦ではなかった。実質私は弟妹の母親代わりだった。
 弟妹が小学校に上がる日、入学式だと言うのに……両親は来なかった。来たのは、入学費と必要な物を買うためのお金だけ。私はいつもながら心が氷つきそうだった。
 冷たい家には家政婦が来る。日常の世話をする人だ。でも、両親は知っているのだろうか……その家政婦が両親が振り込むお金を我が物とし、私たちの生活に回ってこないということを。そして、そんなことがあっても私たちが何もできないということを。だってね……無理なの。その家政婦は外面がすごく良くて、近所からも学校からも評判の『良い人』だったから。

私が働くしかなかった。高校生だった私はアルバイトで生活費を稼いだ。せめてもの救いは『家政婦』が弟妹には優しかったこと。私たちから巻き上げた金で……まるで自分のものだと言わんばかりに贅沢し、弟妹に服やら何やらを買い与えた。でも、生活費は取り上げられたまま、戻ることはない。
……弟妹は知らないんだろう。その服や物を買った金が自分たちの物で『買い与える』なんて馬鹿げてるってこと。
……生活費は全部……私が出してる。あるべき生活費は他人が使い、私たちは使えない。おかしいでしょ?。ましてや私が働いて稼ぐしかないなんて。一生懸命働いて働いて。それで稼げるのは『生活費』だけ。私自身の費用なんて何も残らない。

家で洗濯するとね、ブランド品の服や綺麗なスカートとかワンピース、Tシャツが出てくるの。……小さな弟妹たちの服。私が汗水たらしてアルバイトしても一生手に入れられないぐらい高い服。そういう服ってね、洗い方が難しくて……複雑なの。ネットに入れて、たまに手洗いしないといけなくて……
それに比べて私の服は簡単。洗濯機に放り込んで干すだけ。何の手間もかからない。安いバーゲンセールで買った服。
なんて惨めなんだろうって。私は毎日のように苦く笑った。悲しくて悲しくて。でも……ほっとしたのも事実。だって、弟妹たちが服で不自由してないって分かるから。それは家政婦様々だな……なんて。私はそんなことできない。だって『生活費』だけで精一杯だから……自分の贅沢も弟妹への贅沢もできないの。

その日々は悲しさと愛に溢れていた。
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